精神科編

精神科疾患編⑥ 依存性、精神障害について

精神科

今回で精神科疾患編は第6回となります



注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい細胞や機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
そのため、
これを全て把握しても人体については全て理解し、学べたということにはなりませんのでご注意ください。
人体は未知の部分も含め、既知の部分であってもかなりの量です。ここは忘れないようにしてご利用ください。)


アルコール離脱症候群について


アルコール離脱症候群とは、長期飲酒している人が断酒した時に生じる一連の症状をいう

症状には、手指の振戦、発汗、不眠、いらだちから、重症では振戦せん妄、アルコールてんかんをきたすことがある

通常は数日での消退となる


・長期飲酒歴の断酒が誘因と考えられる


・軽度の離脱症状には、手指振戦、発汗、不眠、いらだち、不安などがみられる

→通常は飲酒後から1〜3日をピークに離脱症状が見られる(1週間経ってからみられることもある)


・重症では、振戦せん妄がみられてくるが、これには、意識障害失見当識がある

→幻視を主体とした幻覚がある(小動物幻視)

→これには、閉眼させて眼球を圧迫しながらの暗示で幻視として見えるLiepmann現象(リープマン)がある(人工的な幻覚)


・重症例にはアルコールてんかんという、けいれん発作が見られることもある


<治療>


脱水や栄養状態の改善のほか、Korsakoff症候群(コルサコフ)やWernicke脳症(ウェルニッケ)の移行を防ぐため、補液やビタミンB1の補給をする


離脱症状(振戦せん妄、発汗、手指振戦など)を軽減するため、ジアゼパムの経口投与(場合によっては筋注

また、痙攣発作がおこればジアゼパム静注とする


(ジアゼパム:マイナートランキライザー、ベンゾジアゼピン系(BZP))


※ アルコール離脱症状の振戦せん妄ではBZP系が第一選択薬であるが、この際、肝機能障害の程度によっては肝代謝でCYPに関与していないロラゼパムを用いることがある


BZP系が離脱症状を軽減するのは、アルコールと同じく脳内のGABA受容体に結合することにある

アルコールが離脱症状を呈する前に、BZP系を投与しておくことで、BZP系の薬剤がアルコールの代わりにGABA受容体に結合しているため、GABA受容体の機能の急激な変化を避けることができる


・振戦せん妄で興奮が激しい場合では、ハロペリドールを筋注または静注

この時、ジアゼパムなどのBZP系はむしろ症状を悪化させる

(ハロペリドールなどの抗精神病薬:メジャートランキライザー)


・アルコールてんかんのけいれん発作に対しては、ジアゼパムの筋注または静注


※ 夜間の不穏に備えるため、隔離室を用意するのが望ましく、臨床的には一般病室では拘束が必要とされる


アルコールの離脱症状の経過について


ここでは一般的なアルコール離脱症状の経過についてまとめてある、個人差で多少のずれがあったりはするが、教科書的な知識としてはしっかり身につけておきたいものである


早期離脱症状:断酒してから数時間で出現する症状をいう(飲酒後〜48時間以内)

→振戦、発汗、不眠、血圧上昇、焦燥感、集中力低下など(小離脱症状)がみられ、他には幻聴、てんかん様痙攣発作もある


後期離脱症状:断酒してから1、2日後から出現する症状である(飲酒後、48時間〜96時間以内)

→早期離脱症状の症状に加え、情動不穏、軽度の精神運動興奮、幻聴・幻視などの精神症状が加わったせん妄といった状態が出現(振戦せん妄)


これらの離脱症状は数日で消失することが多いが、遷延することもある


①アルコール離脱から6時間〜36時間以内

→小離脱症状


②アルコール離脱から6時間〜48時間以内

→振戦せん妄

強直間代発作を呈することあり、高率で後期離脱症状へ移行


③アルコール離脱から48時間〜96時間以内

→振戦せん妄

→意識障害、幻覚妄想、振戦、自律神経障害が特徴であり、早期離脱症状からの移行で、その程度が著しくなったもの


<治療方針>

原則、外来治療だが

振戦せん妄、離脱けいれん発作、Wernicke脳症をきたしているならば入院治療が必要となる



Wernicke脳症とKorsakoff症候群について


ウェルニッケ脳症の三徴候に、意識障害、眼症状(動眼神経麻痺、瞳孔障害)、失調性歩行がある


ここで、VB1を補給することで、Korsakoff症候群への移行を予防すること


コルサコフ症候群はアルコール性認知症であり、失見当識、健忘、記銘力低下、作話といった慢性期の症状としてみられる


アルコールによる精神症状について


アルコールによる精神症状は、大まかにアルコール摂取による急性の症状、大量飲酒の習慣による依存性のもの、大量飲酒中断時に見られる症状、大量飲酒の長期継続で発症するものなどがある

これらについて詳細に見ていくこととする


<酩酊について>


正常時:単純酩酊


→通常の酔い方をいう

→血中アルコール濃度の上昇に伴って段階的に進行する酩酊

これは

発揚期 → 酩酊期 → 泥酔期 → 昏睡期

の順となっている


時期アルコール血中濃度症状
発揚期0.05%以下多幸感、注意散漫、易刺激
酩酊期0.06%〜0.1%以下運動失調(歩行障害)、言語障害
泥酔期0.2%以上千鳥足、傾眠
昏睡期0.4%以上感覚刺激に反応なし、反射減弱、呼吸停止
単純酩酊の段階的進行について


異常時:異常酩酊病的酩酊の一つ)


・暴れたりする酔い方で、複雑酩酊強い興奮症状)がある

→単純酩酊とは量的に異なっている

→見当識は保たれており、記憶喪失も部分的なもの


病的酩酊では強い興奮と強い意識障害※がある

→「次の日になったら記憶がない」など

→単純酩酊とは質的に異なっており、飲酒量に関わらずみられる(器質的脳疾患を有している場合に現れやすい)


意識障害:これは、意識を消失しているのでは無く、見当識障害、周囲の状況把握の誤認、健忘などのことをさしている

意識消失は大量飲酒による血中アルコール濃度上昇で起こる単純酩酊の昏睡期である(血中濃度:400mg/dL以上


アルコール依存症について


アルコール依存症では、飲酒で様々な問題が生じているということに本人も自覚しているが、飲酒制限することができない状態である


アルコール依存症患者では、飲酒によって社会的、職業的問題が生じているが、飲酒量が減らせず罪悪感を持っている

これには、強迫的飲酒抑制喪失飲酒とも言われており、精神依存の現れである

また、身体依存のため、不快な離脱症状を回避するために飲酒をする

このためのスクリーニング方法というのがあるため、次の項目で見ていくこととする


DSM-5から診断基準では、アルコール依存症とアルコール乱用の区別はなくなり、アルコール使用障害と統一されている


<薬物療法>


嫌酒薬(抗酒薬):ジスルフィラム、シアナマイド

→これは、断酒を目的とする薬であり、アルコールデヒドロゲナーゼの代謝酵素を阻害することで、悪心の原因となるアセトアルデヒドを増やすことで酒を飲みたがらなくさせるというもののため、しっかり自覚を持って治療に望める状態であることが必要である(せん妄状態であれば意味はない)


アカンプロサート:飲酒欲求そのものを抑制する


アルコール依存症の自助グループについて


アルコール依存症は1人では治療が難しいとされており、自助グループに属して治療を進めていこうとすることができる

これには、主に2つのグループがある


断酒会


アルコホーリクス・アノニマス(A.A.)

→こちらは原則、匿名参加となる


CAGEスクリーニングテストについて


この評価方法には、4項目のうち2つまたは3つの質問にが得られた場合には、アルコール依存症を強く疑い4つ全て肯定的な回答であれば、アルコール依存症に特有な症候といえる


項目内容
Cut downあなたは、今までに飲酒量を控えた方が良いと感じたことがありますか?
Annoyedあなたは、人から飲酒について非難され、いらいらさせられたことがありますか?
Guiltyあなたは、飲酒に対して不快感や罪悪感を感じたことがありますか?
Eye-openerあなたは、今までに神経を落ち着かせるためや二日酔いを免れるために、朝真っ先に飲酒したことがありますか?
CAGEスクリーニングテストについて


アルコール多飲によって引き起こされる障害について


・アルコール性肝障害

・急性・慢性膵炎

・アルコール性神経障害:ウェルニッケ脳症、中心性橋髄鞘融解症、アルコール性末梢神経障害、ミオパチー

などが挙げられる


覚醒剤による精神障害について


覚醒剤と一言で言っても様々な薬物がある

その精神症状にはドパミンを放出させ妄想や幻聴、幻覚、フラッシュバックなどの症状を伴う


・覚醒剤には身体依存はない

身体依存:体内の薬物が減った時、離脱症状を呈する状態

→この離脱症状は主に自律神経症状であり、身体順応状態ともいわれている


・覚醒剤の使用により、疲労感が減り、気分高揚感、頭の回転が速くなるなどの快感を体験することで、精神依存を起こしやすい


フラッシュバックとは、覚醒剤を使用中に体験した幻覚や妄想状態と同じ内容の異常体験を感情的ストレスなどの非特異的刺激によって再発することをいう


・覚醒剤の使用を中断した時、傾眠や脱力、無気力が一過性で現れる反跳現象がみられる

→これは、覚醒剤使用により睡眠抑制などの作用が無くなったことで生じる


・覚醒剤は、耐性だけでなく逆耐性現象もみられる

逆耐性現象:覚醒剤の使用が慢性化することで、徐々に効きにくくなるという耐性現象の逆の作用がみられてくる


・覚醒剤を一度使用をして、中止してから時間が経ったとしても再使用により容易に精神病状態が再燃する

また、覚醒剤の使用がなかったとしても飲酒やストレスなどでも精神症状は再燃することがあるが、これを自然再燃といい、これが逆耐性現象である


覚醒剤は、交感神経刺激症状、高揚感には耐性を生じるが、幻覚や妄想などの精神症状には逆耐性現象を生じるため厄介である(使用量が増えていく要因)


治療には、抗ドパミン作用のある抗精神病薬が有効である


各依存性薬物の依存や耐性の程度について


はじめに各薬剤のおおまかな分類についてみていくこととする


<依存性薬物>


抑制系 ┳ モルヒネ型
    ┣ バルビツール酸型
    ┣ 有機溶剤
    ┗ 大麻型


興奮系 ┳ アンフェタミン型
    ┣ コカイン型
    ┗ 幻覚剤型


混合 ━ ニコチン


依存型代表的薬物離脱症状
モルヒネ型モルヒネ、コデイン、アヘンなど鼻汁、くしゃみ、流涙、嘔吐、下痢、散瞳
バルビツール酸型ベンゾジアゼピン系薬、アルコールなど発汗、血圧上昇、動悸、不安、焦燥、振戦、せん妄、けいれん
有機溶剤シンナー類(トルエン、キシレン)、接着剤、プロパンガスなどほとんどなし(まれに痙攣、せん妄)
大麻型マリファナ、ハシシなどなし
抑制系の依存性薬物と離脱症状について


依存型代表的薬物離脱症状
アンフェタミン型アンフェタミン、、メタンフェタミン、メチルフェニデート、MDMAなど傾眠、頭痛、疲労感、意欲低下、抑うつ
コカイン型コカイン傾眠、頭痛、疲労感、意欲低下、抑うつ
幻覚剤型LSD、メスカリンなどなし
興奮系の依存性薬物と離脱症状について


項目離脱症状
ニコチン抑うつ、不眠、易刺激性、不安、集中力低下、心拍数の減少、食欲増加、体重増加
混合系のニコチンの離脱症状について


・モルヒネ、コデイン、アヘン、コカインは麻薬に分類される(コデインは濃度による)

→あへんアルカロイドである「けし」からあへんを採取し、その中に含まれるモルヒネを抽出していることから、これらの成分は同じものから得られている

(合成経路:モルヒネ→コデイン→ジヒドロコデイン)
(合成経路:コデイン→14-ヒドロキシコデイン→オキシコドン)

→コカインはコカノキの葉の成分である


・アンフェタミン型は覚醒剤に分類されており、特にメチルフェニデートは第一種向精神薬に規制されている

規制について(自サイト参考ページ)


薬物耐性身体依存精神依存
モルヒネ型
バルビツール酸型
有機溶剤
大麻型
アンフェタミン型
コカイン型
幻覚剤型
ニコチン
各薬物の依存と耐性について


BZP系などの向精神薬には依存性はあるが、抗精神病薬には依存性はない


上記の表の通り、モルヒネ類バルビツール酸系ニコチン耐性、身体依存、精神依存と全てきたす薬物である


身体依存と精神依存について


身体依存薬物の摂取をすることで生理的平衡状態を保っている状態をいう

→このため、断薬によって身体的な離脱症状が出現する


精神依存全ての依存性薬物で生じるもので、薬物摂取の強迫的欲求がある

→薬物を得るために生活行動を乱される


ベンゾジアゼピン系の依存性と離脱症状について


・BZP系の離脱症状には、不眠(反跳性不眠)、不安、振戦、けいれん、せん妄、幻覚妄想などがある





<参考紹介>

メディックメディア:クエスチョン・バンク vol.4 小児科

病気がみえる:vol.10 産科



    • この記事を書いた人

    diethyl

    科学と非科学を学んだジエチルです。 今後、学んだことはどうブレンドしていくのか、自分でもわからないですが、進んでいきます。 IT分野に興味があり、薬局勤めの神職でドラムが趣味と様々な分野を手掛けています。 知っている事が、人の役に立つならいいかなと思いサイトを開設 <その他> ・アナザースカイ:仙台 ・食べる事が好きで、そのために運動をはじめる ・車や熱帯魚は、にわかながらも趣味の一つ

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