精神科編

精神疾患編⑤ 認知症、身体因性の精神障害について

引き続き、精神疾患編の第5回目となります


今回は認知症について見ていきましょう



注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
そのため、
これを全て把握しても人体については全て理解し、学べたということにはなりませんのでご注意ください。
医学は未知の部分も含め、既知の部分であってもかなりの量です。ここは忘れないようにしてご利用ください。)


認知症の種類について


認知症は他の疾患との鑑別も必要となる疾患である

ここでは、代表的な認知症の症状から、どういった型の認知症であるか鑑別するために必要な事項をまとめてある


認知症
 ┃
 ┣ 変性性認知症
 ┃  ┣ Alzheimer型認知症
 ┃  ┣ Lewy小体型認知症
 ┃  ┗ 前頭側頭型認知症
 ┃    (Pick病を含む)
 ┃
 ┗ 血管性認知症

類似した病状を示すものに神経梅毒がある


変性性認知症は血管性認知症とは違い、基礎疾患はなく、経過はいずれも緩徐であり常に進行するものである

そのため、後述の失効や失認よりは、多くは物忘れから見られてきて、遂行機能障害が生じてきて初めて受診するケースが多い


項目アルツハイマー型認知症レビー小体型認知症(DLB)前頭側頭型認知症
主な障害部位・頭頂葉
・側頭葉
後頭葉・前頭葉
・側頭葉
特徴的症状記憶障害
・見当識障害
物盗られ妄想※1
・幻視
・妄想
パーキンソニズム

・抗精神病薬に過敏性

REM睡眠行動障害※2
人格変化(脱抑制、感情鈍麻、自発性低下など)

・自発語の減少

行動異常(常同行動)

・滞続言語※3
人格変化晩期で崩壊晩期で崩壊早期に崩壊
病識無し
(初期はある)
無し
(初期にはある)
無し
性差女性に多い
(男女比は1:2)
男性に多い特に無し
CT/MRI所見海馬の萎縮

これは、大脳の全般的萎縮
海馬の萎縮は比較的軽度前頭葉と側頭葉の萎縮
(選択的萎縮・葉性萎縮がみられる)
PET/SPECT所見側頭葉、頭頂葉の血流・代謝低下後頭葉の血流・代謝低下前頭葉、側頭葉の血流・代謝低下
病理学的所見・神経原線維変化
・老人斑
・レビー(Lewy)小体Pick病ではPick球
蓄積蛋白アミロイドβ(Aβ)

タウ蛋白
α-シヌクレイン・タウ蛋白

・TDP-43
変性性認知症の種類と比較について


※1 物盗られ妄想:置き場所を忘れて、それに対して自覚がなく誰かに盗られたと発言が見られる。これは病的な物忘れと言える

病的なものかどうかの判断としては、忘れていることに対して自覚しているかどうかという点も大事である

生理的老化による物忘れは進行性ではなく、物忘れを自覚し、体験の一部を忘れるなどの特徴がある


※2 REM睡眠行動障害:通常、レム睡眠では全身の筋肉は弛緩しているが、レビー小体型認知症やパーキンソン病では、レム睡眠期に筋活動が抑制されずに睡眠中の叫びや暴れがみられるなどの行動障害が出現することがある


※3 滞続言語:状況と関係のない話を繰り返すこと
(「何を聞いても自分の名前や生年月日しか答えない」など)


血管性認知症は基礎疾患である高血圧症、糖尿病、心疾患が原因となって起こる疾患である


項目血管性認知症
主な障害部位前頭葉が多いが様々な部位で起こりうる
特徴的症状・感覚障害
・運動障害
・情動失禁
・まだら認知症
など
人格変化保たれる
病識あり
経過段階的に進行
性差男性に多い
CT/MRI所見脳実質内に脳梗塞巣
PET/SPECT所見梗塞部位に応じた血流・代謝低下
病理学的所見梗塞巣など※
蓄積蛋白無し
血管性認知症について


※ 頭部CTなどで梗塞巣がみられるものでは認知症だけではなくうつ病も発症しうる

それぞれ、血管性認知症、血管性うつ病という


Pick病について


Pick病とは、前頭側頭型認知症の一つであり、脳の神経細胞にPick球という球状物がみられる病態をいう


特徴としては、性格・人格の変化がみられる

また、脱抑制、自発性の低下なども生じたりする

これには、神経梅毒によるものも考えられ、これは血清梅毒検査によって診断ができる

→この場合、治療は駆梅療法が有効である(神経梅毒は他の認知症とは異なり、治療可能)


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認知症関連用語について


認知症の症状にも独特な用語が様々ある

そこで、ここでは認知症症状に使われる用語についてまとめてあるので、参考にしていただければと思う


項目内容
遂行機能障害
(実行機能障害)
目的を持った一連の活動ができなくなる状態をいう
(料理、買い物、段取り、手順など)

問題解決に必要とされる能力である
注意障害物事に集中する機能が障害された状態をいう
記銘力障害物忘れがひどくなっている状態から判断

記銘力の低下とは、覚えられないということである
思い出せないという想起障害とは違う)

これは、アルツハイマー型認知症の特徴の一つである※
見当識障害自分の居場所が認識ができていない状態
(自分の家にいながらも「自分の家はここではない」などの発言がある)
失語言語の理解と表現における障害がある状態をいう
失行運動障害がないにも関わらず、習慣的動作や象徴的動作を行えない状態をいう
失認知覚障害がないにも関わらず、習慣的動作や象徴的動作を行えない状態をいう
常同行動
(「収集癖」も意味合いとしては含む)
特定の行動や行為を繰り返す症状をいう
(毎日同じ時間に決まったコースを歩くなど)

前頭側頭型認知症に多いとされる
認知症関連用語について


記銘力が保たれている場合は、アルツハイマー型認知症ではなく老年期うつ病の可能性が高いと言える

というのも、うつ病は仮性認知症とも言われ記憶障害を認めることがあり、これは想起障害(思い出せない)という症状を呈する


認知機能の評価法について


認知機能の評価法には、前頭葉機能検査(FAB:Frontal Assessment Battery)Wechsler記憶検査(WMS-R:Wechsler Memory Scale-Revised)(ウェクスラー)などがある


<認知機能評価法>


前頭葉機能検査概念化や知的柔軟性、運動プログラミング、葛藤指示、抑制コントロール、把握指示の6項目の質問・指示をし、正答や指示に従うことができるのかを検査するもの


Wechsler記憶検査:記憶の包括的検査であり、13の下位検査で言語性、視覚性、総合、注意・集中、遅延の5つの指標を求めることができるもの


認知症と抑うつ症状の鑑別について


一見するとうつ病のような症状であっても、認知症であることもある

そのため、しっかりと鑑別をした上で、適切な薬物療法に繋げられればと思う


うつ病においては


朝方の調子が悪い(日内変動あり)

重症例や妄想を伴うものでは病識を欠くことがある(老年期うつ病など)

記憶障害がある

・ものを覚えられないという記銘力低下は無く、思い出せないという想起障害がみられる


対して、認知症では


・せん妄がオーバーラップして夕方から夜間にかけて増悪する(日内変動あり)

病識がない

記銘力低下が見られる(特にアルツハイマー型認知症)


大脳の障害について


大脳の障害部位によって起こりうる症状は違ってくるため、その違いについてはしっかり把握しておくことが必要である


障害部位症状
前頭葉・Broca失語(ブローカ:運動性失語※1)
自発性の低下
・性格変化(moria(モリア、多幸症)、ふざけ症)
→無意味な言葉の駄洒落、冗談を好む、など
・原始反射出現(把握反射、吸い付き反射)
側頭葉・Wernicke失語(ウェルニッケ:感覚性失語※1)
性格変化(粘着性、爆発性)
記憶障害
・側頭葉てんかん
・Kluver-Bucy症候群(クリューバー・ビューシー)※2
頭頂葉・知覚障害
失行、失認、失読、失書
Gerstmann症候群(ゲルストマン)
・Balint症候群(バリント)※3
後頭葉・Anton症候群(アントン)※4
視覚異常
大脳の障害について


※ 1 運動性失語:言葉を聞いて理解することはできるが、話すことや書き出すことが難しくなっている状態である

→発音がたどたどしい(音韻性錯誤)、文法誤り、単語でしか話さないなど


感覚性失語:言葉や話を聞いて理解することが難しい状態であり、話し方は滑らかである

→言いたいことが別の単語に置き換わっている(意味性錯誤)、単語が間違っている(字性錯誤


※2 Kluver-Bucy症候群:アカゲサルで両側側頭葉切除術をした際に見られた典型的な6つの症状があるが、人においてこれらのうちいくつか症状が見られているようであれば(不全型:多くは3つ以上とされる)、両側側頭葉の扁桃体や海馬に障害があると想定できる


<典型的症状>


・視覚失認:見慣れているものを視覚的に認識できないこと

・口唇傾向:なんでも口に物を入れて確かめようとする

・視覚性過敏反応、変形過多:視覚に入るもの全てに注意が向いて反応をしようとする

・情動行動の変化:無感情、恐怖心の欠如

・性行動の変化:社会的な制約を無視し性行為に及ぶ、自慰行為を行う

・食事習慣の変化:過食や異食(通常、食べ物でない物を食べること)がみられる


<原因>


成人:頭部外傷、脳血管障害など

小児:単純ヘルペス脳炎など

などの変性疾患やてんかんなどでみられる症候群である


※3 Balint症候群:精神性注視麻痺、視覚性注意障害、視覚性運動失調の三徴候があり、これらがみられるとなんらかの注意機能障害があると考えられる


精神性注視麻痺:視線が視界内の一方向に固着して他方向を自発的に注視しなくなる症状である

→そのため、対象物が動くと視野から外れるためすぐに見失ってしまう


視覚性注意障害:視野内のある一つの対象物を注視すると、その周囲にある対象物が認識できなくなる

→指示をすれば視線の移動は可能であり、他の対象物を認知できる


視覚性運動失調:注視下で対象物を手で捉えることに対する障害である


<原因>

病巣は、両側の頭頂-後頭葉領域にあり、原因疾患は脳卒中、一酸化炭素中毒、プリオン病、外傷など様々ある


※4 Anton症候群:視覚障害があるにも関わらず、本人は見えていないということに自覚していないこと

→病態失認の一つであり、皮質盲に伴う病態失認Anton症候群という

一方で、片麻痺に伴う病態失認Anton-Babinski症候群という


<原因>

原因には脳卒中が多く、他には、副腎白質ジストロフィー、ミトコンドリア脳筋症、子癇前症、PRESなど


<検査>

頭部単純CT:脳の器質的疾患の可能性があればまず行うこと


「思考の障害」に関しては精神疾患編①の 「思考」の症候用語解説 を参照


症状性精神障害について


身体疾患が原因で精神症状を呈しているものを症状性精神障害という


一見、様々な不定愁訴を訴え、うつ病の様な症状であっても、背景には身体疾患が隠れていたりするため、全ての精神疾患は最初に身体性疾患の除外をすることが肝要である

治療をすればすぐに改善するものもあるが、見逃すことで、不可逆的な認知機能障害を残すものもあるため重要なポイントである


<症状精神病の原因>


・全身感染症

・内分泌障害

・代謝性疾患

・急性中毒

・産褥期


中毒性精神障害を起こしやすい化学物質には、一酸化炭素、カルバメート系化合物、シアン化合物、水銀、鉛、有機リン系物質、硫化水素などがある


以下は、症状性精神障害を起こしやすいとされる疾患となる


分類具体的疾患
全身感染症肺炎、インフルエンザ、敗血症
内分泌疾患甲状腺機能異常、副腎皮質機能異常、副甲状腺機能異常、汎下垂体機能低下症
代謝性疾患糖尿病、肝性脳症、尿毒症、人工透析、ビタミンB1欠乏症(ウェルニッケ脳症)
膠原病全身性エリテマトーデス(SLE)、Behcet病(ベーチェット)
薬剤性ステロイド、インターフェロン製剤、抗パーキンソン病薬
婦人科疾患更年期障害、月経前緊張症候群、産後うつ病、マタニティブルー、
悪性腫瘍
症状性精神障害を起こしやすい疾患について


電解質異常(高カルシウム血症)による精神障害について


高カルシウム血症は、軽度であれば無症状だが、13mg/dL以上ともなれば中枢神経症状(傾眠、意識障害)、脱水(舌や皮膚が乾燥)、腎不全などをきたしやすくなる


この他、高カルシウム血症の症状には以下のものが挙げられる


項目内容
中枢神経系不安、焦燥、抑うつ、錯乱、意識障害(傾眠、せん妄、昏睡など)
消化器系食欲低下、悪心、嘔吐、便秘(腸管運動低下による)、消化性潰瘍(高ガストリン血症による)
循環器系QT短縮
腎・尿路系腎機能障害、腎結石、尿崩症(口渇、多飲、多尿)
その他筋力低下(膜電位が深くなることで、脱分極しにくい)、皮膚掻痒感など
高カルシウム血症の症状について


・症状は、急速に進行する


せん妄症状が見られる

→睡眠障害(昼夜リズムの障害)、見当識障害(意識障害)、記銘力低下(健忘)、動揺性(症状が変動しやすい)など


・高齢者で、骨粗鬆症治療として活性型ビタミンD3製剤やカルシウム剤を内服していて、腎機能低下が進んでいれば、より高カルシウム血症を起こしやすい状態といえる


<高カルシウム血症>


血清カルシウムの正常値は8.6〜10.2mg/dLとなっている


低アルブミン血症時では、血清カルシウム値を補正する必要がある

その補正式は

補正Ca(mg/dL)= 測定Ca(mg/dL)+ (4 - 測定Alb(g/dL))


<治療>


生理食塩水の点滴静注ループ系利尿剤による脱水是正とカルシウム排泄促進



注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
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    • この記事を書いた人

    TK.Ph

    自分が学んで知った事が、人の役に立つならいいかなと思いサイトを開設 ・食べる事が好きで、そのために運動をはじめました

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