小児科編

小児科疾患編⑩ 内分泌、代謝系について

小児科2

小児科疾患編の後半となります


また、長く続きますがよろしくお願いします



注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
そのため、
これを全て把握しても人体については全て理解し、学べたということにはなりませんのでご注意ください。
医学は未知の部分も含め、既知の部分であってもかなりの量です。ここは忘れないようにしてご利用ください。)


新生児マススクリーニングについて


新生児マススクリーニングは、新生児が母体からの影響がなくなって哺乳と代謝を開始することで、蓄積される物質の血中濃度が十分となる日齢4〜6日に行うもの

検査で代謝疾患を早期発見し、生後数週間〜数ヶ月でおこりうる障害を予防して適切に処置するために行うもの


目的は先天疾患の早期発見・早期治療にあるため、できるだけ早い検査となっている


ただし、早すぎる検査では検査値が正確に測れないため適切なタイミングがあります


それが日齢4〜6日(5日)となっています


スクリーニング検査では、親のインフォームドコンセント(説明と同意)が必要となります

日齢が4〜6日であるのには理由があります


・出生後すぐでは、TSHサージというTSHが急激に生理的に増えるため先天性甲状腺機能低下症(いわゆるクレチン症)の偽陽性となりやすいため不適とされている(これは生後3日目までみられる)


・さらに、代謝の疾患というのは十分な哺乳をした上で蓄積物質が生じないことを確認する必要があるため、偽陰性が生じやすいことから、出生後すぐの検査は不適である


早産時や病児であった場合、出生後に母乳や人工乳を摂取できない場合があるため、日齢が4〜6日で採血し、哺乳が十分に確立してからも採血をする必要がある

2,000g未満で出生した場合:日齢4〜6日に採血し、次は生後1ヶ月または、2,500gに達した時医療機関の退院時のいずれかの早い時期に再度採血し、再提出するのが推奨されている

低出生時で、どのくらい成長できているか把握できる


新生児マススクリーニングの種類には以下のものが挙げられます


検出疾患検査法標的物質
フェニルケトン尿症タンデムマス法フェニルアラニン
(フェニルアラニン水酸化酵素)
ホモシスチン尿症タンデムマス法メチオニン
(シスタチオニンβ合成酵素)
メープルシロップ尿症タンデムマス法ロイシン
(BCKDH)
ガラクトース血症Beutler法トランスフェラーぜ
Paigen法ガラクトース
先天性副腎皮質過形成症ELISA法17α-ヒドロキシプロゲステロン
先天性甲状腺機能低下症
(クレチン症)
ELISA法TSH
新生児マススクリーニングの種類について


タンデムマス法:質量分析計を用いており、アミノ酸とアシルカルニチンを測定して、一度の検査でアミノ酸代謝異常疾患の3疾患などのおよそ20疾患もスクリーニングすることができる

この方法では、アミノ酸代謝異常のほか有機酸代謝異常(メチルマロン酸血症など)脂肪酸代謝異常なども一部可能となっている


疾患症状病態発見率
ガラクトース血症
(Ⅰ型〜Ⅳ型)
低血糖
消化器症状
肝硬変、浮腫、意識障害
先天性白内障

Ⅰ型:腎機能異常、易感染、知的障害、肝障害、ビリルビン値上昇など致死的(Ⅰ型)

Ⅱ、Ⅲ型:検査以上は見当たらない
症状は哺乳開始後からみられる

Ⅰ型:GALT欠損症(ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ)
Ⅱ型:GALK1欠損症(ガラクトキナーゼ)
Ⅲ型:GALE欠損症(UDPガラクトース-4-エピメラーゼ)
Ⅳ型:Ⅰ〜Ⅲ型に当てはまらないGALM酵素欠損症

Ⅰ型〜Ⅲ型はLeloir経路(ルロワール)の代謝過程の異常となっている
3万分の1
メープルシロップ尿症けいれん
意識障害
呼吸困難
四肢緊張異常
知的障害
死亡
バリン、ロイシン、イソロイシン(BCAA:分岐鎖アミノ酸)の中間代謝産物のα-ケト酸の酸化的脱炭酸酵素異常により、血中・尿中のバリン、ロイシン、イソロイシンが上昇し、ケトアシドーシスをきたす

生後3〜5日頃から進行性の脳症がみられる
50万分の1
先天性副腎皮質過形成症(CAH)
(21-水酸化酵素欠損症の場合)

大別して

(1)塩喪失型(血圧低下、血清Na低下、K上昇、尿中17-KS上昇、尿中17-OHCS低下)

(2)単純男性型(血圧や血清Na、K値は正常)がある
副腎クリーぜ
男性化
皮膚の色素沈着

<糖質コルチコイド・ミネラルコルチコイド産生障害によっておこる症状>

血清Na値低下
K値上昇によるショック(致死的)
脱水
低血圧
意識障害(ショック)
コルチゾール合成酵素異常(17α-ヒドロキシプロゲステロン(17-OHP)の高値)でコルチゾールが低値、また、ネガティブフィードバックでACTH過剰分泌となることで、副腎皮質が過形成、中間代謝産物が高値となる

塩類喪失型では、生後1〜3週頃から症状が見られる
2万分の1
ホモシスチン尿症水晶体亜脱臼
血栓症
知的障害
骨格系異常
シスタチオニンβ合成酵素欠損によって、メチオニン高値とその代謝産物であるホモシスチンが高値となる80万分の1
フェニルケトン尿症神経症状(知能低下、情緒障害、けいれんなど)
メラニン色素欠乏(赤毛、色白)
常染色体劣性遺伝
フェニルアラニン水酸化酵素の異常によりフェニルケトンが高値となる

無治療では、生後数ヶ月から症状が見られる
6万分の1
先天性甲状腺機能低下症
(クレチン症)
黄疸
頭蓋癆(ずがいろう:頭蓋骨が柔らかい状態)
腹部膨隆(便秘)
知的障害、発育障害
クレチン顔貌
徐脈
血液検査
(TSH高値、FT3、FT4低値)
3千分の1
疾患と症状、病態について


<採血部位について>


採血部位は、原則、足底部(かかと)であり、かかとの外側または内側を穿刺すること(踵骨は避ける)


<検査法について>


検査法にはBeutler法(ボイトラー)Paigen法(ペイゲン)ELISA法(イライザ、エライザ:酵素結合免疫吸着アッセイ)タンデムマス法などがあり、これは、乾燥血液濾紙を用いる

→濾紙は均等に染み渡るようにして定量する(濃度測定)、また、濾紙の乾燥は自然乾燥とする(濾紙が汚染されないよう気をつけること)



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クレチン症の確認事項について


クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)は出生時は母体からのT4を胎盤を通して3割は補われており、甲状腺が完全に無形成であっても疾患の症状を呈さないが、新生児マススクリーニングで初めてTSH上昇であることがわかり判明する

新生児マススクリーニングでは最も発見される疾患である(およそ3000分の1)

早期発見・早期治療により、正常児と同等の知能と成長が得られる


以下がクレチン症の兆候、確認項目となる


①先天性黄疸②便秘(治療に反応しにくい)
③臍ヘルニア④体重増加不良
⑤皮膚乾燥⑥不活発(傾眠、無関心など)
⑦大きい舌(巨舌)
これによる呼吸困難
⑧かすれた泣き声(嗄声)
⑨四肢冷感(低体温)⑩浮腫
⑪小泉門開大(0.5×0.5cm以上)
(頭位の拡大)
⑫甲状腺腫
クレチン症の確認事項について1(臨床症状)


TSH、FT3、FT4の血清値確認甲状腺超音波検査
大腿骨遠位骨端核が認められないことが多いRöhrer指数(ローレル)
骨年齢(遅延傾向)コレステロール値高値※
クレチン症の確認事項について2


※ 高コレステロール血症となるのは、コレステロールから胆汁酸への代謝が低下することによる


以上の確認項目から総合的に判断をすることとなっている


生後1ヶ月頃には、哺乳不良などもみられる

あまり泣くことはなく、よく眠り、食欲がみられない

早期治療ができなければ、骨の成熟は遅れ、大泉門や小泉門は大きく開き、発達の遅滞、低身長となる


治療は早期治療をする必要があるが、治療はT4の投与となる(補う)



Rohrer指数について(ローレル)


ローレル指数(Röhrer's index)とは、幼児・児童・生徒の肥満状態を知るための指数である


これを調べることで、集団の傾向や、学年全体の傾向、年次推移などを把握することができる


<計算式>

Rohrer指数 = 体重(kg)/ 身長(cm)3 × 107


やせすぎ99以下
やや やせている100〜114
標準115〜144
やや太っている145〜159
太りすぎ160以上
ローレル指数の分類について


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先天性副腎皮質過形成症について(CAH)


先天性副腎皮質過形成症で最も多いとされる21-水酸化酵素欠損症は副腎不全のリスクがあり、全身状態に注意が必要


<生理作用>

コレステロール
 ↓
 ↓
 ↓
17-OHプロゲステロン

 ↓ 21-水酸化酵素
 ↓
コルチゾール

(↓ごとに代謝を受ける(経路は複数あり)





新生児期での診断として


臨床所見:副腎不全症、男性化症状、皮膚色素沈着

→生殖器では、女児の外性器男性化、陰核肥大、陰唇癒合、共通泌尿生殖洞、男児の伸展陰茎長の増大など

→女児の外性器男性化は性分化疾患(DSD)として、緊急の対応が必要である(社会的な性の決定は社会的・医学的緊急事態とされる)


思春期時期までを考えると、女児では原発性無月経となる

骨年齢では促進されて骨端線の閉鎖が早くなり、低身長となる


検査所見:アルドステロン産生低下、コルチゾール産生低下、副腎アンドロゲン産生亢進、アシドーシス

→アルドステロン低下から考えられることは、低Na、高K、TSH・ACTH上昇、血漿レニン活性の上昇など


の確認があり、診断の目安は17-ヒドロキシプロゲステロンの上昇が挙げられる


<維持療法中の対応について>


・CAHの診断がされたら、まずグルココルチコイドの投与※を行うこと(補充療法)

・女児における性器の男性化に対しては外性器形成術


体へのストレスによって糖質(グルコ)コルチコイドが多量に産生されるため、先天性副腎皮質過形成症の維持療法中に発熱性疾患や脱水を伴う胃腸炎、全身麻酔を伴う手術、外傷ストレスではこれに対応するためグルココルチコイドを通常の3倍前後の投与量が必要となる


※ グルココルチコイドを投与する理由

グルココルチコイドである生理的コルチコステロイドのヒドロコルチゾンなど効果発現が早く、鉱質(ミネラル)コルチコイド作用が強めのため急性副腎不全では必要なものとなる

一方、合成グルココルチコイドであるプレドニゾロンやデキサメタゾンなどでは、効果発現が遅く、ミネラルコルチコイド作用が弱いため治療では用いられていない


その他の新生児期の疾患について


妊娠、出産時に様々な検査をしていくこととなるが、新生児では様々な疾患のリスクがある

そこで、様々なスクリーニングや成長過程を見ていく必要があるため、事前に検査や予防投与などで対処していくこととなる


疾患内容検査等
帽状腱膜下血腫頭蓋外の損傷で、分娩損傷や頭部打撲、頭髪の牽引などで生じる

帽状腱膜と骨膜の間に生じる

出生後数時間で見られ、凝固障害が考えられる
CT検査など

黄疸があれば血清ビリルビン値も確認
Rh不適合妊娠胎児の血液型抗原が母体に存在しない場合

母親がRh(D)陰性で、生まれた赤ちゃんがRh(D)陽性の時、今回の出産で赤ちゃんの血液が母親の体内に入ることで母親は抗体を作る

次に妊娠した時、再度赤ちゃんがRh(D)陽性であれば、母親ですでにできている抗体が赤ちゃんの赤血球を攻撃し、新生児溶血黄疸や核黄疸などにより致死的な状態となる
血清ビリルビン値、Coomsテスト(クームス)

妊娠初期の血液検査で血液型を検査する
ビタミンK欠乏症正常分娩後の数日以内にみられる出血症状

VK依存性の凝固因子であるⅡ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子※1が一過性に生理的に欠乏するため起こる

早発型:生後24時間

古典型:生後1週間

遅発型:生後2〜12週
凝固検査
(PT時間、APTT時間、ヘパプラスチンテストなど)
核黄疸大脳基底核、脳幹核に非抱合型ビリルビンの沈着によっておこる脳の損傷である

以下の理由などにより、高ビリルビン血症に至り、ビリルビンが血液脳関門を通り核黄疸を呈することがある

・早期産児では血清アルブミン値が著しく低くなることがある。これにより、ビリルビンがアルブミンから遊離した状態で存在する

・ビリルビンと競合する薬剤によりビリルビンの遊離が増える

・絶食状態、敗血症、アシドーシスの遊離脂肪酸、水素イオンもビリルビンと競合する
確実な検査法は確立されてはいない

確定診断は剖検のみとなる
新生児慢性肺疾患従来の定義(気管支肺異形成症、ウィルソン-ミキティ症候群)は現在、Ⅰ型〜Ⅵ型にまとめられている

<参考>

新生児慢性肺疾患の定義と診断

https://minds.jcqhc.or.jp/docs/minds/CLD/01_Ch1_CLD.pdf
放射線検査や臨床所見で診断を行う

<参考>

小児慢性特定疾病情報センター

https://www.shouman.jp/disease/instructions/03_09_011/
新生児一過性多呼吸出生後、肺に過剰な液体があり一時的に呼吸困難となる疾患であり、出生後すぐに呼吸窮迫となる

早産児(帝王切開による出生)や特定の危険因子のある満期産児で多く見られる

血中酸素濃度が低くなる

呼吸が早くなり、うめくように息を吐く状態が見られることがある
・胸部X線検査

・血液検査、血液培養(必要時)
胎便吸引症候群出生児が、出生前または周産期に、肺に胎便を吸い込んで呼吸困難症状が見られる疾患

胎便:無菌の暗緑色の便
・胸部X線検査
・羊水中の胎便
・呼吸困難
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)血小板膜蛋白に対する自己抗体ができ、血小板に結合して主に脾臓の網内系細胞で血小板破壊が亢進して、血小板減少をきたす自己免疫性疾患である末梢血液の血小板数(血小板数:10万/μL以下)、赤血球数・白血球数は正常で形態も正常

鉄欠乏性貧血のこともある

骨髄巨核球数は正常ないし増加、赤芽球および顆粒球の数、形態は正常

血小板結合性免疫グロブリンG(PAIgG)の増加(増えないこともある)

など
核酸代謝異常代表的な疾患:Lesch-Nyhan症候群(レッシュ・ナイハン)

これは、プリン塩基の再利用するサルベージ経路で機能しているHGPRT※2が欠損して

・症状に、高尿酸血症、痙攣、知能低下、攻撃的な性格、自傷行為などの精神神経障害がみられることあり

・X連鎖性劣性遺伝(伴性劣性遺伝)
尿酸、クレアチニン、尿中尿酸、尿中クレアチニンを測定する
金属代謝異常亜鉛や銅などの金属元素が欠乏、蓄積によって生じるものをいう

先天代謝異常では比較的銅の代謝異常が多い

代表的な疾患:Wilson病(ウィルソン)Menkes病(メンケス)


ウィルソン病:肝細胞の銅輸送タンパクのATP7Bが欠損することで体内に銅が過剰に蓄積する疾患

メンケス病:銅を輸送するトランスポーターであるATP7Aが異常を起こすことで、腸から銅を吸収することができず、体内の銅が不足する疾患
・血清セルロプラスミン、血清銅、尿中銅を測定する


ウィルソン病:内服治療可能

D-ペニシラミン、塩酸トリエンチン(銅の排泄促進)、亜鉛製剤(銅の吸収阻害する)

食事療法:低銅食(貝や甲殻類、レバー、ココア、チョコ、豆、穀類などは極力摂取を控える)


メンケス病:根治療法はまだない
ミトコンドリアDNA異常症ミトコンドリア病には核DNA上の遺伝子変異の場合と、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の異常の場合がある

ミトコンドリアDNA異常は酸化的リン酸化によるATP産生に関わる異常であり、嫌気性代謝で乳酸が増加する

全身のあらゆるところに異常が見られる
筋生検、血液検査、髄液検査、心電図検査、脳の画像検査など

どこの臓器に異常があるのか調べる必要がある
ムコ多糖体代謝異常ライソゾーム病の一つであり、ライソゾーム酵素の活性低下によって尿中ムコ多糖の排泄が増加する


クレチン症によるムコ多糖沈着では粘液水腫がみられるが、これは代謝異常によるものではないため、新生児マススクリーニング(タンデムマス法)では検査できない
ムコ多糖を構成するウロン酸を測定
小児疾患について


※1 VK依存性の凝固因子に有名な語呂:肉、納豆(Ⅱ、Ⅸ、Ⅶ、Ⅹ) これらの凝固因子は胎盤の移行が少ない

また、VKは腸内細菌での合成ができるビタミンだが、新生児の腸管ははじめは無菌状態のためVKの生成がほとんどできない


※2 HGPRT:ヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーぜというPRPPを分解する酵素



小児における肥満について


学童以上の子供の体型の判定に用いられるのには、以下の肥満度がある


肥満度(%) = [実測体重(kg) - 標準体重(kg)] ÷ 標準体重(kg) × 100


肥満度判定
20〜29%軽度肥満
30〜49%中等度肥満
50%以上高度肥満
肥満度について


治療には、本人だけではなく家族や学校の協力のもと食事や運動の改善が必要となる


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性早熟症(思春期早発症)について


性早熟症とは、本来の時期よりも早く二次性徴が発現している状態である

女児の罹患が多いが、男児では脳腫瘍や副腎腫瘍が原因のことも多いため、検査を進めていくことが必要な疾患


<分類>


(1)中枢性思春期早発症

→脳下垂体からのゴナドトロピン分泌増加によりゴナドトロピン依存性思春期早発症となる


(2)末梢性思春期早発症

→脳下垂体からのゴナドトロピン分泌増加はないが、性ステロイドが増加してゴナドトロピン非依存性思春期早発症をいう


次に、思春期早発症の目安についてまとめてあるが、この他にも成長曲線からの成長率増加(身長促進現象)骨年齢での骨成熟促進現象についても第二次性徴の進行度合いの目安となっている


思春期早発症の大まかな性別、年齢ごとの目安は以下となる


9歳未満精巣、陰茎、陰嚢などが発育してくる
10歳未満陰毛の発生
11歳未満腋毛、ひげがみられ、変声がみられる
男児の思春期早発症の目安について


7歳6ヶ月未満乳房の発育
8歳未満陰毛、腋毛の発生、外陰部成熟(小陰唇色素沈着)
10歳6ヶ月未満初経の発来
女児の思春期早発症の目安について


<通常の第二次性徴時期について>


・男児における精巣・睾丸発育は10〜11歳頃から

・男児の陰毛発生は12〜13歳頃から

・女児の乳房発育は10〜11歳頃から

・女児の陰毛発生は11〜12歳頃から

・女児における初経は13〜14歳頃から


・小児期に急激な身長増加骨年齢促進がみられる


<検査>


左手手根骨のX線検査

骨年齢の促進があるかどうかを確認する(成長度合いの確認)


ゴナドトロピン依存性の診断に必要な検査項目

血中LH、血中FSH、エストラジオール、テストステロンの数値が思春期レベルに達しているかどうかを確認


次に鑑別のための検査となる


・基礎疾患が無いか確認


・ゴナドトロピンの依存性の有無を確認

LHRH負荷試験

視床下部-下垂体-性線系に異常が見られないかを調べるための方法であり、ゴナドトロピン依存性の有無を調べる(中枢性か末梢性かを鑑別)

→中枢性であれば下垂体性ゴナドトロピンと性ステロイドホルモンのいずれも分泌が亢進する


<治療>


・特発性中枢性思春期早発症:薬物治療が主(Gn-RHアゴニスト※1など)


・器質性中枢性思春期早発症:腫瘍など外科手術となるが、過誤腫※2や水頭症、脳炎後遺症などでは薬物治療となる


・末梢性思春期早発症:CAHであれば副腎皮質ホルモンなどの薬物治療だが、副腎腫瘍、性線腫瘍などでは外科手術が必要となる


※1 Gn-RHアゴニスト:LH-RH製剤であり、Gn-RH作動薬のこと

これは、4週間に1回の注射や鼻からの吸入するものがあり、ゴナドトロピンの分泌を抑制して性ホルモンの合成・分泌を抑制をする

副作用には注射による赤み、腫れ、硬くなるなどのほか、投与から1、2週間以内に初経を認めることがある


※2 過誤腫:組織を構成している細胞の局所的な奇形や過形成による良性腫瘍のこと


思春期早発症と鑑別が必要な疾患類について


思春期早発の症状がどのようなもので起こっているのかを順次調べていく必要がある


これには、病歴の聴取などが重要となる


Tanner分類※による二次性徴の確認(身体診察)、成長曲線の作成(成長率の増加という身長促進現象の有無を確認する)、治療が必要かどうかの判断(病的なものかどうか)


治療が必要と判断すれば、その原因を検索するためスクリーニング検査と精密検査を行うこと


Tanner分類(タナー段階):思春期における第二次性徴の成熟を評価する尺度のこと

これは男女とも1度から5度の5段階で評価をする

→以下、<参考>を参照



<様々な原疾患>


・ホルモン分泌性卵巣腫瘍

・甲状腺機能亢進症

・副腎腫瘍

・hCG産生腫瘍

・機能性卵胞嚢腫

・脳腫瘍

など


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McCune-Albright症候群(マッキューン・オルブライト)


McCune-Albright症候群とは、Gタンパク結合受容体(GPCR)で細胞内情報伝達に関わるGsαの活性型の変異で発生する疾患

変異は胎生期の体細胞変異で起こる

→このため、内分泌腺の機能亢進も起こり得るため甲状腺機能亢進症副甲状腺機能亢進症巨人症クッシング症候群などもみられることある


<三主徴>


・皮膚症状:Cafe ou lait斑(カフェ・オ・レ)

・骨症状:多発性線維性骨異形成症

・内分泌:思春期早発症など


Gsタンパクの異常な亢進により、卵巣における性ホルモンに影響することで思春期早発症、甲状腺では甲状腺機能亢進症、視床下部ではGHにより末端肥大症を引き起こすこととなる


ゴナドトロピン非依存性思春期早発症がみられる


・骨折や骨格の変形などの骨病変がみれる(線維性骨異形成症

→身体の左右差(顔など)、易骨折性

→顔面骨の変形で頭痛や聴神経の圧迫による難聴などを呈することあり


Cafe ou lait斑(カフェ・オ・レ)が認められる


(兆候は全て揃わないこともある)


・0歳〜10歳で発症する稀な疾患であり、女児に多いとされる

→女子では卵巣の自律機能亢進が原因と考えられており、これによりE2高値を呈する

LH、FSHの分泌は抑制されるため低値を示す


・兆候は出生時にはっきりとわかる場合と、次第に症状が出てくる場合がある

カフェオレ斑は出生時から認められる


<検査>


骨病変による骨折や骨格変形の確認

胸部X線検査など


<治療>


皮膚カフェオレ斑:皮膚科の治療は困難とされる


線維性骨異形成症:骨痛に対するビスホスホネート製剤投与


内分泌腺の機能亢進症外科的治療が必要なことが多い


Peutz-Jeghers症候群(ポイツ・ジェガース)


ポイツ・ジェガース症候群は、食道を除いた全消化管の過誤腫性ポリポーシス口唇、口腔、指尖部を中心とする皮膚・粘膜の色素斑がみられる常染色体優性遺伝性疾患である


・第19番染色体短腕上(19p13.3)に存在するLKB1/STK11遺伝子の突然変異が病因と考えられているが、発症機序は不明


・皮膚粘膜色素沈着


・消化管ポリープの増大


・慢性出血により貧血の所見、便潜血陽性を呈する


・性線腫瘍の合併(まれ)


<検査>


上部消化管内視鏡検査大腸内視鏡検査小腸内視鏡検査により多発性ポリープの確認


消化管ポリポーシスのある、他の疾患との鑑別に注意が必要となる

→家族性腺腫性ポリポーシス、若年性ポリポーシス、カウデン症候群など


<治療>


根治療法はまだない

内視鏡的ポリープ切除術で、腸重積などの発症を回避する


思春期遅発症について


思春期遅発症とは、思春期が正常よりも遅れる疾患であるが、骨年齢は遅延することが多い疾患である


・低身長などの所見


<女児において>


・13歳までに乳房発達がない場合

・14歳までに恥毛がみられない場合

・乳房の成長開始と初潮との間で5年以上の期間の空きがある場合

・16歳までに月経が起こらない場合

など


左手手根骨のX線検査

→骨年齢の評価のため


指の長さを調べるのは、鑑別には有用とは言えないため注意


内分泌系はまだ続きます


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    • この記事を書いた人

    Nitroso.Ph

    自分が学んで知った事が、人の役に立つならいいかなと思いサイトを開設 ・食べる事が好きで、そのために運動をはじめました ・趣味はジム通い、ドライブ、ドラム、プログラミングなど様々あります

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