精神科編

精神科疾患編⑦ 精神医療全般と精神科領域の検査・治療について

精神科



注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
そのため、
これを全て把握しても人体については全て理解し、学べたということにはなりませんのでご注意ください。
医学は未知の部分も含め、既知の部分であってもかなりの量です。ここは忘れないようにしてご利用ください。)


精神保健福祉法における精神科病院の入院形態について


入院の形態は5つあり、患者本人に精神疾患の自覚がなくとも家族の同意を得られれば入院させることもできる

そのような入院形態の違いによる分類についても把握しておくことが必要です


精神保健指定医の診察に基づいて診断する必要がある(任意入院は別)


・精神保健福祉法とは「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」のことをいう


・医療保護入院、応急入院、任意入院は精神科病院管理者に権限がある


・緊急措置入院、措置入院は都道府県知事に権限がある


入院形態内容
医療保護入院患者本人の同意が得られない状態

家族の同意が必要
応急入院本人・家族の同意が得られない状態(状況)で、急を要する時に適応となる

72時間を超えることはできない

入院期間に制限あり※
任意入院患者本人の同意が得られている場合に適応となる

書面での意思確認が必要
緊急措置入院自傷・他害の危険性が著しく、急を要する場合に適応となる

72時間を超えることはできない

入院期間に制限あり※
措置入院自傷・他害の危険性がある場合に適応となる

2名以上の精神保健指定医の診察が必要
精神科病院の入院形態について


※ 入院期間が過ぎても別の入院形態に切り替えて入院継続することは多くある


不登校になる様々な要因


ここでは厳密なまとめとはならないが、大まかに考えられることを挙げていくこととする


不登校の原因はそれこそ様々あり、不定愁訴も多く見られたりする

原因には、うつ病や統合失調症などの精神疾患だけでなく、Asperger(アスペルガー)症候群、Tourette(トゥレット)症候群などから周りとのコミュニケーションが困難になりいじめがおこるなども考えられる

また、学習障害、自我同一性形成障害、性同一性障害、緊張型頭痛、社交不安障害、発達障害など鑑別には広く考えなければいけない


特に大学生での引きこもりでは統合失調症や社交不安障害(対人恐怖症)なども鑑別に加えることが必要となる(スチューデント・アパシー、学生の無気力症


スチューデント・アパシーについて


学校の授業や試験などはでないが、趣味の集まりなどには参加することができる引きこもりであるが、背景には完璧主義的な性格があり、試験や就活で失敗することを恐れることで、自分が試される状況を回避しようとすることで引きこもりが起きていると考えられる

自分から受診することはないため、まず、この回避をしようとしている状況について明らかとしていくこと精神療法的介入に大事なことである


精神科領域の検査について


通常、検査は心理士が行い、医師は結果報告を受けるのみということが多いが、実際の検査については把握しておくことは必要なことである


Mini-Mental State Examination(MMSE):患者に質問をし、見当識や即時記憶などを含む知的機能全般を評価するための知能検査

→主に、認知症のスクリーニングに用いられる(検査は10分ほどと簡便である)(30点満点のうち、23点以下で障害疑いとなる)

→これは口頭質問に答えたり、文章を書くなどの動作をする検査となっている


改訂長谷川式簡易知的機能評価スケール(HDS-R):見当識、記銘・想起、計算、言語の流暢性の設問から、総合の合計点をみる。合計点が30点であり、20点以下を認知症疑いと判定する検査

→先のMMSEとの評価項目の大部分は重複している


対語記銘力検査:有関係対語と無関係対語を記銘させて、後で想起させる検査であり、記銘力をみる検査の一つ


Wechsler(ウェクスラー)成人知能検査(WAIS-Ⅲ)16歳以上の成人に用いられる知能検査(自閉症、広汎性発達障害などを検出するために用いる)であり、知能指数の分布が平均100、標準偏差15となるように作成されている

→Wechsler児童用知能検査(WISC-Ⅳ)は対象年齢が5歳〜15歳となっている

→網羅的な知能検査であり、言語性検査と動作性検査からなる


ウィスコンシンカードソーティングテスト(WCST):色や形、数がぞれぞれ4種類ずつあるカードを用いて被験者に1枚ずつ分類させる検査となっている

→被験者は分類基準を知らされずに分類結果の正解や不正解を聞かされ、その結果から分類基準を推定する

脳卒中や頭部外傷などによる前頭葉機能障害(高次脳機能障害)を把握するために用いる

(パソコンで行う方法もある)


<自記式の検査>


状態特性不安検査STAI状態不安(今現在どの程度の不安があるか)と、特性不安(通常どの程度の不安を感じているか)に関し、それぞれ20項目記載されている質問紙に患者がどの程度当てはまるのかを4段階で答えていく検査で、不安状態を測定する


田中・Binet式知能検査2歳以上の乳幼児から成人までが対象の知能検査


Minnesota多面人格検査(MMPI):550項目の質問があり、「はい」か「いいえ」で答えさせて人格特性をとらえるもので、質問紙法による人格検査



気分プロフィール検査(POMS、ポムス):POMS2と改訂されている。これは、成人用(18歳以上)、青少年用(13〜17歳)、全項目版、短縮版の4つの質問紙に分けられていて、7つの尺度(「怒り〜敵意」、「混乱〜当惑」、「抑うつ〜落ち込み」、「疲労〜無気力」、「緊張〜不安」、「活気〜活力」、「友好」)と、ネガティブな気分状態を総合的に表す「TMD得点」から所定の時間枠における気分状態を評価する


矢田部-Guiford(ギルフォード)性格テスト(Y-Gテスト):5系統(A〜E)が各3種類ある計15の型のうちいずれかに該当するのかを判定し、被験者の性格傾向を掴む検査


Beckのうつ病自己評価尺度(BDI)抑うつの程度を客観的に測るための自己評価表となっている

質問は21項目あり、各項目は4段階で答えていくことでうつ病の程度を測ることができる

→同じ自記式で似たものに、Zungsのうつ病自己評価尺度SDSSelf-rating Depression Scaleもある


文章完成テスト(SCT):文章完成という手法を使った投影法の一つであり、文章完成法のうちの一つ。未完の文章の続きを書いてもらい、その文章の構成や書き方(筆跡、行間なども見る)などから知能、性格、意欲、興味、関心、心の安定性、人生観、生活史など総合的な人間像を把握する検査


<口頭式(質問式)の検査>


津守・稲毛式発達検査:母親(主な養育者)に乳幼児の発達状況を尋ねて、その結果から精神発達の診断をするもので、0歳〜7歳までを対象とする検査


Rorschachテスト(ロールシャッハ):投影法という内面の性格を知る性格検査で、1組10枚の図版(インクのシミ状の絵)をみて何を思い浮かべるのかを被験者のイメージを話させることでパーソナリティを知る方法

神経性食思不振症の補助的診断にも有用


簡易精神症状評価尺度(BPRS):18項目の症状から、その重症度を7段階で評価し、精神症状の重症度を評価する検査統合失調症の定量的測定ができる


Hamilton(ハミルトン)うつ病評価尺度(HRS-D、HAM-D):症状の程度を縦軸、症状の頻度を横軸にとり、17項目または21項目の症状に対して、3〜5段階でうつ病の程度を評価する検査


<心理検査法>


知能検査 ┳ 田中・Binet式
     ┗ WAIS
    (16歳以下はWISC)


性格検査
┣ 投影法 ┳ロールシャッハテスト
┃     ┣絵画統覚テスト(TAT)
┃     ┣ 文章完成法(SCT)
┃     ┗ 描画テスト

┣ 質問紙法 ┳ Y-Gテスト
┃      ┣ MMPI
┃      ┗ CMI※


┗ 精神作業能力検査
  ┣内田・クレペリン連続加算テスト
  ┗Benderゲシュタルトテスト


※ CMI:コーネルメディカルインデックス


心理学的検査神経心理学的検査スクリーニング検査症状評価尺度
WAIS-Ⅲ、WAIS-Ⅳ改訂長谷川式簡易知的機能評価スケール(HDS-R)ベックのうつ病自己評価尺度簡易精神症状評価尺度(BPRS)
Minnesota(ミネソタ)多面人格検査MMSEハミルトンうつ病評価尺度(HDR-S)
Rorschachテスト対語記銘力検査
標準失語症検査(SLTA)
心理・精神機能検査の分類について


統合失調症に用いられる検査


・簡易精神症状評価尺度(BPRS)

・Minnesota多面人格検査(MMPI)

・Rorschachテストなどの投影法

・ウィスコンシンカードソーティングテスト(WCST)

・陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)※1

・統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)※2

・薬原生錐体外路症状評価尺度(DIEPSS)※3

・バウムテスト※4


※1 PANSS:BPRSの18項目を含む30項目からなっており、陽性・陰性症状や総合精神病理の評価をする


※2 BACS:統合失調症による注意力、記憶力、推敲機能などの認知機能障害を簡便に評価することができる


※3 DIEPSS:抗精神病薬を使用している患者の錐体外路症状の重症度を評価するもの


※4 バウムテスト:木の描画から心理状態を把握する検査であり、統合失調症でもしばしば用いられる検査


精神科領域の治療法について


薬物治療においては、既出であり各ページのリンク先を確認していただければと思います


統合失調症の薬物療法について

抑うつの薬物療法について

双極性障害の薬物療法について

ナルコレプシーの薬物療法について

パニック障害の薬物療法について


ベンゾジアゼピン系について(BZP)


ベンゾジアゼピン系治療薬は覚醒刺激に対して抑制的に働くγ-アミノ酪酸(GABA)の神経受容体に作用し、抗不安作用、筋弛緩、抗けいれん、睡眠導入といった作用をする


・BZP系の副作用(有害事象)には、離脱症状、前向性健忘、反跳性不眠、持ち越し効果、転倒、奇異反応などが主にある


前向性健忘:寝ている時、途中で目が覚めて作業(トイレに行く、仕事をするなど)をしたことは記憶にないことをいう


反跳性不眠:BZP系を服用していて寝れていたが、服薬を急に中止するとその反動で不眠症状を呈してしまうことをいう

→そのため、長期服用している患者では、徐々に減量をする必要がある(隔日投与や数週間おきに減量など)


持ち越し効果(ハングオーバー):睡眠作用が効きすぎて、前の晩に飲んだものが次の日の朝にまで眠気を残してしまうことをいう(眠気だけではなく、ふらつき、だるさ、集中力の低下なども含む)

→そのため、服用中は「車の運転などの機械操作は控えること」となっている


抗精神病薬の副作用について(錐体外路症状)


・抗精神病薬の副作用の一つに錐体外路症状があるが、これは、パーキンソン病様の症状を呈する

パーキンソニズム、アカシジア、ジスキネジア、ジストニアなどが主なものとなっている


<治療>


錐体外路症状に対する治療には、抗パーキンソン病薬を用いる


・レボドパ+カルビドパ

・セレギリン(覚せい剤原料)

・ゾニサミド

・アマンタジン

・タリペキソール、プラミペキソール

・ロピニロール

・トリヘキシフェニジル

・ドロキシドパ


など様々あり、主な症状に合わせて選択使用される


抗パーキンソン病薬の副作用には、幻覚やせん妄などが挙げられる


電気けいれん療法について(ECT)


電気けいれん療法は、両側のこめかみ部分に刺激電極を当て、通電させて脳内に発作性放電して精神症状を軽減させる治療法である


・重症のうつ病(希死念慮が強い、低栄養状態など)や統合失調症などで迅速かつ確実な改善が必要な場合や、薬物利用に抵抗性・不耐性の場合などで考慮する


静脈麻酔薬と筋弛緩薬を用いた修正型ECTが一般的となっている

→麻酔科医の協力が必要


・治療前には、抗てんかん薬やBZP系、炭酸リチウムは中止すること

→抗てんかん薬、ベンゾジアゼピン系薬(抗不安薬、睡眠薬)はけいれんの閾値を上昇させるためであり、炭酸リチウムはせん妄や発作の遷延化をきたすため


・ECTの適応に年齢は関係ない

→妄想を伴う高齢者のうつ病で用いられることがしばしばある


・ECTの副作用には、頻脈、血圧上昇、認知機能障害(健忘など)、頭痛などがある


・治療には、患者やその家族・保護者の同意が必要であり、患者本人には可能な限り同意を得られるよう努める必要がある


ECTの相対的禁忌には、頭蓋内病変がみられること、があり、この場合は脳神経外科医の協力が必要となることがある


悪性症候群について


悪性症候群は主に抗精神病薬による重大な副作用の一つであり、服用開始時や増量時などで起こりやすいとされる


・症状は、前駆症状がなく急激な発熱、発汗、軽度の意識障害、血圧異常、頻脈のほか錐体外路障害による強い筋強剛などがみられる


<血液検査>


低アルブミン血症白血球増多


高カリウム血症、尿素窒素(BUN)、クレアチニンの上昇

→腎機能障害、腎機能低下が考えられる


AST・ALD・LDの上昇

→筋肉組織の破壊による上昇を考慮


CKの顕著な上昇

→横紋筋融解症の疑い


潜血陽性

→赤血球の沈渣が少なければミオグロビン尿の疑い


<診断基準>


(1)大症状

①発熱 ②筋強剛 ③CKの上昇


(2)小症状

①頻脈 ②血圧の異常 ③頻呼吸 ④意識変容 ⑤発汗 ⑥白血球増多


確定診断には、大症状で3つ、または大症状で2つかつ小症状で4つ呈していること


<治療>


初期治療:横紋筋融解症による腎不全を治療する必要があるため、大量輸液の投与をすること


・筋強剛により、筋肉組織が破壊されることで発熱しているため、通常の解熱剤は効果が得られない

→そのため、全身の体表冷却を行う必要がある


・横紋筋の保護のため、ダントロレンの投与




・腎機能障害が進むようであれば透析も必要



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    • この記事を書いた人

    Nitroso.Ph

    自分が学んで知った事が、人の役に立つならいいかなと思いサイトを開設 ・食べる事が好きで、そのために運動をはじめました

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