医療・薬について(医療従事者向け)

薬剤師でも医学で+αの知識が欲しいです。何を学べばいいですか?(医学知識+αシリーズ:(1)消化器編①)

医学を学ぶ


医師以外の医療従事者は、 医師がどのように考えて処方・治療をしているのかという視点を理解することが大事


A:(前説です。読み飛ばしてもOKです)

思うに、医師がどのように考えて処方しているのかという視点が大事だと思いますので、やはり医学の掘り下げが必要だと思います。


そこで、こういった機能形態学や医学のより深い知識があればさらによく理解できるのではないかと思いますので、箇条書きでまとめていきます。



これは今後シリーズ化していきます。



このシリーズのコンセプトは、将来いつになるかはわからないですが、外国のように処方提案ができる薬剤師をめざすには、このくらいは押さえておきたいというレベルに持っていきたいという思いがあります。



そのため、基礎は知っているものとして進めていきます



 このシリーズではすべて覚えるというよりは、こういうのがあるんだと知っておくだけでも良いかと思います。


また、辞書的な使い方でも良いかと思います。
私も忘れたら読めるようにしておくためにまとめておきます。



もし、これ以上何を学んだらいいんだろうと迷ったなら、読んでみてください。


 内容は濃いので、少しずつ覚えていきましょう。これは医師国家試験に準拠しています。


このため、医学生にとっても有益になれればと思います。



薬剤師視点では、大学ではここまではしっかり深く学んでなかっただろうな(実は私だけ??)という範囲を狙ってまとめてますので、知らないことが多いかもしれませんが、これを知ることで力をつけれると思いますので着いてきてみてください


<書き方として>

事実としてこうあるから → イメージとしてこう考える、という考えの流れでまとめますので、覚えやすい作りにしたいと思います。(自分が暗記力ないのでこうしないといけない、、、)



注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
そのため、
これを全て把握しても人体については全て理解し、学べたということにはなりませんのでご注意ください。
医学は未知の部分も含め、既知の部分であってもかなりの量です。ここは忘れないようにしてご利用ください。)

ようやく中身に入ります

それでは、まず第1回目として消化器系でいきます。


医学知識+αシリーズ:消化器編① 総合


消化器総論 解剖学的内容


食道や腹膜腔より下の直腸には漿膜が無く外膜で覆われている


このため、ここで生じた周りの臓器に浸潤しやすい


早期癌の定義として、食道癌は胃癌、大腸癌よりも厳しい基準となっている。(別項目で解説)


口から食道まで肛門縁から歯状線までの間(肛門管)は重層扁平上皮である。



消化吸収や分泌に関わる胃から直腸まで円柱上皮である。



ちなみに、Barrett(バレット食道)では重層扁平上皮が円柱上皮に置換されている。GERD(胃食道逆流症)の合併症 → Barrett腺癌のリスク

消化器②に詳細あり)



→ イメージとしては消化管の出入り口は厚い上皮(重層〜〜)で覆われているため丈夫さを保っているんだと思います。


後腹膜に固定されていないのは、胃、横行結腸、S状結腸があり、軸捻転症を生じることがある器官である。


(解剖の絵を見るとイメージはつきますが、曲がったり、ダラーっと垂れている消化器官ですね、確かに固定されてなさそうな感じです。)



→ しかし、動きには自由度があるため、人工肛門造設には適している。


早期胃がんとは


粘膜下層にとどまっているもの進行胃がん固有筋層以下に浸潤したもの


表面から順に


粘膜層(M)、粘膜筋板(MM)、粘膜下層(SM)、固有筋層(MP)、漿膜下層(SS)、漿膜(S)となっている。


癌は病理組織から(紫に染色した写真のやつです)深達度診断ができることが重要で、そこから治療方針を策定し、予後の推測ができる。


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高ガストリン血症について


PPIにより胃酸は抑えられるが、それによりガストリンの分泌は亢進する。

→ 体は胃酸を出す方向に動く(フィードバック機構の考えですね)



このため、長期投与では高ガストリン血症の副作用の可能性も考える必要がある。



ちなみに、知識を繋げるために直接関係は無いが、高ガストリン血症で胃酸過多といえばZollingeer-Ellison症候群MEN Ⅰ型が多い)がありましたね。



多発性内分泌腫瘍症1型(MEN 1) - 10. 内分泌疾患と代謝性疾患 - MSDマニュアル プロフェッショナル版 (msdmanuals.com))




そして、ガストリンは腎臓で代謝されるもののため、腎不全でも高ガストリン血症が起こり得ます。



胃壁細胞障害では悪性貧血を起こすが、これも二次的に高ガストリン血症を引き起こす。



更に、副甲状腺機能亢進症ではCa2+の上昇となり、これがG細胞を刺激することで高ガストリン血症を引き起こします。



ただ、慢性膵炎ではセクレチンが多くなるため、ガストリンを抑制し低下します。



また、PPIでは胃酸の減少で、殺菌作用が低下し感染症リスクの上昇Ca,Mgの栄養素の吸収障害ガストリンの上昇催腫瘍性という可能性も考慮する必要が出てくる。



→ これにより、高齢者ではCa,Mgのミネラル不足から来る足の攣り症状にも気をつけたいところ。


消化管のpHについて


胃酸pH=1で強酸性、十二指腸になるとpH=8.5の膵液と混ざることでpH=6.5~7となる。



下部へいくほどアルカリ性となる。


栄養の吸収と関係する消化管部位について


消化管部位栄養の吸収されるもの
回腸末端VB12、胆汁酸
十二指腸から空腸
小腸アミノ酸
膵臓(膵酵素で吸収されやすくしている臓器)脂肪
栄養の吸収と関係する消化管部位について


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吸収不良症候群で起こりうる症状について


吸収不良症候群とは、腸管からのあらゆる栄養素(糖質、タンパク質、脂質、ビタミン類、ミネラル、水分、電解質等)が吸収不良となることである。

このため、様々な症状を呈する。具体的に起こりうる症状は以下が挙げられます。


起こりうる症状原因
浮腫低アルブミン血症により水分貯留するため
体重減少※低栄養のため、一般的には体重も比例して落ちる
貧血鉄分、VB12の吸収不良で造血機能が低下するため
下痢小腸で吸収されない溶質が大腸に達することで、浸透圧が上昇することで下痢症状をきたす
(一般的に便秘の頻度は低いといえる)
腹部膨満感上記同様、吸収されず溶質が結腸に到達することで、管腔内の水分が多くなり症状を呈する。
吸収不良症候群で起こりうる症状について


低アルブミン血症が顕著であれば、浮腫である貯留水分量が多く、体重が増えることもあるため、念頭においておくこと。


肛門の構造について


肛門管 = 内肛門括約筋 + 肛門挙筋(恥骨直腸筋、恥骨尾骨筋、腸骨尾骨筋)外肛門括約筋からなる



内肛門括約筋:自律神経支配の不随意平滑筋



肛門挙筋横紋筋であり、陰部神経支配の随意筋



外肛門括約筋横紋筋であり、体性神経支配で随意筋


(みなまでは言いませんが(笑)、イメージは排便時を考えてみてくださいね、、、)


腹痛の鑑別について


腹痛鑑別:内臓痛、体性痛、関連痛がある。



内臓痛腸管攣縮拡張や伸展によっておこる周期的鈍痛軽い痛みだが、体の中心線(心窩部、臍部、下腹部中央)に感じる事が多い。



体性痛:漿膜(腸管外膜)を越えて腸間膜、腹膜などに炎症が及んだときにおこる、鋭い持続性疼痛。限局的な痛み。



関連痛内臓からの痛みが同じ脊髄分節の皮膚領域に放散したもの、皮膚の痛み知覚過敏など。


消化器系の解剖について


・大腿部の脈管、神経について


内側から、大腿静脈(Vein)大腿動脈(Artery)大腿神経(Nerve)の順に並んでいる。これを頭文字を取ってVANと表現される。


鼠径靭帯から下をみて、大腿動脈は太い血管、大腿静脈は2分岐している。



十二指腸球部胃十二指腸間膜で支持されており、可動性がある



食道気管の背側を走行している



内鼠径輪下腹壁動静脈外側に位置している



上部直腸(Ra)第2仙椎下縁から腹膜翻転部までをいう


消化器症状の関連疾患について


疾患消化器症状
甲状腺機能亢進症下痢症状
甲状腺機能低下症便秘症状
ノロウイルス感染症急性胃腸炎、悪心、嘔吐、下痢
上部消化管出血黒色便(血液変性による)
下部消化管出血血便(鮮血便)
消化管閉塞症腹痛、疝痛(腸内容物が停滞し、腸管が拡張することで腸管壁が過伸展するため)
潰瘍性大腸炎粘血便(炎症粘膜から血液がにじむように出ることで粘液が混ざるため)
十二指腸潰瘍心窩部痛
胆石症右肩から右肩甲骨(右背部)の放散痛
尿管結石腰背部から外陰部にかけての放散痛
Mallory-Weiss症候群(マロリーワイス)吐血、下血
急性虫垂炎内臓痛である心窩部痛や臍周囲の腹痛がみられ、徐々に右下腹部痛と移動する痛み
消化器症状の関連疾患について


低蛋白血症をきたす疾患について


低蛋白血症をきたす疾患とは、栄養吸収の不良タンパク合成能の低下タンパクの体外消失代謝の亢進などが原因で引き起こされる


低蛋白血症をきたす疾患、状態原因
肝硬変、無アルブミン血症蛋白合成能の低下による
Crohn病腸管炎症により吸収障害蛋白漏出がおこる

また、炎症で代謝亢進などもおこる
Menetrier症候群(メネトリエ)胃体部の皺襞(すうへき:しわ、ひだのこと)が肥厚し、巨大な皺襞を示すもの

固有胃腺の萎縮胃酸分泌の低下し、胃から蛋白漏出がおこる
吸収不良症候群、飢餓状態蛋白の摂取不足
妊娠血液の希釈によるもの
胸水や腹水蛋白の体腔内への移行
ネフローゼ症候群
蛋白漏出性胃腸症
熱傷
失血
など
蛋白の体外への移行
炎症性疾患
悪性腫瘍
甲状腺機能亢進症
など
蛋白の異化亢進
低蛋白血症をきたす疾患について


蛋白漏出性胃腸症について


蛋白漏出性胃腸症とは、消化管粘膜から管腔に蛋白が漏出するため、低蛋白血症となる。

そのため、症状は浮腫や腹水、胸水がある。また、この他テタニー※や消化器症状も呈する。

これはα1-アンチトリプシン消化管クリアランス試験糞便中の蛋白排泄量増加で確認できる。


テタニー不随意に手足などの筋肉が痙攣を起こす状態をいう。


原因
粘膜の蛋白透過性亢進・腸管内細菌増殖
・SLE※1
・アミロイドーシス※2
・Menetrier病
Budd-Chiari症候群
Cronkhite-Canada症候群
潰瘍、炎症疾患・非特異的小腸潰瘍
・癌
・偽膜性腸炎などの炎症性腸疾患
消化管うっ血

リンパ流うっ滞
・収縮性心膜炎
・うっ血性心不全
肝硬変
・腸リンパ管拡張症※3
・悪性リンパ腫
蛋白漏出性胃腸症の原因について


※1 SLE(指定難病49):全身性エリテマトーデスという。DNA-抗DNA抗体などの免疫複合体の組織沈着により起こる全身性炎症性病変を特徴とする自己免疫疾患のことである。


治療はNSAIDsやステロイド、また、各症状に合わせて降圧剤など必要があれば投与となる。



※2 アミロイドーシス:アミロイドと呼ばれるナイロンに似た線維状の異常蛋白質が全身の様々な臓器に沈着し、機能障害をおこす疾患のこと。全身性と限局性があります。



※3 腸リンパ管拡張症:様々な要因により、小腸粘膜に伸びているリンパ管が閉塞を起こすことで栄養の吸収障害が起こっている状態である。

下痢、下肢の浮腫が主症状であり、吐き気、嘔吐、脂肪便などがある。また、小児では発達遅滞もおこる。



治療は、原因治療、食事療法、サプリメントなどで改善可能である。

具体的には、低脂肪、高タンパク食をとり、リンパ管を通過せず直接血液中に吸収されるカルシウム、ビタミン、一部の中性脂肪(中鎖脂肪酸トリグリセリド)などのサプリメントでもよい。



<参考文献>

メディックメディア Question Bank vol.1 消化器

ビジュアルブック 消化器疾患

今回はここまでとなります。次回も続きをまとめていきます。次へ進む→


注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
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    • この記事を書いた人

    Nitroso.Ph

    自分が学んで知った事が、人の役に立つならいいかなと思いサイトを開設 ・食べる事が好きで、そのために運動をはじめました ・趣味はジム通い、ドライブ、ドラム、プログラミングなど様々あります

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