肝疾患編

肝疾患編② 肝障害、肝硬変、肝炎について(1)、肝性脳症について

肝臓

今回から各論となります


まずは肝障害、肝硬変、肝炎についてをみていきますが、量が多いため3回に分けてまとめていきます


注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
そのため、
これを全て把握しても人体については全て理解し、学べたということにはなりませんのでご注意ください。
医学は未知の部分も含め、既知の部分であってもかなりの量です。ここは忘れないようにしてご利用ください。)


肝機能について


ここで改めて肝機能についてですが


・肝臓では、タンパク質、脂質の合成が行われる


・代謝、解毒といった老廃物の処理を行う


・骨髄での血球を産生する


・糖代謝


など多くの機能がある


リンク先

肝機能の検査値について


検査項目結果の見方
血小板数脾機能の亢進によって汎血球減少をきたし、血小板数は減る

出血傾向となる

脾腫で血小板が脾臓への停滞、破壊がみられ汎血球減少となる。
白血球数肝硬変進行例では白血球数は低下する

易感染性となる

脾腫で白血球が脾臓への停滞、破壊がみられ汎血球減少となる。
食後血糖値 肝硬変進行例では糖代謝能が悪化することで、食後高血糖となる
プロトロンビン時間(PT)半減期が短いため、急性肝障害重症度判定に有用

PTが40%以下では重症型急性肝障害と考えられる
この場合、24時間後に低下が見られる
総コレステロール値肝硬変進行例では、肝臓でのコレステロール合成能が低下することで、総コレステロール値は低下する
ICG15分停滞率・肝機能増悪により停滞率は上昇する

・肝癌の手術適応に利用される。

肝血流量:肝細胞のICG摂取能力:肝から胆汁への排泄能力 = 3:1:1 で反映される
血清アルブミン値肝機能障害により、アルブミン合成能低下がみられ血清アルブミン値は低下する

→低アルブミン血症により浮腫、腹水がおこる

半減期は20日ほどであり、急性肝障害の判定には利用しづらい
ヘパプラスチンテスト値肝機能障害により、ヘパプラスチンテスト値は低下する
Fischer比(分岐鎖アミノ酸 / 芳香族アミノ酸)肝硬変の進行と必ず一致するわけではないが、肝不全が重症であればあるほどFischer比は低い傾向となる
血清AST/ALT比慢性肝炎:9割がALT優位となる

肝硬変:9割がAST優位となる
ALT(血清トランスアミナーゼ)肝細胞障害の指標の一つ
ALP胆汁うっ滞の指標となる
γ-グロブリン慢性肝疾患による長期的な炎症で上昇する
血清総ビリルビン(T.bil)・数値が高いほど肝障害高度とは考えられるが、重要性としてはPTほどではない。

・肝障害でAST、ALTが最大値となってから1週間後に最大となるため、感度は高いとはいいにくい。
肝機能の検査値について


ASTとALTの評価方法について


急性肝障害等の重症度判定


ASTの半減期はおよそ1日に対し、ALTはおよそ2日ほどである。


このため、肝炎の極期では AST > ALT 回復期では AST < ALT となることが多い。


AST > ALT の状態は、肝炎の重症化しやすい、肝細胞壊死が肝全体に及んで継続していることを示唆していると考えられる。


リンク先

肝硬変でみられる症状について


肝硬変については消化器編③でもまとめてあります。


・肝硬変の初発症状倦怠感、食欲低下、腹部膨満感などみられるが、進行することで肝機能低下、門脈圧亢進に基づいた症状がみられてくる。(上記の表参照


門脈圧亢進とは、腸から肝臓に繋がっている太い静脈である門脈の血圧が上がることをいう。
(また、その分枝の血圧が上がることも含まれる)


病理学的に、高度の線維化を伴う再生結節(偽小葉)びまん性出現が特徴的である。


肝臓は硬く小さくなる。


<視診による所見について>


下腹部の静脈怒張(下腹部が青く血管が浮き出て見える)


これは、側副血行路と考えられる。この腹壁静脈怒張メデューサの頭とも表現される。


臍部の陥凹が不十分(臍のへこみが浅い)


手掌紅斑:両手掌全体の紅斑がみられる。


ばち指


⑤ステロイドの代謝障害により、エストロゲンが増えることで女性化乳房クモ状血管腫などもみられる


その他


脾腫もみられてくる


肝硬変の重要な指標には、主にビリルビン、アルブミン、PT時間の3つがある。


症状原因
黄疸ヘモグロビンが分解されるときに生成されるビリルビンの異化が低下し呈する
・女性化乳房

・毛細血管拡張作用(クモ状血管腫)
ステロイド代謝障害によってエストロゲン分解能が低下し、体内でのエストロゲン作用が増強する
腹水・血清アルブミン値の低下で浸透圧の低下

・門脈圧亢進症
腹壁血管怒張門脈圧亢進によって側副血行路の一つである腹壁静脈の怒張がみられる(メデューサの頭)
尿の濃染直接ビリルビンが増えていることが伺える

直接ビリルビンは水溶性、間接ビリルビンは非水溶性である)
肝硬変でみられる症状について


特発性門脈圧亢進症について


門脈圧亢進症のみであれば、トランスアミナーゼは正常、胆道系酵素(ALP等)は正常であり、また、肝組織のサルコイド結節※もみられない。


脾腫脾機能亢進)や食道胃静脈瘤などがみられることとなる。(肝機能障害の程度は軽度である)


また、腹壁皮下静脈怒張(メデューサの頭)なども認められる。



(※サルコイド結節:サルコイドーシスによる結節(肉芽腫)をいう。)

サルコイドーシスについてはかなり濃い内容の為、リンク先の方が分かりやすいかと思いますのでご紹介いたします。

脾腫であるということは、汎血球減少症をきたすこととなる。


このため、治療として脾摘をすることで、汎血球減少症の改善は見られる



肝生検においては、小円形細胞浸潤を伴わないグリソン鞘の線維性拡大が軽度にみられるのが特徴的である。


これは、慢性肝炎と比べてグリソン鞘への炎症細胞浸潤はほとんどみられない


・日本では、中年女性に多いとされているが、減少傾向ではある。


・特発性といわれるのはもちろん、原因不明ということであり、これは肝硬変像はなく肝外門脈や肝静脈の閉塞、狭窄を認めないのにも関わらず、門脈圧亢進症をきたす疾患である。


門脈圧亢進症の分類について


門脈圧亢進症の分類は、障害部位によって分けられている


その分類は、門脈圧(PVP)閉塞肝静脈圧(WHVP)の測定で鑑別可能である。


<分類>


体の上から肝後性、肝内性、肝前性と分類されている


肝後性下大静脈肝外肝静脈の閉塞


肝内性肝内肝静脈の閉塞では後類洞性類洞の閉塞では類洞性肝内門脈の閉塞では前類洞性とさらに細かく分類される


肝前性門脈本幹脾静脈の閉塞


※この他、下大静脈よりも中枢側では収縮性心膜炎三尖弁疾患などの右心不全によっても門脈圧亢進症は見られる。


分類主要疾患門脈圧(PVP)閉塞感静脈圧(WHVP)
肝後性Budd-Chiari症候群(バッドキアリ)上昇する上昇する
肝内性

・後類洞性

・類洞性
肝硬変上昇する上昇する
肝内性

・前類洞性
・特発性門脈圧亢進症
(Banti症候群:バンチ)

・日本住血吸虫症(虫卵)
上昇する正常
肝前性・先天性門脈形成異常

・門脈血栓症
上昇する正常
門脈圧亢進症の分類について


肝硬変の合併症について(非代償期)


胃・食道静脈瘤:吐血、下血等の消化管出血


肝性脳症:意識障害、異常行動、羽ばたき振戦(アステレキシス)、肝性口臭


検査値については下のページにあります。→こちらからすぐみれます


特発性細菌性腹膜炎(SBP):発熱、腹痛、圧痛、腹膜刺激症状

主に非代償性肝硬変では、肝内網内系の機能低下門脈から大静脈系へのシャント形成白血球数の減少などで易感染性を呈する。


特発性細菌性腹膜炎(SBP)について


特発性細菌性腹膜炎とは、腹腔内臓器の炎症や腸管穿孔、腫瘍などが無い感染性の腹水を有する病態である。


これは、大部分が非代償性肝硬変が多い。(肝硬変腹水のおよそ8~18%ほどでみられる)


・原因として、低アルブミン血症うっ血による腸管浮腫、細菌に対する粘膜防御機構の低下などで腸管から細菌が腹腔内に侵入することで生じる。


起因菌は大腸菌Klebsiella(クレブシエラ)などのグラム陰性桿菌が多い。


・症状は、腹水、発熱、腹痛がありこの3つの所見は重要であり、SBPの可能性を考えること


また、腹膜刺激症状、腹部膨満感などが挙げられる(無症状であることも多い)


検査では腹水穿刺腹水の性状を確認と、細菌培養を行う。


これで腹水中の好中球増加(250/μL以上)(重要所見)、細菌培養細胞診(癌性の否定)などをして診断を行う


迅速試験:尿中白血球エステラーゼ試験紙法など


治療は、敗血症性ショックのおそれがあることから緊急性がある。


治療薬として、広域スペクトラムの抗菌薬を使用する。(第三世代セフェム系等)


予後は早期治療をしないことで不良となる(1年後の死亡率は65%にも上る)


リンク先

脾腫について


肝硬変の合併症の一つとして脾腫がある。


脾腫となることで、血小板の寿命がかなり短くなる。


血小板数<10万/μL


正常であれば血小板の寿命は10日~11日ほどだが


脾腫では1日、2日ほどしか無くなり、血小板輸血を行ったとしても追いつかない。



また、投与のし過ぎでは抗血小板抗体が作られてしまい、血小板寿命はさらに短くなると考えられる。


そのため、血小板輸血についてはむやみには行うべきではない


肝硬変の治療について(代償期)


原因治療としては、慢性肝炎に準じて行うこと。


内服薬では、肝庇護薬のウルソデオキシコール酸グリチルリチン製剤を服用。


食事療法では適切なカロリータンパク摂取が必要となる


・カロリー:25~35kcal/kg/day(60kgでは1日1500~2100kcal)


通常の摂取カロリーについては次の項を参照


・タンパク質:1.0g~1.2g/kg/day(60kgでは1日60gほど)


・その他の栄養素を補給する必要あり


VB12、VKなど


通常の摂取カロリーについて


生活活動強度によって必要摂取カロリー数は異なってくる。

(数値は平均体重から違うことがあるため、参考するものによって多少違ったりします)



年齢別基礎代謝量 × 身体活動レベル



で求められるが、以下の表を参考にすること


栄養素1gあたりのカロリー(kcal/g)
糖質4
タンパク質4
脂質9
基本的な栄養素のカロリーについて


年齢(歳)男性(kcal/day)女性 (kcal/day)
1~2700660
3~5900840
6~7980920
9~111,1401,050
12~141,5201,260
15~171,6101,310
18~291,5201,110
30~491,5301,150
50~691,4001,100
70~1,2901,020
年齢・性別階層別基礎代謝量について


身体活動レベル生活、仕事内容
低い(Ⅰ)(1.5倍)学生や事務職など座位であることが多い職種
ふつう(Ⅱ)(1.75倍)座位中心だが、立ち仕事など移動も伴うことがある

多少のスポーツを行う
高い(Ⅲ)(2倍)重労働などの力仕事が多い

スポーツ選手など
身体活動レベルの区分について



肝硬変の治療について(非代償期)


他の項目でも触れてはいるが、改めてまとめておきます


・浮腫や腹水に対しては塩分摂取制限抗アルドステロン薬ループ系などの利尿剤、腹腔穿刺、アルブミン製剤など


肝性脳症には低タンパク食ラクツロースなどの二糖類、BCAA製剤難吸収性抗菌薬の経口投与


→ ラクツロース50mL + 微温湯50mL などの浣腸



特発性細菌性腹膜炎(SBP)には抗生物質であるセフォタキシムやシプロフロキサシン等


食道・胃静脈瘤には内視鏡的治療EISやEVL


・最終的には肝移植となる。(日本では生体肝移植が多い)


肝予備能の評価について


肝予備能の評価とは、肝合成能排泄能の機能の指標になる。


アルブミン:肝合成能低下ではアルブミンが低下することから、肝予備能の指標として有用である。


総ビリルビン:肝排泄能低下では血清総ビリルビン値は上昇し、これも 肝予備能の指標として有用である。


・肝予備能をみるものとしてはChild-Pugh分類(チャイルドピュー)がある。


これは、肝硬変の重症度評価に用いるが、肝合成能、排泄能などが指標となっており、項目は肝性脳症、腹水、ビリルビン、アルブミン、プロトロンビン時間の5項目となっている。


この合計点数によってグレード(3段階)が決まり、治療方針の決定予後である生存期間の推測も可能となっている。


また、食道・胃静脈瘤の治療方針決定にも用いられる。


リンク先

Child-Pugh分類について


項目a.1点b.2点c.3点
脳症なし軽度昏睡(Ⅰ、Ⅱ)時々昏睡あり(Ⅲ以上)
腹水なし少量(1~3L)中等量(3L以上)
血清ビリルビン値
(mg/dL)
2.0未満2.0~3.03.0を超える
血清アルブミン値
(g/dL)
3.5を超える2.8から3.52.8未満
プロトロンビン活性値
(%)
70を超える40~7040未満
Child-Pugh分類について


この合計値によってグレードが以下のように決まる


aが1点、bが2点、cが3点となり、その合計点で以下の通りの分類となる。


グレード点数評価
A(軽度)5~6点代償性肝硬変
B(中等度)7~9点 非代償性肝硬変
C(高度)10~15点 非代償性肝硬変
Child-Pugh分類のグレードについて


グレードA:合併症状がないものを代償性肝硬変という


グレードB:軽度の合併症症状がみられている


グレードC:重度であり、肝機能の維持が困難な状態。様々な合併症症状(黄疸、腹水、肝性脳症など)があらわれてくる


<補足>

肝障害度評価には『肝癌取扱い規約』の分類があるが

これはChild-Pugh分類における肝性脳症項目の代わりに、ICG R15(%)となっており、これは実用的であることからこちらの利用が重要視されている。



リンク先

プロトロンビンについて


・プロトロンビンは肝臓で合成されるもので、血液凝固因子活性の測定に用いられる。


・主に関与する因子はⅡ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子であり、rapid turnover protein といわれ、活性測定に有用。


(有名なゴロでは、「肉納豆(Ⅱ、Ⅸ、Ⅶ、Ⅹ)」ってのありましたね、、)


・特に第Ⅶ因子半減期が短く、およそ3~5時間となっている。(他は1~3日ほど)


慢性肝障害について


慢性的な肝障害では皮疹などの症状がみられてくる


場所は頚部、前胸部、両上腕部、両肩など様々である


皮疹を圧迫することで消退する。これは、紅斑、毛細血管拡張を呈していることを示唆する

(デルマドロームという※)


デルマドローム皮膚以外の臓器疾患が由来だが、皮膚症状を呈するもののこと。


このため、この兆候が見られたら腹部超音波検査を行う


慢性肝障害では、女性ホルモンであるエストロゲンが肝臓で代謝、分解がされないことで、体内に蓄積する。


そのため、エストロゲン作用の一つである毛細血管拡張作用によってクモ状血管腫手掌紅斑※がみられるようになる。


手掌紅斑:両手掌にみられるびまん性の紅斑であり、肝疾患妊娠の他、甲状腺機能亢進症などでもみられる


クモ状血管腫妊娠時のエストロゲン上昇でもみられるため、正常な反応であることもある。


そして、糖尿病に伴う皮膚病変(デルマドローム)として糖尿病壊疽、Dupuytren拘縮(デュピュイトラン)、糖尿病性リポイド類壊死症、前頸骨部色素斑などもある。


→ 細かくは糖尿病の項目で解説したいと思います。


ちなみに、肝硬変では、循環血漿量が低下するため、腎血流量も低下アルドステロンの分泌が促されるという所見がある。


注)アルドステロンであってもエストロゲンの産生はされます


(構造は近いものであり、代謝過程を確認することでより理解は深まります)


リンク先

肝性脳症について


肝性脳症では黄疸下肢浮腫意識障害腹水などを生じる。


また、口臭が独特な腐卵臭がある。


この疾患では、より総合的な考え方が必要である。



これには、正常なアミノ酸代謝の流れの把握アンモニアの生成、分解過程体調変化による濃度変化など総合的に考える。


→ 一例として、低栄養や感染症によってタンパク質異化亢進腎不全による排泄障害も含んで考える。


特殊例として、先天性尿素サイクル酵素異常症による肝性脳症というのもある。


肝性脳症の原因物質
 ┃
 ┣ アンモニア
 ┃(α-ケトグルタル酸)
 ┃ の上昇だけでなく
 ┃
 ┣ メルカプタン上昇
 ┃
 ┣ 芳香族アミノ酸上昇
 ┃(非必須アミノ酸であるAAA
 ┃ フェニルアラニン、チロシン
 ┃ トリプトファン)
 ┃
 ┗ 分岐鎖アミノ酸低下
(必須アミノ酸であるBCAA
 バリン、ロイシン、イソロイシン)


がある。



肝機能低下では、AAAからBCAAの合成系が阻害されるため


濃度が相対的に AAA > BCAA となる(Fischer比の低下)


この補正のためBCAA製剤(Fischer液)を用いる。


まず、浮腫から考えられるのは肝障害のほか、腎障害、心不全なども想起できるようにしておきたい。

意識障害では、高血糖閉塞性黄疸も見ていきたい。


・肝性脳症出現までの期間が8週間~24週間では遅発性肝不全LOHF:late onset hepatic failure)に分類される。頻度は劇症肝炎のおよそ10分の1程度となっている。



鑑別のため腹部造影CT検査を行う


脾腫門脈側副血行路の著名な発達の所見が認められる。


肝硬変に伴って門脈圧が亢進され、高NH3血症となり、意識障害を起こすといったことが考えられる。


しかし、血清アンモニア濃度は昏睡度とは必ず比例するわけではない。→ 昏睡度Ⅱ、Ⅲ度でも血清アンモニア濃度が正常ということもある。)



・また、急性膵炎等の膵実質障害や胆嚢の所見に異常、また先天性代謝異常などがなければ高血糖や閉塞性黄疸も除外できるだろう。


血清K値(適正値:3.6~4.8mEq/L)を調べることで腎機能障害についてもある程度鑑別可能


リンク先

肝性脳症の検査値について


変動するもの増減
血清アンモニア上昇
総ビリルビン(T.bil)上昇
γ-グロブリン上昇
AST優位トランスアミナーゼ上昇
Ⅳ型コラーゲン上昇
ヒアルロン酸上昇
胆汁酸上昇
メルカプタン上昇
血清アルブミン低下
Fischer比(BCAA / AAA)低下
総コレステロール低下
コリンエステラーゼ低下
肝性脳症の検査値について


リンク先

昏睡度分類について


昏睡度精神症状特記事項
昏睡度Ⅰ・睡眠-覚醒リズムの逆転

・多幸気分、時に抑うつ気味

・周りに無頓着(だらしなさなど)
過去を遡って考えることでしか判定できない(レトロスペクティブ)
昏睡度Ⅱ・物の取り違えなど

・異常行動

・傾眠症状(呼びかけに反応し、会話はできる)

・横柄な態度

・見当識(指南力)障害
興奮状態は無い

・尿失禁、便失禁は無い

羽ばたき振戦が見られてくる
(アステレキシス)
昏睡度Ⅲしばしば興奮状態、せん妄状態で反抗的態度

・嗜眠状態

(ほとんど寝ている状態)

・見当識障害が高度
羽ばたき振戦あり
昏睡度Ⅳ・昏睡:完全な意識消失

痛み刺激には反応あり
呼気中にアンモニア臭
昏睡度Ⅴ・深昏睡

・痛み刺激にも反応なし
昏睡度分類について


昏睡度判断と対処法について


・昏睡度の判断には、血液生化学検査、血清NH3濃度、Fischer比では1以下(正常は3~4を示す)、脳波が徐派、三相波(下向きが陽性波)、X線CTでは脳室の大きさで脳浮腫の有無確認。



肝性脳症が認められないまたは昏睡度Ⅰ非昏睡型昏睡度Ⅱ以上のものを昏睡型と分類している


また、昏睡型では症状が出てから昏睡までの期間10日以内のものは急性型11日以上56日以内のものを亜急性型と分類している。


そして、急性型より、亜急性型の方が予後不良となる。



<対処法>

予防的対処:タンパク質摂取制限、電解質補正、排便コントロールを整える、消化管出血予防など



リンク先

肝性脳症、腹水の治療について


一般的な治療法について


タンパク質摂取制限1日40g以下とし、糖質中心のカロリー摂取で1日1300~1600kcalを目標とする。
タンパク質の摂取でNH3が生成されるため、この元となっているものを減らすのがよい。


BCAA摂取(Fischer液):タンパク摂取制限を補うのと、これによってアンモニア濃度を下げる作用も期待。


機序:BCAAは筋細胞でTCAサイクルから、α-ケトグルタル酸 → グルタミン酸となり、これがNH3と結合することでグルタミンを生成する。そのため、BCAA投与でNH3濃度は下がる


この他、肝性脳症における覚醒効果もある。


詳細:Fischer液筋肉でのアンモニア処理を促進し、AAAの脳内移行を阻害することから、肝硬変による肝性脳症の治療に用いられる。


そのため、アミノ酸も窒素化合物ではあるので、劇症肝炎では尿素サイクルが全く機能していないことから、悪化要因となる。


よって、劇症肝炎ではFischer液は禁忌である。


ラクツロース投与肝性昏睡の治療薬である。腸内細菌で乳酸を生成し、pHを下げ、浣腸使用で下痢症状を起こすことでNH3などの有害窒素化合物の吸収を抑制することができる。


これは、二糖類であり、糖類下剤(浸透圧性下剤)である。


マンニトールの投与:脳浮腫に用いられる浸透圧利尿剤


難吸収性抗菌剤の投与フラジオマイシン、ネオマイシン、カナマイシンなどで腸内細菌増殖を抑えることで有害窒素化合物の生成を抑えることができる。


腹水症状の対処減塩食事療法、安静、利尿薬投与などあるが、急激な利尿では、濃度変動が起こり肝性脳症の悪化を起こすことがあるため注意が必要である。


利尿剤のリスク因子:低K血症、アルカローシスなど


・腹水、肝硬変例では、塩分制限が必要である。1日3~5gほど実臨床では7gのことも多い)。


このため、生理食塩水の輸液使用は避けるのが望ましい(実質禁忌だろう)


急性肝性脳症の治療について


急性期では急性肝不全の治療に準じる。


肝細胞壊死の抑制のため、ステロイドの投与


・アンモニアなどの貯留毒素の改善を行う


・禁忌事項として、急性期ではFischer液投与はしないこと


慢性肝性脳症の治療について


消化管の浄化を行う:便秘の改善、NH3の吸収低下のため、ラクツロース+微温湯浣腸を行う。


腸内細菌叢によるNH3産生を抑制:難吸収性抗菌薬であるフラジオマイシン等を経口投与する。


・栄養管理では、低タンパク食でNH3産生の制限、栄養状態改善のため、Fischer液(BCAA)投与を行う。


その他の留意事項としては、全身状態の改善を念頭に、原疾患の治療を行う。


・H.pylori陽性で肝性脳症を繰り返す場合ではH.pylori除菌を行う。(NH3産生要因)


門脈-体循環シャントに対する塞栓処理をする


・保存的治療に抵抗性肝不全死が迫っている状態では、肝移植を選択


アルコール性肝硬変について


アルコール性肝硬変意識障害を生じている場合は、NH3上昇だけでなくVB1不足(アルコールで消費される)、低血糖慢性硬膜下血腫なども念頭に置く必要がある。


このことから、検査は頭部CTや頭部MRIを行いつつ、採血では血糖値、VB1測定も行うこと。


緊急性があれば、MRIよりも検査時間の短いCTを選ぶこと!

(MRIをとったことある人は分かると思いますが、3,40分はかかります。)


肝疾患編②はここまでとなります

次回は、肝疾患編③に続きます。 → 次に進む




<参考文献>

メディックメディア Question Bank vol.1 肝・胆・膵

ビジュアルブック 消化器疾患


注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
できる限り正確な情報発信に努めておりますが、当サイトに記載した情報を元に生じたあらゆる損害に対しては当サイトは一切責任を負いませんので、あくまでも参考としてご利用ください。



    • この記事を書いた人

    TK.Ph

    自分が学んで知った事が、人の役に立つならいいかなと思いサイトを開設 ・食べる事が好きで、そのために運動をはじめました

    -肝疾患編
    -, ,