肝疾患編

肝疾患編⑥ 肝臓癌(HCC)、肝嚢胞、肝膿瘍について

肝臓

肝疾患編の第6回目は肝癌と肝嚢胞、肝膿瘍についてまとめていきます。

肝疾患編はここで終了となります。



注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
そのため、
これを全て把握しても人体については全て理解し、学べたということにはなりませんのでご注意ください。
医学は未知の部分も含め、既知の部分であってもかなりの量です。ここは忘れないようにしてご利用ください。)


肝臓癌(HCC)の分類について


肝癌 ┳ 原発性肝癌
   ┃   ┣ 肝細胞癌
   ┃   ┗ 肝内胆管癌
   ┃     (胆管細胞癌)
   ┗ 転移性肝癌


※原発性肝癌よりも転移性肝癌の方が多い


肝癌は進行することで腫瘍に栄養を送ろうとして肝動脈の血流が豊富になる。これを利用して抗がん剤投与を行うTACEという治療法がある。(後述あり


腫瘍の特徴には、多段階発癌多中心性発癌がある。


原発性肝癌について



予後については肝内胆管癌よりは肝細胞癌の方が良いとされる。


肝細胞癌の転移先について、肝が最も多く(門脈を介した肝内転移


あとは順に 、骨、副腎、胆嚢・胆管 と多い。(血行性転移

再発は3年以内がほとんど


尚、肝細胞癌ではリンパ性転移は少ない。(Virchow転移:ウィルヒョー※)


Virchow転移左鎖骨上窩のリンパ節転移をいう。

左静脈角には胸腔と腹腔からのリンパ流を集めて、静脈血に注ぐ胸管が合流している。

そこの左鎖骨上窩のリンパ節下肢骨盤、腹腔臓器、胸腔臓器からのリンパ流の影響を受ける


門脈浸潤では門脈腫瘍塞栓


肝静脈浸潤ではBudd-Chiari症候群を生じることがある(血管侵襲


リンク先


項目肝細胞癌肝内胆管癌
原発性肝癌の中での罹患率およそ95%およそ4~5%
原因HCV:60%
HBV:15%
その他:25%
不明(慢性肝障害との関連が示唆される)
組織型肝細胞類似ほとんどが腺癌
腫瘍数単発性または多発性単発性が多い
超音波所見・モザイクパターン※1

・halo(ハロー)※2
肝内胆管拡張

腫瘍はhalo
造影CT所見:早期相動脈優位相:濃染(hypervascular)リング状濃染を伴う低吸収域(hypervascular)

造影CT所見:後期相 門脈優位~平衡相:低吸収域(wash out※3、コロナ濃染※4)中心部が淡く濃染

(腫瘍よりも末梢側の肝内胆管の拡張がある)
腫瘍マーカー:AFP、PIVKA-Ⅱ上昇する(AFP-L3も上昇)(-)
腫瘍マーカー:CEA、CA19-9(-)上昇する
転移・経門脈的な肝内転移

・血行性遠隔転移
など
様々な転移あり

・血行性
・肝門リンパ節
・腹膜播種性
原発性肝癌について



※1 モザイクパターン:結節型肝細胞癌に特徴的な所見のひとつ。

腫瘍結節内部に分化度の異なる細胞が混在するとモザイク模様のエコー像がみられるようになる。

境界は比較的明瞭である。

※2 halo:結節型肝細胞癌の多くが外周に線維性被膜を有しており、低エコー帯をいう。

※3 wash out:早期濃染wash inといい、その後陰影欠損wash outという。濃染した造影剤が抜ける部分である。

これは門脈優位相、平衡相でみられる。コロナ濃染も同じ。

※4 コロナ濃染:注入した造影剤が病変を通過したあと、隣接する背景肝(肝癌ではない部分)の類洞を通過する際に現れる濃染をいう。

肝癌のほとんどはC型肝炎(60%ほど)B型肝炎(15%)だが、これは被膜を有することが多く、CTではコロナ濃染として描出される。

(平衡相では、早期相での濃染像が消失して逆に低吸収を示す腫瘤性病変を認める部分。静脈が造影されるようになる。)


転移性肝癌について


項目転移性肝癌
原因原発の臓器による
(様々あり、肺癌、大腸癌、胆道癌、胃癌、膵癌など)
組織型多くは腺癌

被膜を有さないことが多い(→CTで早期濃染認めず、後期相でもコロナ濃染を認めない)
腫瘍数原発の臓器による
超音波所見bull's eye sign※5

肝細胞癌より厚い低エコー(halo)
造影CT所見:早期相
リング状濃染を伴う低吸収域(hypovascular)
造影CT所見:後期相 低吸収域
腫瘍マーカー:AFP(-)のことが多い
腫瘍マーカー:PIVKA-Ⅱ(-)
腫瘍マーカー:CEA大腸癌、胃癌などで上昇
腫瘍マーカー:CA19-9膵癌、胆道癌、大腸癌などで上昇
転移性肝癌について


※5 bull's eye sign:腫瘤中心部変性した領域高エコーを示し

辺縁は、均等で幅の広い低エコー帯のある円形状腫瘤像を表す。


転移性肝癌の治療について


原発臓器で治療方針は変わる。基本的には化学療法である。


原発臓器癌治療方針
肝転移単発性では外科的切除も考慮
大腸癌単発で切除可能であれば外科的切除を考慮
胃癌化学療法
GIST単発で切除可能であれば外科的切除を考慮
切除不能例ではイマチニブの投与
転移性肝癌の治療について


微小肝細胞癌について


腹部エコーにより径2cm未満での早期発見ができるようになってきている。


微小肝細胞癌に対して、血管造影時、肝動脈からCO2ガスを肝内に注入してCO2によって肝癌をより鮮明に描出するという方法が多くなってきている。


典型例ではCO2注入で肝癌(HCC)は高エコー像で描出される。


血管単純造影よりも微小のHCCも見ることができる。


肝細胞癌の危険因子について


男性
高齢
飲酒歴が長い
HCV陽性(HBVよりも発癌率高い)
AST、ALT高値
肝硬変
肝癌切除後
NASHの罹患
糖尿病
肝細胞癌の危険因子について


肝腫瘍の主な誘発因子について


B、C型肝炎ウイルス(肝細胞癌)
アフラトキシンB1(肝細胞癌)
ヒ素・塩化ビニル(肝血管肉腫)
経口避妊薬(肝細胞腺腫)
トロトラスト(胆管細胞癌、血管肉腫、肝細胞癌)※
肝腫瘍の主な誘発因子について


※ トロトラスト:二酸化トリウムコロイドを主剤とするX線造影剤である。

体内に注入されたトロトラストは肝臓や骨髄に沈着しα線を長年にわたって放出、被ばくする。

数十年経って肝癌、肝硬変、白血病を発症して死に至る。


<参考>

トロトラストによる肝多重癌(肝細胞癌-胆管細胞癌)の一剖検例 (jst.go.jp)1986 年 27 巻 11 号 p. 1616-1621


肝癌における血液検査、所見について


肝腫大所見のある血液検査では、ALP、γ-GTPの上昇がある場合、肝内の占拠性病変を示唆している所見となる。


また、LD値の異常高値があれば悪性腫瘍を示唆している。


腫瘍においては、血管造影で肝動脈の動脈相細かい腫瘍血管の増生がみられることがある。これは転移性肝癌によるものと考えられる。


Child-Pugh分類について


Child-Pugh分類とは、肝硬変の重症度分類のことである。

具体的な内容は肝疾患編②にも記載がありますが再掲します。


これは生命予後の推測に最も有用とされるものである。


また、食道静脈瘤治療、肝癌に対する肝部分切除術などの治療方針の決定にも利用される。


ここで、プロトロンビン活性値(PT)の代わりに栄養状態を用いたものはChild-Turcotte分類である。


・PTの代わりにPT-INRを利用する場合

PT-INRが1.7未満ではa(1点)1.7~2.3ではb(2点)2.3を超える場合はc(3点)として点数をつける


項目a.1点b.2点c.3点
脳症なし軽度昏睡(Ⅰ、Ⅱ)時々昏睡あり(Ⅲ以上)
腹水なし少量(1~3L)中等量(3L以上)
血清ビリルビン値
(mg/dL)
2.0未満2.0~3.03.0を超える
血清アルブミン値
(g/dL)
3.5を超える2.8から3.52.8未満
プロトロンビン活性値
(%)
70を超える40~7040未満
Child-Pugh分類について


この合計値によってグレードが以下のように決まる


aが1点、bが2点、cが3点となり、その合計点で以下の通りの分類となる。

このグレードが決まれば、次項の治療アルゴリズムの流れに沿って治療方針を決めていくこととなる。


グレード点数評価
A(軽度)5~6点代償性肝硬変
B(中等度)7~9点 非代償性肝硬変
C(高度)10~15点 非代償性肝硬変
Child-Pugh分類のグレードについて


グレードA:合併症状がないものを代償性肝硬変という


グレードB:軽度の合併症症状がみられている


グレードC:重度であり、肝機能の維持が困難な状態。様々な合併症症状(黄疸、腹水、肝性脳症など)があらわれてくる


<補足>

肝障害度評価には『肝癌取扱い規約』の分類があるが

これはChild-Pugh分類における肝性脳症項目の代わりに、ICG R15(%)となっており、これは実用的であることからこちらの利用が重要視されている。



肝障害度について


肝障害度は「肝癌取扱い規約」にて定義されています。必要な項目は以下があります


所見概要
腹水の有無
血清ビリルビン値1.1mg/dLを超えれば部分切除核出術となるが、閉塞機転によるビリルビン上昇では右葉切除はする場合がある。
血清アルブミン値肝予備能の指標
プロトロンビン時間肝予備能の指標
ICG検査肝切除の可否、切除範囲の重要な指標
(治療方針の決定に用いられる)
肝障害度について1


ICG検査:15分値が30%以上では部分切除核出術に留まり、葉切除や区域切除、亜区域切除は一般的にはしない肝臓の区域についてはこちらを参照


肝障害度では、臨床所見や血液生化学所見で3度に分類している。

各項目で重症度を求めて、そのうちの2項目が該当したものの肝障害度とする


重症度腹水ビリルビン
(mg/dL)
アルブミン
(g/dL)
ICGR15
(%)
PT活性
(%)
Aなし2.0未満3.5を超える15未満80を超える
B治療効果あり2.0~3.03.0~3.515~4050~80
C治療効果に乏しい3.0を超える3.0未満40を超える50未満
肝障害度について2


リンク先

肝細胞癌の治療アルゴリズムについて


肝予備能Child-Pugh分類A、Bの場合Child-Pugh分類Cで方針は変わる


肝癌 ┳<Child-Pugh分類A、B
   ┃  ┃
   ┃<肝外転移>
   ┃  ┣ あり ━ ①
   ┃  ┗ なし
   ┃    ┃
   ┃ <脈管侵襲>━ あり ━ ② 
   ┃    ┃
   ┃   なし
   ┃    ┃
   ┃  <腫瘍数>━4個以上━ ③
   ┃    ┃
   ┃   1~3個
   ┃    ┃
   ┃  <腫瘍径>┳3cm超え━ ④
   ┃       ┗3cm以内━ ⑤
   ┃
Child-Pugh分類C>
   ┃
   ┣ ミラノ基準内※ ━ ⑥
   ┗ ミラノ基準外、移植不能 ━⑦


以下に治療法①~⑦の記載あります


リンク先

ミラノ基準65歳以下で、腫瘍径3cm以下個数3個以下または腫瘍径5cm以下の単発肝細胞癌のこと。

これを満たしていれば、肝移植が可能となり、生命予後は良い

または、遠隔転移や脈管侵襲がなく腫瘍径5cm以内かつ腫瘍数5個以内かつAFP500ng/mL以下でも肝移植は可能と判断



<治療法>


①分子標的薬

(Child-Pugh分類Aのみソラフェニブ))


②塞栓、切除、動注、分子標的薬


③塞栓、動注、分子標的薬


④切除、塞栓(肝動脈塞栓術等)


⑤切除、焼灼

経皮的エタノール注入療法(PEIT)もあるが

焼灼で経皮的ラジオ波焼灼療法RFAをとることが多い。

通常は病巣が3cm以内であれば行っても良いと考えられる。)


肝移植65歳以下であること)


⑦緩和療法(化学療法)



<肝動脈塞栓術の予後について>

1年で80%、3年で45%、5年で20%の生存率と言われている


リンク先

多発性肝癌などでは、外科的治療やラジオ波焼灼療法が難しいといえる。


この場合はTACE(肝動脈化学塞栓術)を選択する。


TACEとは、足の付け根の動脈からカテーテルを挿入して腫瘍を栄養している細い動脈までカテーテルを進め、そこに抗癌剤等を投与動脈の血流を遮断することで腫瘍細胞を壊死させる治療法である。


※これは、門脈本幹が閉塞していないことを確認してから行うこと。(脳梗塞リスクがあるため)
また、難治性腹水、高度黄疸、高度出血傾向でも禁忌となる。


(肝動注化学療法はTACEより効果が劣るとされている。肝予備能が悪化することが多い)


更に、禁忌事項としてはヨード造影剤によるアナフィラキシーの既往がある方である。

カテーテルの操作にはヨード造影剤で血管位置情報を特定するために利用されるからである。


<参考>

画像もあります。

肝動脈化学塞栓術(transcatheter arterial chemoembolization:TACE)|東邦大学医療センター大橋病院 消化器内科 (toho-u.ac.jp)(閲覧:2021.10.21)


リンク先

肝移植の適応について


肝細胞癌では、ミラノ基準を満たすものだけ肝移植の標準適応となる


劇症肝炎(劇症肝不全、遅発性肝不全も含む)
胆道閉鎖症などの先天性肝・胆道疾患
先天性代謝異常症
Budd-Chiari症候群
原発性胆汁性胆管炎(PBC)
原発性硬化性胆管炎(PSC)
肝硬変(ウイルス性、二次性胆汁性、アルコール性など)
進行性肝内胆汁うっ滞
肝細胞癌(ただし、遠隔転移や肝血管内浸潤を認めないもの、かつミラノ基準を満たすもの)
その他肝硬変、その他肝腫瘍
肝芽腫
多発性肝嚢胞
肝移植の他に治療法がない全ての疾患
肝移植の適応について


※生体肝移植で胆嚢管は再建する必要はない。



TACEの適応についてのまとめ


門脈本幹から一次分枝に門脈腫瘍栓認められないこと(門脈閉塞は単純CTでは見ることはできない)

脳梗塞リスクがあるため)
黄疸は総ビリルビン値が最大5mg/dL以下とする

(通常は3mg/dL以下がよい)
肝癌の大きさや個数は特に問わない

むしろ多発性ではTACE適応である
動静脈シャントがみられないこと

(あることで、塞栓物質で肺塞栓のリスクがあるため)
TACEの適応についてのまとめ


B型の慢性肝疾患ではウイルス量が多いことで肝癌を発癌しやすいことがわかってきた。

そのため、治療ではウイルス量を減らすため核酸アナログ製剤を投与することが多くなっている。


経カテーテル動脈塞栓術について(TAE)


経カテーテル動脈塞栓術による止血術は、肝癌破裂に対する止血にも行われているものである。

TAEの適応としては、門脈本幹閉塞が無いなど確認事項があるため、随時チェックしておく必要がある。


※腫瘍の破裂では血圧低下などのバイタル変化がみられる


最も劇的で致死的な肝癌例では、腹腔内破裂などによる出血が挙げられる。肝臓は血管が多いため、緊急性が高いことが多い。


TAEに化学療法(C)を加えたTACEもある。

これは、後述するが、治療困難な多発性腫瘍で用いられる。


C型肝炎・B型肝炎からの肝癌について


C型肝炎由来の肝癌は血小板数が10万以下肝硬変を合併していることが多い。


・一方で、B型肝炎由来の肝癌は比較的血小板数は維持され、肝線維化が進行していないことが多い。
(肝障害の程度は低く、単発で大型化する傾向である)


肝切除の適応

肝機能が比較的良好であり、大きさが5cm以上の単発性病変であれば肝切除が第一選択となる


肝癌の手術適応について


①肝癌が単発ないし同一区域内に存在する


黄疸、腹水、肝性脳症が無いこと


ICG15分値30%以下であること

(これ以上では部分切除または核出術(腫瘍のみの核出)を行うことある多発する肝細胞癌には

経カテーテル肝動脈塞栓術は良い適応である。


経皮的エタノール注入療法ラジオ波焼灼療法も行うことはある。)


肝障害度C、血小板数5万以下では一般的に肝切除術の適応にはならない


肝硬変が軽度であれば右葉切除可能である(切除をしても残存した肝の再生肥大が期待できる)


肝の再生を促すにはアミノ酸製剤(BCAA)を含んでいる経口栄養がよい。


肝切除の適応と切除可能範囲について


(1)初めに、腹水の有無から確認をしていくこと。

まず、腹水があってそのコントロールが不良であれば手術は行わないこととなる。


(2)腹水が無い、またはそのコントロールが可能であるとき手術を考慮していくこととなる。


(3)次に、総ビリルビン値が正常かそうでないかで手術方法は変わる。


→以下の表参照(肝切除の適応について①)


総ビリルビン値が正常であればICG15分値を調べ、その結果によって切除範囲が決まる

→以下の表参照(肝切除の適応について②)


総ビリルビン値切除範囲
1.1~1.5mg/dL部分切除(腫瘍周りも切除する)
1.6~1.9mg/dL核出術(腫瘍部分だけを取り除く手術のこと)
2mg/dL以上手術不可
肝切除の適応について①


ICG15分値切除範囲
正常2区域以上の切除
3分の2切除
10~19%区域切除
3分の1切除
20~29%亜区域切除
6分の1切除
30~39%部分切除
40%以上核出術
肝切除の適応について②


※切除については区域ごとに切除することが推奨されている。

そのため、Glisson鞘レベルでの切除が予後の向上に寄与することから、Couinaud分類(クイノー)による肝区域の理解が必要である。


EOB造影MRIについて


EOB造影MRIでは、血流をみていく早期相(動脈相)と、肝細胞への取り込みを示す後期相(肝細胞相)がある。


肝癌では、多血性により動脈相が全体的に均一に造影され、肝細胞相で取り込みを認めない


このEOB造影MRI動脈相が鑑別に重要である。


肝細胞癌とは多血性のため、動脈相では腫瘤全体が均一に造影される。


一方で、肝細胞相では肝機能のない病変は一切造影されない(低信号域となる)。


(平衡相では、逆に低吸収域となり、病変周囲が濃染されて被膜を確認できる。これがコロナ濃染。)


Gd-EOB-DTPA(ガドキセト酸Na、EOB・プリモビスト®)は新しいMRI造影剤として使用されている。


Gd-EOB-DTPAはおよそ50%が肝実質細胞に取り込まれ胆汁中に排泄されることで、肝臓や腎臓から排泄されるという肝特異性造影剤となっている。


この新しい造影剤は、従来とは異なり、血流だけでなく肝細胞機能も評価することができる。

これにより、肝細胞癌の早期発見に寄与できると考えられている。



画像診断描出
単純MRI(造影前)低信号域を示す
動脈相造影効果あり
肝細胞相造影効果なし(wash out)
肝腫瘤性病変の造影について


肝嚢胞では、内部が液体であり、動脈相で造影されない


肝膿瘍では、辺縁の境界が不明瞭であり、動脈相で辺縁の肉芽が淡く造影されることがあるが、内部は造影されない


肝血管腫では、血管が多く動脈相で腫瘍の辺縁の一部が動脈と同程度に強く濃染されるが、全体的に造影するということはない。

徐々に腫瘍中心部に向けて濃染していく。


肝脂肪腫では、脂肪のため動脈相で強い濃染は示さない。(稀な腫瘍)


FDG-PETについて


FDG-PETでは肝癌の肝外転移の検索肝細胞癌骨転移の診断に感度・特異度がともに優れている


肝線維化の指標について


肝線維化の指標では血小板が有用であると言われている。(血小板数は他に脾機能亢進症の程度も確認によい)

進行度がF1、F2、F3、F4と徐々に進行するに従い、血小板数が減っていく。F4では肝硬変。


線維化の進行度血小板数
F117万
F215万
F313万
F410万
肝線維化の指標である血小板数について


腫瘍で上昇する検査値について


腫瘍上昇するもの
肝悪性リンパ腫IL-2レセプター
大腸癌肝転移CEA、(CA19-9)
肝内胆管癌CEA、CA19-9
肝細胞癌AFP、PIVKA-Ⅱ
肝芽腫AFP、LD、コレステロールなど
腫瘍で上昇する検査値について


肝癌とその他の症状がある場合について


・肝癌を有し、腹痛貧血ショック状態がある場合は肝細胞癌破裂の可能性も考慮する。


腹部の圧痛反跳痛を確認(出血性ショックなどのバイタルサイン確認)

破裂時の初期治療:TAE(肝動脈塞栓術)を行い、全身状態を安定させる


便秘症状があるのは、肝性脳症の原因にもなったりするため


肝性脳症症状がみられるようであれば便秘の有無についても確認するべきである。


食道静脈瘤破裂からの消化管出血では、肝性脳症を増悪させるため、確認が取れたらすぐに予防や治療の目的で上部消化管内視鏡検査をすること。


肝硬変の合併症では直腸静脈瘤破裂もある。これは直腸指診で黒色便や鮮血があれば、下部消化管出血があると考えられる。


肝性脳症の増悪因子について


増悪因子要因
アンモニア負荷の増加高タンパク食、消化管出血、便秘、感染症(蛋白異化)、腸内細菌叢の異常、H.pylori
アンモニア処理能の悪化肝不全、るいそう(著しく痩せること)
アンモニア貯留部位の減少腹水の急激な減少、脱水、利尿薬の投与、発熱
脳のアンモニアに対する過敏性の増加アルカローシス、低K血症、腎不全に伴う高BUN血症、麻薬、鎮静剤、催眠薬
門脈-体循環シャント
肝性脳症の増悪因子について


肝血管腫について


肝血管腫は人間ドックなどで肝腫瘤を偶然見つけることがある疾患である。


鑑別には、肝嚢胞、限局性結節性過形成、転移性肝腫瘍、肝細胞癌など。


診断には、ダイナミックCT、採血、生化学検査(腫瘍マーカー等)などを行う。


採血などで異常が無く、他に症状も呈していないようならば


ダイナミックCTのみで診断可能である。また、治療は経過観察のみでもよい。


肝血管腫の特徴的所見について


肝血管腫原発性良性肝腫瘍として最も多い腫瘍である。これは新生血管から構成されている


巨大な血管腫で、まれにDICの合併あり。Kasabach-Merritt症候群(カサバッハメリット)※(乳児期に多い)がある。


Kasabach-Merritt症候群(カサバッハ・メリット)肝巨大血管腫のこと。

小児期(特に新生児期から乳児期)のカポジ型血管内皮腫※または房状血管腫に合併して起こる血小板減少、貧血、凝固異常を呈する疾患で、特に血小板減少が特徴的である。

出血や多臓器不全など致命的になることもある


カポジ肉腫皮膚がんの一種である。カポジ肉腫は4種類あるが、原因はヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8)感染症である。



動脈相腫瘤辺縁から綿花様濃染(cotton wool appearance※)

門脈相でも濃染のままで、肝実質よりも高吸収域を示す。

他の検査所見については→こちら(このページの最初付近)


cotton wool appearance:肝血管腫の特徴的所見の一つで、小斑点状のpooling(貯留像)がみられる。


検査所見
腹部エコー高エコー(白っぽくなる)
腹部CT低吸収域(LDA)(黒っぽくなる)
腹部造影CT低吸収域の周囲よりenhance(増強)される

動脈相(高吸収域)、後期相と造影効果は持続する
血管造影CT濃い綿花様の濃染像が長時間みられる

動脈相から静脈相、以後数分間にわたって造影剤の貯留像がみられる(pooling)
MRIT2強調画像で高信号がみられる
肝血管腫の特徴的所見について


尚、肝臓の画像所見についてはこちらのリンクから確認してみてください。


肝血管腫の治療について


圧迫症状がみられれば、区域切除などではなく肝血管腫切除術や放射線治療となる。


・基本的に何もなければ経過観察となる。


・カサバッハメリット症候群などでDIC合併例であれば、DIC治療のためヘパリン点滴静注を行う。


・DICでアンチトロンビン-Ⅲが減少している場合は新鮮凍結血漿の投与を行う


腹部エコーの所見について


腹部エコーでは


径2cm以下では90%が高エコー10%が低エコーを示す。


径2cm以上では混在(高エコー、低エコー)の事が多い。


混在エコーなど腫瘤周囲にmarginal strong echo※とよばれる高エコー帯がみられれば肝血管腫とほぼほぼ確定できる。


また、肝血管腫に特徴的な所見として、体位変換や圧迫、呼吸止めなどで腫瘤のエコーレベルが変わってしまうことがある。これをカメレオンサイン(chameleon sign)という。


marginal strong echo:超音波検査で肝血管腫に特徴的なもので、辺縁高エコー帯をいう。


肝嚢胞について



肝嚢胞とは肝臓に嚢胞が形成される疾患である。ほとんどは先天性で無症状。(あっても腹部膨満感


・後天性には、炎症性、外傷性、寄生虫性(エキノコックス)がある。


・診断は腹部エコーとCTのみで確定できることが多い。


・血液検査で異常はなし


腹部エコーでは辺縁平滑な内部無エコー像、後部エコー増強


CTでは境界明瞭な造影されない低吸収域がみられる


・嚢胞部分というのはいわゆる空洞になっており、その部分は臓器としての機能をしないということになる。


つまり、空洞部分が多く、大きければそれに比例するように機能は低下するというものである。


肝嚢胞の治療について


肝嚢胞無症状であれば治療はする必要はない。(経過観察


腹痛や圧迫症状がみられるようであれば、嚢胞の破壊の危険性があるため


内科的治療として、硬化療法、嚢胞内容穿刺吸引、肝動脈塞栓療法を行う。


外科的治療として、嚢胞開窓術、肝切除術(重症例)、肝移植(重症例)がある。


多発性肝嚢胞(PCLD)の重症度分類について


多発性肝嚢胞(PCLD)は、超音波検査、CTなどの画像検査で肝内に15個以上の肝嚢胞が存在するものをいう。

(家族歴があれば、4個以上)

分類Ⅰ型Ⅱ型Ⅲ型
嚢胞数10個程度多数ある
(嚢胞のない肝実質ある程度残存
多数ある
肝実質が少量しか残存していない)
大きさ10cm以上の大型嚢胞あり小型~中型小型~中型
肝内分布比較的限局しているびまん性に分布びまん性に分布
適応嚢胞内容穿刺吸引
硬化療法
嚢胞開窓術
肝切除
肝移植
多発性肝嚢胞の重症度分類について


肝膿瘍について



リンク先

肝膿瘍とは、肝内に何らかの原因によって細菌や真菌、原虫などの感染をし膿瘍を形成する疾患である。

病原体の種類により細菌性、アメーバ性に大別される。


細菌性:大腸菌、クレブシエラ、緑膿菌などのグラム陰性桿菌が多い

アメーバ性:赤痢アメーバ


・感染経路は、経胆道性経門脈性直達性(じきたつせい:直接伝達(感染)すること)、経動脈性などあり。


・症状:発熱、右季肋部痛、悪寒戦慄、全身倦怠感などがある。


・診察:肝腫大、肝叩打痛


・血液検査:WBC上昇、CRP上昇、ALP上昇など


・肝膿瘍では、治療が遅れると敗血症(菌血症)や肺炎を合併し、心不全や腎不全に至ることがあるため早期診断、早期治療が必要である。

敗血症性のショック症状(意識障害)が呈するようであれば、かなり緊急性が高い


<確定診断のためのチェック次項について>


診断:腹部超音波検査、腹部造影CT検査


・腹部超音波検査:辺縁不整内部不均一低エコー域

・腹部造影CT:辺縁リング状濃染を呈する低吸収域


エコー下の試験穿刺で、膿汁の内容物を確認し、採取したものは細菌培養で起炎菌を同定する。


<肝癌と肝膿瘍の違いについて>

肝膿瘍は急性の炎症所見としてCRP上昇発熱がみられるはず。

また、CEAやCA15-3(これは乳癌からの肝転移で調べるとき)で異常値が無いか確認し、上昇無ければ癌は否定か、、

肝腫瘍では腹部診察所見で、叩打痛と肝腫大が特徴的。


細菌性肝膿瘍について


細菌性肝膿瘍では、腐敗臭を伴う黄色膿汁を呈する。

これは、膿の培養、血液の培養で起因菌同定ができる。

・感染経路では、経胆道性が最も多く、次に経門脈性である。


・主な症状には、悪寒戦慄、弛張熱※などの炎症症状がある。


細菌性においては、多発性で血行性の播種をきたすことが多い。


・超音波検査:通常は低エコーで、粗い内部エコーを伴う

嚢胞では後方エコーの増強がみられる)


・細菌性では多房性を呈することが多い。


リンク先


弛張熱(しちょうねつ):1日の体温差が1℃以上の上下を繰り返す熱型をいう。

敗血症などの化膿性疾患及び重症の熱帯マラリアの際にみられる。


稽留熱(けいりゅうねつ): 1日の体温差が1℃以下の場合をいう。


治療について


抗生剤の投与


経皮的ドレナージ(膿瘍径が3cm以上の場合、重症例など)

これは、局麻下、超音波ガイド下で行う。


外科的ドレナージ経皮的ドレナージが不良の場合、腫瘍破裂の場合


アメーバ性肝膿瘍について


アメーバ性肝膿瘍は、チョコレート状またはアンチョビペースト様粘稠膿汁を呈する。


・アメーバ原虫の検出は5割ほどであり、採取後はすぐ検査すること。

検体は冷やさないこと。(栄養型でなくなってしまうため)

血清抗アメーバ抗体の検出感度は高いが、日本において試薬販売は中止となっている)

この場合、免疫学的検査の併用も有用といえる。


海外渡航歴があれば疑って検査をする必要あり


・アメーバ性では単房性を呈することが多い。


腹部造影CT検査:辺縁がリング状濃染の低吸収域を認める占拠性病変および赤褐色の内用液


赤痢アメーバは5類感染症の全数報告対象疾患であり、7日以内に最寄りの保健所に届け出ないといけない


治療について


・抗アメーバ薬であるメトロニダゾールの投与


破裂の危険性があるとき、抗アメーバ薬の効果が認められない時はドレナージを考慮


肝膿瘍まとめ


<化膿性、アメーバ性の共通事項について>


・CT所見:low density area(低密度エリア)(+)

分葉状または八頭状の低吸収域(これは、液体性の膿を表す)


・エコー所見:hypoechoic(低エコー)

三主徴:①弛張熱 ②右季肋部痛 ③肝腫大


項目化膿性アメーバ性
起因菌細菌性
グラム陰性桿菌
(エシェリキア・コリが最多)
赤痢アメーバ
感染経路経胆道~血行性経門脈
数量単発~多発性単発性
右葉に多い
膿内容黄色~灰白色チョコレート状
治療抗菌薬
US・CTガイド下経皮的ドレナージ
メトロニダゾール
US・CTガイド下経皮的ドレナージ
肝膿瘍まとめ

肝生検によって膿が腹腔内に散布されてしまうため禁忌となっている。このため、穿刺吸引時は注意が必要。

多発性肝膿瘍が胆道閉塞に起因する場合では、PTBD(経皮経管胆管ドレナージ)が行われることもある。


<参考>

外科医のための画像診断
-腹 部 臓 器 のCT , MRI神戸大学放射線科
河 野 通 雄 土 師 守 廣 田 省 三 佐 古 正  リンク元:_pdf (jst.go.jp)


肝疾患編はこれで終わりとなります




<参考文献>

メディックメディア Question Bank vol.1 肝・胆・膵

ビジュアルブック 消化器疾患


注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
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    • この記事を書いた人

    TK.Ph

    自分が学んで知った事が、人の役に立つならいいかなと思いサイトを開設 ・食べる事が好きで、そのために運動をはじめました

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