消化器編

消化器編⑥ 腸疾患について

医学を学ぶ


消化器編⑥からは腸疾患についてみていきます。


それぞれの疾患の違いについて調べたいときにご利用ください。


注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
そのため、
これを全て把握しても人体については全て理解し、学べたということにはなりませんのでご注意ください。
医学は未知の部分も含め、既知の部分であってもかなりの量です。ここは忘れないようにしてご利用ください。)


腸管の解剖学的特徴について


<結腸>


結腸膨起や腸管壁縦走する結腸ヒモという構造的特徴がある。これにより読影などで小腸との鑑別ができる


結腸 ┳ 結腸ヒモ ┳ 間膜ヒモ
   ┃      ┣ 自由ヒモ
   ┃      ┗ 大網ヒモ
   ┣ 結腸膨起(haustra)
   ┗ 腹膜垂:結腸ヒモに沿った脂肪組織の漿膜ひだである


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過敏性腸症候群について


IBS(irritable bowel syndrome)といい


下腹部痛は下痢便の排出で症状が軽快し、器質的異常は認められないもの。


食後腹痛などもみられることがある。


・一般人口の15%でみられる



・腹痛が持続する、大腸の機能性疾患



ストレスや情動的動揺などにより発症、増悪することが多い



・下痢型と便秘型、交代制便通異常がある


広義で、消化管に器質的疾患を有さず、消化管関連の不定愁訴を訴えるもの


を総称して


機能性消化管障害FGIDs:functional gastrointestinal disorders)


という



FGIDs:非びらん性胃食道逆流症、機能性ディスペプシア(FD)、IBSなどが含まれる。基本は除外診断で行う


鑑別として、胃・十二指腸潰瘍、炎症性腸疾患などの器質的疾患を診ていく必要がある


治療

暴飲暴食などの生活習慣があれば改善

ポリカルボフィルカルシウム

ラモセナロン(下痢型IBS)

トリメブチン(消化管運動調節薬)

対症療法的に便秘薬、下痢止め


Rome基準について(IBSの国際的な診断基準RomeⅣ(2017年))


3か月以内に平均して1週間のうち、少なくとも1日はみられる症状として


①排便により症状が軽快する


②発症時に排便回数に変化がみられる


③発症時に便形状の変化がある


このうち、半年以上、2項目以上の症状がみられているものをIBSとしている


また、他の身体的疾患がないことが重要である


症状として、発熱、浮腫、体重減少、関節痛、貧血、粘血便などの症状


があればIBSは除外し、大腸癌やその他炎症性腸疾患を考えるため


精査をしていく必要がある。(IBSの警告症状(アラームサイン)


機能性ディスペプシア(FD)について


原因として、遺伝、ピロリ菌感染、心理社会的因子、胃排出障害、内臓知覚過敏、胃酸自体が関係していると考えられている。


器質的、全身性、代謝性疾患はない慢性的に心窩部痛や胃もたれ感がある



・食事は少食となり、満腹感をすぐに感じる



・排便や放屁でも改善はされない



・胃もたれ感は高脂肪食を食べた後の起きやすい



・FDと胃食道逆流症との合併頻度は高い



・内視鏡や血液検査異常はなし


非びらん性胃食道逆流症との鑑別は困難だが、治療自体は共通しており、改善もするため問題はさほどないと思われる。



治療アコチアミドなど、PPI、H2-B、ピロリ除菌、抗不安薬、抗うつ薬、漢方など


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虫垂炎について


急性虫垂炎:糞石や食物残渣、リンパ組織の腫大、腫瘍などによって虫垂の内腔が閉塞して二次的に感染することで発症する、急性化膿性炎症性疾患である。


急性腹症の原因では最も多い。



・痛みは時間経過とともに心窩部から右下腹部に移動する。(体性痛)


・悪心、嘔吐、心窩部痛を伴うことがある。


・発熱は37度台だが、高熱例もある。


 圧痛確認では、初期であっても右下腹部に痛みがみられる



筋性防御



・腸雑音低下


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虫垂炎の診断に有用である圧痛点McBurney点、Lanz点などがある
(参考画像:看護roo!(閲覧:2021.08.11))



McBurney点(マックバーニー):臍と右上前腸骨棘を結ぶ線上の右側3分の1


Lanz点(ランツ):左右上前腸骨棘を結ぶ線上の右上3分の1


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※特徴的な徴候:Rosenstein徴候Rovsing徴候Blumberg徴候などがある




・右下腹部疼痛では、腹膜刺激症状(圧痛と反跳痛がみられる。

→ 炎症所見の有無を診る(採血:WBC(1万~1.5万/μL程)、CRP上昇など)




・鑑別として、胆嚢壁の肥厚が無いことを確認(胆石症、胆嚢炎などの鑑別)


 また、妊娠の有無を確認(異所性妊娠の可能性)




壁が肥厚し拡張している、内部に糞石がみえる。




CT:虫垂周囲に脂肪濃度の上昇 → 炎症所見


CT鑑別疾患として、胆石症、急性胆嚢炎、膵炎、消化性潰瘍穿孔、絞扼性イレウスなどが挙げられる
この他、上行結腸憩室炎など


治療:虫垂切除術急性虫垂炎で、先に、内科的治療で抗菌薬が著効しなかった場合なども行う)、軽症(腹膜刺激症状がないなど)であれば保存的治療のこともある(抗菌剤、絶食)


<手術選択について>  (次の項目で記載あります)


・軽症から中等症例:McBurney交叉切開

・中等症から重症例(膿瘍形成しているような例):傍腹直筋切開


現在の手術適応というのは、膿瘍のある虫垂炎であっても緊急手術をすぐに行わないこともある


これには、膿瘍が広がってなく、痛みが限局的である場合には絶食輸液の管理下抗菌薬を数日投与


し、膿瘍を縮小させた後に手術を行うということができるためである。



(ただし、抗菌薬投与をしても増悪するようであれば手術を検討。)


・稀なケース:膿瘍形成性虫垂炎では、虫垂の切除だけでなく、右半結腸切除術も同時に行う例もある。



・幼児の急性虫垂炎(幼児の急性腹症の中で、およそ半分を占める)では、急速に症状が進んで、穿孔を起こすことが比較的多い。ここから、汎発性腹膜炎を生じる。

発熱は37度台だが、穿孔すると高熱を生じる。


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虫垂切除術について


・虫垂切除術で切開する筋は腹横筋、外腹斜筋、内腹斜筋である。


McBurney圧痛点を通る皮膚切開であることから、切開する筋肉を把握することができる。



McBurney交叉切開で皮膚切開後に皮下組織を剥離することで外腹斜筋腱膜が現れる。



外腹斜筋腱膜を小切開し、線維方向に切開を広げると、その下に内腹斜筋がでてくる。



③筋鉤(きんこう)※で内腹斜筋の筋繊維を分ければ腹横筋が現れ、さらに腹横筋を分けることで腹膜に至る。




※筋鉤:ランゲンべック扁平鉤などがある。開創した術野を広げるための道具。



・最近では、整容面も考慮され、腹腔鏡での虫垂切除術が主流となってきている。


クローン病(Crohn病)と潰瘍性大腸炎について


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クローン病


・クローン病の発症は10代、20代に多い



・原因不明の慢性非特異性肉芽腫性炎症(非乾酪性肉芽腫)であり、大腸や小腸に好発。水分や栄養の吸収障害あり。



・血液検査では、貧血、CRPの上昇、赤沈の上昇、低タンパク血症などがみられる。



・症状は間欠的腹痛や頻回の下痢、痔瘻などが挙げられる。



・クローン病の病変は腸管壁全層に炎症が波及し、肛門部潰瘍瘻孔性の病変痔瘻)を伴う。

腸狭窄症状も見られることがある。




また、典型例では回盲部から症状が始まり、非連続性(skip lesion)を呈する。


所見として敷石像がみられる。(小腸の造影などでは縦走潰瘍がみられる)



・まだ根治療法は確立していないことから、寛解の維持でQOLを保つのが目標。


クローン病の組織学的特徴として


消化管造影では陥凹していればバリウムが多く付着するため、白色となる。


隆起があれば黒色となる。


→ このため、クローン病において縦走潰瘍となる。これが敷石像にみえる。


(これは腸結核との重要な鑑別となる)


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潰瘍性大腸炎


これに対し、潰瘍性大腸炎連続的びまん性病変であり、直腸から始まることが多い。口側まで。

(しかし、肛門部はクローン病の方が多い)



しぶり腹がみられる(IBSとは対照的である)。直腸が浮腫で排便後も便意を感じて、すっきりしない状態である。



・原因不明の慢性炎症性疾患で、好発年齢は10代後半から30歳代



・また、10年以上経過すると癌化する率が高いと言われている。


※潰瘍性大腸炎による大腸癌危険因子については次の項目参照



・潰瘍性大腸炎では小腸造影においては、血管透見像消失となる。(これは、極軽症例でも認められる)


正常の大腸粘膜では粘膜下を通る血管が透見される。

透見されない場合は粘膜の浮腫を考え、炎症があることを疑う。




炎症がひどくなるにつれて、発赤、びらん※、潰瘍、膿性粘液、出血などの所見がみられるようになる。


びまん性:病変部に健常な粘膜が混在していないことをいう。



・造影所見:haustraの消失、カフスボタン様、二重輪郭像、pseudopolyposis、鋸歯像(serration)



下痢症状として、便失禁、残便感(浮腫のため便意を感じる)などもみられる。


潰瘍性大腸炎に合併する大腸がんの危険因子について


  • 全大腸炎型

  • 10年以上経過した慢性持続型

  • 10歳代の若年発症型

  • 原発性硬化性胆管炎の合併

  • 大腸がんの家族歴あり


便の特徴的所見について


黒色便上部消化管の出血性病変(消化器編③参照)から起こり、重要な所見である。テール便やタール便と言われる。



粘血便大腸出血性病変などが考えられる。暗赤色から鮮紅色の便で、大腸癌、潰瘍性大腸炎などがある。



脂肪便:脂肪の吸収障害によってみられる。膵外分泌という、食べ物の油脂成分のミセル化が障害された状態である。

下痢状で、脂肪性の便膵炎膵嚢胞性繊維症など膵液分泌不全によって起こるもの。



灰白色便:糞便色素の元である胆汁の腸内分泌に問題があると考えられる。腸管内のウイルス感染でも起こりうる。



※鑑別の注意として、腸管免疫が低くウイルス感染を繰り返しているものや、潰瘍性大腸炎の免疫異常(かなり軽微な状態)からくるもの、発症前の患者も含まれることもある。


重症度判定に必要なこと



1日6回以上の下痢


血便の増加


37.5℃以上の発熱


脈拍が90回/分以上


Hb が10g/dL以下


赤沈が30mm/hr以上



※①と②の他、③または④を満たし、かつ6項目中4項目以上を満たすものを重症とする。



潰瘍性大腸炎の大腸がん発生危険因子について


①全大腸炎型


②慢性持続型:10年以上経過したもの


③若年発症型:若年期から長期に炎症が継続したもの




項目Crohn病潰瘍性大腸炎(UC)腸結核※1
好発年齢・好発部位若年者・全消化管
(特に回盲部
若年、中高年・全大腸高齢者・十二指腸から大腸
(特に回盲部
特徴非連続性、区域性直腸から口側に連続性区域性
経過再燃、寛解を繰り返す 再燃、寛解を繰り返す 、長期で癌化腸管に初感染の場合と、肺結核から続発的に発症する場合がある
主な症状下痢、腹痛、発熱、体重減少など粘血便、下痢、腹痛、発熱など下痢、腹痛、血便、腫瘤触知
合併症難治性痔瘻など
瘻孔、狭窄、穿孔、関節炎、栄養吸収障害など
中毒性巨大結腸症※2
・大腸癌
サイトメガロウイルス(CMV)腸炎※3
・原発性硬化性胆管炎
・壊疽性膿皮症
・結節性紅斑
など
(詳細は次の項目で記載)
腸狭窄、瘻孔、穿孔など
内視鏡・X線所見敷石像、縦走潰瘍血管透見像消失、偽ポリポーシス4、ハウストラの消失(鉛菅像)・輪状、帯状の狭窄
・潰瘍
・萎縮性瘢痕
主な病理所見全層性炎症、非乾酪性類上皮細胞肉芽腫・粘膜層に限局した炎症
びまん性炎症細胞浸潤
陰窩膿瘍(強拡大画像)
杯細胞の減少
・陰窩の萎縮腺
・腺の配列異常、異形成
乾酪性肉芽腫
・全層性炎症
・生検で結核菌培養陽性
Langhans巨細胞
(病理画像):多核巨細胞
・類上皮細胞が多い
・リンパ球の浸潤
治療薬物療法、栄養療法薬物療法、外科治療抗結核薬、難治性では外科的切除
鑑別のための比較表


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※1 腸結核結核菌が腸粘膜下層の腸管リンパ管の走行に沿って進展し、輪状潰瘍を呈するもの。


肺結核の約1%でみられる。肺病変が無い、原発性腸結核の頻度が高い。


腸管壁の乾酪性肉芽腫がみられる



この場合、小腸造影では輪状潰瘍がみられる。回盲部が好発部位。腸壁の変形、辺縁不整、伸展不良などの所見を呈する。




検査:下部消化管内視鏡検査、結核菌培養、生検でPCR、乾酪性肉芽腫の確認、ツ反検査、IGRA(インターフェロンγ遊離試験)


※2 中毒性巨大結腸症 :横行結腸中央部の直径が6cm以上に拡張したもの。適切な治療をしないと予後不良となる


 ・これは、潰瘍性大腸炎Crohn病などの重症例の徴候である。大腸癌とは関係ない。



 ・急性では、急性大腸偽性腸閉塞症、中毒性巨大結腸症などがある



 ・慢性では、成人型Hirschsprung病(ヒルスシュスプルング)や慢性偽性腸閉塞症などがある


いずれも大腸癌との関係性はないと考えられている。(確定ではないが)




成人型Hirschsprung病(指定難病291):全結腸型又は小腸型がある。


消化管の蠕動運動に必要な神経細胞が、肛門から連続欠如しており、その範囲の消化管の運動がなく、腸閉塞をきたす疾患である。



<参考>

詳しくは、難病情報センターでご確認下さい
ヒルシュスプルング病(全結腸型又は小腸型)(指定難病291) – 難病情報センター (nanbyou.or.jp)
(閲覧:2021.9.9)




禁忌薬:抗コリン薬、鎮痙薬、モルヒネなど腸管運動低下させるもの


禁忌手技:内視鏡腸内圧を高めるような手技、検査は穿孔を起こしやすくするため禁忌。


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※3 サイトメガロウイルス腸炎(CMV):大腸内視鏡検査では打ち抜き状潰瘍がみられる。


回盲部に好発する、深い潰瘍。これは、免疫不全状態でみられる


治療薬として、ガンシクロビルがある。


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※4 偽ポリポーシス:多発したポリープ様のものであり


治療をせずに潰瘍性大腸炎の炎症が高度となった状態


クローン病との鑑別が難しい。放置すると癌化に至るため治療が必要。


<参考>

潰瘍性大腸炎の偽ポリポーシスって何? - ららぽーと横浜クリニック (lala-clinic.jp) (閲覧:2021.8.30)

潰瘍性大腸炎(UC)はどんな病気なの? |炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)の情報サイト「IBDステーション 」|武田薬品工業 (ibdstation.jp)(閲覧:2021.8.30)

クローン病(指定難病96) – 難病情報センター (nanbyou.or.jp) (閲覧:2021.8.30)

腸結核|オリンパス おなかの健康ドットコム (onaka-kenko.com) (閲覧:2021.8.30)




この他、IBS十二指腸潰瘍、ベーチェット病、大腸憩室症なども鑑別が必要。



潰瘍性大腸炎の腸管合併症について


腸管合併症では、狭窄や閉塞、瘻孔や膿瘍、出血、穿孔、中毒性巨大結腸症、大腸癌サイトメガロウイルス腸炎(CMV)などがあり


潰瘍性大腸炎の腸管外合併症について



Crohn病と違う点として、内瘻形成がないこと。(病変が粘膜下層に留まっている)



(1)肝・胆・膵系:原発性硬化性胆管炎、脂肪肝、肝硬変、胆管周囲炎、膵炎(高アミラーゼ血症)など



(2)筋・骨格・関節系:多発性関節炎、骨粗鬆症、強直性脊椎炎など



(3)皮膚:壊疽性膿皮症、結節性紅斑



(4)眼:上胸膜炎、虹彩毛様体炎、ぶどう膜炎



(5)泌尿器・生殖器系:尿路結石症



(6)血管・心肺系:深部静脈血栓症、血栓性静脈炎



(7)その他:口内炎(アフタ)


治療法について


薬物療法:ステロイド(重症例で第一選択)メサラジン(5-ASA)、サラゾスルファピリジン(SASP)(軽症から中等症での第一選択)、6-MP、抗TNF-α抗体(インフリキシマブ、アダリムマブ等)、免疫抑制剤(アザチオプリン、シクロスポリン)など


大腸、肛門病変部には、メトロニダゾールシプロフロキサシンなどの抗菌薬を用いる。


活動性結核があれば、免疫を抑えるような薬は使用禁忌(致死的)であるため、腸結核との鑑別は特に重要!


→ 結核のスクリーニングについて:IGRAを用いると偽陽性は少ない。(BCGでは結核なのか、BCG摂取によるものか判別できない。)


※IGRA白血球をBCGには含まれていない結核特異抗原と培養することで、T細胞からつくられるインターフェロンγを定量する方法。


顆粒球除去療法(GMA)、白血球除去療法(LCAP)炎症の原因となる白血球を選択的に取り除く治療方法である。


これは、保険適用となっており、薬物療法、栄養療法が無効の難治例に併用することで効果が増すと考えられている。副作用頻度は5%程と低い。


非薬物療法:中心静脈栄養(入院が必要)、成分栄養療法(経腸栄養剤など)



中心静脈栄養の注意点:カテーテルを入れるため、合併症として発熱右鎖骨下静脈の血栓性狭窄などに注意が必要。


外科的治療イレウス消化管穿孔大量出血例では絶対適応


その他、難治性狭窄痔瘻などでは必要に応じて行う。



・重症、難治例、癌化例、重大な合併症では外科治療となり


大腸全摘 + 回腸肛門管吻合術などが標準


クローン病の特徴的所見について


・Skip lesion:非連続性、区域性病変


・Cobblestone appearance:敷石像


・All layer lesion:全層性病変(形質細胞とリンパ球の浸潤)→ 粘膜よりも粘膜下層の炎症が強い


・Granuloma:肉芽腫


・fistula:瘻孔、痔瘻




他、アフタ様潰瘍、難治性潰瘍、裂肛、裂溝、痔瘻、腸管狭窄、バラのトゲ状潰瘍(fissure)


その他の類似疾患について


大腸黒皮症(大腸メラノーシス)


アントラキノン系の下剤(大黄、センナ、アロエ等の成分)の連用で起きると考えられている。


これは、大腸粘膜にメラニン様色素が沈着して表面が褐色網目状を呈するもので、大腸内視鏡で偶然見られるもの。治療の必要性は無い


偽膜性腸炎(Clostridium・difficile腸炎:クロストリジウム・ディフィシル)

→関連項目はこちらから


抗菌薬の使用により、腸内細菌のバランスが崩れることで発症するもの。


憩室炎、憩室出血


中年~高齢者で発症が多い。憩室炎では、急性であり持続的腹痛および発熱がみられる。

憩室出血においては、腹痛や発熱を伴わない下血がみられる。


虚血性腸炎


急性疾患で、腹痛のほか、血便がしばしばみられる。軽度であれば数日で自然緩解する。
左側の結腸が好発部位であり、直腸などでは通常は認められない。



虚血性大腸炎では、鑑別時の病理所見では


上皮細胞が脱落し、腺菅の構造だけが残るという腺管の立ち枯れ像が特徴的。


また、ヘモジデリン貪食マクロファージなどもみられる。


非閉塞性腸管虚血症(NOMI)


腸間膜血管主幹部に器質的な閉塞が無いが、血管攣縮によって分節性・非連続性に腸管虚血をきたす疾患である。


致死率は高く予後不良疾患である。


鑑別の為、造影CT、血管造影が有用


→ 所見として上腸間膜動脈の分岐部狭窄や不整像(string of sausage sign)腸管壁内血管の造影不良などがある。


腹膜偽粘液腫


ムチン性嚢胞腺腫の腫瘍壁破裂腹腔内転移によって、腹腔内に粘稠度の高いゼラチン状の物質が貯留したもの。



虫垂卵巣が原発巣の事が多い。



・腫瘍マーカーであるCEAやCA19-9が高値となる



・手術ではゼリー状貯留液をかきだして除去するが、完全除去には至れず、再貯留して再手術となることが多い。


そのため、手術回数が多くなって、腸管も徐々に巻き込むため通過障害をおこしていき最終的に食事がとれない状態になっていく。


→ そのことから、組織学的に悪性度は低いものだが、臨床的にみれば悪性といえる疾患である。


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感染性腸炎


アメーバ性腸炎(赤痢アメーバ)など。海外渡航歴を聴取すること。


合併症として肝膿瘍(約5%)がある。


これは単発性であり右葉に多い。膿瘍の状態はチョコレートまたはアンチョビペースト状といわれる。



・原虫である赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)が病原体の大腸炎では、粘血便、下痢、テネスムス、腹痛などの症状を示す。


腹壁血腫


・アスピリン等の抗凝固薬、抗血栓治療薬等の服用により、出血傾向となり、急な体動後に筋肉痛のような腹痛がみられるもの



腹直筋内外腹斜筋領域などの筋繊維の断裂で出血がおこり、血腫となるもので、稀な疾患である。



・この疾患であれば、多量出血によるショックの兆候である、バイタルサインの確認すること。


また、内臓は問題ないことから、悪心嘔吐、便通異常、反跳疼痛、腸雑音なども問題は無いはずである。



・症状は突然の腹痛で、強い痛みがある。


血腫形成の促進因子は多い順から


 ・咳、くしゃみ、排便、排尿時などによる激しい筋収縮


 ・抗血栓療法などによる出血傾向


 ・高血圧症


などが挙げられる


診断方法ではCarnett's sign(カーネット徴候)を診る。(これだけでは判断しないこと)


 ①圧痛の最も強い部位を特定し、中等度の圧痛を起こすくらいの圧をかけること。


 ②そのまま患者には頭や肩を起こし、半座位のような体位になり、腹筋を緊張させる


 この時に、触診部位の圧痛が増強されるようであれば陽性と判断する。



・基本的には予後は良好であり、治療は安静のみでよいが、場合によっては抗血栓薬の服薬は変更または中止となる。


観血的処置について


抗血栓療法中の患者に対しては、出血の観点から観血的処置(生検等)は禁忌としてきた


そのため、抗血栓薬は休薬し検査をするが、その間に脳梗塞や心筋梗塞などを起こすリスクもあるため


また、抗血栓薬服用中であっても出血時の止血は可能であることから


症状に応じて休薬はしないか、最低限の休薬期間とする


またはヘパリン置換を行って処置をするようになってきている。


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大腸憩室症


腸管内圧の上昇により、粘膜と粘膜下層が腸管の脆弱部分で漿膜側にヘルニア状に突出しておこる仮性憩室。栄養障害は無い。


ポリープ形成


通常は無症状だが、大きくなることで、出血や便秘、腹痛などがみられることがある。


腸管皮膚瘻


消化器外科術後にまれに発生するもの。合併症の一つ。


腸管Behcet病(ベーチェット)


打ち抜き状潰瘍がみられる。


単純性潰瘍


打ち抜き状潰瘍がみられる


急性冠症候群


まれに腹痛を生じることがある


ステロイド抵抗性の重傷潰瘍性大腸炎


サイトメガロウイルス(CMV)腸炎の合併率が高い


このため、採血または下部消化管内視鏡検査CMVの検索を行う必要がある。


ステロイドの使用で炎症の軽減はあったとしても、免疫能の低下でCMVの再活性化によってCMV腸炎を合併する可能性を念頭に検査をする。


腸腰筋膿瘍


・背部痛、発熱などの症状があり、足の可動をすることで痛みが強くなる。


急性膵炎(膵疾患編でも解説あり)


心窩部痛、背部痛、悪心・嘔吐、食欲不振、発熱、腹膜刺激症状などを呈する。


腹筋を緊張させることで、圧痛は軽減がみられる。


肛門周囲膿瘍


肛門と直腸の境目にある肛門陰窩に開いている肛門腺


下痢便などが入ってしまうことで化膿し発症するもの。


症状は、発熱、肛門痛などがある。


上腸間膜動脈閉塞症


血栓、塞栓を原因として発症する腸管・腸間膜虚血症であり、致死的な腹部救急疾患である。


確定診断に、腹部造影CTを選択。腸管壊死では、門脈内ガス像を認めることがある。


腸重積症

→関連ページはこちら


腹痛や嘔吐(上部消化管の場合)、下血、間欠的腹痛が主訴となる。


CTでは異常な拡張、層状の重責がみられる。


水分・栄養の吸収不良を起こす病因について


栄養の吸収障害は脂肪、蛋白、糖質の順で起こる



(1)吸収部位の減少:胃切除、小腸切除(短腸症候群)



(2)小腸粘膜障害:セリアック病、Whipple病、アミロイドーシス、SLE、IgA重鎖病、無β-リポ蛋白血症、悪性リンパ腫、放射線照射後腸炎、クローン病、ランブリア症



(3)腸管運動亢進:カルチノイド症候群、甲状腺機能亢進症



(4)腸管運動低下:甲状腺機能低下症、強皮症(腸内細菌増殖)



(5)消化酵素活性化障害:乳糖不耐症、Zollinger-Ellison症候群



(6)膵外分泌障害:慢性膵炎、膵癌



(7)胆汁酸障害:肝硬変、胆管閉塞、腸内細菌増殖(blind loop症候群)



(8)タンパク漏出:うっ血性心不全、収縮性心膜炎、腸リンパ管拡張症


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虚血性大腸炎について


50歳以上の高齢者、便秘がちの人に多く(若年例も増えてきている)


突然の強い下腹部痛にその後


(水様)下痢症状があり、徐々に血性下痢(一過性)となることが多い。



腸管の血流障害(大腸の静脈側の小血管領域が主体)で虚血状態


となって、粘膜障害粘膜下出血をきたしやすい。


可逆的な障害に留まることが多い。(一過性型)


直腸を除く左半結腸脾湾曲部、下行結腸、S状結腸に発生する


これは、下腸間膜動脈は末梢での吻合が少ないためと考えられている



・診断には抗菌薬が未使用で、便培養陰性であることが必須



・画像診断では、特徴的(注腸造影内視鏡で炎症像:結腸ヒモひ沿って縦走潰瘍(これは、Crohn病でもみられる)、X線での拇指圧痕像(thumb printing))



基本的には保存療法だが、壊死型などの重症例では緊急手術が必要なため、早期に大腸内視鏡検査を行う。大部分は、2~4週間で寛解する。



再発はまれである



・特徴的な生検組織像:腺管の立ち枯れ像ヘモジデリン含有マクロファージ※の存在


ヘモジデリン(血鉄素)含有マクロファージ:ヘモグロビン含有の鉄に由来する黄褐色の顆粒で、マクロファージに貪食された赤血球やヘモグロビンがリソゾームで分解、処理される過程で作られるもの。



何らかの原因で鉄が過剰に蓄積されるとヘモジデリンが様々な臓器に沈着して組織障害を起こす。



ヘモジデローシス(血鉄症)


組織内にヘモジデリンが沈着した状態。大量の輸血、出血、溶血性貧血、慢性うっ血などが原因で起こる。



ヘモクロマトーシス(血色症)


ヘモジデローシスに加え、リポフスチン様の沈着を伴い組織障害が強いもの。これにより肝硬変糖尿病を引き起こすことがある



・腹痛、下痢、血便のある類縁疾患として、大腸癌、憩室炎、感染性腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病などがある。


大腸がんの下痢は、狭窄が強くなるとみられるが、急激さはないといえる



腹痛のない鮮紅色の下血直腸癌、内痔核、憩室出血、薬剤性出血性大腸炎がある。



動脈硬化腸管内圧の亢進による腸管の虚血によって生じる粘膜障害である



・この動脈硬化の原因となる高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動などは虚血性大腸炎の発症危険因子である



この他、便秘、通常量より多い緩下剤の服用、浣腸なども腸管内圧を亢進させるため危険因子となる


重症度により3分類される



一過性型軽症であり、多く見られる。治療は絶食、輸液、安静による保存的治療となる。



狭窄型:炎症が数週間から数カ月続き、狭窄が起きて手術が必要となることが多い。



壊死型緊急性があり、広範囲で腸管切除が必要となり、予後不良である。


これは、炎症所見の他、LDH、CK値が高くなり、血液ガス分析で代謝性アシドーシスとなる。


虚血性大腸炎の好発部位について


左側結腸(脾湾曲~S状結腸にかけて)好発する。

ここでは、血管吻合が他の領域と比べてやや粗のため、血流低下をカバーできずに虚血に陥りやすい。


頻度の高い順では



下行結腸:34~50%


S状結腸:32~40%


・横行結腸:20%


・上行結腸:6%


・回盲部、直腸:4%

<参考>

突然の腹痛や血便―虚血性大腸炎  腸閉塞や重篤化の危険も|医療ニュース トピックス|時事メディカル|時事通信の医療ニュースサイト (jiji.com)(閲覧:2021.9.1)


各種大腸疾患の好発部位について


疾患好発部位
Crohn病(クローン)回盲部
Behcet病(ベーチェット)回盲部
腸結核回盲部
MRSA腸炎小腸、上行結腸
出血性大腸炎横行結腸
虚血性大腸炎左半結腸
偽膜性大腸炎直腸、S状結腸
大腸癌直腸、S状結腸
潰瘍性大腸炎直腸から始まり全結腸へ
各種大腸疾患の好発部位について



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上腸間膜動脈閉鎖症について


・腸管梗塞を示唆するCK、LDの上昇



・CT検査では上腸間膜動脈の造影欠損が認められる。(壊死部位である)



動脈経が静脈経より太い。腸管の造影に左右差がみられる。



心房細動(AF)や弁膜症、虚血性心疾患などの既往では

心原性血栓の可能性を考慮


血栓形成により、腸管で血管閉塞により発症)



・急性の閉塞を生じることで、腸管壊死、腹膜炎、敗血症へと至る。


致死率の高い予後不良の疾患


典型例として


初期に突然強い腹痛を発症するが、腹膜刺激症状が無く


進行して腸管壊死に陥ってから腹膜刺激症状がみられる


他に、麻痺性イレウス、ショックなど。



このため、早期に腹部造影CTを行うことが重要である。



所見:上腸間膜動脈の造影欠損閉塞していることを意味する)。


進行すると、腹水、腸管壁内ガス、門脈内ガスなども認められる。




治療:緊急開腹術で、血栓除去、壊死部位の腸管切除


また、可能であれば、診断がつき次第、腹部血管造影を行い


カテーテルから薬剤の持続投与(血栓溶解剤や血管拡張薬)を開始する。


上腸間膜閉塞症の治療について


IVR(Interventional Radiology)が近年発展、普及していることで


早期診断された上腸間膜動脈閉鎖症に対して


経カテーテル的に血栓溶解・吸引療法や血管形成術などのIVRを施行して


腸管血流を再開させて、腸管切除、回避もしくは切除範囲を縮小させる。




適応:虚血腸管が壊死に陥っていないこと。IVRは発症後10時間以内が良いとされる。



禁忌として、腸管壊死のあるもので、上腸間膜動脈塞栓術は増悪させる。→ 壊死部位は切除すること


虚血性大腸炎と急性腸間膜動脈塞栓症のまとめ


項目虚血性大腸炎 急性腸間膜動脈塞栓症
閉塞部位末梢(細小動脈の閉塞)中枢(太い動脈の閉塞)
患者背景高齢者、便秘心房細動(AF)、心腔内血栓存在
症状下痢、下血、腹痛(左下腹部)持続性の強い腹痛
診断大腸内視鏡、注腸造影CT、腹部血管造影
治療保存療法緊急手術
予後良好不良
虚血性大腸炎と急性腸間膜動脈塞栓症のまとめ


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偽膜性腸炎について


偽膜はCD感染症の半数ほどでしか見られない。


このため、偽膜性腸炎は今では、C.difficile感染症


呼ぶことが一般的となってきている。



・クロストリジウム・ディフィシルは


現在は分子遺伝学的な検索によって属名が変わったため


Clostridioides difficile(クロストリディオイデス・ディフィシル)と呼ばれるのが今後正式となっていく。



・診断は内視鏡検査となる。黄白色の付着物がみられる(これが偽膜)。血管透見の確認。



嫌気性菌C.difficile(クロストリジウム・ディフィシル)の異常増殖によって発症する(CD感染症という)


これは、広域抗菌薬※による菌交代症PPIなどが原因となる。


セフェム系、クリンダマイシン、NQ系が多いとされる(腸内細菌叢の変化が原因)


・抗生剤使用中または使用後に発症し、(数日から数週間後の)下痢(緑色)、腹痛、発熱などを呈する。


また、タンパク漏出による低アルブミン血症を伴いやすい。


初期の内視鏡検査像としては小円形、半球状の小隆起である偽膜(黄白色)が直腸からS状結腸に好発するのが典型的




・CDは芽胞形成性のグラム陽性桿菌であるが、一般的な培地では便培養が困難であることからdifficileという。




・症状は、水溶性下痢発熱が主となる。CDトキシンが原因である。


→ CDトキシンの検出(トキシンA、トキシンB)を行うが、感度は低く、C.difficile抗原(GDH抗原)を併用して検査をし、更に便のPCR検査を行うことが推奨となっている。



注意:このタイプの下痢には止痢剤(ロペラミドなど)は禁忌である。(排菌や排毒素が必要なため)



・感染リスクのある患者は高齢者、HIV感染者などである


・治療方針としては、原因となっている抗生剤の中止補液メトロニダゾールバンコマイシンの経口投与となる。



軽症例では治療や予防として乳酸菌製剤を投与して細菌叢の安定化を図ることもある。


メトロニダゾール:抗トリコモナス剤、赤痢アメーバトリコモナスなどの原虫疾患にも有効。


バンコマイシン:グリコペプチド系抗菌薬、グラム陽性菌に有効であり、MRSA感染症、耐性腸球菌にも有効。
内服では吸収はされないため、内服の適応偽膜性大腸炎骨髄移植時の腸内プレパレーションとなる。


(参考:術前の腸管プレパレーション (臨床雑誌外科 69巻3号) | 医書.jp (isho.jp)(閲覧:2021.9.8))


副作用:腎障害、第Ⅷ脳神経障害などがある。



腸内プレパレーション


物理的に腸管内容を排泄させるmechanical preparation(MBP)と


経口抗菌薬を投与するchemical preparation(CBP)に大別される。


日本ではMRSA腸炎を危惧してMBPのみということが多い。



イレウスや重症例ではメトロニダゾール静注も可



・諸外国で偽膜性腸炎には糞便移植が有効との報告もあり、まだ日本においては研究段階である。


・検査値:BUN、Crが高値の時、抗生剤による腎機能障害HUS(溶血性尿毒症症候群)※の可能性を考える。



HUS腸管出血性大腸菌感染3~8日の潜伏を経て発症する食中毒下痢、血便、腹痛、血尿で発症する。


βラクタム系の抗生剤でベロ毒素の遊離が促進されて、合併症としてHUSのリスクが高まる。



感染性腸炎との鑑別について


・下痢回数は10回/日以上


生モノの摂食がある


・1カ月前から抗菌薬の服用歴(薬剤性との鑑別)と海外渡航歴について問診が必要


薬剤性腸炎の鑑別について


項目偽膜性(大)腸炎出血性(大)腸炎MRSA腸炎
原因菌C.difficileが主Klebsiella oxytocaが主MRSA
起因薬物主にセフェム系合成ペニシリンなどペニシリン、セフェム系
好発高齢者、重篤な基礎疾患あり青壮年高齢者、胃切除後
発症までの期間数日~数週間数日術後数日
発症様式緩徐急激緩徐
臨床所見水様下痢
・腹痛
・発熱
・炎症反応高値
CD毒素陽性
・麻痺性イレウス(重症例)
・消化管穿孔
中毒性巨大結腸症への移行(無治療の重症例)
・突然の腹痛
・水様下痢にはじまり、血性下痢と至る(トマトジュース様
・発熱や炎症反応は少ない
・激しい水様下痢(緑色)
・腹痛
・発熱
・麻痺性イレウス
好発部位直腸、S状結腸横行結腸より口側主に小腸
内視鏡的所見偽膜(黄白色)、浮腫、びらん発赤、びらん、出血、浮腫発赤、浮腫、びらん
治療原因薬物の中止
メトロニダゾール
バンコマイシン(内服)
・輸液
原因薬物中止(速やかに改善みられる)
・輸液
原因薬物の中止
・バンコマイシン(内服)
・輸液
院内感染対策
薬剤性腸炎の鑑別について


※下痢症について:院内発症では抗生剤関連を考え、市中発症ではカンピロバクター、サルモネラ属、病原性大腸菌などの食中毒を疑う。市中感染では便培養を行う


薬剤性大腸炎の原因となる抗生剤は、腸管の正常細菌叢に影響を及ぼしやすい種類である。


特に、嫌気性菌に有効のものであるクリンダマイシン、βラクタム系などの胆汁排泄型ものが多い。


腎排泄型であるニューキノロン系(NQ系)、アミノグリコシド系などは原因となりにくいとされる。
これは、腸管移行が無いためである。



他疾患の毒素、検査について


・ベロトキシン:O-157に代表される腸管出血性大腸菌の一部が産生する毒素。市中発症であれば鑑別対象



・β-D-グルカン:真菌感染症マーカー


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急性出血性腸炎について


抗菌薬服用後腹痛、粘血便がみられる



・内視鏡検査では上行結腸にびまん性の出血性病変がある



・原因菌はKlebsiella oxytoca大腸菌など



※腸炎ビブリオ、サルモネラ菌は食中毒菌なので今回とは違うことは注意です。


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MRSA腸炎について


・正式名はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌腸炎で、かつての抗菌剤メチシリンは耐性ができており、使われなくなっているため、バンコマイシンというMRSAにも効果のある抗菌剤が開発されたという経緯がある。

このため、院内感染症対策が必要である。



・患者背景として、侵襲の大きい手術後上部消化管手術後が多い)、抗生剤として第三世代セフェム系を使用していること



・1日10回前後の緑色調の水様便がみられる



・便培養により、球状病原菌がみられる



MRSAであればコアグラーゼ陽性(血漿凝固作用)を示す。ただし、表皮ブドウ球菌ではコアグラーゼ陰性である。


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Lemmel症候群について


関連ページは消化器編②にも記載がありますので、再度ご確認ください。


十二指腸憩室に食物残渣がたまり、胆管・膵を圧迫することで胆管炎や膵炎をきたす疾患である。


これは、症状がみられてLemmel症候群ということから、十二指腸憩室 ≠ Lemmel症候群であることに注意する



女性に比較的多く、中年以降で頻度が増す傾向がある



下行脚内側にみられることが多い(7、8割ほど)。辺縁平滑な陥凹性病変がみられる。



・大部分が筋層を欠く仮性憩室である。



・炎症などによる癒着で牽引されるような牽引性というのは少なく、脆弱部分が内圧によって押し出される圧出性である。


これらから圧出性仮性憩室といい、後天性疾患である。



腹痛や黄疸、膵炎など症状がみられるものは手術適応である。症状が無ければ特別な処置は不要


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消化管憩室の構造分類について


部位が同じでも真性か仮性で名称が異なりますので、注意してください


項目真性憩室仮性憩室
憩室部位の構造消化管の内側からみて、
粘膜層、筋層、漿膜の全層が突出している
突出部位は粘膜層、筋層、漿膜のいずれかが欠損している

(多くは筋層が欠損する
→このため、生検禁忌である:薄いため穿孔のおそれがあるため)
好発部位Rokitansky憩室
(ロキタンスキー):食道憩室

胃憩室

Meckel憩室
(メッケル):回腸憩室
Zenker憩室
(ツェンカー):食道憩室

横隔膜上憩室

・Meckel憩室を除く、
十二指腸・大腸憩室
消化管憩室の構造分類について


Meckel憩室について


Meckel憩室(メッケル) の診断は原因不明の右下腹部痛や消化管出血(胃~小腸の出血として、黒色便がみられる)の際に疑うこととなる。


多くは無症状であり、腹痛のない反復の多量下血によってみつかることがある。




・合併症として、臍と腸管を繋ぐ索状物(卵黄腸管の遺残)があり、そこを起点として絞扼性イレウスを生じることがある。


また、腸重積出血迷入した異所性胃粘膜による消化性潰瘍)を生じることもある。




・画像診断においては、小腸造影、血管造影(大量出血が持続している場合)があるが、簡便なものとして99mTc-pertechnetateシンチグラム99mTcO4-シンチ※)があり、これは病変部に集積する。



99mTcO4-シンチ胃と膀胱の中間にスポット状の取り込みがみられることが、異所性胃粘膜の存在を示唆している。




回盲弁から口側15~100cmの回腸にある。検査では注腸造影を行い、類円形の壁外性突出がみられる



胎生期卵黄腸管(消化管と卵黄嚢を結ぶ)の遺残である。
つまり、先天性疾患であり、一本であることから、単発性である。



腸間膜付着部対側にできるものである。



胃粘膜の迷入がみられる。



・発症頻度については、胃粘膜が60%、膵組織が4%ほどであり、頻度は全人口の2%ほど、2歳以下の発症は50%である。まれに若年成人期にもみられる。


→ 異所性胃粘膜なので、胃液を分泌し消化性潰瘍を発生して出血や穿孔を起こすことがある。
また、憩室炎の合併症、内翻による腸重積腸軸捻転症などを起こすことがある。



・組織学的には粘膜、筋層、漿膜の全層からなる真性憩室である。(上記の表: 消化管憩室の構造分類についてを参照)



・腫瘤触知はまれのこと


治療


憩室炎、潰瘍などの合併症を生じるとき:まずは禁食、安静、H2ブロッカー、PPI投与など内科的治療を行う。


治療効果不良時または出血、穿孔、イレウスがあるとき:憩室を含んで回腸部分切除となる。


憩室出血ではクリッピング術も適応



また、手術中に発見することもあり、その際は出血や感染予防のためにもMeckel憩室切除術を行うことが多い


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大腸憩室について

→関連項目はこちらから


・多くは仮性憩室であり、腸間膜の反対側に好発。日本においては上行結腸盲腸に多い



・発症要因として、低残渣食がある。


これは、低残渣食で腸管内容物が減少することから、腸管の内圧が上がり、運動量が増加し憩室が発生すると考えられる。



・男性に多く、40歳以上でみられてくる。



・日本人では右側結腸に多く生じる。しかし、食の欧米化に伴い左側結腸に生じることも多くなってきている。



便潜血反応陽性だが、炎症や穿孔所見が無い場合は経過観察でよいということになるが


がん検診などでひっかかったのであれば、まずは全大腸内視鏡検査またはS状結腸内視鏡検査+注腸造影を行うことが推奨となる。(注腸造影自体は減ってきている)



大腸憩室症の合併症炎症、出血、膿瘍などがある。


これらの症状が無く、自覚症状も乏しいようであれば治療はしないで経過観察でもよい


治療は、病状悪化させないため便通調整が主体である。


そのため、緩下剤投与繊維質の多い食事をするよう指導ということになる。


合併症の出血に対しては、出血動脈を塞栓する塞栓療法をとる。


大腸憩室症の検査について


大腸憩室症の検査では注腸造影等を行うが、前処置では腸の残便を減らすため、検査前日は低残渣食の投与と強力な下剤(ピコスルファートNaなど)を投与して腸内容物を排泄させてからの検査となる。



高圧浣腸は禁忌:特に肛門に近い腸管で炎症などがあるならば、穿孔の危険性があるため禁忌である。



高圧浣腸小児の腸重積症に対する治療である。


大腸憩室炎について


・日本人では右側結腸に憩室炎を起こすことが多い。



・炎症により、周囲の脂肪組織への炎症波及がみられることで、脂肪濃度が上昇する所見がみられる



高吸収域では糞石疑い



・鑑別疾患として、虫垂炎、腎臓の細菌感染症などがある。


→ 急性虫垂炎では炎症部位推定に直結する圧痛部位の確認McBurney点での圧痛やRovsing徴候等の身体所見聴取が重要。



虫垂炎や憩室炎はいずれも粘膜側の炎症から始まることから、内臓痛としての鈍痛が初発であり、炎症が腹膜にまで波及することで体性痛としてsharp painを呈するようになる。



腹膜炎合併もあれば抗生剤投与が必要。



汎発性腹膜炎では大腸切除の手術適応となる。


腹膜炎を伴う大腸憩室炎について


・この場合は炎症の波及が腹膜にあり、筋性防御反跳痛があるはずである。この症状が限局しているものは限局性腹膜炎という。(部位:壁側腹膜局所といえ、腹膜全体ではない)



鑑別疾患として:イレウス、腸重積、腫瘍などがあるため、排便状況の確認と画像所見で確認すること


治療


 ・まずは抗菌薬投与をすること。


  投与をしないことで憩室炎が進展し、DICなどに発展し重症化するおそれあり。



 ・膿瘍が直径3cm以上と大きい場合では、超音波ガイド下ドレナージの適応となることもある。


(ドレナージ留置場所のまとめについてはこちらを参照ください)


 ・憩室炎を繰り返す場合穿孔がある所見(腹壁全体の板状硬など)では開腹手術適応となる。


穿孔と穿通について


穿孔について


穿孔には遊離穿孔被覆穿孔があります



遊離穿孔糞便性腹膜炎に移行しやすいため、ショック状態、DIC、敗血症と急激な症状進行がみられることから緊急手術が必要な症例となります。



・被覆穿孔:穿孔部位が周囲臓器に被覆された状態であり、限局性の膿瘍となって汎発性腹膜炎引き起こさないで済むこともある。


膿瘍が縮小して穿孔部が閉鎖しないようであれば手術が必要となります。


穿通について


穿通とは、穿孔部が隣接した臓器と繋がって瘻孔を形成すること。



Crohn病:腸管どうしで瘻孔を形成することがある。



・大腸憩室炎大腸と膀胱で瘻孔を形成することがある。


重症化では、穿孔し腹膜炎や腹腔内膿瘍となる他、膀胱に穿通して瘻孔を形成し、気尿※や尿混濁がみられることがある。



多発憩室による憩室炎の繰り返しでは、穿孔が無くても狭窄が起こることもある



これらはいずれも手術適応となる。



この他、腫瘍でも深い浸潤例では隣接臓器と繋がり、合併切除を行わなければならないこともある。


気尿(糞尿):極めてまれな疾患であり、尿中に空気や便が混ざる状態である。


消化器と膀胱が繋がって起こるもの。膀胱炎が強い状態でも起こりうる。


尿検査で問題ないようであれば経過観察となる。


大腸憩室炎による穿孔例について


大腸憩室はもともとは日本人例では、盲腸や上行結腸などは大腸の右側に多い


食の欧米化、高齢化の影響か、大腸憩室が欧米人に多いとされる大腸左側という傾向が、日本人にも見られるようになってきている。




発熱、腹痛、血液検査では炎症所見が顕著であり、超音波やCT検査で液体貯留がみられる。


→ このことから、大腸憩室炎の穿孔による膿瘍と考えられる。(実際の画像所見が大事)



腹部の所見汎発性腹膜炎の所見(板状硬筋性防御)が無ければ緊急手術はないと判断。


状況により、抗生剤投与膿瘍を縮小させてから手術をするなどの方針でよいと考えられる。


治療について


膿瘍に対しては穿刺ドレナージが有効である。


(ドレナージ留置場所のまとめについてはこちらを参照ください)


穿孔性腹膜炎の一例について


①まずは大腸癌に伴って生じた汎発性腹膜炎でみていきます
これは救急外来でよくみられるものの一つであり重要なものです。



CT所見では


 腹壁直下にfree airがみられる。


 炎症の繰り返しにより、腸管肥厚がみられる。


 腹部の内部に気泡を含む腹水の貯留がみられる。




・触診ではBlumberg徴候筋性防御がみられる(腹膜刺激症状)



・腹膜炎の原因となっている穿孔の対処腹腔ドレナージが必要である。→ 緊急手術となる



手術の内容として


原因病層の切除はせず、単純縫合大網充填などで穿孔部閉鎖を行うことが多い。




・また、大腸癌大腸穿孔があれば


糞便による腹腔内汚染があることで致命的となるため、穿孔部病巣を切除するが、大腸穿孔に伴う腹膜炎では炎症が起きているので縫合不全が起こりやすい


そのため、原因病層の消化管吻合は行わないのが通常である。


→ この場合救命の為消化管吻合は行わず人工肛門造設の術式をとる。これをHartmann手術という。


二期的に人工肛門を閉鎖する手術も考慮


②次に、大腸の内視鏡的ポリープ切除後にみられた遅発性穿孔例も見ていきます。



・まずは採血の炎症反応やバイタルチェック、次に腹部状態確認、腹膜刺激症状が無いか確認をすること



ポリープを切除した際の過通電などにより、焼灼効果が漿膜面まで及んでしまうことで、組織脱落の発生で、遅発性穿孔が起こりうる。(偶発症)


→ その疑いがあれば、腹腔内遊離ガスの有無を検索する。



・消化管穿孔疑いであれば、緊急性あるため、MRIではなく腹部CT検査を行う。



→ 胸腹部単純X線写真で見えない微小穿孔であれば、肺野条件のCTfree airの有無などを詳細に観察することで診断可能である。



穿孔であれば注腸造影禁忌穿孔部位不明の場合、少量の水様性造影剤としてガストログラフイン®を用いることもあるが、バリウムは禁忌)



※同じように下部消化管内視鏡検査も、診断の付いていない状態で診断目的に安易に行わない。内視鏡によって送気で穿孔を悪化させる可能性があるためである。


(ただし、穿孔確認ができていて、内視鏡的縫縮術目的で検査をする場合もある)


治療について


内視鏡的治療中に出血や穿孔があれば、すぐにクリップによる内視鏡的止血術や縫縮術での対処可能だが、クリップでの閉鎖困難であれば緊急手術が必要となる。


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大腸憩室症の手術適応について


状態・状況具体的症状
穿孔穿孔により腹膜炎が起こった時
穿通腸間膜側、腹壁への穿通によって膿瘍を形成する場合や、膀胱に穿通して瘻孔を形成し気尿や尿混濁がみられる時
出血安静や絶食などの保存的治療無効例、かつ大腸内視鏡的止血や血管造影による塞栓療法での止血も無効の時
狭窄繰り返しの炎症で癒着から狭窄を呈した場合をいい、便通コントロール不良保存的治療無効の時
憩室炎、憩室出血を繰り返す憩室炎による腹痛、出血で入退院を繰り返す。
また、患者が手術を希望している時
難治性潰瘍がある
大腸憩室症の手術適応まとめ


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腹腔内膿瘍について


腹腔内膿瘍とは、字のとおり腹腔内に「うみ」の塊がある状態である。


これは、穿刺や切開によって排膿する必要がある。


対応としては、腹腔内に貯留した体液や血液、滲出液、膿を持続的に体外に排出するドレナージを行うこと。


(ドレナージ留置場所のまとめについてはこちらを参照ください)


憩室出血について


・多くは腹痛を伴わない突然の下血があり、前駆症状として挙げるとすれば便秘のみである。



・血液検査等の異常値は認められないが、CRPなどの上昇があれば発赤や腫脹などの炎症がある憩室炎による出血も考えられる。



大腸憩室症の合併症で、憩室炎憩室出血がある。



憩室炎は残渣の滞留した憩室が細菌感染巣となって生じた炎症であり、腹痛、圧痛がみられ憩室壁の破綻となれば穿孔や膿瘍、出血を呈することもある。



憩室出血は、機械的刺激により憩室内の粘膜直下の血管が損傷することで生じるものである。



・診断時は悪性腫瘍、痔核、血管異形成などの出血と鑑別する必要がある


→ 出血部位の同定に腹部造影CTがよい


治療について



・症状が無ければ経過観察



憩室炎では内科的治療(安静、絶食、抗菌薬)



憩室出血では安静、絶食、補液となるが、大量出血や持続的出血時は輸血も考慮。


また、可能であれば緊急大腸内視鏡による止血術血管造影下での塞栓術(TAE)を行うこと。



穿孔や膿瘍形成、腸管狭窄などの合併例保存的治療で軽快が見られない場合癌合併が疑わしい場合では外科的治療となる(大腸部分切除術、膿瘍ドレナージ


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ドレナージとは


体内に貯留した血液・膿・浸出液を体外に排出する医療行為ドレナージという。

その際に使用する管のことドレーンといいます。


(ドレナージ留置場所のまとめについてはこちらを参照ください)


上行結腸憩室出血について


・憩室出血による下部消化管出血では貧血などがあり、pre-shock状態の可能性も考える必要がある。



・出血に対しては、併用薬でワルファリン等があるならば尚更、PT-INR測定(血液抗凝固の程度について調べる)が必要である。


治療法


・出血が続いており、治療として輸血をするが血便持続例では出血部位である上行結腸の切除を検討する。


右結腸動脈ないし回結腸動脈造影を行い、破綻血管が同定できれば動脈塞栓術を施行して止血を図る


ワルファリンを服用している患者の下血では、憩室出血、大腸癌、虚血性腸炎の頻度が高いため、常に念頭に置いて検査計画をすること。


VK欠乏による消化管出血について


VK欠乏による消化管出血 というのは、生後24時間~5日以内生後2、3週間~3ヶ月まで乳児に発症する。


・症状には、消化管出血(新生児メレナ)、臍出血、紫斑、肺出血、頭蓋内出血がある。


<参考文献>

メディックメディア Question Bank vol.1 消化器

ビジュアルブック 消化器疾患


注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
できる限り正確な情報発信に努めておりますが、当サイトに記載した情報を元に生じたあらゆる損害に対しては当サイトは一切責任を負いませんので、あくまでも参考としてご利用ください。




    • この記事を書いた人

    TK.Ph

    自分が学んで知った事が、人の役に立つならいいかなと思いサイトを開設 ・食べる事が好きで、そのために運動をはじめました

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