消化器編

消化器編⑧ 腸閉塞、肛門疾患について

医学を学ぶ

消化器編も後半となってきました。

今回は、腸閉塞(小腸、大腸、十二指腸)や癌などの周辺疾患についてみていきます。


腸閉塞(イレウス)の原因について


①成人で最も多い原因は、開腹手術後の腸管癒着によるものである。


全体のおよそ6割を占める。



癒着は腸管、腹腔内の炎症によっても起こる。


手術歴がない場合は大腸癌などの腫瘍の存在を考える必要がある。



高齢者のイレウス大腸癌が背景にある可能性が高いといえる


腫瘍によって腸管の内腔が狭窄・閉塞を起こし、単純性イレウスを引き起こすことがある。



腸内容が固形化して腸管腔が比較的狭い左側の結腸で起こりやすい。(結腸癌からおこる)


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腸軸捻転症では複雑性イレウスの原因となる。(ex. S状結腸軸捻転※1など)


※1 S状結腸が長いと引き起こされることがある


④小児において、絞扼性腸閉塞の原因として、腸重積鼠径ヘルニア嵌頓※2が多い。


(特に、乳児期においては鼠径ヘルニア嵌頓が多い)



※2 鼠径部の膨隆を確認


腸閉塞の分類について


①機械的イレウス:腸管に器質的疾患があり、通過障害をきたすもの

   ┃
   ┣ 単純性(閉塞性)イレウス
   ┃
   ┗ 複雑性(絞扼性)イレウス




②機能的イレウス:腸管に器質的疾患はみられないが、通過障害をきたすもの

   ┃
   ┣ 麻痺性イレウス
   ┃
   ┗ 痙攣性イレウス


イレウスの三徴について


腹痛:消化器系、精神疾患も考える


嘔吐:消化器系、精神疾患も考える


腹部膨隆:腫瘍、腹水も考える


イレウス時の初期対応について


絶飲食腸管の安静を保つ



輸液:イレウスにより水分吸収障害があり、思ったより脱水が進んでいることが多い


このため、電解質バランスも乱れていることがある。



抗菌薬の投与:閉塞した腸管においては


腸内細菌の異常や粘膜の脆弱が起こりやすい。



胃管挿入腸内容物の吸引排除を行い


腸内圧の減弱を図るために必要



腹部所見が軽度であればイレウス管の挿入による減圧を試み


効果が見られない場合は閉塞が進んで腸管の穿孔の危険性があれば手術を行う。



また、イレウス管で一時的な減圧ができたとしても


狭窄が解除されていない場合手術となる。


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単純性イレウス(閉塞性イレウス)について


・機械的イレウスのうち、腸管の血行障害は伴わないもの。


腸雑音の亢進が認められる。


鼓腸音(お腹にガスがたまる)あり。



・原因は術後の癒着性イレウスが最多(小腸が多い)。


その他には腫瘍、異物(胃石など)、腸管壁外からの圧排などがある。



大腸の単純性イレウス大腸がんによるものが多い。



炎症が長期間続いて、その波及によって腸管の狭窄や閉塞を招くことがある。


これを閉塞性イレウスという。


腸閉塞の初期治療:消化管内の減圧補液 (減圧チューブ挿入)


検査:腹部X線単純撮影


・イレウスであれば、X線検査でniveau(二ボー:水平像)がみられる。


単純性イレウスの治療について


絶飲食で保存治療:これで軽快することが多い



イレウス管、胃管挿入:腸管内容の吸引や減圧を行う。

小腸では経鼻的に、大腸では経肛門的に行う。)


→ イレウス管から水溶性造影剤を注入することで、閉塞部位やイレウス解除の診断に役立つ。



輸液:嘔吐、消化管内への水分漏出による脱水や電解質異常に対するもの




抗菌薬投与:腸内細菌の増殖による菌血症の予防のため



・外科手術:内科治療抵抗性や腫瘍による閉塞の場合に行う



禁忌:緩下剤投与、高圧浣腸など(腹痛、膨満感が強まり、消化管穿孔に至ることもある)



高圧浣腸小児の腸重積症に対する治療である。


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腸閉塞の画像所見について


癒着性イレウスなどの例



・高さの異なる多発性のniveau(Step ladder appearance:層状に重なっている)と腸管拡張が認められる。



小腸の軸捻転症では、癒着性イレウスの所見を呈し、腸間膜と血管が渦巻き状に回転する(whirl sign)がみられる。


大腸ではまれであり、S状結腸の軸捻転症による巨大結腸症を認め、X線所見上でcoffee bean signを呈する。



空腸イレウスでは、Kerckring襞(ケルクリングひだ)とよばれる細かい襞がみられる。


→ 無い場合は回腸部分など考えられる。



下腹部の透過性が減弱し、腸腰筋陰影の消失が認められる。


これは、腹水貯留の所見であり、絞扼性イレウスによる循環障害を疑う。


イレウス初期診断には


必要十分条件である腹部X線検査簡便で安全な検査法である。


→ 腸内ガスによるniveau像(鏡面像)や小腸ガス像Kerckring襞:ケルクリングひだがある)を認めることが可能。


腹部超音波ではkey board sign※1to and fro sign※2腸閉塞の所見となる。


・腹部超音波検査では金属音が聴こえる


※1 key board signとは


拡張した腸内のkerckring皺壁(しゅうへき)が


ピアノの鍵盤状に類似した像を呈することをいう。


kerckring皺壁の密度の差によって、


十二指腸から空腸の拡張では典型像だが、回腸ではこの所見に乏しくなる。


※2 to and fro sign(movement)とは


腸内容物の浮動が認められるもの。

(早期からみられる)



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複雑性イレウス(絞扼性イレウス)について


絞扼性イレウスとは


腸管のねじれにより腸管の閉塞と血行障害を伴うもので、腸雑音の消失がみられることがある。


緊急性がある:手術療法では、開腹して絞扼を解除し、壊死腸管は切除する。


・腹部は平坦腸蠕動不穏はみられない


このため、腸雑音は低下する


症状・所見は


・顔面蒼白


筋性防御


・腸雑音消失所見


強度の圧痛


反跳痛Blumberg徴候)(触診)

など


機械的イレウスのうち血流障害を伴うものをいう。


この原因としては


術後の癒着


索状物による腸管絞扼(狭義の絞扼性イレウス)


腸管結節による絞扼


腸軸捻転


腸重積症


ヘルニア嵌頓


などがある



また、鼠径ヘルニアが嵌頓することで絞扼性イレウスとなることがある。


・体動により突発的な激しい腹痛の持続



初期から


嘔吐


腹部膨満感


発熱


頻脈


・冷や汗


血圧低下(ショック)


などの全身症状がみられる。


炎症反応は強陽性


著名な白血球の上昇(15,000/μL以上)


LD、CK値も上昇し、


代謝性アシドーシスの進行で早期からショック状態となることもある。


(LD値の上昇は腸管壊死が考えられる)


→ このため、絞扼の解除腸管壊死部位の切除といった緊急手術が必要であるが全身状態を考慮し、すぐに行わないこともある。



この場合では、S状結腸捻転症大腸内視鏡による整復鼠径部ヘルニア用手整復腸重積症高圧浣腸などを行うこととなる。



筋性防御Blumberg徴候、腹壁緊張などの腹膜刺激症状を認めることがある。


緊急手術の必要性について


・腹壁が板状硬である



・イレウスだけでなく、腹部所見は重要であり、


腹痛で腹部が硬い(板状硬、筋性防御)という所見では、


原則として手術を考慮する。


他の緊急性のある腹痛について


腹部大動脈瘤破裂、急性大動脈解離、上腸間膜動脈・静脈血栓などの血管由来のもの


軸捻転症、絞扼性イレウスなど腸由来のもの


急性冠症候群


など


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S状結腸軸捻転症について


腹部X線写真について


S状結腸遠位から直腸にかけて、便もガスも見当たらない所見。


S状結腸は、腸間膜が長く、可動性に富んでおり口や肛門側は固定されているため軸捻転を起こしやすい構造である。


下行結腸からS状結腸近位にかけて固形便が残る。内容物の停滞は左側結腸


拡張したS状結腸近位


・著名に拡張して、横隔膜を押し上げているS状結腸のclosed loop(coffee bean sign)


腹部は膨隆腸雑音はやや亢進(蠕動麻痺は否定される)


打診による鼓音腸管ガスの関与


S状結腸軸捻転症の治療について


下部消化管内視鏡による整復により減圧第一選択


→ 内視鏡では、結腸内に充満したガスを吸引するとともに捻転を解除する


(イレウス管は小腸の減圧目的のため、用いない)



腹膜刺激症状、腸管壊死、穿孔認めない場合では、大腸内視鏡による整復を行う。


ただし、何回も繰り返す場合は根治の為、待機的に腹腔鏡下手術を行うこともある



・S状結腸捻転症で早期再発予防のため、経肛門的にイレウス管の留置をすることもある

(第一選択は内視鏡処置


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麻痺性イレウスについて


腸管の運動が麻痺した状態である。(腸管麻痺)


このため、腸雑音の減弱または消失が認められる。


腸管拡張がみられる。


急性虫垂炎などの急性期麻痺性イレウスが引き起こされる。


ただし、虫垂の先端が回腸間膜に癒着して索状物となり、


絞扼性イレウスへ発展するという例もごくまれにある。



他に、腹腔臓器の炎症(腹膜炎、胆嚢炎など)や、薬剤によるもの、


手術神経疾患などで運動機能が麻痺することが原因だったりする。



血栓ができることで、血流障害を生じ腸管壊死となれば、


麻痺性イレウス(機械的イレウス)となる。



・麻痺性イレウスでは経鼻胃管挿入腸管内減圧に有用であるが、これに限らず他のイレウスでも有用。


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痙攣性イレウスについて


・腸管の一部が痙攣性に収縮した状態である。


・原因の一つとして、神経衰弱など


鼓腸をきたす疾患について


①空気の過剰嚥下


②腸管内ガス発生の亢進


③腸管内ガスの吸収障害


④腸管内ガスの排泄障害:S状結腸軸捻転


⑤腸運動機能の低下:麻痺性イレウス


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腸重積症について


・腸重積症とは


複雑性(絞扼性)イレウスに含まれるが、腸管の一部または腫瘍部などが先進部となって


肛門側の腸管の中に、腸管蠕動により腸管の一部が折り重なり


腸が重なって発症する腸閉塞のことである。(腸管の嵌入)


このため、血行障害により、放置することで


腸管の壊死、ショック、腹膜炎に至り、致死的経過をとる疾患である。


→ このことから、緊急手術の適応となっている。


一方、腫瘍によって大腸に閉塞をきたしている場合では


絶食および輸液によって管理し、通常待機手術の適応となる。


小児において2歳くらいまでの乳幼児に多く


回腸末端盲腸から上行結腸に入り込むことが多い。進行が速い


成人においては、7割ほどがポリープ癌など隆起性病変が原因となることが多い。


・血液検査などで特徴的なものは無く、腹部造影CT検査が必要


昔とは違い、今では術前に腸重積症の診断が可能となった。超音波検査も有用である。


上行結腸から横行結腸への移行部に、腸管壁の層状所見がみられ、hayfork sign※1を呈する。


上行結腸高吸収域と低吸収域が交互に重なるtarget sign※2を認める。中心の低吸収域は腸間膜の脂肪組織であり、その内部に造影された血管像がみられる。


※1 hayfork sign長軸方向の断層像で外筒と内筒がサンドイッチのように見える所見


※2 target sign腸管横断走査にて重積腸管の同心円状所見類円形の腫瘤像

(別名:multiple concentric sign)である。

標的様の断層像


腸閉塞の類似疾患、近縁疾患の鑑別について


閉塞性腸炎


大腸がんなどで閉塞機転によって、口側の腸管が炎症を呈して、腫脹、肥厚する。


鑑別として、超音波検査では、腸管壁の肥厚はあるが、target signは陰性である。


非閉塞性腸管虚血症(NOMI)


非閉塞性腸管虚血症(NOMI)では、器質的な血管閉塞がないのに腸管虚血を生じる病態である。


・症状は腹痛など


心不全やショック、脱水、ジギタリス製剤、利尿剤、透析が原因となることがある。


・これは、自覚症状が乏しく、発覚した時には腸管壊死が進んで予後不良ということが多い。


大腸癌卵巣転移


卵巣腫瘍の巨大化で腹部膨満を呈する。


腹部超音波検査では、卵巣腫瘍の描出はあるが、内腔のガス像は認めない


腹腔内膿瘍


通常は白血球の増多があり、腹部超音波では液体貯留像を認める。


※腸重積も穿孔に至れば腹腔内膿瘍を形成するが、このような所見は認められない


原発性直腸癌


治療は直腸切断術(Miles手術)


胃癌術後の腹膜播種、直腸膀胱窩転移Schnitzler転移


根治手術は望めない


このままでは、腸閉塞を併発することもあり、ダグラス窩転移によって直腸狭窄があるため、これよりも口側の腸管で人工肛門を造設する。


Schnitzler転移(シュニッツラー)


腹腔臓器の原発癌から腹腔内へ癌細胞がこぼれ


腹膜に定着して転移巣を形成するもののうち、ダグラス窩に生じたものをいう。


これは、直腸指診で硬い索状物として触れることができる


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癌性腹膜炎


主に腹部原発の癌が腹膜転移し


粟粒のような転移巣が腹膜面に無数に散らばり


種をまいたような所見から腹膜播種と言われる。



この、播種部位は原発巣周辺に多いが


腹腔内では重力によって


直腸子宮窩(Douglas窩)直腸膀胱窩に転移することが多く


これをSchnitzler転移という。


卵巣に転移した場合は、Krukenberg腫瘍(クルーケンベルグ)という。



症状が進むことで、腹水貯留、腸管などを巻き込み腫瘤を形成し、腹痛と嘔吐といった腸閉塞症状が出現する。



更には、排便・排尿困難、尿管閉塞なども起こし


栄養障害が現れ全身衰弱に至る。これは癌終末期の病態である。



便意を催すが排便は無い、または少量しか出ない状態しぶり腹という。

(別名:テネスムス、裏急後重(りきゅうこうじゅう))



今回の癌性腹膜炎では、腸蠕動が低下未消化の粘液性の便が排泄されることに加えて、直腸の狭窄が刺激となって常に便意を感じる状態である。


幽門狭窄


大半が生後2~3週間の乳児に起こる肥厚性幽門狭窄症だが


十二指腸潰瘍胃癌などでも起こることがある。


十二指腸閉塞について


・閉塞する原因は上腸間膜動脈症候群(SMA)である。


→ これは、大動脈から上腸間膜動脈が分枝する角度が鋭角であり


この間に挟まる十二指腸水平部下行部が閉塞するためである。


腹部陥凹がみられる。


上部消化管のみにみられるイレウスはSMAが疑わしいといえる。


・検査は腹部CTがよい


・閉塞部位は十二指腸水平部(第3部)が多い


痩せた女性に多く、左側臥位や腹臥位で症状が軽減する。


これは、上腸間膜が腹側に牽引されるため。


→ ダイエットのため急に痩せたり、外傷などの為


長期間背臥位を続けたりした場合などに発症する。


・このほか、経管栄養や完全静脈栄養を行っている人に起こりやすいといわれる。


摂食後の悪心、嘔吐。前屈位で症状軽減


上腸間膜動脈症候群 (SMA)の治療について


軽症例では保存療法


頻回の嘔吐による脱水栄養低下に対しては経静脈的に輸液を行う


重症例では十二指腸吻合術十二指腸遊離術を行う。(極めてまれな例)

上腸間膜動脈閉塞症については別項目にて


腹部大動脈から分岐する動脈について(CTの見方)


・CTで輪切りにし、頭側から尾側に見たとき



①腹腔動脈


上腸間膜動脈


③腎動脈


④精巣(卵巣)動脈


⑤下腸間膜動脈


ですが、実際には画像で確認するようにしてください


十二指腸近縁の疾患類について


十二指腸憩室


大部分は無症状である。


憩室炎からLemmel症候群(レンメル)を生じることはあるが


通常は閉塞は起こすことは無い。


薬剤性腸炎


水溶性下痢(たまに血性)、腹痛が主症状。


麻痺性イレウスをおこす可能性はある。


好酸球性胃腸炎(※次の項目参照)


胃や小腸、大腸に好酸球が浸潤


腹痛や下痢、嘔吐などの消化器症状を呈する疾患。


胃や腸管の肥厚がみられる。


十二指腸粘膜下異所性膵


これは胎児の発生期に十二指腸の背側膵原基が異所性に迷入したもの。


多くは無症状



好酸球性の疾患について


好酸球が原因で起こる疾患は、他の疾患との鑑別が必要であり、治療法が全く異なるものとなる。


好酸球が原因の疾患類として、中耳炎、副鼻腔炎、肺炎、胃腸炎、食道炎などがある。


診断には、病理組織などで好酸球の増加を確認すること。


治療は、ステロイドが著効する場合がある抗アレルギー療法(アレルゲンの除去など)


痔核について


痔核とは、肛門間周囲に発生する静脈瘤様の腫瘤のこと。


これが、直腸粘膜側組織(歯状線より上側(内側))では内痔核といい


知覚神経は無いため排便時の痛みは感じない


そのため、症状は出血のみとなる。脱肛がみられることあり。(外痔核ではあまりない)


また歯状線より肛門側であれば外痔核といい


これは知覚神経があるため裂肛(切れ痔)では痛みを感じる


内痔核について


・内痔核は経産婦でみられることが多い。直腸脱とは鑑別すること。


内痔核の好発部位右前方(11時方向)、右後側(7時方向)、左側方(3時方向)であり


ここに腫瘤が認められる。表面は暗赤色で平滑である。


ここには、肛門内側を走る三本の動脈(上直腸動脈の終末枝)があり


これに沿って発生することが多い。


これは、進行しても直腸脱にはならず肛門脱などになる。



・内痔核が進行や拡大すると肛門括約筋から下方に移動し、脱出し、括約筋に絞扼されることで違和感や疼痛がみられる。


この腫瘤脱出は、排便後に用手的に簡単に整復できる状態である。


(※重症例では排便時以外にも脱出する)


→ この状態では、保存的治療を行う。



・ここから更に嵌頓した痔核嵌頓では内痔核でも激しい疼痛を伴う。


内痔核の外科的治療法について


基本は結紮切除術※1(LE:ligation and excision)となる


非観血的な治療法ではゴム輪結紮療法、硬化療法(ALTA療法※2:Aluminium potasium tannic acid)などがある。


※1 結紮切除術とは:痔核に流入している血管を結紮して痔核を切除する方法であり


Milligan-Morgan手術(ミリガンモルガン)※3がある。


※2 ALTA療法:新しい内痔核硬化療法であり


硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸注射液(ALTA)を用いた方法


※3 Milligan-Morgan手術:上直腸動脈の3分枝結紮切除後


支配領域の結節を粘膜とともに切除し


一部開放創としてドレナージをするもの



直腸脱では、同心円状、全周性に直腸が脱出する。


この脱出した直腸粘膜のびらんから出血することはある。


好発は高齢女性


原因:分娩、外傷、老化、手術などにより


直腸周囲支持組織である骨盤底筋、肛門括約筋、骨盤筋膜などの弱体化もあると考えられる。


腫瘍性病変痔核直腸脱なのかはしっかり鑑別すること



完全直腸脱直腸壁の全層の脱出であり、内腔を中心とした同心円状の溝を形成し、5cm以上を呈する。


不完全直腸脱直腸下部の粘膜層のみが脱出するもの。


粘膜が放射状に走る溝を示す。


脱肛内痔核の3期にあたり、常時脱出した状態である。


これは還納してもすぐに脱出するものをいう。


大きさは通常は5cm以下である。


直腸脱の外科的治療法について


Delorme法(デロルメ)


脱出した腸管の粘膜を剥離し、筋層の縦縫縮縫合で筋層を重積させて残存粘膜の縫合を行う方法。



これは、術後の排便機能を改善させることから、直腸脱の経会陰手術として有用な方法である。


Thiersch法(ティールシュ)


肛門管を取り巻くように糸や紐状の材質を挿入肛門管を輪状に縮小させる方法


であり、直腸脱の会陰式手術である。


弱い肛門括約筋を補強する。


糸や紐の材質は感染予防やゆるみなどの観点からも


テフロン紐ナイロン糸伸縮性ポリエステルテープなどを用いて行う。


再発は40%と高めであり、この方法だけではなく、他の手術法として以下の Gant・三輪法などを組み合わせて行う。


但し、この方法では局麻で済むため、ハイリスク患者に対して行いやすいことから現在でも行われる手術法である。


Gant・三輪法(ガント・みわ)


脱出した直腸粘膜を徐々に縫って縮める方法


こうすることで、直腸は徐々に肛門内に吸い込むように入っていく。


これに、 Thiersch法 を組み合わせて行うことも多い。


などがある



痔核嵌頓について


・肉眼的には、肛門から粘膜様のものが不規則に突出している。


一部は腫脹、黒色化しており、血流障害も考えられる。


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外痔核について


・歯状線の肛門側(下直腸静脈叢領域の静脈拡張)の痔核に血栓を伴うことで痛みを生じる



出血は少ないが、疼痛が強い



・脱出や激痛が無ければ保存的治療と生活指導となる。



・疼痛が強く、生活に支障がある場合では血栓除去術を行う。


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裂肛について


・裂肛では、排便時の疼痛や出血がみられる。いわゆる切れ痔といわれる。


硬便によって、肛門上皮の裂創、びらん、潰瘍をきたす。



・好発部位は0時方向(前方)と6時方向(後方)に多く、後方が6、7割を占める。


Goodsallの法則(グッドサル)※)


これは、肛門鏡を用いることで確認できる。



・腫瘤は伴わない。



裂肛の口側には肛門ポリープ(肥大乳頭)を伴う。



肛門側には見張りイボ(sentinel skin tag)を伴う。


これは、裂肛に伴ってできる皮膚のたるみのことであり、Crohn病でも見られる所見である。


この場合は難治性である。


Goodsallの法則


痔瘻分類の法則であり、会陰部の後半に外口が開いているもの


肛門の後側半分に原発するものであり


会陰部全般に外口が開いているもの肛門の前側4分の1に原発するという法則。



肛門周囲膿瘍について


強い疼痛(圧痛)、局所腫脹、発熱、発赤の炎症所見が著明である。


皮下に膿瘍が貯留する。


主訴としてはお尻が腫れた、膿がみられたと訴えがある。


炎症反応もみられる



若年者の肛門周囲膿瘍ではCrohn病を疑うことも必要。この合併頻度は高く、多発性、難治性である。


小児における肛門周囲膿瘍について


・小児では生後3か月以内の男児(乳児期)に多い


これは自然治癒しやすく経過は良好である。


→ これは、泥状・液状便、腸管局所免疫の未熟性という乳児期の特性のためである。


原因菌は大腸菌、バクテロイデスなど



局所免疫機構がほぼ完成する1歳前後で多く自然治癒する



好中球減少症やAIDSなどの基礎疾患がある場合では、肛門周囲膿瘍は2歳以上で多くなる



生後1カ月の間は腸粘膜固有層に形質細胞がないため


分泌型IgAが産生されず肛門陰窩を通じ


腸内細菌が腸管壁内に進入し感染すると考えられる。


化膿性粉瘤膿瘍について


化膿性粉瘤膿瘍とは、肛門周囲膿瘍と似たものとして、化膿性粉瘤※による膿瘍表皮嚢腫)がある


粉瘤とは皮膚の下にできた嚢胞に古い角質や皮脂などの老廃物が貯留してできる腫瘍のこと


これは、小さいものであれば経過観察で問題ないが、放置により徐々に大きくなって炎症を引き起こすこともある。


肛門周囲膿瘍の治療について


原則、切開排膿によるドレナージを行う


局麻下、皮膚および膿瘍の隔壁を切開し、溜まっている膿をドレナージをする)


(ドレナージ留置場所のまとめについてはこちらを参照ください)


ごく軽度例では、抗菌薬とクーリング(冷やすこと)のこともある。


痔瘻について


痔瘻とは、肛門陰窩から侵入した細菌の肛門腺感染により膿瘍を形成


これが自壊することで痔瘻が形成される。



原因菌として、大腸菌、ブドウ球菌が多く、続いて連鎖球菌がある。



・基本的には肛門周囲膿瘍と同じであるが


肛門周囲膿瘍の不完全な治療後、破れた後に続発する。


(およそ、肛門周囲膿瘍の4割ほど



瘻管(膿の穴)ができ、膿瘍が自壊することで疼痛が減る



慢性の排膿鈍痛がみられる



痔瘻の治療について


痔瘻の治療は肛門周囲膿瘍と同様、感染源の切開開放、瘻管の除去、ドレナージとなる。


(ドレナージ留置場所のまとめについてはこちらを参照ください)



Crohn病による難治性痔瘻に伴うような場合では、切開排膿後に一時的に人工肛門を造設することもあるが、切開排膿をまず行うこと。


肛門癌について


・肛門原発の扁平上皮癌である。歯状線より下方では扁平上皮となっている。


・通常は、直腸粘膜の脱出はみられない。


出血が初発症状排便時に痛みがみられる。腫瘍が大きくなることで痛みを伴う(肛門痛)


肛門管癌について


肛門管癌は外科的肛門管に病巣中心がある癌である。

この肛門管円柱上皮、扁平上皮からなり、腺癌扁平上皮癌等の発生母地となる


・肛門癌は痔瘻から合併することがある。この粘液癌は、肛門管癌に含まれている。


また、肛門腺も肛門管癌に含まれる。



・肛門管のリンパ流は鼠径に向かっていることから、鼠径リンパ節転移を伴う。


肛門癌・肛門管癌の治療について


治療について


扁平上皮癌であれば放射線治療が第一選択となる



腹会陰式直腸切断術(Miles手術)


これは、直腸だけでなく、肛門や肛門括約筋を含めた切除の適応となる




<参考文献>

メディックメディア Question Bank vol.1 消化器

ビジュアルブック 消化器疾患


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    • この記事を書いた人

    Nitroso.Ph

    自分が学んで知った事が、人の役に立つならいいかなと思いサイトを開設 ・食べる事が好きで、そのために運動をはじめました ・趣味はジム通い、ドライブ、ドラム、プログラミングなど様々あります

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