(注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
そのため、これを全て把握しても人体については全て理解し、学べたということにはなりませんのでご注意ください。
医学は未知の部分も含め、既知の部分であってもかなりの量です。ここは忘れないようにしてご利用ください。)
今回は疾患名・徴候などをまとめたものとなっています。
尚、読みにくいであろう症候群はなるべくカタカナ表記を入れてますので、検索で探してみてください。
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Rovsing徴候(ロブシング)
→関連記事(消化器編⑦)はこちら
左下腹部の圧迫(背臥位で下行結腸を下から上に押し上げるように圧迫すること)によって右下腹部(回盲部)痛を生じるもの。虫垂炎で認められる。腹膜刺激症状の一つ。
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Rosenstein徴候(ローゼンシュタイン)
→関連記事(消化器編⑦)はこちら
腹膜炎で、左側臥位で右下腹部の圧痛点(McBurney点)を圧迫すると痛みが増強する徴候をいう。腹膜刺激症状の一つ。
(参考:ローゼンシュタイン徴候とは - Weblio辞書 閲覧:2021.8.11)
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Blumberg徴候 (ブルンベルク)
→ 腸疾患編の関連記事はこちら
腹壁を手で垂直に圧迫し、その手を急に離すと鋭い痛みを感じる症状である。
腹膜に炎症があると起こる、腹膜刺激症状の一つで、反跳痛(反動痛)ともいう。
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Murphy徴候(マーフィー)
右季肋部を圧迫されたまま深く息を吸うと、痛みで吸えなくなる状態。胆嚢炎に特徴的。
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筋性防御
腹膜炎でみられる所見だが必ずとはいえず
心理的な要因でもおこるため偽陽性のこともある。
消化管穿孔などによる腹膜刺激症状。
高度な腹膜炎では板状硬となり、陽性尤度比が高い徴候となる。
痛みがあり、患者自身が防御のため意識的に硬直させること。
(↔︎ 筋硬直:無意識の硬直であり、炎症が腹膜にまで及んでいることを示し、より強い炎症を示唆している)
癌 | 潰瘍 |
虫垂炎 | 憩室 |
イレウス | 腸重積 |
軸捻転 | 急性膵炎 |
胆嚢炎 | 肝膿瘍破裂 |
女性生殖器付属器炎 | 卵巣嚢腫破裂 |
消化管損傷 | 膵損傷 |
肝胆道損傷 | 医原性の穿孔 |
術後の腹腔内感染 | 縫合不全 |
ドレーン感染 | など |
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反跳痛
圧迫を急速に解除したときに痛みが誘発されるもの。
腹膜炎の可能性を疑う。しかし、臨床では感度・特異度ははっきりしていないこともある。
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板状硬(ばんじょうこう)
心理的因子を除いても不随意に腹筋の収縮がみられることを指す。
炎症が腹膜全体に及び腹部全体が板のように硬い状態、重症汎発性腹膜炎の所見である。
感度は低いが、特異度は高く、陽性尤(ゆう)度比(陽性になりやすい度合いのこと)は最も高いとされている。
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Mallory-Weiss(マロリーワイス)症候群
嘔吐などで腹腔内圧の急激な上昇で、下部食道や胃体上部の粘膜に裂傷
(粘膜下層まで → 痛みは伴わない。噴門部小弯に好発)を生じ、吐血を伴ったりするもの。
原因:アルコール多飲時、妊娠悪阻、抗がん剤、内視鏡検査等
・2回目以降の嘔吐により血が混じるというのが重要な所見。
(1回目の嘔吐により、腹腔内圧があがり、消化管の損傷がみられることで2回目に吐血となる。ということかと)
保存治療で止血可。内視鏡的止血術(クリッピング)などの施行もある。
治療法:絶食で補液、PPI、H2-B、止血薬、レバミピド等。
出血があればクリッピング等。
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食道アカラシア
後天的にアウエルバッハ神経叢が変性・消失が原因(頻度:10万人に1人程度)により、嚥下障害を起こすもの。
→先天的なものにヒルシュスプルング病がある(小児科編⑤参照)
冷たい飲み物やストレスで増悪。正常なLES圧は15〜30mmHgだが、LES圧の上昇(100mmHgに上がる)とLESの嚥下性弛緩の消失がみられる。
GERDとは逆で、胃食道接合部は狭窄している。
アカラシアや食道癌では唾液の分泌過多(貯留)をきたす。(狭窄しているため)
胸痛は起こり得る:下部食道の食道運動機能障害に対して、中部食道が異常な収縮を起こすとき。
検査:内視鏡だけでなく、食道造影検査も行う。
日本由来のPOEM:内視鏡下筋層切開術は低侵襲で有効性高いため、普及しつつある。
治療薬:Ca拮抗薬、亜硝酸薬の舌下投与(これは一時的な症状緩和のため)。
内視鏡的バルーン拡張術、外科的治療(Hellerの筋層切開術)
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GERD(胃食道逆流症:ガード)
逆流性食道炎とNERDの総称である
まず、逆流性食道炎について
これ自体の診断は容易だが、原因となっているのが腸閉塞や胃癌による通過障害ということもあるため、他の疾患の除外が必要である。
これは、びらんや潰瘍などの、粘膜障害を認める。
胃切除後や食道運動機能障害 (強皮症や糖尿病など) |
腹圧上昇 (前屈、肥満、妊娠、亀背など) |
シェーグレン症候群 |
食道裂孔ヘルニア(3種類あり) 主に小児で滑脱型90%を占める |
食後はLES圧が最も低くなるため、症状が悪化しやすい。
→ 対して、十二指腸潰瘍は空腹時に心窩部痛というのがありましたね。
逆食は長く続くことで、Barrett食道を生じ、Barrett腺癌のリスクにもなる。(消化器①も参照)
硝酸薬やCa拮抗薬、抗コリン薬などは血管平滑筋を弛緩することから、LES圧が低下し胃酸の逆流がしやすいといえる。
内視鏡検査後、、PPIによる症状改善が見られない場合は食道pHモニタリングを行う。
(実臨床として、時間的、経済的負担からあまり一般的ではない。)、因みに、、正常では食道のpHは4以下となることはない。
GERD:の代表的な食道外症状として、胸痛、慢性咳嗽、咽喉頭症状、喘息、睡眠障害などがある。
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NERD(非びらん性胃食道逆流症:ナード)
GERD症状はあるが、内視鏡検査での所見がない場合に考えられる。
難治性には内視鏡的・外科的治療の考慮:Nissen法など(これは別の機会にまとめます)
食道静脈瘤
肝硬変が原因で、門脈圧の亢進、胃上部や食道下部の血管が拡張・怒張して起こる。
+ 急性胃粘膜病変(AGML):NSAIDs、アルコール、ストレスなどで多発性の発赤、浮腫、潰瘍、出血初見が見られ吐血を生じるもの。
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Plummer-Vinson症候群(プランマービンソン)
鉄欠乏性貧血、嚥下困難、舌炎の三主徴が特徴となる。栄養が取れていないことで起こりうる。
口角炎、咽頭の粘膜性病変、脾腫大などを伴うもので、食道Web(膜様隆起)がみられることが多い。
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Courvoisier徴候(クールボアジエ)
胆管に閉塞が起きることで、黄疸の出現と緊満腫大した無痛性の胆嚢を触知できる。
胆管閉塞をきたす。膵頭部癌や遠位胆管癌、乳頭部癌などにみられる。
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Grey-Turner徴候(グレイターナー)
重症膵炎でみられる徴候であり、多くは左側腹部に皮下出血がみられる徴候である。
これは、後腹膜の血性滲出液が腹壁の皮下組織に達して、側腹部の皮下に着色をきたしている状態である。
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Markle徴候(マークル)
つま先立ちの状態でかかとをストンと床に落として振動を与えると、腹部に痛みが響く徴候のこと。
腹膜炎で強い腹痛がみられる。
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Cullen徴候(カレン)
出血性や壊死性膵炎に特徴的な皮膚所見であり、臍周囲に青紫色の着色がみられる徴候である。
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Charcot三徴(シャルコー)
急性胆管炎の確定診断に用いたりする。腹痛、発熱、黄疸の3症状をいう。
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Reynolds五徴(レイノルズ)
Charcot三徴に、ショック、意識障害(精神症状)を加えた5症状をいう。
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Wahl徴候((フォン)ワール)
絞扼性イレウスで、絞扼部分の腸管が鼓腸を示し、腫瘤として触れるもの。
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Dance徴候(ダンス)
腸重積症で、右上腹部に腫瘤を触知し、右下腹部は空虚になる徴候の事である。右下腹部の腸雑音が消失する。
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Kehr徴候(ケール)
脾破裂で、左肩に関連痛として疼痛をきたす徴候である。(左横隔神経の刺激によるもの)
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Howship-Romberg徴候(ハウシップロンベルグ)
閉鎖孔ヘルニアで、閉鎖神経刺激によって大腿内側の痛みやしびれがみられる徴候のこと。
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Lemmel症候群(レンメル)
→関連ページはこちら
十二指腸傍乳頭部の憩室に食物残渣やバリウムなどが入り込み、胆管、膵管を圧迫することにより、胆管炎、膵炎の症状を引き起こす病態をいう。
症状がみられてはじめてLemmel症候群という。
つまり、十二指腸憩室 ≠ Lemmel症候群であることに注意
(消化器編⑦にも記載あり)
・傍乳頭部憩室症候群ともいう
・症状は主に無症状だが、上腹部痛、腹部膨満感、嘔吐、食欲低下、下血などがある。
(これは、他の疾患と区別がつかないため、消化管造影による読影が必要)
・検査はCTやMRI
・結石があるものは除外(MRI検査が良好)
・十二指腸憩室は高頻度にみられるが、Lemmel症候群例は少ない。
治療:抗菌薬、手術が必要な場合もある
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FAP(家族性大腸腺腫症)
→関連ページはこちら
・通常であれば、第5染色体長腕にAPC遺伝子※が存在しているが、この疾患ではこの変異や欠失がみられる。
FAPの20~30%程度はAPC遺伝子変異がみられない。
※APC遺伝子:5q21-22領域にある。これはガン抑制遺伝子の一つであり、これが欠落や変異することによってFAPの発症につながる。(Gardner症候群も機序は同じ)
・発症年齢は20歳~30歳代であり、組織型は腺腫である。
・便潜血陽性でも、大量下血ということはほとんどない。
治療は大腸切除術である。ポリープが多いため、一つずつとるというのは現実的ではなく、癌化がほぼ確定しているため。(これは、㉕~㉚にあてはまる)
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Gardner症候群(ガードナー)
→関連ページへはこちら
・遺伝性大腸癌
・大腸に多くの腺腫ができる家族性大腸ポリポーシスに骨腫、軟部腫瘍という3つが合併した疾患をいう。
・腺腫は良性が多い中で、これは癌化率が高い。
・骨や軟骨腫瘍(下顎など)ではしこりや痛みがみられる。
・家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)と原因が同じ、一亜型で、APC遺伝子変異を背景とした常染色体優性遺伝疾患であり、随伴疾患で区別はされるが、最近はFAPと同一疾患として扱われてきている。
検査:腹部CT検査や注腸造影検査、上部消化管内視鏡検査、下部消化管内視鏡検査など
治療:大腸切除術(癌化することが分かっているため)
(㉕~㉚については消化器編⑦の「消化管ポリポーシス」を参照してください。いずれも稀な疾患です)
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Turcot症候群(タルコー、ターコット)
→関連ページへはこちら
・遺伝性大腸癌
・ 家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)と原因が同じ、一亜型 である。
・APC遺伝子異常(type2)と、リンチ症候群※(Lynch syndrome)の亜型でミスマッチ修復遺伝子異常(type1)にわけられる。
ともに脳腫瘍を随伴疾患とし、遺伝形式は劣性遺伝と優性遺伝が混在している。
※リンチ症候群:大腸癌症例の2~3%を占める常染色体優性遺伝疾患である。
症状、初期診断、および治療は他の形態の大腸癌と同じとなる。
・中枢神経症状を呈する。
・遺伝子検査により確定される。
患者はまた他の悪性腫瘍、特に子宮内膜癌および卵巣がんのサーベイランスを必要とする。
治療:大腸切除術(癌化することが分かっているため)
<参考>
JSCCR | 大腸癌研究会(閲覧:2021.9.8)
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Peutz-Jeghers症候群(ポイツイエーガー)
→関連ページはこちら
・遺伝性大腸癌で、腫瘍抑制遺伝子のLKB1/STK11の変異が原因である。
・随伴症状として、幼少期からでも、口唇、手足、爪などに点状、小斑状の色素沈着がみられる。
・食道をのぞく消化管全体(小腸に多い)に過誤腫性※ポリープが多発する遺伝疾患である。
※過誤腫性とは、組織を構成する細胞の局所的な奇形または過形成による良性腫瘍のことで、悪性化するのはまれである。
・食道を除いて全消化管の過誤腫性ポリポーシスと
口唇、口腔、指尖部を中心とする皮膚、粘膜の色素斑
を特徴とする常染色体優性遺伝性疾患である。
・過誤腫性ポリープは粘膜上皮の過誤腫的過形成
粘膜筋板からの平滑筋線維束の樹枝状増生が特徴的である。
・狭い箇所など、小腸にできたポリープにより、腸重積や腸出血を起こす。
腹部腫瘤や腹痛などの症状がでることもある
→ この際は緊急手術
・色素沈着については、美容上の観点からレーザー治療も可能。
若年性ポリポーシス
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・幼児期~学童期の直腸やS状結腸のポリープがほとんどを占める。多くは20歳までにポリープを発症。
・胃、小腸、結腸、直腸を主とする消化管に罹患する過誤腫性ポリープとなる。
→ つまり、悪性化は少ないということです
・血便がみられる
・ポリープに対して治療されなかった場合、ポリープからの出血や貧血の原因となり得る
・自然脱落がみられることもある。
→ このため、外科的処置が不要なこともある
治療:ポリープの数が多い場合、全てのあるいは一部の大腸および胃の切除が必要な場合がある
また、症状に合わせて行う。
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Cronkhite-Canada症候群(クロンカイト・カナダ)(指定難病289)
→関連ページはこちら
・多数の非腫瘍性ポリープが発生する非遺伝性疾患である
・原因は不明であるが、強いストレスの後に発症することがある
・皮膚症状(脱毛・爪甲萎縮・皮膚色素沈着)、脱毛を伴う特徴がある。まれに消化管癌の合併。
・難治性の下痢症状がある。吸収不良で低蛋白血症(蛋白漏出性胃腸症)を呈する。
治療:副腎皮質ステロイドが有効。
蛋白漏出のため低栄養を伴うことが多く、中心静脈栄養を併用する。
<参考文献>
メディックメディア Question Bank vol.1 消化器
ビジュアルブック 消化器疾患
今回はここまでとなります。次回も続きをまとめていきます。→次へ進む
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