小児科編

小児科疾患編⑥ 肝・胆・膵系疾患、腹部の腫瘍について  

小児科


今回は1回完結型の肝・胆・膵系疾患と腹部の腫瘍についてみていきます



注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
そのため、
これを全て把握しても人体については全て理解し、学べたということにはなりませんのでご注意ください。
医学は未知の部分も含め、既知の部分であってもかなりの量です。ここは忘れないようにしてご利用ください。)


肝・胆・膵系疾患:総論


小児期における肝・胆・膵系疾患は時期によってみられやすいものなどが大まかに分類できる


それを以下にまとめてあります


項目新生児期乳児期~幼児期幼児期~
肝疾患新生児肝炎
Crigler-Najjar症候群(クリグラー・ナジャー)
・B型肝炎(キャリア)
Hunter症候群(ハンター)
Gaucher病(ゴーシェ)
von Gierke病(フォン・ギールケ)
・高チロシン血症
・肝芽腫
・自己免疫性肝炎
Wilson病(ウィルソン)
・EBウイルス肝炎
胆嚢・胆管疾患胆道閉鎖症先天性胆道拡張症
・急性胆管炎
原発性硬化性胆管炎(PSC)
膵疾患・膵・胆管合流異常
・嚢胞性線維症
輪状膵VIPoma(WDHA症候群)
・ムンプス
小児期における肝・胆・膵系疾患について


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Crigler-Najjar症候群(クリグラー・ナジャー)


Crigler-Najjar症候群とは、遺伝性の非抱合型高ビリルビン血症であり、UGT1A1(ビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素)によるグルクロン酸抱合が障害されておこるもの


核黄疸(ビリルビン脳症)の症状は、傾眠傾向、筋緊張低下、落陽現象、モロー反射の緩慢さ、痙攣、かん高い泣き声、アテトーゼ、感音性難聴


・ビリルビン値が35mg/dLを超えている例では死亡または重篤な後遺症を呈する


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Hunter症候群(ハンター)


Hunter症候群とは、ムコ多糖症Ⅱ型といい、ライソゾームの代謝酵素であるイズロン酸-2-スルファターゼという酵素が欠損または活性低下している疾患である


これは、ライソゾーム内にヘパラン硫酸やデルマタン硫酸などのグリコサミノグリカンが進行性に蓄積することで生じる先天性代謝異常症である


・症状には、ガーゴイル顔貌(頭のサイズが大きい)、前額突出、低い鼻梁、広い鼻翼、太く短い躯幹・四肢、精神発達遅延、難聴、心不全等様々起こりうる


<治療>


・HLA型の一致した骨髄移植がよい


合成酵素補充療法

など


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Gaucher病(ゴーシェ)


Gaucher病とは、細胞内ライソゾームで加水分解酵素のβ-グルコセレブロシダーゼの活性が正常よりも低下あるいは欠損しており、糖脂質のグルコセレブロシドが分解されず、肝臓・脾臓・骨髄(マクロファージ)などに蓄積する先天性代謝異常症の一つである


・症状には、貧血、血小板減少、肝臓・脾臓の腫大、骨痛などがあり全身に症状がみられる


・型はⅠ型~Ⅲ型がある


分類型名発症時期経過・症状頻度
Ⅰ型非神経型幼児期~成人と慢性的・神経症状なし
・主症状は肝脾腫、骨症状
日本人の4割ほど占める
(海外は92%ほど)
Ⅱ型急性神経型乳幼児(3~5ヵ月頃)
(新生児期含む)
・著明に神経症状がみられる
→精神運動発達遅延、痙攣、頸部後屈、開口困難、斜視

・胎児水腫が主症状
日本人の25%ほど占める
(海外は1%ほど)
Ⅲ型亜急性神経型乳幼児期に徐々に発症・Ⅱ型に比べて緩徐
・Ⅲ型は更に3つに分類される
・しばしば肝脾腫が初発症状となっている
日本人の34%ほどを占める
(海外は7%ほど)
ゴーシェ病の型分類について


<治療>


遺伝子組み換えのグルコセレブロシダーゼ製剤を補充する酵素補充療法(ERT)がある

→点滴補充をし、蓄積している糖脂質を分解・代謝する


グルコセレブロシドの合成を抑制する基質合成阻害療法(SRT)がある(内服薬)


・貧血、血小板減少症、脾臓腫大、骨痛、骨症状、神経症状などに対してはそれぞれ対症療法となる


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von Gierke病(フォン・ギールケ)


von Gierke病とは、糖原病Ⅰ型であり肝臓、腸管、腎臓にグリコーゲンが蓄積して低血糖や肝腫大、低身長などを呈する疾患である


糖原病Ⅱ型ではPompe病という


・グルコース-6-リン酸をグルコースに転換することができずに、肝臓、腸管、腎臓にグリコーゲンが蓄積し、低血糖をきたして肝腫大も伴うようになる(低身長などもあり)


G6PC遺伝子そのものに異常があるものを糖原病Ⅰaという)


詳細は以前の記事、こちらにまとめてあります→こちらから(肝疾患編③)


<治療>


・酵素の影響を少なくするため、食事内容を変える


Ⅰa型糖原病では、低血糖予防のために一定時間ごとにコーンスターチの摂取をするとよい

特殊ミルクを使うこともある、これは代謝できない成分は取り除いて調整されている)


Ⅱ型糖原病のPompe病では不足している酵素を補充する酵素補充療法がよく、著効する



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新生児肝炎について


新生児肝炎では、原因が不明の肝内胆汁うっ滞を示す疾患の一つであり、直接ビリルビンの肝内胆管への分泌が障害(閉塞性黄疸)されるため、直接ビリルビンが上昇する



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胆道閉鎖症について


胆道閉鎖症は、先天性の肝外胆管・肝内胆管のすべてまたは一部が完全閉塞して閉塞性黄疸を呈する疾患である

これは、直接ビリルビンが排泄される胆道が閉鎖しているため、直接ビリルビンが上昇する


新生児黄疸の遷延がみられる



・便の色が薄い(灰白色便)



・放置により肝硬変に進展する予後不良な経過である



生後2か月(60日)以内に診断をし治療する必要がある



肝腫大、腹壁の静脈怒張灰白色便がみられる



意識障害、痙攣の原因には多発性脳出血があるが、この原因は凝固能異常による出血傾向にある

→これは、胆汁が消化管に流れないため脂溶性ビタミンのVKが栄養吸収されず、肝臓での凝固因子生成がされないことで発症する(他には、VD欠乏で骨形成低下など)

脂溶性ビタミン:ビタミンA、D、E、Kなどがある



胆汁うっ滞性肝障害をきたして、血小板、凝固因子、アルブミンなどが不足するため、血液検査で確認をし、補充する必要がある


<検査>


血液検査AST、ALT(血清トランスアミナーゼ)上昇ALP、LAP(胆汁系酵素)上昇など

この時点では胆道閉鎖症の他、新生児・乳児肝炎なども考えられる


肝腫大触知(触れても、新生児であれば肋骨弓下から2~3cm以内である)


超音波検査総胆管の描出ができるかの確認、肝門部のtriangle signがみられるかの確認、肝臓と胆嚢の形態などの確認をする

→胆道閉鎖症では、多くが胆嚢は小さく索状であることが多い


腸雑音の亢進がないことを確認する

→ロタウイルスなどの感染でも白色便を呈する腸炎を起こすことがあるため、これを除外するためにはよいだろう


新生児肝炎との鑑別が必要である

鑑別方法には


十二指腸ゾンデ※1による胆汁の証明、胆道シンチ※2、肝生検lipoprotein-X(LP-X)※3などがある


※1 ゾンデ:バルーンゾンデがあり、三方活栓付きとなっている。バルーンにより逆流防止してくれる商品がある


※2 胆道シンチ99mTc-PMTを用いて検査をしている

肝細胞の胆汁中への色素排泄能を利用している

血中から肝細胞に入り、肝内胆管、胆嚢、総胆管を経て十二指腸に排泄される過程を経時的に描出することが可能となっている

これは、肝胆道の術後や先天性胆道閉鎖症の診断に有効である


※3 lipoprotein-X:肝疾患にしばしば見られる異常な低密度リポタンパク質である

肝外胆汁うっ滞を調べるのによい指標となる(新規コレステロール合成阻害はない)

Lp-Xの存在と血清脂質濃度の関係に寄与する


以下は、胆道閉鎖症と新生児肝炎の鑑別に有用な項目となっている


項目胆道閉鎖症新生児肝炎
性差女児に多い男児に多い
低出生体重児少ない多い
灰白色便++
便Schmidt反応※±
直接ビリルビン>5mg/dL前後様々あり
(10mg/dL超えることあり)
LAP>500Uで上昇が強い上昇
lipoprotein-X
十二指腸ゾンデによる胆汁証明
胆道シンチ
肝生検細胆管の増生
グリソン鞘線維化
giant cell transformation
予後不良良好
胆道閉鎖症と新生児肝炎の鑑別について


便Schmidt反応(シュミット):便中の胆汁に反応するもので、便中に胆汁が含まれているかどうかを確認するための検査

他にもいくつかあり、グメリン反応などもある


<治療>


生後2ヵ月以内肝門部空腸吻合術(葛西手術)を行うこと

2ヶ月を過ぎると肝臓が不可逆的変化を受けてしまうため、早期発見、早期治療が必要である


肝門部と空腸を吻合するため、術後胆管炎の予防と治療が重要となる


術後に黄疸が遷延するようであれば、生体肝移植の適応となる


Alagille症候群(アラジール)※疑いがあれば胆道閉鎖症の手術はしないこと


Alagille症候群(AGS)(指定難病:297):先天性に肝臓や心臓などの様々な臓器に合併症がある疾患(地域差なし)で、症状の幅も大きい

肝臓、心臓・血管、眼、椎体、特徴的顔貌と、大まかに5つの症候から診断をするが、全ての症状が必ずそろうというわけでもない

未診断のまま過ごしている方もいるため、国内では200~300人ほどしか罹患者はいないこととなっている


原因は、20番染色体のJAG1の遺伝子変異(AGS1型)や稀に1番染色体のNOTCH2(AGS2型)であることがわかっている。遺伝性は片方の親が保因者であれば2分の1で起こりうる


現在は母子健康手帳が改訂されて胆道閉鎖症のチェックのために便色カード添付が義務化されている


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先天性胆道拡張症について


先天性胆道拡張症とは、先天的に胆道が拡張している疾患であり、ほとんどがに膵・胆管合流異常※が合併している

総胆管嚢腫ともいう


膵・胆管合流異常とは、膵管と胆管が十二指腸壁外で合流する先天性奇形である


・好発は若年女性で、東洋人に多い


・症状は無症状のことがある(健診の超音波検査などで発見されることあり)


・症状があるとすれば、上腹部痛、黄疸、腹部腫瘤などの症状あり(三主徴

→しかし、3つすべてそろうのは3割弱であり少ない


・他には、胆管炎、肝機能障害、膵炎、胆石、胆道穿孔、胆道癌など肝・胆・膵系の疾患が様々伴う


80%嚢腫型20%円柱型の割合であり、1歳未満のほとんどは嚢腫型である


<検査>


血液検査では胆道系酵素上昇膵酵素上昇が認められる


CT検査超音波検査拡張した総胆管が認められる


MRCPERCPでは嚢腫状あるいは紡錘状の総胆管拡張主膵管と総胆管が十二指腸壁外で合流する所見を認める

→これにより診断


<治療>


肝外胆管切除+胆嚢摘出+胆道再建(分流手術)

胆道癌予防となる(嚢胞壁は癌化しやすいため切除する)


標準術式:嚢胞状拡張部胆管を切除し、胆管・空腸Roux-en-Y吻合術(ルーワイ)を行う

(嚢胞との内瘻術はしない)


高間接型ビリルビン血症について


新生児や乳児期に高ビリルビン血症をきたす疾患はいくつかあるが


間接型ビリルビン血症が上昇する機序については


ビリルビンの代謝過程それぞれの疾患の障害部位がわかっていれば考えやすいものとなっているため、代謝過程についてはしっかり把握しておくことが重要である

<間接型ビリルビンが上昇する原因>


・ビリルビン産生過剰

・グルクロン酸抱合障害

・腸管に排泄されたビリルビンの再吸収亢進


が考えられる


脳に沈着するのは間接ビリルビンである


ビリルビンの代謝過程については肝疾患編①の「ビリルビン代謝」参照してください


<ビリルビン高値による神経毒性について>


・ブドウ糖消費

・ATPレベルでの酸化的リン酸化障害

・DNA、タンパク質、神経伝達物質の合成障害

・様々な酵素活性障害

・イオン輸送障害

・シナプス伝達障害

・興奮性アミノ酸(グルタミン酸)、細胞質Ca濃度上昇

・フリーラジカルによる障害

・炎症反応惹起(サイトカイン産生↑)

・アポトーシス誘発
(酸化ストレス:海馬のグルタチオン蓄積↓ → 活性酸素(ROS)↑、蛋白酸化↑、過酸化脂質↑ → 細胞死)


<ビリルビン脳症による障害部位>


・淡蒼球

・視床下核

・海馬

・視床下部

・黒質

・脳神経核(動眼神経核や聴神経核含む)

・脳幹網様体

・歯状核

・プルキンエ細胞

・脊髄前角細胞


黄疸とは、血液中のビリルビンが上昇して、脂肪組織に沈着するため、皮膚や眼球結膜、その他の組織が黄染して見える状態をいう

新生児黄疸は生理的なもの(母乳性黄疸など)であれば問題ないが、病的なものとして核黄疸という中枢神経障害の疾患がある

これは早期発見が重要となっている(予後に関わる:脳性麻痺など)

→新生児黄疸の治療:交換輸血療法、光線療法、薬物療法


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出生体重< 24hr< 48hr< 72hr< 96hr
< 1,000g8101212
< 1,500g10121515
≧ 2,500g12182022
交換輸血の適応基準について(血清総ビリルビン濃度mg/dL)


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クレチン症について


クレチン症先天性甲状腺機能低下症であり、遷延性黄疸を引き起こす


全身のエネルギー利用を促す甲状腺ホルモンの不足により、全身の各器官の機能低下間接型ビリルビンのグルクロン酸抱合が低下することで間接型ビリルビンが上昇する


また、腸管蠕動運動の低下によって便秘となり、腸肝循環が亢進して起こることもある


高ビリルビン血症の類似疾患について


それぞれの機序、発見経緯によって疾患名が変わりますが、基本的には同じような病態というくくりになります


<類似疾患について>


新生児肝炎肝内胆汁うっ滞が主要の病態であり、直接型ビリルビンの肝内胆管への分泌が障害されるため直接型ビリルビンが上昇する


Rotor症候群(ローター)体質性黄疸の一つであり、常染色体劣性遺伝の先天性代謝異常である。ビリルビンの輸送タンパク機能が欠失して、ビリルビンの肝臓への取り込み体外への排出効率が悪くなるため、直接型ビリルビンが優位の高ビリルビン血症となる


先天性胆道拡張症:先天的に総胆管が拡張しており、胆汁うっ滞が生じて閉塞性黄疸をきたす疾患である。これは、直接型ビリルビンの排泄が低下する。胆管と膵管の合流形態の異常を伴うことが多い


Dubin-Johnson症候群(DJS:デュビン・ジョンソン)体質性黄疸の一つであり、常染色体劣性遺伝の先天性代謝異常である。多剤耐性関連タンパク質MRP2(トランスポーター遺伝子)の変異で、直接型ビリルビン胆管に分泌できず血中濃度が上がる疾患


間接ビリルビン:水に溶けにくい性質で、血中ではアルブミンと結合して運搬されている、非抱合型ビリルビン-グルクロン酸抱合を受けていないビリルビンである


新生児黄疸生後2~3日頃からみられてきて、6~7日をピークにその後低下する、間接ビリルビン優位の黄疸である


間接型ビリルビンが優位の高ビリルビン血症を呈する疾患>


Crigler-Najjar症候群Ⅰ型、Ⅱ型Gilbert症候群(ジルベール)がある


Crigler-Najjar症候群Ⅰ型:小胞体膜上に発現しているビリルビンUDP(ウリジンホスフェート)-グルクロン酸転移酵素のUGT1A1によって、グルクロン酸抱合されて直接型ビリルビンとなるところ、この酵素活性が欠損しているという型である


Crigler-Najjar症候群Ⅱ型:UGT1A1の酵素活性が10%以下


Gilbert症候群:UGT1A1の酵素活性が10~30%以下となっている疾患である


あくまでもこの違いは、発見された経緯の違いというだけであり、病態は関連しているものである


<体質性黄疸の障害機序について>


<血中>

間接ビリルビン


①肝細胞内取り込み


<肝細胞内小胞体>


②グルクロン酸抱合


<肝細胞内>


直接ビリルビンとなる


③排出する


<肝細胞から毛細胆管へ>


腸肝循環で肝細胞内に間接ビリルビンが戻ってサイクルが続く


①、③の障害ではRotor症候群

②の障害ではCrigler-Najjar症候群、Gilbert症候群

③の障害ではDubin-Johnson症候群


新生児黄疸について


新生児黄疸は時期により、早発黄疸、生理的黄疸、遷延性黄疸に分けられている


早発黄疸生後24時間以内にみられる黄疸

→原因として最も多いのは母児間の血液型不適合によるものである(次項参照)。他にCrigler-Najjar症候群Ⅰ型致死的な高値ビリルビンを示す:30~50mg/dL


生理的黄疸生後2日~2週間ほどでみられる黄疸


遷延性黄疸生後2週間以降にみられる黄疸

胆道閉鎖症新生児肝炎など


その他についてまとめた表が以下となります


項目早発黄疸中間(生後2~14日)遷延性黄疸
間接ビリルビン上昇・仮死
・RDS(呼吸窮迫症候群)
・溶血性貧血(血液型不適合など)
・生理的黄疸
・帽状腱膜下血種・頭血種
・母乳黄疸
先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)
直接ビリルビン上昇胎内感染・敗血症
(TORCH症候群(トーチ)※など)
代謝性疾患胆道閉鎖症
新生児肝炎
新生児黄疸の発症時期により考えられる疾患について


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TORCH症候群:赤ちゃんが胎内にいる時に、風疹ウイルスやサイトメガロウイルス、梅毒、パルボウイルスB19などに感染して引き起こされる疾患群をいう

重篤な障害や亡くなることもある


新生児の生理的黄疸の定義については以下の通りです

これを満たしていない場合は病的黄疸となります


<新生児の生理的黄疸とは>


生後24時間以内に出現なし

・血清ビリルビン値上昇が1日5mg/dL未満

・血清ビリルビン値が未熟児では12mg/dL未満成熟時では15mg/dL未満

・抱合型(直接型)ビリルビン値が2mg/dL未満

・黄疸が2週間未満


ABO血液型不適合について


ABO血液型不適合とは、IgGクラス抗A抗体抗B抗体をもつO型母体から出生したA型やB型の新生児に起こる溶血性黄疸であり、間接ビリルビンが上昇する


早発黄疸の原因には、母児間の血液型不適合(ABO型不敵合またはRhD不適合)が多い


ABO不適合母体がO型児がA型またはB型の組み合わせがほとんどとなっている

→O型母体がIgG分画の抗A抗体抗B抗体を持っている場合、これらが胎盤を通じて児に移行し児の体内で溶血を生じる


・通常、O型母体では胎盤通過性がないIgM分画の抗A抗体や抗B抗体しかもたないため、ABO血液型不適合は生じない


新生児の溶血性疾患の原因として最も頻度の高いものである


Rh式血液型不適合妊娠は、児に重症の溶血性黄疸をきたすことがあるが、これは母体に抗Rhヒト免疫グロブリン注射を行うことで予防できるようになってきていることから、頻度としては少ない疾患となった


<治療>


新生児期に光線療法対象となる


光線療法とは、脂溶性の間接ビリルビンが高値となって大脳基底核(主に淡蒼球)を中心に脳細胞に損傷おこし、不可逆的な脳障害を生じる核黄疸を予防する

これは、430~490nmの波長光を当てて水溶性・無害の異性体にする治療法である


光線療法開始基準」で重要なことは、出生体重日齢である(グラフがある)※

この基準よりも高いビリルビン値であれば「交換輸血の適応基準について」見ていく必要がある


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出生体重 / 日齢1234567
2,500g以上121317181919.520
2,000~
2,499g
10121416171818
1,500~
1,999g
8101214151616
1,000~
1,499g
7789101112
1,000g未満55678910
光線療法開始基準について(ビリルビン値:mg/100mL)


※光線療法開始基準については「村田・井村治療基準」というのがある

<参考>

ビリルビン脳症-CQ0-0-表紙.indd (jpeds.or.jp)(p.48参照)(閲覧:2022.1.30)



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核黄疸(ビリルビン脳症)の症状について


核黄疸は、間接型の高ビリルビン血症で、大脳基底核(特に淡蒼球)に黄染し、脳細胞が障害される不可逆的な脳障害である(ビリルビン脳症)

そのため、プラハ分類の第1期のうちに早期発見して交換輸血が必要である


核黄疸の症状はPraagh分類(プラハ)があり、以下の通りとなります


早期黄疸と総ビリルビンが30mg/dLという著明な高ビリルビン血症の核黄疸を考えられるようになること


哺乳不良傾眠傾向などの「何となく元気がない状態」(Not doing well)が、核黄疸などの重症疾患の初期症状であることがある

→早期発見・早期治療が重要である


<プラハ分類について>


第1期(発症2~3日):筋緊張(トーヌス)低下、嗜眠、吸啜反射減弱

第2期(発症3~1週):痙性症状、後弓反張、落陽現象

第3期(発症1週以降):痙性症状の消退

第4期(2ヶ月以降):錐体外路症状、アテトーゼ、上方注視麻痺


<新生児の病的黄疸について>


早発黄疸生後24時間以内の黄疸


血清総ビリルビン値の上昇速度が5mg/dL/24hr以上


生後72時間以後の血清ビリルビン15mg/dL以上


遷延性黄疸生後2週間以上持続するもの


⑤血清直接ビリルビン値が2mg/dL以上


次に、早期黄疸をきたしやすい原疾患についてまとめてあります


生後間もない肉眼的黄疸は、①の新生児溶血性疾患であるRh不適合やABO不適合などの可能性があり、交換輸血が必要なことがある


<早期黄疸をきたしやすい病態について>


①血液型不適合による溶血性疾患:ABO型、Rh型


②赤血球自体に原因のある溶血性疾患:遺伝性球状赤血球症など


③閉塞性出血:帽状腱膜下出血、頭血腫


④多血症:双胎間輸血症候群、SFD児※に伴う多血症


⑤感染症:敗血症、TORCH等の先天性乾癬


SFD児:small for dates neonates、在胎期間の割に出生時体重が平均より少ない児をいう


<治療>


・ビリルビン値が中等度、緩やかな上昇であれば光線療法などを行う → 表を参照

→多面照射光線療法では即効性はないため、すでにビリルビン脳症症状がみられているようであれば第一選択ではない


・重症であれば、交換輸血となる → 表を参照

交換輸血ビリルビン除去感作赤血球および抗体の除去非感作赤血球の補充血球の交換が必要である


・ABO血液型不適合による溶血が原因の黄疸では、O型洗浄赤血球AB型新鮮凍結血漿を混合した合成血液を使用すること


腹部腫瘍について


まずは小児の腹部腫瘍として大きく3つに分類してあるため、神経芽腫、腎芽腫(Wilms腫瘍)、肝芽腫についてそれぞれみていく


項目神経芽腫
(neuroblastoma)
Wilms腫瘍
(nephroblastoma)
肝芽腫
(hepatoblastoma)
発生部位副腎髄質
交感神経節
腎尿細管肝細胞
好発年齢・特徴3歳以下
1歳半未満であれば予後良好
5歳以下3歳以下(特に0歳)
男児に多い
小児癌全体からみた割合10%2%2%
生化学検査尿中VMA、HVA上昇※1
血清NSE※2
血清AFP上昇※3
腹部画像検査
(超音波、CT、MRI)
表面不整
正中線を越えることが多い
石灰化が多い
表面平滑
腎部の腫瘤
正中線を越えることは少ない
腎盂腎杯の変形像
表面不整
肝内腫瘤
小児の腹部腫瘍について


※1
尿中VMA:バニリルマンデル酸といい、カテコールアミンの代謝産物の一つである。小児期では神経芽細胞腫青年期では褐色細胞腫の診断に用いる。

→バナナなどの食品摂取は検査値に影響あるため、摂取は控える必要がある


尿中HVA:ホモバニリン酸といい、ドパ、ドーパミンの最終代謝産物の一つである。血中、尿中、髄液中のドパ、ドーパミンの分泌動態を調べることで、中枢及び末梢の交感神経機能を推測することができる。

また、クロム親和細胞腫や悪性黒色腫で過剰に産生されるため、腫瘍の早期発見や治療効果判定に用いられる


※2 血清NSE神経特異エノラーゼといい、腫瘍マーカー(tumor marker)の一つである


※3 AFPα-フェトプロテインといい、主に肝癌の腫瘍マーカーに用いられる


神経芽腫について


神経芽腫交感神経芽細胞から生じる腫瘍であり、アドレナリンやノルアドレナリン、ドパミンを産生・分泌する。

原発部位は副腎髄質が最も多い

経過は幅があり、自然退縮することもあれば致死的なこともある


・好発:5歳未満


・予後:1歳未満では5年生存率が8割以上1歳以上では5割弱ほどとなっている


・正中線を越え、表面凹凸のある腹部の充実性腫瘤


・骨、関節痛、眼球突出


・神経芽腫予後良好因子:腫瘍での神経成長因子であるTrk-Aの高発現と、DNA ploidy(DNA倍数)がaneuploidy(異数性)であること


<神経芽腫の転移について>


新生児・乳児:肝臓、皮膚

幼児:リンパ節、骨


神経芽腫の病期・分類については以下の通りとなります


病期内容
L1遠隔転移のない局所性腫瘍で、IDRF※を有さない
L2遠隔転移のない局所性腫瘍で、IDRFを有する
M遠隔転移を有する腫瘍(病期MSを除く)
MS月齢18ヶ月未満で皮膚、肝、骨髄にのみ転移を有する腫瘍
INRG病期分類について


IDRF:image difined risk factorといい、局所のみの神経芽腫について画像所見から手術のリスクを推定し、初期手術に摘出をするかどうか、生検のみとするのかを決める指標となるもの


以下の4つのグループと亜分類に分ける
①神経芽腫(シュワンストローマ減少型)、ストローマ減少型
②神経節芽腫、混在型(シュワンストローマ豊富型)、ストローマ豊富混在型
③神経節腫(シュワンストローマ優位型)
④神経節芽腫、結節型(シュワンストローマ豊富型/ストローマ優位型およびストローマ減少型の複合)
INPC組織分類について


この病期分類の中で、低リスクが主に病期、病期Ⅱ中間リスクが主に病期Ⅲ高リスクが主に病期Ⅳとなる(Ⅲ・Ⅳ期は進行性)


INRG病期(月齢)INPC組織分類その他要因治療前リスクグループ
L1/L2神経節腫 成熟型
神経節芽腫 混在型
超低リスク
L1神経節腫 成熟型
神経節芽腫 混在型を除くすべて
MYCN増幅の有無MYCNなし:超低リスク
MYCNあり:高リスク
L2
(18ヶ月未満)
MYCN増幅(ー)
染色体異常(11q欠失)(ー)
低リスク
MYCN増幅(ー)
染色体異常(11q欠失)(+)
中間リスク
L2
(18ヶ月以上)
神経節芽腫 結節型
または神経芽腫
(分化型)
MYCN増幅(ー)
染色体異常(11q欠失)(ー)
低リスク

(分化型)
MYCN増幅(ー)
染色体異常(11q欠失)(+)
中間リスク

(低分化型または未分化型)
染色体異常(11q欠失)(ー)中間リスク

(ー)
染色体異常(11q欠失)(ー)中間リスク
M
(18ヶ月未満)
MYCN増幅(ー)核DNA量高2倍体:低リスク
核DNA量2倍体※:中間リスク
MYCN増幅(+)高リスク
M
(18ヶ月以上)
高リスク
MS
(18ヶ月未満)
MYCN増幅(ー)
染色体異常(11q欠失)(ー)
超低リスク
MYCN増幅(ー)
染色体異常(11q欠失)(+)
高リスク
MYCN増幅(+)高リスク
小児神経芽腫の病期分類について


核DNA量:ここでは、腫瘍細胞の染色体数のことを指す。ヒトの体細胞の染色体数は23本の染色体を2セット持つ2倍体(倍量体)である


<検査>


尿検査尿中VMA、HVA(+)など(9割がた上昇するため、腫瘍マーカーとなる)


腹部単純CT:石灰化や出血疑いのあるhigh density areaを伴った充実性腫瘍が認められる。腫瘤は正中性を越えている

壊死疑いではlow densityの所見


・腫瘍部位が左側だと、神経芽腫と腎芽腫が似ているため、尿所見、尿中VMA・HVA、画像検査は重要となる


石灰化像:単純X線では神経芽腫の30~50%CTでは80%で認められる


典型的には、10cm程度の腹部腫瘤では神経芽腫、肝芽腫、腎芽腫(Wilms腫瘍)の可能性を考える


<治療>


治療は病期によって異なっている

1歳未満では自然治癒することがある



(1)局所限局のⅠ・Ⅱ期かつN-myc遺伝子の増幅がない場合


腫瘍摘出術+短期間の化学療法



(2)リンパ節や他臓器転移のあるⅢ・Ⅳ期であり、


N-myc遺伝子増幅なし強力な化学療法(新A1レジメン)

N-myc遺伝子増幅あり超強力な化学療法(新A3レジメン)



(3)腫瘍が完全寛解(CR)に入った場合(N-myc遺伝子増幅あり


自家骨髄移植を行うことあり



(4)手術不能例:放射線療法+化学療法James療法

VCR(ビンクリスチン)+シクロホスファミド




Wilms腫瘍について


Wilms腫瘍とは、神経芽細胞腫に次いで多い腫瘍である

泌尿器系を中心に合併奇形の頻度が高いもの


・好発:乳児


正中線を越えない、表面平滑境界明瞭弾力性のある腹部腫瘤である


血尿10~30%ほどで認められる


<思考の流れ>


乳幼児に径10cm大以上の腹部腫瘤がみられる



①神経芽腫

②Wilms腫瘍

③肝芽腫

を考慮する



①では尿中VMA高値

③では血清AFP高値


がみられる(9割以上で)

更に、①では表面凹凸で硬い腫瘤という特徴がある


先天異常と悪性新生物との関連が指摘されている疾患については以下のものが挙げられます


先天異常悪性新生物
ダウン症候群白血病
尿道下裂、無虹彩症Wilms腫瘍
免疫不全一般悪性リンパ腫
停留精巣精巣腫瘍
先天異常と悪性新生物との関連が指摘されている疾患について


腹部エコーCTでは、腎部に一致した内部構造不整な占拠性病変(SOL)を認める


→ここで、Wilms腫瘍を考慮


・組織学的には多様であり、肝臓に転移することがある(骨転移はまれ)


尿中VMA血清AFPは必ず確認をし、神経芽腫、Wilms腫瘍、肝芽腫の3つの鑑別ができるようにしておくことが重要である


<治療>


・基本は外科治療であり、全摘となる(被膜で覆われており、摘除可能なことが多い)


放射線アクチノマイシンDに対する感受性も高く併用する



肝芽腫について


肝芽腫とは、


・好発:4歳未満に多い(65%程度が2歳未満)


・小児悪性腫瘍の1~2%を占めているもので、小児の悪性腫瘍の中では最も多い


・年間30~40人診断されている


・肝芽腫症例のおよそ2%で片側肥大を認める


<検査>


採血検査ではAFP9割ほどで陽性となる(数万ng/mLにもなる)


・コレステロール値上昇、LD値上昇


・神経芽腫との区別は困難な疾患である

→アミラーゼの働きから、肝内SOL※が考えられるならば、肝芽腫の方を疑いAFPの測定をする

(神経芽腫では、肝臓ではないため、トランスアミナーゼは正常であるはず)


腹部エコー、CT:肝内に塊状で単発性の腫瘤性病変がみられる

肝機能障害は少なく、黄疸や腹水は末期症状となる


※ SOL(space occupying lesion:占拠性病変):超音波検査(UC)で使われるもの

嚢胞、結石、石灰化、膿瘍、血種、良性・悪性腫瘍などが占拠しているものすべてに使われる表現である


<治療>


根治的切除術、肝動脈塞栓術(TAE)


術前のCDDPやアドリアマイシンが外科的アプローチをさらに有利とする


類似疾患について


類似疾患の特徴や鑑別点は以下の通りとなる


・成熟奇形腫:特異的腫瘍マーカーはない。嚢胞成分が多く、脂肪や石灰化成分がみられる


・褐色細胞腫:カテコールアミンの産生過剰があり、高血圧、頭痛、多汗、高血糖などを伴うことが多い


・悪性リンパ腫:様々な組織型があり、臨床症状も異なるが、胸腺腫大、回盲部腫瘤、頸部無痛性リンパ節腫大が特徴的である

また、LD上昇を伴うことあり


ここまでで小児科編⑥は終わりとなります


次回は、小児科の循環器系を見ていきます



<参考紹介>

メディックメディア:クエスチョン・バンク vol.4 小児科

病気がみえる:vol.10 産科


注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
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    • この記事を書いた人

    TK.Ph

    自分が学んで知った事が、人の役に立つならいいかなと思いサイトを開設 ・食べる事が好きで、そのために運動をはじめました

    -小児科編
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