(注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
そのため、これを全て把握しても人体については全て理解し、学べたということにはなりませんのでご注意ください。
医学は未知の部分も含め、既知の部分であってもかなりの量です。ここは忘れないようにしてご利用ください。)
今回から耳鼻咽喉科の領域になります。
まずは、耳の総論、解剖についてみていきます
耳の解剖・用語解説
内耳・中耳・外耳について
ここでは、大まかな耳の構造を確認していきます
部位の範囲 | 構造 | 機能 |
---|---|---|
外耳 | 耳介、外耳道 | 伝音系 |
中耳 | 鼓膜、鼓室、耳管 耳小骨(ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨) | 伝音系 |
内耳 | 聴覚、平衡覚の受容器 蝸牛、聴神経(第Ⅷ脳神経)、三半規管 | 感音系 |
伝音系:耳介で空気の振動を集音して、外耳を通り、中耳で維持させて伝播する機能のことをいう。
耳小骨:ここで音を増幅させる
感音系:内耳で振動を活動電位に変えて神経に伝えていく機能のことをいう
次に、細かい部位や用語などを見ていきましょう
部位・用語 | 機能・形態 |
---|---|
ツチ骨、キヌタ骨(ツチキヌタ関節) | 伝音機能を司る |
アブミ骨 | 前庭窓(卵円窓)に付着している。内耳の蝸牛に伝える |
蝸牛、コルチ器 | コルチ器は中央階にある 蝸牛からは前庭神経(上側)、蝸牛神経(下側)にある 音の振動エネルギーを電気信号に変換する器官 ※次の項目で解説 |
前庭部 | 耳石器(球形嚢、卵形嚢)があり、平衡機能を司る |
乳突洞(antrum) | 鼓室と乳突蜂巣を交通する洞である 乳突蜂巣の中の大きな空間で上鼓室の後方に存在する |
S状静脈洞 | 脳の静脈血流出路である 横静脈洞からS状静脈洞や経静脈球を形成し、経静脈孔から内経静脈に連続している |
舌知覚 | 三叉神経第三枝・下顎神経が支配する |
中耳腔換気能 | 耳管および鼓室乳突蜂巣の含気腔が関与する |
平衡覚 | 前庭と半規管(前・後・外側)が司る 半規管はそれぞれおよそ90度の角度を付けて存在している |
半規管 | 3つある 前(上)半規管、後半規管、外側(水平)半規管 |
水平(外側)半規管 | 立位で頭部を振ることで刺激され、前庭眼反射を介して眼球運動が働き、視線が一点に固定することができる (そのため、自分は動くが物が動いて見えない) |
聴覚 | 聴覚は外耳道、鼓膜、耳小骨、前庭窓、蝸牛、蝸牛神経にある |
内耳道 | 内耳神経(前庭・蝸牛神経)と顔面神経が走行している このため、顔面神経が内耳道内で血管により圧迫されると顔面けいれんをおこすこととなる。 |
内リンパ嚢 | 内耳の後方、後頭蓋窩に接して存在する |
鼓室 | 鼓膜の奥にある空間で耳管に続いている、耳小骨がある |
クプラ、感覚毛、有毛細胞 | 三半規管内の内リンパに存在する クプラ部分は三半規管内の膨大部にあり、体の動きと反対方向に傾く 感覚毛、有毛細胞は神経線維に繋がっている |
膨大部 | 三半規管の一部 内部の有毛細胞で回転加速度を感知する |
耳石 | 前庭器官の球形嚢、卵形嚢にある |
平衡斑 | 前庭器官の球形嚢、卵形嚢の感覚上皮である |
球形嚢(内耳) | 直線加速度や頭部の傾きを感じ、体の平衡を保つ |
感覚毛の上にそれぞれあるものをまとめると
感覚器官 | 上に付属しているもの |
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蝸牛 | 蓋膜 |
耳石器 | 耳石膜の上に耳石 |
半規管 | クプラ |
耳鼻科の診察器具について
器具名 | 内容 |
---|---|
拡大耳鏡 | 外耳道や鼓膜観察に用いる 処置には用いるのは困難 →処置は顕微鏡下で行うことが多い |
吸引嘴管(きゅういんしかん) | 鼻腔や上咽頭に貯留した鼻汁の吸引に用いる |
前鼻鏡 | 鼻腔内を観察するとともに、処置の際に器具の挿入を容易にする 第1頭位:下鼻甲介を観察 第2頭位:中鼻甲介を観察 上鼻甲介は通常観察できない |
膝状鑷子(しつじょうせっし) | 見た目はピンセットのようなもの 鼻内の異物や痂皮の除去、ガーゼ挿入などの処置に用いる |
フレンケル型舌圧子 | 舌背をおさえて口蓋垂・口蓋扁桃の観察に用いる |
耳鼻科 | |
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耳 | 耳鏡、拡大耳鏡、耳垢鉗子(じこうかんし)、鼓膜切開刀、鼓膜喚起チューブ、補聴器、人工内耳 など |
鼻 | 前鼻鏡、後鼻鏡、膝状鑷子(しつじょうせっし)、吸引嘴管(きゅういんしかん)、内視鏡(ファイバースコープ) |
咽喉頭 | 舌圧子、内視鏡(ファイバースコープ) |
めまい | Frenzel眼鏡(フレンツェル)、赤外線Frenzelカメラ など |
内視鏡使用時は、前処置に血管収縮薬のアドレナリン、局所麻酔薬のリドカインを用いることが多い。
薬液はスプレー噴霧など、前鼻鏡はここで用いるものである。
額帯鏡(頭部につける円盤の鏡)は最近はLEDランプや拡大鏡、内視鏡、顕微鏡など多くの光学機器がある。
音の伝わり方について
・聴覚の感覚中枢は大脳皮質側頭葉にある
・内耳の感音系であるコルチ器の有毛細胞や聴神経(第Ⅷ脳神経)に異常が無ければ頭蓋骨からの骨伝導で音を聴くことができる
・音は前庭窓から内耳に入るが、これが蝸牛の前庭階(外リンパ)である
・音は蝸牛の基底回転によって高音を感知し、頂回転で低音を感知する
・コルチ器(ラセン器)は 蓋膜(がいまく)+有毛細胞 で構成されている(中央階に存在)
(細かくは、支持細胞と基底板もあり)
→ 有毛細胞(感覚細胞) = 外有毛細胞 + 内有毛細胞
部位 | 内容物 | 組成 |
---|---|---|
前庭階、鼓室階 | 外リンパ液(細胞外液) | Na+ > K+ |
蝸牛管 | 内リンパ液(細胞内液) | Na+ < K+ |
<音の伝わり方について>
①耳小骨(ツチ骨→キヌタ骨→アブミ骨)→ 前庭窓(卵円窓) → 前庭階(外リンパ) → 鼓室階(外リンパ) → 蝸牛窓(正円窓)
②前庭窓の振動 → 中央階(内リンパ) → コルチ器(感覚細胞の有毛細胞) → 神経(第Ⅷ脳神経) → 大脳皮質側頭葉
③蝸牛の基底回転 → 頂回転 → 鼓室階(外リンパ) → 蝸牛窓(正円窓)
その間、音の波動が有毛細胞を刺激して音を感知する
<画像参考>
蝸牛・コルチ器について:空気の振動はどうやって音になるの? | 看護roo![カンゴルー] (kango-roo.com)(閲覧:2021.11.12)
音の伝播について:Sense (tmd.ac.jp)(閲覧:2021.11.12)
蝸牛の詳細版:蝸牛 - 脳科学辞典 (neuroinf.jp) (閲覧:2021.11.12)
聴力について
・ヒトの感知できる周波数は20~20,000Hz(ヘルツ)といわれている。
・20,000Hzを超えるものを超音波といい、30代以降に聞こえにくいとされるモスキート音は17,000Hzほどとなっている。
鼓膜の切開について
鼓膜に関する知識をまとめたものです
・鼓膜切開は原則、鼓膜緊張部の下部にすること
※鼓膜緊張部の後上部では耳小骨があり、ここで鼓膜切開をすると耳小骨を損傷する危険性がある
また、鼓膜弛緩部では穿孔の閉鎖が困難となってしまう
・鼓膜弛緩部は2層構造となっている
この部分は薄いため、穿孔したら閉鎖しにくく気圧変化に鋭敏の為、真珠腫の好発部位となっている
一方で、鼓膜のその他の部位は3層構造(上皮層、中間層、粘膜層)である
・鼓膜後上方に耳小骨連鎖があり、ここに耳かきなどで直達外傷があれば内耳障害を起こす可能性がある
・鼓膜石灰化の所見は幼少時期に中耳炎の反復があったことを示唆している
<参考>
・ 耳の構造について1: 耳の病気について『耳のしくみと病気の原因』- Ear | 南青山みみのクリニック (mimi-clinic.com)(閲覧:2021.11.11)
・耳の構造について2:耳の構造と聴こえの仕組み・難聴・耳鳴り | 耳の主な病気 | さかした耳鼻咽喉科 | 平野区平野西の耳鼻咽喉科 (sakashita-jibika.com)(閲覧:2021.11.11)
・耳の構造について3: 耳 | 看護師の用語辞典 | 看護roo![カンゴルー] (kango-roo.com) (閲覧:2021.11.11)
内耳神経について
内耳神経(第Ⅷ脳神経)は蝸牛神経、上前庭神経、下前庭神経の3本がある
付近にある神経に聴神経鞘腫が発生すれば様々な症状が出てくる
以下は、聴神経腫瘍が起きる部位と症状についてまとめたものとなる(下前庭神経に発生しやすい)
リンク先
上からの並び | 脳神経 | 障害時の症状 |
---|---|---|
三叉神経 | Ⅴ | 顔面の感覚障害 角膜の反射消失 |
顔面神経 | Ⅶ | 顔面の運動障害 |
蝸牛神経 | Ⅷ | 高音域の難聴 耳鳴 |
前庭神経 | Ⅷ | 眼振 めまい |
<参考画像あり>
内耳神経の走行と働き | まっちゃんの理学療法ノート (pt-dodo.com)(閲覧:2021.11.17)
リンク先
耳痛の原因について
原因 | 疾患 |
---|---|
耳疾患由来のもの | 耳介・外耳道・中耳の炎症とその合併症、腫瘍性、外傷性、外耳道異物、ヘルペス |
口蓋・咽頭扁桃疾患由来 | 舌咽神経を介した放散痛(扁桃周囲炎などの炎症、腫瘍など) |
歯科口腔疾患由来 | 三叉神経枝を介した放散痛(炎症性、腫瘍性など) |
咽頭喉頭疾患や耳下腺炎由来 | 迷走神経を介した放散痛(炎症性、腫瘍性など) |
今回はここまでになります
<参考文献>
メディックメディア Question Bank vol.5 耳鼻咽喉科
病気が見える Vol.13 耳鼻咽喉科
ビジュアルブック 耳鼻咽喉科疾患
(注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
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