(注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
そのため、これを全て把握しても人体については全て理解し、学べたということにはなりませんのでご注意ください。
医学は未知の部分も含め、既知の部分であってもかなりの量です。ここは忘れないようにしてご利用ください。)
骨腫瘍の好発年齢について
骨腫瘍の好発年齢については以下のとおりである
年齢 | 性質、種類 |
---|---|
5〜10歳 | 腫瘍類似疾患:Langerhans(ランゲルハンス)細胞性組織球症 |
10〜20歳 | 良性:骨軟骨腫、類骨骨腫、内軟骨腫 悪性:骨肉腫、Ewing肉腫(ユーイング) 腫瘍類似疾患:骨嚢腫 |
20〜30歳 | 良性:巨細胞腫 悪性:骨線維肉腫 |
30〜50歳 | 悪性:軟骨肉腫、脊索腫 |
50歳〜 | 悪性:骨髄腫 |
続発性 | 転移性骨腫瘍 |
骨肉腫について
骨肉腫とは、大腿骨遠位部と脛骨近位部の骨幹端部に好発する
骨Paget病(パジェット)※などに続発する場合あり(二次性骨肉腫)
※ 骨Paget病:骨格の慢性疾患であり、骨の代謝回転が異常となりその部位が肥厚して柔らかくなり、これは脆い状態である
痛みを伴わないこともあるが、疼痛、変形、神経圧迫による疼痛などが見られることがある
・好発:10代男性
・原発性悪性骨腫瘍で最も多い疾患である
・骨破壊、骨増殖、悪性を示唆する骨膜反応などの所見を認める
・膝付近の疼痛、腫脹あり
・肺転移が多い
→しかし、5年生存率が上がってきており、70%以上にもなってきている
X線検査:骨幹端部などに辺縁硬化像のない骨破壊像、骨新生像、spicula、Codman三角などの骨膜反応が認められる(次の項目で解説)
病理組織所見:主要細胞による類骨や骨組織の形成像がみられる
→核クロマチンの増量した異形細胞が網目状の類骨を形成する
血液検査:ALP高値など
確定診断後に、CTやMRI、骨シンチグラフィなどで
腫瘍の範囲や肺転移有無を確認する
<治療>
手術療法をする前後には化学療法をあわせて行い、患肢温存できるようにする
患肢温存が可能な場合:広範切除術(患肢温存術)を行う
→広範は、悪性腫瘍の周囲の健常組織も切除することを意味する
患肢温存が不可能な場合:患肢切断術または離断術を行う
悪性骨腫瘍の特徴について
悪性の骨腫瘍の特徴については以下のような臨床的特徴がある
項目 | 骨肉腫 | Ewing肉腫 (ユーイング) | 軟骨肉腫 | 脊索腫 |
---|---|---|---|---|
好発部位 | 長管骨骨幹端 | 長管骨骨幹 骨盤 | 長管骨骨幹 骨盤 | 脊椎 (特に仙骨) |
好発年齢 | 中高生 | 小中学生 | 中高年 | 中高年 |
検査所見 | ALP上昇 | 炎症所見 | X線:境界不明瞭な骨吸収像 | ー |
臨床症状 | 疼痛、腫脹 | 疼痛、腫脹、発熱 | 疼痛 | 膀胱直腸障害 |
悪性化する良性の骨腫瘍がある
それは、多発性骨軟骨腫症(外骨腫)、多発性内軟骨種症である
リンク先
骨膜反応について
骨膜反応は、良性腫瘍、悪性腫瘍の鑑別に重要である
そこで骨膜反応についてまとめたものが以下の通りとなっている
骨膜反応の種類 | 内容 |
---|---|
①層状肥厚 | 腫瘍の浸潤力が弱い場合にみられる 肥厚した骨膜と腫瘍が見られる |
②Codman三角(コッドマン) (Codman's triangle) | 腫瘍の発育する部位で、損傷されて骨膜下に新生骨を形成して三角形に見える部分 |
③spicula(スピキュラ) (sunburst[sunray] appearance) | 骨膜外に腫瘍が進展して、骨の長軸に対し、放射状(sunburst)に、または平行(sunray)に新生骨が形成されるもの |
④玉ねぎの皮様反応 (onion-peel appearance) | 骨膜化に新生骨が形成され、肥厚した骨膜が層状にみえるものをいう |
疲労骨折では、骨折部位周辺は滑らかな骨膜反応である
<参考ページ>
日本医事新報社:https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=15916(閲覧:2022.7.22)
つねぴーblog:https://tsunepi.hatenablog.com/entry/2015/09/01/120000(閲覧:2022.7.22)
類骨骨腫について
類骨骨腫とは、下肢の長管骨骨幹・骨幹端部に多く発生する良性の骨形成性腫瘍である
・好発:10代〜20代男性
・夜間痛が見られる
→これはNSAIDsで疼痛軽減ができるという特徴がある
X線検査:骨幹部、骨幹端部の広範な骨硬化像の中央には1cm以下の小円形または楕円形の骨透亮像(nidus:ナイダス)が認められる
皮質骨内にナイダスを認めたり、周辺の皮質骨が肥厚している
⇆ 鑑別には、Brodie腫瘍(ブローディ)がある
ブローディの骨腫瘍とは、慢性一次性骨髄炎といわれており長骨の骨幹端部に円形のあるいは楕円形の骨透亮像を示し、軽度の局所炎症を示すだけで掻爬や骨移植などで予後良好となる(夜間痛が基本はないのが鑑別点の一つ)
これが、近年、全身・局所で非常に緩慢あるいは欠如している非定型の発症というのがあり、骨腫瘍との誤診が起きやすい
慢性骨髄炎の一つとして多いのが、開放骨折や皮下骨折の手術後に続発するものがある
骨巨細胞腫について
骨巨細胞腫とは、単核腫瘍細胞中に、多くの多核巨細胞を含んだ骨腫瘍である
・好発:20〜30代
→骨端線閉鎖後でみられる
・膝周囲などの疼痛や腫脹
・大腿骨遠位部や脛骨近位部の骨端部に多く発生
(膝周辺や橈骨遠位部が好発する部位である)
・まれに肺転移する点は注意
X線検査:長管骨骨端部に偏在し、嚢胞状の骨透亮像がみられる、また、石鹸泡沫状陰影が認められる
→soap bubble appearance(みられる頻度はそれほど多くはないが、、)
骨端から骨幹端にかけて溶骨性病変となっており、骨皮質は菲薄化し膨隆している(ballooning)
診断:病理組織所見で、単核腫瘍細胞や多核巨細胞の増殖確認で行う
<治療>
術後の局所再発率が高く、およそ40〜50%ほどもある
手術療法:腫瘍の掻爬、または、辺縁切除と骨移植(関節の温存ができる)
→単純な掻爬では再発率が3割ほどある
→このため、掻爬にフェノール処理や熱処理、焼却などの補助療法を併用することが多い
薬物療法:デノスマブ(分子標的薬)※、放射線療法
※ デノスマブ:ヒト型抗RANKL(ランクル)モノクローナル抗体製剤であり、生物由来製品で劇薬である(薬局:記録の保管期限は20年)
これは用法用量(製品)によって適応が異なり
・60mg製剤を6ヶ月に1回(場合によっては3ヶ月に1回)の皮下注射で済む「関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制」としてや
・120mg製剤を4週間に1回皮下投与となるのが、「多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変」と
・120mg製剤を第1日、第8日、第15日、第29日目と、その後は4週に1回の投与をする「骨巨細胞腫」がある
掻爬するときは再発予防のため、凍結療法やフェノール処理、セメント充填などを合わせて行うこと
人工関節置換術の適応となる場合もある
転移性骨腫瘍について
転移性骨腫瘍は、他臓器原発の悪性腫瘍が骨に転移したもの(主に癌)
これは、脊椎への転移が最も多い
転移性脊椎腫瘍について
転移性脊椎腫瘍では、誘因のない脊椎局所の疼痛や病的骨折が見られる
・好発:50歳以上
・脊椎腫瘍の大半を占めていて、およそ7割が腰椎である
→腰痛がみられる、腫瘍が骨内を占拠しており、骨髄内圧上昇や病的骨折がみられるため、安静時でも痛みがある
→腰痛からの鑑別には尿管結石や子宮筋腫、胆石なども考える必要があるが、この転移性脊椎腫瘍が増加傾向にあり必ず念頭に置いておきたい
・感覚障害や筋力低下などがみられる
→L4、L5やS1神経根領域の感覚鈍麻、筋力低下など(これには脊柱管狭窄症も考慮)
・炎症所見は軽度(体温や白血球数の確認)
→高ければ化膿性脊椎炎の疑い
・ALP高値
→骨腫瘍疑い
血液検査:ALP上昇やCa値上昇がみられる
Lasegue(ラセーグ)テストは陰性(ヘルニアではないことを確認)
X線検査:椎弓根の消失像、骨融解像がみられる
→ウインクをしているような陰影がみられる(pedicle sign , winking owl sign)、また、Pedicleの消失などもある
MRIや骨シンチグラフィ、PETなどで腫瘍の存在を確認
前立腺癌の転移では、血中の前立腺特異抗原であるPSAが高値を示す(基準値:4.0ng/mL以上では再検査→生検)
→前立腺肥大症や男性型脱毛症の治療薬である5α-還元酵素(レダクターゼ)阻害薬(抗男性ホルモン薬:デュタステリドなど)は
テストステロンを5α-ジヒドロテストステロン(DHT)に代謝するのを阻害するが
これによって投与6ヶ月後に血清PSA値を50%も下げてしまうことから
これを6ヶ月以上服用している患者のPSA値は測定値を2倍にして考える必要がある(服薬中止から6ヶ月以内には正常に戻る)
<治療>
原発巣の治療に加え、必要に応じて放射線療法や化学療法、手術療法を行う
これは、生命予後が悪いことから疼痛軽減が目的としていることが多い
全身を検索し、他臓器転移がなく全身状態が問題なければ患者・家族同意のもと手術を行うこともある
→脊柱管内の腫瘍除去をし、椎体内の転移巣を可及的に削り、体幹支持できるよう上下の椎体をチタン製ロッドやスクリュー、ワイヤー固定を行う(脊椎後方固定術)
悪性軟部腫瘍について
<軟部腫瘤について>
・良性または悪性の軟部腫瘍
・膿瘍などの炎症、血腫、ガングリオン、粉瘤などの非腫瘍性疾患
を考える
<所見>
・体温正常
・局所炎症症状なし
・外傷歴なく、抗凝固剤服用歴なし
→血腫の可能性が低い
・急速に増大する弾性硬の筋内腫瘤がみられる
→T1強調像で、内側広筋が腫大、その内部はほぼ筋肉と等信号の均一な領域がみられる
→また、T2強調像では、腫大下内側広筋内に等信号〜高信号の腫瘤を認める(腫瘤周囲は筋組織がわずかに残存する)
鑑別はMRIで行うのがよい
悪性の軟部腫瘍は、MRIでT1強調像では低信号〜等信号、T2強調像では不規則な高信号を呈する
項目 | T1強調像 の信号強度 | T2強調像 の信号強度 | 造影効果 |
---|---|---|---|
腫瘍 | 低 | 高 | 辺縁部のみ |
粉瘤 ガングリオン | 低 | 高 均一 | なし |
脂肪腫 | 高 均一 | 高 均一 | なしまたは軽度 |
悪性軟部腫瘍 | 低 | 高 不規則 | 不規則 |
脊髄腫瘍について
脊髄腫瘍とは、脊柱管内に生じた腫瘍のことで、発生部位によって分類がなされる
<分類>
・硬膜外腫瘍:転移性腫瘍が多い
・硬膜内髄外腫瘍:神経鞘腫、髄膜腫が多い
・髄内腫瘍:上衣腫、星細胞腫が多い
・好発:中年〜高齢者
・初期は神経根刺激症状の疼痛が見られる
・また、脊髄圧迫症状として感覚障害や痙性麻痺、膀胱直腸障害がみられる
・硬膜内髄外腫瘍が最も多く、発生部位では胸髄が最多となっている
X線検査:椎弓根間距離の拡大や椎体・椎弓根への侵食がみられる
MRI検査:占拠性病変を認める
<治療>
可能な限りは手術療法での摘出を目標とする
完全摘出が可能な場合(多くは硬膜内髄外腫瘍など):腫瘍の完全摘出をすること
完全摘出が不可能な場合(髄内腫瘍の星細胞腫など):腫瘍の部分摘出をすること
必要に応じて放射線療法を追加
脊髄腫瘍の鑑別について
項目 | 硬膜外腫瘍 | 硬膜内髄外腫瘍 | 髄内腫瘍 |
---|---|---|---|
割合 | 10%ほど | 65%ほど | 25%ほど |
特徴 | 転移性腫瘍が多い | 良性腫瘍が多い (神経鞘腫、髄膜腫など) | 神経膠腫が多い (脳室上衣腫、星細胞腫など) |
ミエログラフィ (造影剤使用) | 先細り像 | 騎跨状(きこじょう:境界が鮮明) | 表面浮彫(うきぼり:境界が不鮮明) |
その他類似疾患について
骨腫
骨腫は頭蓋骨に多く見られ、Gardner症候群※の合併が関係していることが多い
※ Gardner症候群(ガードナー):家族性大腸ポリポーシス(大腸に多くの腺腫ができる疾患)、骨腫、軟部腫瘍の3つの症状が合併した疾患のこと
腺腫は良性のことが多いが、Gardner症候群では癌化傾向が強いとされている
Gardner症候群について
先ほどの内容の補足となるが
大腸ポリポーシスでは下痢、血便、腹痛などがみられ、骨や軟部腫瘍ではしこりや痛みがみられる
原因遺伝子はAPC遺伝子である(常染色体優性遺伝であり、遺伝性疾患である)
この疾患疑いの患者では、検査は腹部CT、注腸造影検査、上部消化管(胃のこと)内視鏡検査、下部消化管(大腸のこと)内視鏡検査などを行う
腺腫の放置は癌化する可能性があり、診断されたらすぐに手術療法を行うこと(大腸の切除)
疾患 | 内容 |
---|---|
単発性骨嚢腫 | 上腕骨や大腿骨近位の骨内の溶骨性病変が特徴となっている 20歳以下でみられる骨腫瘍類似疾患である |
骨軟骨腫 | 有茎性の骨の突出がみられ、表層に軟骨帽のある良性骨腫瘍である 疼痛の悪化などはほとんどみられない |
軟骨肉腫 | X線検査では、境界不明瞭な骨吸収像を認める 皮質骨を破壊し、軟部組織に発育していることが多い 病変の内部には斑点状の石灰化が認められることが多い |
好酸球性肉芽腫 | 長管骨などに生じる疾患で、溶骨性変化や広範な骨膜反応がみられる |
骨芽細胞腫 | 旺盛に骨芽細胞の増殖と骨形成が特徴的である |
軟骨芽細胞腫 | 組織学的には多核巨細胞や単核細胞(骨巨細胞腫より均一な円形となる)、軟骨島(HE染色でピンクに染まる特殊な軟骨)が観察できる |
非骨化性線維腫 | 骨幹端にあり、X線では周辺に骨硬化がみられ、組織では線維性組織の増殖がみられる |
Ewing肉腫 (ユーイング) | 発症は20歳未満が多い 長管骨の骨幹に発生することが多い 鑑別:X線検査、病理所見 |
悪性線維性組織球腫 | 発症する年齢は幅広い 長管骨では大腿骨遠位、脛骨近位に好発 X線検査では、広範で境界不鮮明な骨吸収破壊像を呈し、骨膜反応は著明ではない 鑑別:病理所見 |
硬化性骨髄炎 | 炎症所見はみられない(赤沈、白血球数は正常) 原因不明で、下顎骨の広い範囲で硬化性変化あり 骨膨隆、無症状だが、時々疼痛や腫脹あり |
多発性骨髄腫 | 骨髄の形質細胞が癌化することで骨髄腫細胞となって増殖する疾患である X線検査では、頭蓋骨や骨盤に小円形の境界明瞭な周囲に骨硬化像のない骨透明巣が多発することが多い →これを、打ち抜き像という(punched-out lesion) |
<参考>
出典:OralStudio歯科辞書
硬化性骨髄炎:https://www.oralstudio.net/dictionary/detail/5465(閲覧:2022.7.22)
X線所見での鑑別
<X線所見での鑑別>
・骨皮質に破壊や消失あり
→骨肉腫などの悪性腫瘍疑い
・病理組織所見で軟骨組織を認める
→軟骨芽細胞腫の疑い
・病理組織所見で類骨や骨を認める
→骨肉腫の疑い
・骨端離開とは、成長軟骨板の損傷を伴う骨折であり、小児に多く見られる
ここまでが整形分野における腫瘍となります
<参考>
メディックメディア:クエスチョン・バンク
病気がみえる
(注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
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