今回も第1回目に引き続き、成長と発育の分野を見ていきます
(注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
そのため、これを全て把握しても人体については全て理解し、学べたということにはなりませんのでご注意ください。
医学は未知の部分も含め、既知の部分であってもかなりの量です。ここは忘れないようにしてご利用ください。)
リンク先
Apgarスコア(アプガースコア:AP)について
アプガースコア関連の内容は小児科疾患②に詳細あり
アプガースコアは出生直後の新生児の状態を評価し、新生児仮死の有無を判断する評価スケールとなっている
1分後と5分後での評価は可能ならば行うこと(1分後で評価が悪くても、5分後には改善していることも多い)
→これは、新生児の長期予後に関して、1分値よりも5分値の方が神経学的後遺症のより確かな指標となるためである
(アプガースコアが3点以下を1分、5分と続くことで脳性麻痺の確率が上昇していく)
評価項目は5つあり、それぞれ0~2点(3段階)の評価をしその合計点で状態を把握する
<アプガースコアの合計点>
7~10点:正常
4~6点:軽症仮死(第1度新生児仮死)
0~3点:重傷仮死(第2度新生児仮死)
確認項目/点数 | 0点 | 1点 | 2点 |
---|---|---|---|
皮膚の色 (Appearance) | 全身蒼白 | 身体が淡紅色(ピンク) 四肢のチアノーゼあり | 全身が淡紅色 四肢のチアノーゼなし |
心拍数 (Pulse) | なし | 100回/分 未満 | 100 回/分 以上 |
刺激反応性(啼泣)※ (Grimace) | なし | 顔をしかめる 弱く泣き出す | くしゃみ、咳あり 強く泣く |
活動性(筋緊張) (Activity) | 弛緩 | 少し四肢を動かす | 活発に四肢を動かす |
呼吸 (Respiration) | なし | 不規則 緩徐 | 良好 啼泣(強く泣く) |
※ 刺激方法として、カテーテルを鼻に入れて反応性を見る
出生直後や啼泣時に口唇チアノーゼが一時的に認めることはあるが、生後3日も経ってもみられていれば異常であるといえる
出生時の無呼吸に対しては、先に皮膚刺激で呼吸を誘発すること
皮膚刺激で呼吸が開始する状態は第1度無呼吸という
皮膚刺激では反応なく、人工呼吸が必要な状態を第2度無呼吸という
→この時、マスク・バッグ(MB)で換気の後に気管挿管を施行する
新生児は低体温になると酸素消費量が増加し、代謝性アシドーシスが悪化するため、体温低下防止のため、全身の水分をふき取ることが重要である
新生児仮死は出生前後の呼吸・循環の障害されている状態であり、重症となると低酸素性虚血性脳症で重篤な後遺症リスク(脳性麻痺や重度心身障害など)が高まる。
また、腎不全などの多臓器不全を引き起こせば死亡することもある
→このため必要に応じ、口腔・鼻腔の吸引をして気道開通する体位を取り、刺激による呼吸誘発を行うこと
→呼吸刺激で改善されない場合は、パルスオキシメーターによる酸素化の評価をする(この時、心電図モニター装着が推奨)
呼吸が確立してから、静脈路を確保し薬剤投与をするなど対処する
<参考>
バックバルブマスク(アンビューバッグ)とは?使い方や構造・ジャクソンリースとの違いも | ナースのヒント (j-depo.com)(閲覧:2022.1.15)
新生児、乳幼児の意識レベル評価法について(JCS)
Japan Coma Scale(JCS)での意識レベル評価法は「坂本による乳児用改訂版」がある
これは、意識障害の評価法として成人で用いられているJCSを乳児用に意訳したものとなっている
乳幼児、小児で視線が合わないのは意識障害を示唆している(急性脳症などの疑い)
この際、末梢循環障害(毛細血管再充満時間が2秒以上かかる場合)がないかなど確認をする
1 | あやすと笑う、ただし不十分で声を出して笑わない |
2 | あやしても笑わないが視線は合う |
3 | 母親と視線が合わない |
10 | 普通の呼びかけで容易に開眼する 飲み物を見せると飲もうとする、あるいは乳首を見せれば欲しがって吸う |
20 | 大きな声または体を揺さぶることで開眼する 呼びかけると開眼して目を向ける |
30 | 痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すとかろうじて開眼する |
100 | 痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする |
200 | 痛み刺激で少し手足を動かしたり、顔をしかめる |
300 | 痛み刺激に反応しない |
<参考>
一般社団法人 日本小児神経学会:https://www.childneuro.jp/modules/about/index.php?content_id=29(閲覧: 2022.1.18)
出生時の状態について
・大泉門の大きさは1~3cmくらいであれば正常範囲である
→大泉門の閉鎖がみられるようであれば頭蓋骨早期融合症、小頭症などが示唆され病的な所見である
・羊水過少症は何らかの要因でおこり、陣痛が来た時に臍帯が圧迫されることで胎児機能不全を引き起こす要因となる(新生児仮死の原因)
→適切な産科的対処が必要
・気管食道廔は食道閉鎖に合併することが多い。これは羊水過多症の原因となる
・全前置胎盤は、多量出血を認める胎児機能不全の原因となることがある。これは出血をきたす前に予定帝王切開を行うことで、児に対する影響はほとんどないといえる
・胎児心拍数陣痛図で、遅発一過性徐脈を呈するようであれば胎盤機能不全の疑いがある
→この場合は緊急帝王切開による出生を考慮
・持続的気道陽圧法(CPAP)は自発呼吸があり呼吸困難の徴候がある児に施行する
・新生児蘇生法のアルゴリズムで確認して、バックバルブマスクの使用をすることもあるため、こちらも併せて確認しておいた方が良いでしょう
※これらは新生児蘇生ガイドライン(新生児蘇生法アルゴリズム2020)を確認し、遅延なく人工呼吸することが推奨となっている
<参考>
2015年版とは「安定化の流れ」で一部改訂がみられてましたが、ほぼ同じような内容ですので2015年版でもいいのでまずは確認してみてください
2020アルゴリズム図 | ガイドライン改訂 (ncpr.jp)(閲覧:2022.1.15)
脈拍のとり方について
成人の脈は頸動脈でとるが、乳児では上腕動脈、小児では頸動脈または大腿動脈で確認をする
正常なバイタルサインについて
年齢によって正常なバイタルサインは変わってくるため、しっかり把握しておくことが必要です
分類 | 心拍数(回/分) | 呼吸数(回/分) | 血圧(mmHg) |
---|---|---|---|
新生児 | 120 | 40~50 | 70/40 |
乳児 | 120 | 30~40 | 90/60 |
幼児 | 100 | 20~30 | 100/60 |
学童 | 80 | 18~20 | 110/60 |
成人 | 70 | 12~18 | 120/60 |
新生児の基準値については以下に示しておく
項目 | 基準値 |
---|---|
心拍数 | 120~140回/分 |
呼吸数 | 30~50回/分 |
体重 | 約3,100g |
身長 | 50cm |
頭囲 | 33cm |
胸囲 | 32cm |
血圧 | 70/40mmHg |
血糖値※ | 40mg/dL |
体温 (出生直後) | 37℃内外 |
・1回の心拍出量が少ないため、心拍数は多い傾向である
・新生児で、生理的体重減少が生後3、4日で最大となる
・動脈管は機能的に閉鎖するのは生後48時間以内である
・身長と頭長比率は4:1である(4頭身)
→ちなみに6頭身となるのは6歳頃である
・頭囲と胸囲はほぼ同じである
・新生児の体温は環境に影響されやすい(体が小さいことで、体表面積が体積に比べて大きいため(面積は二乗だが、体積は三乗))
→輻射による熱喪失が大きいことから、低体温防止のためタオルなどでくるむとよい
・生後の第一呼吸で肺に空気を取り入れ、声門を少し閉じて「オギャー」と泣く第一啼泣によって胸腔内に陽圧をかけて閉じている肺胞を開く
・皮膚(角質)の発達が未熟でありかつ、皮膚血流が多いため、極めて多量の不感蒸散(蒸泄)がみられる
・皮膚が脆弱、術後の安静には非協力、免疫系の未熟などがあるため術後の縫合不全は起こりやすい
・新生児は術後に、低体温や感染症、低酸素血症、肝障害などを起こしやすいといえる
→肺梗塞はほとんどおこさない
・術後の状態で、血小板数が低い状態であれば重症感染症などが考えられることから早急な対処が必要であるといえる
大泉門の測定は径で行う
大泉門径 = ( a + b ) / 2
※ダイヤ型の大泉門の、一辺とその対面にある一辺の短い距離となるところを結んだ線の長さを(a)、その隣の一辺とその対面を結んだ距離が短くなる線を(b)として、足して2で割ったもの
通常、大泉門は1歳半頃に閉鎖する
※ 血糖値:新生児では40mg/dL未満、早産児では30mg/dLで低血糖である
低血糖が続けば神経学的予後につながるため、早期に10%ブドウ糖液の点滴等の処置が必要となる
出生体重について
分類 | 出生体重 |
---|---|
超低出生体重児 | 1,000g未満 |
極低出生体重児 | 1,500g未満 |
低出生体重児 | 2,500g未満 |
正常 | 2,500g以上4,000g未満 |
低出生体重児では
・頭蓋内出血
・RDS(Respiratory Distress Syndrome:新生呼吸窮迫症候群)※1(在胎週数32週未満の時)
・敗血症
・肺出血
・無呼吸発作
・Wilson-Mikity症候群(WMS:ウィルソン・ミキティ)※2
・気管支肺異形成症
・未熟児網膜症
などを合併しやすい
この他
・低体温
・低血糖
→振戦を呈する
・高ビリルビン血症
・電解質異常
などもみられやすい
※1 RDS:生後2〜3時間で発症する、肺の未成熟により、肺サーファクタントが欠乏して肺コンプライアンスの低下により肺胞虚脱、肺血管抵抗増大を呈する
要因は、早産児、極低出生体重児、帝王切開児、母体糖尿病などがある
※2 Wilson-Mikity症候群:生後直後は問題ないが、数日から数週間経つと呼吸困難やチアノーゼを呈するようになる疾患であり、心不全、呼吸不全で亡くなることもある
これは、長期間の酸素投与や人工換気が必要なことが多いが、時間が経つことで呼吸状態が改善されていく
はっきりとした原因は不明とされているが、子宮内膜の炎症や感染などが考えられている
・light for date(LFD):妊娠週数に相当する標準体重の10パーセンタイル未満の児をいう
・small for date(SFD):LFDの中で、体重だけでなく身長も10パー線タイル未満の児をいう
・胎児発育不全(FGR):在胎週数と出生体重から診断されるもの
・LFDやSFDに該当する児では、低血糖症、低Ca血症、多血症、高ビリルビン血症などが合併しやすいとされる
(低血糖症は、肝臓でのグリコーゲン蓄積が不十分のことから発症する、また、低血糖症から無呼吸発作を呈することがある)
・FGR児では、胎児機能不全、新生児仮死、胎便吸引症候群、新生児低血糖、新生児低カルシウム血症、赤血球増多症、低体温症、肺出血などを合併する
胎児発育不全について(FGR児)
胎児発育不全(FGR)の原因には、胎児因子、胎盤因子、母体因子がある
<胎児因子>
・染色体異常
・先天的形態異常
・子宮内感染
など
<胎盤因子>
・胎盤梗塞
・前置胎盤
・臍帯付着異常
など
<母体因子>
・妊娠高血圧症候群
・多胎妊娠
・喫煙
など
・原因によって、発症時期が妊娠初期・中期以降とは異なっており、児の頭部や体幹、四肢発育の均整が異なったり、児の予後に影響がある
・胎児因子が原因であれば、妊娠初期から発症し、均整とれて全体的に小さく、予後が悪いことが多い
FGR児の診断について
FGRの診断には、正確な妊娠週数の把握が必須条件となっている
このため、最終月経から算出した妊娠週数と、超音波検査で計測した胎児頭殿長(CRL)や胎児大黄径(BPD)から算出した妊娠週数を比較して、妊娠週数の再確認が必要である
妊娠30週で1,500gを基準として覚えるとよい
そこから、3週ごとに500gずつ増減すると覚えるとよい
週数 | 体重 | 考え方 |
---|---|---|
24 | 500 | -3週で-500g |
27 | 1,000 | -3週で-500g |
30 | 1,500 | ここを基準にして ↕︎ |
33 | 2,000 | +3週で+500g |
36 | 2,500 | +3週で+500g |
39 | 3,000 | +3週で+500g |
FGR児では、低血糖や低Ca血症、赤血球増多症を認めることが割合多い
<超早産児、超低出生体重児の例>
ex)在胎26週、出生体重750g では、常位胎盤早期剥離などで緊急帝王切開をしていて、NICU入院となっていることが考えられる
この時の合併症は以下が挙げられる
・胎便性腸閉塞
・壊死性腸炎
・消化管穿孔:腹腔内の遊離ガス(X線検査)
・消化管閉鎖:消化管穿孔の原因として閉鎖となっていることも考えられるが、この場合は腹腔内遊離ガスが更なる膨満があり、腸管拡張が強いと考えられる
見た目にも、腹部の色調変化、アシドーシスの進行が特徴的である
在胎週数が少なく、出生体重が少なければ、やはり組織が未熟なことから消化管穿孔が起こりやすい
この原因には、特発性のもの、壊死性腸炎、腸閉塞など様々である
症状には、腹部膨満、消化不良、腸雑音減弱が認められる
→X線検査では腹腔内遊離ガスを認めるが、臥位正面像で見えにくい時は左側臥位正面像がよいとされる
以上のことから、腸管未熟であるため胃管からのミルク注入や減圧は慎重に行う必要がある
この時、ミルクの消化具合、腹部の張り具合、腸雑音はこまめにチェックすること
新生児における血液検査結果について
出生直後の白血球分画は好中球優位(防御機構を強くしておく必要があるため)だが、生後2週間を過ぎることでリンパ球優位となる
その後、4~5歳で再度逆転し、それ以降は好中球優位となる
→Scammonの臓器別発育曲線より
項目 | 内容 |
---|---|
AST | 出生後は成人より高値を示し、生後1〜5日で35〜140IU/Lであり、その後徐々に低下して成人基準値になる |
ALT | 出生時から成人の基準値と同等 |
白血球(WBC) | 出生時は高値を示す(17,000/μLほど:8,000〜38,000/μL) 出生後12時間上昇した後は下降して、生後1週間で12,000/μLほどになる |
血小板(PLT) | 出生時から徐々に漸増するが、乳幼児以降に徐々に漸減して成人基準値になる |
IgG、LD、CK、γ-GTP、アンモニア | 出生時高く、徐々に低下する |
CRP | 出生時陰性でも1~2生日に1.5mg/dLを上限に上昇することあるが(生理的CRP上昇)7生日には自然陰性化する |
総ビリルビン(T.Bil) | 0生日は低値であり、生後2〜3日頃から漸増し、生後5〜7日がピークで徐々に低下し、生後2週間以内に漸減する(生理的黄疸) |
血中クレアチニン(Cr) | 出生直後は母親と同値のため一番高いが、新生児期から乳児期には低値となり、その後は筋肉量に相関して成長とともに増加する |
血糖値 | 生理的変化が大きく、血糖値は出生後急速に低下して、1〜4時間で最低となる その後に、体内に蓄えられているグリコーゲンで血糖値上昇をしていく |
出生後に小刻みに震えが見られる場合は、けいれん、低血糖、低Ca血症などの可能性が考えられるため、少量の血液で迅速検査をすること
胎便やその他の便の性状について
胎便とは、出生直後から3日頃までに排泄する正常な便である。この胎便の性状は緑黒色で粘稠である
タール便との鑑別は、周囲に薄く便が付着している部分が赤黒色であれば可能性が高いといえるだろう
性状・背景疾患 | 色調 |
---|---|
移行便 | 生後の哺乳物成分を含むものであり、白黄色のものが混じる |
胆道疾患あり | 胆汁排泄障害の合併で、灰白色〜白黄色を呈する |
消化管出血 | タール便(赤黒色)を呈する |
新生児期に低血糖をきたしやすい疾患について
低出生体重児や子宮内胎児発育遅延では、出生後にしばしば低血糖を認めるため、生後6時間ほどは経時的に血糖値を確認することが必要である
原因の一覧については主に以下の通りである
要因分類 | 疾患・原因 |
---|---|
インスリン分泌過剰 (これらは巨大児のことが多い) | ・糖尿病母体から出生した時 ・Beckwith-Wiedemann症候群※1 ・膵頭細胞腫(islet cell adenoma) ・膵頭細胞過形成(nesidioblastosis) |
糖貯蔵不足 | 主にSFD児、未熟児 |
代謝異常 | ガラクトース血症、糖原病※2、果糖不耐症 |
母親の薬物服用 | 経口糖尿病薬 |
その他の要因 | 敗血症、仮死、低体温、多血症など |
※1 Beckwith-Wiedemann症候群(BWS:ベックウィズ・ヴィーデマン):臍帯ヘルニア(Exomphalos)、巨舌(Macroglossia)、巨体(Giantism)の三主徴の先天異常症である
それぞれの疾患名からEMG症候群ともいわれる
およそ15%がWilms腫瘍(ウィルムス)※3、肝芽腫、横紋筋肉腫などの胎児性腫瘍を発生する
↔︎Sotos症候群などの過成長を呈する疾患との鑑別が必要
※2 糖原病(Ⅰ型):グルコース-6-リン酸を加水分解してグルコースを生成・輸送するグルコース-6-ホスファターゼの機能障害で起こる疾患である
これによって、肝臓、腎臓、腸管にグリコーゲンが蓄積して低血糖や肝腫大を呈する疾患
※3 Wilms腫瘍:小児の腎原発性悪性腫瘍で最も多い腎芽腫(約75%占める)のこと
いかに腎機能を温存して治療するかが重要な疾患である
正常新生児の成熟特徴について
正常に生まれた新生児と、早産児では特徴が異なっているため、それぞれ把握しておくことが必要です
新生児の成熟度判定は神経学的所見と外表的所見から判断すること
・神経学的所見は客観性の評価が難しく、外表的に判断されることが多い
・新生児の入眠覚醒のサイクルは3時間ほどである
もし、1時間程度で啼泣がみられるようであれば母乳不足などを考慮する
・新生児は水様便で回数が多い。また、便の色は黄色から緑色が正常である
→胆道閉鎖症による灰白色便、上部消化管出血であればタール便(黒色)、下部消化管出血であれば血便(赤色)がみられる
・臍帯の脱落は生後5〜7日にみられる
<外表的判断に利用:産毛、皮膚、足底、乳房、眼、耳、外性器など>
・眼では眼裂の融合度合い
・性器では
→男児では陰嚢しわ、精巣下降具合
→女児では大陰唇、小陰唇
・乳房(正常では大きく、乳輪の隆起もはっきりしている)
・溢乳(いつにゅう)※1は問題ない現象である
→吐乳(とにゅう)※2であれば受診勧奨となる
リンク先
※1 溢乳(いつにゅう):授乳後に口からだらだらと少量の乳が吐き出されることで、1日数回程度であれば問題はない
※2 吐乳:溢乳よりも吐き出す量が多く、体重増加不良になったり、その他体調不良、下痢、喘鳴、無呼吸発作などを呈するようであれば精査が必要である
※産毛は成熟に伴って少なくなるのが特徴である
頭髪は長さが2cm内外 | 面皰は鼻に限局 |
産毛は背中や特に肩甲部に限局 | 爪は指端を越える |
胎脂が関節屈曲部に残る | 皮膚角下層は厚く、血管は透けていない、皮下脂肪が厚い (なめし革様と評されることあり) |
睾丸の下降、大陰唇の発達 | 足底のしわが多い |
(性器出血、乳汁分泌は母体ホルモン(エストロゲン等)の影響でみられることあり) | 耳介は厚く、硬い |
リンク先
新生児の生理的黄疸について
新生児の生理的黄疸は、ビリルビンの代謝がうまく働かないことでおこるグルクロン酸抱合酵素の未熟性が原因の正常な反応である
出生後2、3日でみられ、4〜6日でピークとなる
・健常児において、出生直後のビリルビン値は母体と同じ1mg/dL程であるため、生後24時間以内に肉眼的に黄疸がみられるのは病的なものと考えられる
・母乳に含まれているプレグナンジオールは母乳性黄疸の原因の一つと考えらえれており、母乳が原因で生後1ヶ月ほど黄疸が続いていたとしても母乳を中止するという必要はない
→生後1ヶ月近く 18mg/dLほどの黄疸が続くことがある
・ここでいうビリルビンは網内系で赤血球のヘモグロビンからできるものであり、間接ビリルビンを指す
→肝臓でグルクロン酸抱合されることで直接ビリルビンとなり、これが便中・尿中に排泄される
・通常は、日齢4〜5が生理的黄疸のピークである(12mg/dL)
→以後は減退して肉眼的に日齢7〜14で消退する
<新生児の生理的黄疸が起きる要因>
①ビリルビン:赤血球寿命が60〜90日ほどと短い(成人は120日ほど)
②生理的多血である
③グルクロン酸抱合活性が未熟である
(間接ビリルビン → 直接ビリルビンの変換が少)
④腸管循環が亢進している
(ウロビリノーゲンの再吸収率が高い)
→これは、胎児期にビリルビンは胎盤を介して母体で処理できていたため、しばらくは機能のバランスとして腸管循環が亢進している状態が続くのが通常である
核黄疸について(ビリルビン脳症)
核黄疸とは、大脳基底核や脳幹核に遊離(非抱合)ビリルビンが沈着して脳に損傷を与える状態である
・核黄疸の原因は、アルブミンと結合していない遊離間接ビリルビンが神経毒性を示すためである
→直接ビリルビンは水溶性であり神経毒性はなく、また、間接ビリルビンであっても血清ビリルビンと結合していることで神経毒性はない
・引き起こす疾患には、知的障害、アテトーゼ型脳性麻痺※、感音難聴、上方注視麻痺などがある
※ アテトーゼ型脳性麻痺:脳性麻痺は生後4週間までに脳への損傷で生じる運動障害をいう。原因は、低酸素、核黄疸、感染、脳血管障害などがある
根治療法はなく、薬物療法やリハビリなどをおこなっていく必要がある
型はアテトーゼ型、痙直型、固縮型、失調型、混合型に分類されている(アテトーゼ型と痙直型が多い)
主な症状は、手足の麻痺、体が硬い、反り返りが強い、不随意運動(手足がバラバラに常に動く状態)、バランスの悪さ、知的発達障害、嚥下力の低下、噛む力の低下、視覚障害、てんかん、情緒不安定など
分類 | 症状 |
---|---|
アテトーゼ型 | 四肢の不随意運動、筋緊張の変動 知的発達は比較的保たれている |
痙直型、固縮型 | 四肢の動きが少なく、筋緊張が全体的に高い 知的発達障害の程度は様々 |
失調型 | 体や四肢の震え、バランスの悪さなど |
混合型 | 上記の型で2つ以上の型を併せ持った症状を呈する場合をいう |
新生児蘇生法アルゴリズムについて
新生児蘇生は早く対処が必要であり、Apgarスコアは測定している場合ではない
→出生後ただちに気道吸引(気道確保)や羊水ふき取り(低体温防止)をしながら開始する
<新生児蘇生の基本>
A-B-C-Dの順となっている
A:気道確保(Airway)
→仰臥位で気道吸引、肩枕を使用してもよい
↓
呼吸確立が不十分な場合
↓
B:背中をさする、足底を刺激する(Breathing)
↓
それでも呼吸不十分な場合はマスク&バッグで、必要に応じて気管挿管
↓
C:人工換気、胸骨圧迫(Circulation)
↓
D:静脈路確保と薬剤投与(Drug)
蘇生処置が奏功することで、初めに心拍が回復する
その次に呼吸が回復し、皮膚色、筋緊張、刺激反応性の回復が次第にみられる
心肺蘇生法では、成人と1歳未満の乳児と1歳から思春期の小児でそれぞれの胸骨圧迫が異なる
そのため、救助者が一人の時、二人の時の呼吸補助と脈拍触知法は知っておく必要がある
胸骨圧迫:胸部中央で胸骨の下半分を圧迫すること
<胸骨圧迫と人工呼吸の割合について>
・救助者が一人の場合は胸骨圧迫を30回:人工呼吸2回で行う
・救助者が二人の場合は15回:2回で行う
(成人の救助では、二人の場合でも30:2で行う)
・胸骨圧迫のペースは100~120回/分、深さは胸の厚さの3分の1(小児:約5cm、乳児:約4cm)程度(成人は5~6cm)
→圧迫をしたら、毎回胸郭は完全に戻すことが重要である
<AEDの利用>
未就学児では小児用パッドを使用するが、就学児であれば成人用パッドを使用する
※成人用しかない場合は未就学児に成人用パッドの代用は可能
<アドレナリン静注>
成人ではアドレナリン静注は1mg/kgとなる
乳児・小児においてはその100分の1の量である0.01mg/kgである
※静脈路の確保ができない場合は骨髄路を選択する
一次救命措置のBLSについて
一次救命措置のBLS※1は心肺蘇生法のABCであり、病院内での蘇生にも通用し、小児二次救命処置PALS※2の神経学的評価がD、全身観察がEにつながっている
※1 BLS:Basic Life Supportのことで心肺停止や呼吸停止に対する一次救命処置のことを指す
この方法は、特別な器具を必要とせず、知っていれば誰でも実践することができる
これに対し、ALS(Advanced Life Support)は病院等における医師や救急救命士が行う救命処置で、二次救命処置のことを指す
その代表がACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)の二次心肺蘇生法となっている
※2 PALS(パルス):Pediatric Advanced Life Supportの略で、小児二次救命処置のことである(AHA認定)
PALSの求められるスキルは全部で10項目あり
これは二日間の実技と筆記の講習試験で合格する必要があり、二年の更新性となっている
PALSの最終目標とは、循環器系(不整脈4種類)、ショック(4種類)、呼吸器系(上・下気道、肺、呼吸調節4種類)の鑑別で治療に結び付けることにある
<参考>
日本ACLS協会ガイドより:BLSとは? - 日本ACLS協会ガイド(閲覧:2022.1.15)
<一般的な一次救命処置で重要な事>
・胸骨圧迫は硬く平らな上で行うこと
・心停止認識後10秒以内の胸骨圧迫開始
<乳児の一次救命処置の重要な事>
・二本指または胸郭包み込み両母指での圧迫
・下顎挙上や頭部後屈による気道確保
・人工呼吸は胸郭の上がりの確認
・過換気の回避
・AEDパッド貼付位置
・未就学児には小児用パッドを使用する
などがある
Silvermanスコアについて(シルバーマンスコア)
SilvermanスコアはApgarスコアと同様に、新生児の呼吸評価法である
新生児は鼻呼吸であることが重要な正常の生理学的特徴である
→そのため、鼻が詰まると呼吸不全に陥るため注意が必要である
また、新生児の正常な呼吸は腹式呼吸である(胸筋が未発達のため)
→胸式呼吸※は生後5~6ヶ月後からである
※成人においては
・男性は胸式呼吸+腹式呼吸で運動量が多くできるような体の仕組みだが
・成人女性においては、妊娠準備のため腹式呼吸はほとんどしなくなる
シルバーマンスコアはApgarスコアとは逆でスコアが高いほど悪い状態を示し、以下の5項目で評価をする
※1 呻吟(しんぎん):苦しくてうめくこと
呻吟とは、声門を閉じることで呼気持続陽圧(PEEP)をかけて肺胞の虚脱を防ごうとする生体防御反応である
これは正常正期産新生児では認めることはない
※2 陥凹(かんおう):へこんでいる状態
評価項目 | 0点 | 1点 | 2点 |
---|---|---|---|
胸と腹の動き (シーソー呼吸) | 胸腹同時に上昇 | 吸気時に上胸部の上昇が遅れる | 吸気時に腹部は膨れるが、胸部は下がる (シーソー運動) |
肋間腔の陥凹※1 | なし | やっと見える程度 | 著明 |
剣状突起部の陥凹 | なし | やっと見える程度 | 著明 |
鼻孔(鼻穴)の拡大 | なし | 軽度 | 著明 |
呻吟※2 (呼気時のうめき) | なし | 聴診器で聞こえる程度 | 聴診器なしでも聞こえる |
新生児の診察項目について
診察の流れについては成人とは異なるため、確認しておく必要あり
診察の流れ | 項目・内容 |
---|---|
①情報の把握 | 妊娠週数、妊娠時・出生時の状況等 |
②全身の視診 | 全身状態、皮膚、呼吸状態 |
③バイタルサイン | 体温、心拍数、呼吸数、血圧 |
④-1前面の視診 | 顔貌、眼、耳、鼻、口唇等 |
④-2聴診 | 呼吸音、心音、心雑音、腸蠕動音 |
④-3触診 | 大泉門、腹部・鼠径部腫瘤等 |
⑤股関節 | 開排制限等 |
⑥視触診(背部、外陰部、肛門) | 鎖肛・外陰部異常・停留精巣などの有無確認 |
⑦原始反射 | 把握反射、吸啜(きゅうてつ)反射、Moro反射 |
⑧口腔の視診 | 唇顎口蓋裂、先天歯等 |
新生児の診察において、啼泣してしまうと確認が取れにくくなる項目がある
(1ヶ月検診や新生児回診などでよく遭遇する)
このため、対策として、診察室には滅菌済みの乳首用具をいくつか用意しておくこと
・啼泣時は咽頭所見をとるとよい
・健診の場合は、舌の裏(舌小帯の状態)、歯茎、口蓋の真珠種、口蓋裂の有無などしっかり観察すること
→その後すぐに乳首を吸わせ、落ち着いたところでそのほかの所見を取っていく
・大泉門は啼泣時に緊満し、正確な所見ができなくなる(正常は平坦で軟である)
・呼吸音は啼泣時でもとることはできるが、肺炎疑いで診察をする場合には適さない
→吸気時に呼吸音を聞き取ることはできる
・心音は啼泣時では脈拍が速くなり、小さな心雑音は見逃すおそれがあるため注意する
・啼泣時でもMoro反射※は、両手をあげて一瞬止まって泣き止むが、反射が終わればまた泣き始めたりする
→このことからも、意志とは関係なく働く原始反射であるということも良くわかる
・啼泣時は四肢の筋緊張が高まるため、深部腱反射は検査できなくなる
※ Moro反射:頭部を支えて頸部を軽く後屈させるとみられる原始反射である
新生児の様々な合併症について
過剰な栄養や酸素は新生児にとっては毒性を示すことがあるため、気をつける必要がある
酸素濃度に関してはSpO2値を測定しながら、最低限の酸素を使用して管理すること
症状 | 原因 |
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頭蓋内出血 | 早産、仮死、呼吸循環動態が未熟、脳血管自動調整能の未熟など |
慢性肺疾患 | 肺の未熟性、感染、人工呼吸器による圧損傷・量損傷、高濃度酸素による酸素毒性など |
壊死性腸炎 | 腸管の未熟性、過剰輸液、哺乳過剰、腸管虚血、感染など |
未熟児貧血 | 頻回の採血・出血、エリスロポエチン分泌低下、鉄欠乏など |
未熟児網膜症 | 網膜の未熟性、感染、水分過剰、輸血、低血圧、高濃度酸素による酸素毒性など |
<参考紹介>
メディックメディア:クエスチョン・バンク vol.4 小児科
病気がみえる:vol.10 産科
(注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
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