小児科編

小児科疾患編① 成長、発育、小児健診、反射について

小児科


今回からは小児科についてみていきます



注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
そのため、
これを全て把握しても人体については全て理解し、学べたということにはなりませんのでご注意ください。
医学は未知の部分も含め、既知の部分であってもかなりの量です。ここは忘れないようにしてご利用ください。)


小児の基本的な発育について


基本的な基準値は以下となっている


生後身長(cm)体重(kg)頭囲(cm)胸囲(cm)体表面積(m2
新生児50333320.2
3ヶ月606---
1歳児75945450.4
3歳児951549500.6
4歳児100----
小児の基本的な発育について


<追記>


歳児の体重は12kgほど


12歳で身長は150cmほど


月齢1日の体重増加量
0~3ヵ月30g
3~6ヵ月15~20g
6~9ヵ月9g
9ヶ月以降8g
体重増加の目安


出生後3ヵ月では、出生時体重のおよそ2倍1歳ではおよそ3倍となる

→これを下回る場合を体重増加不良となる


・生後1年ではおよそ身長は1.5倍、体重は3倍、頭囲は1.5倍、胸囲は1.5倍、体表面積は2倍となる


→身長の伸び率は出生後1年が一番大きい



・体重は生後3~5日間は一時的に減少する(体重は5~10%の減少率)が、その後増加し始める(生後7~15日で出生時体重に戻る)


→しばらく30g/日で増加していき、3カ月目で3kg増となり、1歳で3倍となる



出生時は4頭身であり、成長とともに頭部の割合は減っていき12歳で7頭身となる(身長は出生時の3倍となる)


低身長内分泌異常の兆候を考慮すること


体表面積BSA(m2の求め方は、体重W(kg)身長H(cm)から求められる

BSA = (√W × √H)÷ 60


体重増加不良の要因について


<体重増加不良の背景①>


・食物アレルギー(ミルクアレルギー)

・哺乳困難

・頻回嘔吐

・慢性下痢(難治性下痢症)

・活気不良

・精神運動発達の遅れ

・先天性心疾患

・先天性代謝異常症

・慢性腎臓病(先天性ネフローゼ症候群など)


などの他疾患、他症状を伴っていることが多い


<体重増加不良の背景②>


疾患の症状はなく、機嫌にも問題がないようであれば


・母乳不足


・調乳の間違い(濃度が薄いなど)


・離乳方法の間違い

→乳児の食欲に関わらず強迫的な授乳(決まった時間に目標量を授乳させようとするなど)で、児がミルク嫌いとなり摂食障害となることがある

→この例では、入院で


・母子関係に障害あり(ネグレクト等)


などが考えられる


近年では成長障害の原因が虐待のケースが多くなっている


ネグレクト(養育放棄)による栄養摂取不足心理的虐待(愛情不足)による成長ホルモン分泌障害(愛情遮断性低身長症)などがあり、成長障害の機序というのは複数ある


その他


※体表面積は大まかに、10歳で1m2成人で1.7m2となっている


10歳~12歳の女子の平均身長は男子より高い


新生児の睡眠時間は1日15時間ほどである


大腿骨骨端線第二次性徴が終わるころに閉鎖する


胎児期では、ヘモグロビンの酸素親和性が高い。そのため、効率的に酸素供給することができる

また、その分ビリルビンの産生量は多いため黄疸は出やすい


乳児期幼児期思春期
約25cm約7cm約7~9cm
年間の身長増加量について



Kaup指数(カウプ)も目安となる

これは、乳幼児の発育状況を知るための目安である


Kaup指数 = [体重(g)÷ 身長2(cm)] × 10

基準値:15〜18


1日の必要なエネルギー所要量について


出生後1年の乳児期一番1日のエネルギー所要量(kcal/kg/day)が高くなり、その後は徐々に減少していく


体重(kg)1日の必要なエネルギー量
~10100(kcal)×体重(kg)
10~201,000(kcal)+[体重(kg)-10]×50
201,500(kcal)+[体重(kg)-20]×20
1日の必要なエネルギー所要量について


これは、1日の必要な水分量(mL/day)にも利用できる


例)1歳半の男児、体重が10kgとすれば、1日の摂取カロリーは1kgあたり100kcal~120kcalのため

100~120×10kgで1,000~1,200kcal/day摂取すると良いことになる


牛乳は100mLあたり67kcalほどであり摂取量換算で飲ませることができていれば、問題ないか確認できる


新生児、乳児のバイタルサインについて


新生児や乳児では、成人と比べて違う点は多く、心拍数が多いなどの特徴もあるため、一度確認しておくことが大事です


定義について


生後28日未満の乳児を新生児といい、1歳未満の児は乳児という


項目新生児乳児
心拍数(回/分)120~160100~130
呼吸数(回/分)30~5020~40
体重2,500~4,000g約9.3kg
身長50cm75cm
頭囲33cm約45cm
胸囲32cm約45cm
血圧
(収縮期血圧/拡張期血圧)
50~80/50~60mmHg
(出生直後:70/40mmHg)
90/50mmHg
体温36.5~37.5℃
新生児、乳児のバイタルサインについて


乳児の体重、身長、頭囲、胸囲は1歳児の平均で記載している


<新生児>


・心拍数が100回/分未満では徐脈であり、180/分以上は頻脈と判断する



・出生時体重が1,500g未満では極低出生体重児1,000g未満超低出生体重児となる


→正常児でも、生後3~5日で体重がおよそ3~7%減少する生理的体重減少



早産児は低体温に陥りやすいため注意が必要であり、保育器に収容すると良い



・新生児は肋骨が脊柱に対してほぼ直角に走行しており、胸式呼吸があまりできず、腹式呼吸が主体である


→正常児であっても10秒以下の無呼吸期間を伴う周期性呼吸が認められる



・血圧は出生数時間で下がっていきその後徐々に上昇する


→出生時血圧が30mmHgを下回っている場合低血圧とみなす



体幹、四肢、精神運動の発達について


これはもちろん個人差はある


一般的にはこの月齢であれば50%は通過するというものとなっている(50%通過率


乳幼児健診では、この通過率が90~99%になる時に行うこととなっている


こういう広範性発達障害などを早期発見し、望ましい療育をうけることが大事である


年齢体幹(粗大運動)四肢(微細運動)言葉情緒・社会性生活
2ヶ月〜4ヶ月
(3ヵ月)
追視

首がすわる(定頸)
手を口に持っていく
握る
アーウーの発声あやすと笑う

音がする方を見る
5ヶ月〜7ヶ月
(6ヵ月)
寝返り

おすわり(座位)
物を持ち替える

顔にタオルを掛けると払いのけることができる
喃語※1の発声

→話しかけに反応
聴力確認
母親がわかる

人見知り

→名前を呼んで聴力の確認ができる
離乳食の開始※2

→乳歯の生え始め
8ヶ月〜10ヶ月
(9ヵ月)
ハイハイ

つかまり立ち
母指と他の指で物を掴んで持つマンマなどを発声名前を呼ぶと反応

バイバイができる
哺乳瓶やコップなどを持とうとする
11ヶ月〜1
(12ヵ月)
つたい歩き

独り立ち
1人立ち)
母指と示指で物をつまむ1を発声できる

意味のある単語(有意語)を言える
簡単な命令の実行手づかみで食べる

コップで水を飲む
1歳半
(18ヶ月)
独り歩き(独歩)

小走り

指さしできる
なぐり書き

積み木を重ねる
(2つ程度)
3〜10語は言える他の児に興味を示すスプーンが使える
2
(24ヶ月)
階段をのぼる

走る

ボールを蹴る
本のページをめくる

積み木を重ねる
(3、4個)
2語文を言える

20語は言える
自己主張が強くなる大便を教える

上着が脱げる

排尿予告
2歳半
(30ヶ月)
靴を履けるようになる
(ひもは結べない)
ごっご遊びができる
(2~3歳)
昼間尿をもらさなくなる
(2~3歳)
3
(36ヵ月)
輪車

片足立ち

ハサミを使える
(833
○を書ける

鼻がかめる

積み木を重ねる
(8個)
自分の名前・年齢を言える遊びの順番待ちができる排尿自立

服のボタンがかけれる

夜間尿をもらさなくなる
4
(48ヶ月)
高低がわかる

洗顔
□(角)を書ける3語文を言える排便自立
5歳
(60ヵ月)
スキップできる△が書ける衣服の着脱ができる
精神運動の発達について


(覚えやすいように青字は数字とリンクさせてます)


※1 喃語(なんご):意味のない言葉のこと


※2 離乳食開始は生後5ヵ月前後体重が7kgが目安となる


離乳食を開始する生後6カ月頃までは、精製水を使用すること(水道水は避ける)


6歳から永久歯が生え始める


1歳で頭囲と胸囲は11となる

それ以降に、頭囲よりも胸囲が大きくなっていく


離乳食の過程について


離乳食については保健指導で行われるが、この「離乳」とはミルクから固形食に移行する過程をいい、通常は5ヵ月頃から開始して15ヵ月くらいまでに完了する、となっている


区分初期中期後期完了期
月齢5~6ヵ月7~8ヵ月9~11ヵ月12~15ヵ月
離乳食回数1回から2回
へ増やす段階
2回3回3回
母乳、ミルクの回数4回から3回
へ減らす段階
3回2回ミルクは1日
300~400mL
調理形態ドロドロ状
ベタベタ状
舌でつぶせる歯茎でつぶせる歯で噛める
離乳食の過程について


軟飯とは、水分が通常のご飯の2倍含まれるやわらかめのご飯をいう

お粥とは、軟飯よりももっと水分量が多い


離乳食の開始とは、流動食ではなく、半固形食から始めることである


卵では、卵白よりも卵黄から与えること

卵白では抗原性が強いため


小児(胎児)の頭蓋骨解剖について


・左右頭頂骨の間の矢状縫合新生児期から閉鎖している



新生児期に、後頭部にある小泉門(両側頭頂骨と後頭骨の隙間の頭蓋泉門)は閉鎖する



・頭頂部にある大泉門(左右前頭骨と左右頭頂骨の隙間)は生後1歳半までは閉鎖しない


→大泉門の形は上から見るとダイヤ型(ひし形)となっている



・大泉門・小泉門は骨化せず、膜性組織で連結している



・小泉門側にλ(ラムダ)縫合(人字縫合)がみられる



左右の頭頂骨を上から見たとき、一番出っ張っている箇所の大きさを結んだところを大横径という



・左右頭頂骨と左右前頭骨の隙間の大泉門を上から見たとき、左右端の大泉門の境目を結んだ距離小横径という



・冠状縫合、矢状(しじょう)縫合、側頭縫合(鱗状縫合)という境目がある



小児の歯について


・歯は切歯(前歯)から生え始める



・乳歯は2~3歳で生え終わり、上下合わせて全20本である



・乳歯は生後6~8ヵ月で生え始める


→そこから毎月1本ずつ増えるため、乳歯数の公式としては「月齢 ー 6」本となる



永久歯5~7歳(6歳)から生え始め10~14歳頃には生え揃う全28本


→残り4本は智歯(親知らず)であり、計32本となる


乳歯は6カ月から、永久歯は6歳から生える


乳歯の本数は 「月齢-6」が目安となる


小児における体液組成について


体重に占める割合(%)新生児小児成人
(男性)
成人
(女性)
全体水分量80656055
細胞外液40252015
細胞内液40404040
成長に伴う体液量変化について


出生後しばらくは細胞外液量の方が多い


・体重当たりの不感蒸泄量※は成人より大きい



尿濃縮力生後3ヵ月くらいまでは成人のおよそ半分であり、2歳ほどで成人と同等になる



新生児の尿細管でのNa再吸収能(FENa約0.2~3.0と変動が大きく、それなりに能力は高いといえる



不感蒸泄(TEWF):普段の生活によって自然に失われる水分のことである


具体的には呼気中に含まれる水分皮膚や気道粘膜から蒸発する水分を合わせたものとをいう


別呼称では経表皮水分喪失不感蒸散ともいう


新生児の身体所見について


所見備考
蒙古斑臀部や背部に見られる境界不明瞭な青灰色の色素沈着
新生児中毒性紅斑生後数日でみられる丘疹・水疱を伴う紅斑
サーモンパッチ新生児の3割でみられる

体の正中部分に好発し、額や眼瞼、上唇、鼻の間などでみられ、生後1、2年で自然消退する
チアノーゼ出生直後や啼泣時に生じる末梢性(四肢末端)チアノーゼ※
生理的黄疸生後2~3日で始まる皮膚の黄染
(およそ9割でみられる)
新生児の皮膚の身体所見について


中心性チアノーゼ生後の口唇、体幹のチアノーゼ低酸素血症を示唆しており、呼吸器疾患や先天性心疾患を疑う


所見備考
産瘤産道通過時の圧迫で先進部に生じる浮腫骨縫合を越える
頭血種狭骨盤、鉗子、吸引分娩による骨膜下出血骨縫合を越えない
上皮真珠腫主に歯茎に生じる光沢のある白色腫瘤であり、上皮組織の迷入
新生児の頭部の身体所見について


所見備考
頸部リンパ節腫脹触知は直径で10mm以上のものを腫大していると考えてよい
新生児の頸部の身体所見について


所見備考
乳房肥大、乳汁分泌(魔乳)母体からのエストロゲン消退によるもの
プロラクチンの分泌抑制が低下
軽度心雑音生理的範囲内で動脈管開存
これは、肺動脈の比較的狭窄などによるもの
鎖骨骨折肩甲難産で合併するもの
新生児の胸部の身体所見について


所見備考
肝臓触知乳幼児までは通常は肝臓を2~3cmは触知可能である
新生児の腹部の身体所見について


所見備考
処女膜ポリープ母体からのエストロゲン移行で膣入口部の突起物ができる
新生児月経母体からのエストロゲン、プロゲステロン小帯で性器出血
陰嚢水腫疼痛は無いが、透光性がみられる
停留精巣1歳までに自然下降がなければ精巣固定術を行う
新生児の外陰部の身体所見について


小児健診について


目的には、運動機能や視覚聴覚などの障害有無、精神発達遅延の早期発見をし、心身障害を予防することがある


・生後1ヵ月で後弓反張がみられれば破傷風菌毒素によるものと考えられる


→これは、筋緊張の異常所見であり、髄膜炎、痙攣発作などでも認められる



・多くの発達評価表では、四つ這いは評価項目にない


7ヵ月健診時では、顔へのタオル掛けテストの確認を行う(5ヵ月ほどでできるようになる)


→これで、微細運動+精神運動の両方を評価できる



・5ヵ月では両手でタオルをとり、6ヵ月では片手でタオルをとるようになる


10ヵ月児の発達評価では、姿勢保持評価として姿勢反射(パラシュート反射、ランドー反射)の有無確認が必要(座位できるかどうかなど)



・『母子保健法』では、1歳6ヵ月健診は市町村主体で行われる


大泉門閉鎖は1歳半ごろだが、早期に閉鎖を認める場合は



Crouzon病(クルーゾン)※1、Apert症候群(アペール)※2などの頭蓋骨早期癒合症や甲状腺機能亢進症などが疑われる


→この場合は精査の必要がある


※1 Crouzon病(指定難病:181)FGFR2遺伝子(一部GFR3遺伝子)の異常による疾患である


これは先天的に、頭蓋骨、顔面骨(主に下顎は除く)の形成異常


頭蓋骨が小さい状態のため、脳の発達が妨げられ頭蓋内圧上昇で頭痛、嘔吐、眼球の突出、呼吸障害などがおこりうる


適切な時期に適切な手術を複数回することで予後は比較的良好である(頭蓋骨、顔面骨を広げる手術)


※2 Apert症候群(アペール)(指定難病:182):クルーゾンと同じく、FGFR2遺伝子の異常で先天的に頭蓋骨、顔面骨の形成異常が起こる(下顎は除く)


突然変異の疾患、機序等は不明


これにより、クルーゾン共通症状や手足の指の癒合、肘を曲げにくいなどがおこりうる


心奇形、口蓋裂、精神運動発達遅滞の合併することあり


治療もクルーゾン病に準ずる


時期健診内容
1ヵ月健診・栄養状態(哺乳量)
・身体計測(体重、身長、頭囲)

<診察>

・遷延性黄疸の有無
・先天性股関節脱臼有無

股関節の開排制限がみられる

・先天性疾患の有無(心疾患など)
・神経疾患の有無(四肢の動き)
・VK不足による頭蓋内出血予防
ケイツー®(VK2製材:メナテトレノン)
3~4ヵ月健診
(3~6ヵ月は前期健診
・定頸、音への反応、先天性疾患有無の確認
・あやして笑う、追視などの有無から発達異常がないか確認
6~7ヵ月健診・運動発達
→寝返り、お座り、タオル掛けテストで払いのけるか確認

・対人関係、社会性などの精神発達確認
・嫌がる、遊ぶなどあるか?
・おもちゃへの関心、人見知りあるか?
9~10ヵ月健診
(9~11ヵ月は後期健診
・運動発達(つかまり立ち、四つ這い(ハイハイ)できるか)
・対人関係、社会性などの精神発達確認
・乳歯の萌出状(9ヵ月であれば3本はあるはず)
・離乳食の進み具合
予防接種の接種状況確認
12ヵ月健診主に発達面の成熟度評価をする

・運動機能発達(独り立ち、つたい歩き等)
・言語機能発達(ママ、パパの言葉発声できるか)
・社会性発達(おもちゃで遊ぶなど)

・身体面:大泉門の開大度陰嚢水腫有無の確認
1歳半~2歳健診
(満1歳半を超えており、満2歳に達していない児)
主に発達面を評価

・運動機能発達、身体発育

→独り歩き、小さいものを掴む、さじを使える、コップで水が飲める

・疾病異常(脊柱、胸郭、皮膚、歯、口腔等)

・言語機能発達(5種類以上の有意語を話す、物の名前)
・精神機能発達(指さし、絵本に興味)
・社会性発達(名前を呼ばれて振り向く)
・音への反応、乳歯萌出状況確認
歯科健康診査
予防接種実施状況確認
3歳健診
(満3歳を超えており、満4歳に達していない児)
主に発達面を評価

・運動機能発達(丸を描けるか、階段が登れるか?)
・言語機能発達(2~3語文~会話、名前、年齢を言えるか?)
・視聴覚検査
歯科検診(虫歯、不正咬合など)
(・尿検査)
眼疾病や耳鼻咽喉疾病がないかも確認
予防接種実施状況確認
乳幼児健診について


・3歳児健診では中等度から重度であればすでに見つかっているため、基本的には軽度な症状を調べていくこととなる


・社会性の発達遅延から、自閉スペクトラム症※を疑うこともある(1歳6ヵ月頃から疑いが出て、3歳で症状が出揃う)


自閉スペクトラム症(ASD):対人関係が苦手、強いこだわりがあるといった特徴がある


割合として20人から50人に1人と割と多く、主に男性に多い(女性の2~4倍とされる)


所見には、一人遊び、食べ物の好き嫌いが多い、絵の指差しをしない、名前を呼ばれても振り向かない、人見知りしない、目を合わせない、共感的でないなどがある


<3歳児健診の臨床的意義について>

各種心身障害がないかを早期発見し


・身長が病的に低い場合は成長ホルモン分泌不全性低身長症


・体重が病的に多ければ食事療法の介入


・虫歯や難聴、弱視などの早期治療


・精神発達障害児の療育指導


などが重要である


3歳児健診では、段差の台に上がり自分の名前が言えるか評価するという所もある


リンク先

小児における反射(原始反射・姿勢反射)について


原始反射とは、生まれて間もない赤ちゃんに見られる無意識の反応のことをいう


意識的に動かすことができない分、無意識に外からの刺激に反応を示すもので、この反応をみて脳や神経系、発達に問題がないか確認できる


この反射から、成長に従い脳と繋がり、筋力がついたり、意識的に動かすことができるようになったりする


この反射がみられなくなるということは、成長して意識的に動かすようになっていることを示唆している


これらには健診項目になっている(異常がないか検査する)


それぞれについて小項目でみていくこととする


脊髄レベルの反射について


原始反射は

中枢神経系下位である脊髄~橋

姿勢反射(立ち直り反射)中位である中脳

平衡反応上位である大脳

に中枢がある


発生学的に下位から上位に向かって成熟が進むため

原始反射 → 立ち直り反射 → 平衡反応


の順でみられる


上位中枢からの抑制がかかることで、全ての原始反射一部の立ち直り反射順次消失していく



・これとは別で、見かけ上の運動発達では頭側から尾側に進んでいくという原則がある


→このため、首がすわる、座位ができる、立つことができるという流れで、重力に反して垂直位を保てる体の範囲が頭側から尾側に広がる


背反射、側弯反射(Galant反射:ギャラン、ギャラント、ガラント)


ギャラン反射とは、背骨の外側に沿って上から下にこすると、こすった側に体幹を曲げる反射である(お尻を振る動作)


中枢神経の発達に関わる原始反射


手掌把握反射


手掌把握反射とは、手のひらや足の裏を軽く押したとき手は握り返し、足は指を折り曲げるといった動作をする反射である


この反射が自然消失してくれば、意識して物をつかめるようになる


反射がないということは脳の障害や上部脊椎の異常が考えられる


運動神経に関わる


磁石反射


磁石反射とは、背臥位の新生児の下肢を半屈曲位し、母指で両足底を刺激すると磁石にくっついたように足を伸展する反射


(屈曲)逃避反射


逃避反射とは、背臥位の時足底を刺激すると下肢を屈曲させて足を引っ込める動作をする


自立歩行(歩行反射)


自立歩行とは、新生児の脇を支えて足を床に付けて前傾させる数歩歩行する反応を示す原始反射である


交叉性伸展反射


交叉性伸展反射とは、検者が一側下肢を伸展させて同じ側の足底を刺激すると、反対側の下肢が屈曲して、その後に刺激を与えている検者の手を払いのけるように伸展、交叉する反応のこと


(口唇)探索反射


探索反射とは、口の周りを触ることで顔を向けて口を開く動作をする反射である


口で何かを探す動作であり、母乳やミルクを探すための原始反射である


3、4ヵ月で中脳より上位の神経発達で焼失する


吸啜反射(きゅうてつはんしゃ)


吸啜反射とは、母乳やミルクを飲むための反射である。吸うことは顎の発達や脳の活性化にも関わる


足底把握反射


足底把握反射とは、足の親指の付け根を、指で圧迫するとすべての足の指が内側に曲がる原始反射である


脊髄に中枢がある原始反射であり、新生児に見られる


この反射が消失して少し経つと立って歩くことができるようになる



手掌把握反射は6ヵ月頃足底把握反射は10ヵ月頃までに消失する


運動発達は頭部から尾側に進むため、手→足の順で発達し消失していく


台乗せ反射


台乗せ反射とは、新生児を抱え一方の下肢を支え、他方の足背を机の端にこすり上げる刺激した下肢は屈曲して足を机の上に持ち上げる動作をする


陽性支持反射


陽性支持反射とは、新生児の脇(腋下)を支え抱きかかえて、足底を床に付けると下肢・体幹が伸展し起立する反応を示す


これとは逆で、空中に抱きかかえると下肢を屈曲させる反応を示す。これを陰性支持反射という


Babinski反射(バビンスキー)


バビンスキー反射とは、足の裏の外側をかかとからつま先にこすることで錐体路障害(上位運動ニューロン)の確認ができる


新生児期、乳児期早期では大脳機能が未発達であることから、上位中枢からの抑制がかからずバビンスキー反射が生理的に起こる


※成人でも上位中枢からの障害の有無を確認できる


先のとがったものでこすると確認しやすい


→錐体路障害があれば母指は背屈し、他は扇状に開く開扇兆候


脳幹レベルの反射について


Moro反射(モロー)


モロー反射とは、急な上下運動や大きい音に反応する反射で、腕を外側に沿ったり、背中が弓なりになったりする防御反応である


下部脳幹の中枢にある原始反射である


・後頭部に検者の手を当て、赤ちゃんの頭を少し床から浮かせて(30度持ち上げる落下させると、両腕を伸ばして、母親に抱きつくような動作(伸展と外転)を認める


4ヵ月以降もこの反射が残っているようであれば、運動発達障害や脳の異常の可能性を考える


非対称性緊張性頸反射(ATNR)


非対称性緊張性頸反射とは、乳児を仰向け(背臥位)にした状態で首を左右一方に向けると、同じ側の上下肢が伸展反対側の上下肢が屈曲する反応を示す


・これは、新生児において自発的な動きのなかで観察できる原始反射である



首が左を向く:左の手足が伸びて、右の手足は曲がる


→この反射が消失すれば、寝返りを打てるようになり大脳の発達に関わる


対称性緊張性頸反射(STNR)


対称性緊張性頸反射とは、腹臥位(水平抱き)で

頭部を伸展させると、頸部筋の固有感覚受容期の反応上肢は伸展下肢は屈曲する

頭部を屈曲させると、逆に上肢が屈曲し、下肢は伸展する反応を示す


緊張性迷路反射


緊張性迷路反射とは、背臥位では伸展緊張が促通され、腹臥位では屈曲緊張が促通される反応をいう


中脳レベルの反射について


頸の立ち直り反応(NOB)


頸の立ち直り反応とは、背臥位の小児の頭を一方に向ける頸筋群の固有感覚受容器が刺激されることで、肩や体幹、腰部がその方向へ丸太状に全体的に回転する反応を示す


体と頭を保持するための反応である


体の立ち直り反応


体の立ち直り反応とは、に働くものはBOHに働くものはBOBとなっている


BOH:体の一部が支持面に触れることで、固有感覚受容器、触覚受容器から頭部が正常位に戻る反応

BOB:支持面と体の接触で誘発されて、体に加わるねじれを元の位置に戻して、体の対称性を保つように立ち直る反応


BOH:body righting reaction on the head

BOB:body righting reaction on the body


迷路性立ち直り反応


迷路性立ち直り反応とは、目隠しをした状態の乳児を支え、前後左右に体を傾ける迷路(耳石)の働きによって頭が垂直方向に立ち直る反応である


視覚性立ち直り反応


視覚性立ち直り反応とは、視覚刺激の誘発で頭部の位置を正常に保つ反応であり、視性の刺激が立ち直りに関与している


Landau反射(ランドー、ランドウ)


ランドー反射とは姿勢反射のことで、腹を抱えて水平腹臥位(水平抱き)にすることで頸部を後屈し、頭部を挙上させて体幹および下肢が伸展する反射である


この状態で頸部を前屈させると体幹および下肢が屈曲する


4ヵ月頃から2歳頃まで認められる


この反射では、発育状態のチェックに用いる項目の一つである


大脳皮質レベルの反射について


傾斜反応


傾斜反応は各部位で反応が様々みられる


(1)腹臥位・背臥位


下方側の上・下肢体重支持のため筋緊張の増強が起こり伸展位になる。


上方側の上・下肢屈曲、外転する。


体幹と頭部上方側に回旋し顔面を上方側に向ける


(2)長座位


下方側の上肢外転、伸展する


体幹と頭部上方側へ回旋する


下方側の下肢外転して体幹の支持面を広げるように動く


(3)立位


下方側の下肢伸展して体重を支えるのに十分な筋緊張を示す


上方側の下肢股、膝で屈曲


上方側の骨盤上昇体幹と頭部が上方側へ回旋する


パラシュート反射(保護伸展反応)


パラシュート反射とは、パラシュートのようにうつぶせから抱きかかえて水平に下降させると、手を広げて体を支えるような反応を示す


中脳に中枢がある姿勢反射(立ち直り反射)である


転倒時に反応するために必要な反射である


生後8~9ヵ月で出現


これは年月を経ても消失はなく、生涯続くものである


背屈反応


背屈反応とは、子の腋窩を後方から支えて後方に体を傾斜させる足関節が背屈する反応である


シーソー反応


シーソー反応とは、子を立位にして一側の上・下肢の手足を握り、握った足を床から持ち上げて片足立ちさせる

握った手を前方に引き、更に側方へ引くと平衡を保つために、足を握った下肢の外転と伸展がみられる


ホップ反応


ホップ反応とは、立位での傾斜反応である

立位で前後、側方に倒すと足を出して体重を支える


ステッピング反応


ステッピング反応とは、立位にした乳児を前後左右に倒すとみられる反応である


左右では、一方の下肢が倒された側に交叉して体重を支える

前後では、左右どちらかの下肢が一歩前に出て、体重移動ができる


その他の姿勢反射について


引き起こし反応


引き起こし反応とは、背臥位で新生児の両手を検者の両手でもちゆっくりと座らせるように引き起こす

そうすることで、両上肢の屈曲緊張が増し首を屈曲させて起き上がる反応を示すものをいう


ボイタ反応について


ボイタ反応とは、子供を両腋下で抱き上げ、急激に側方に傾けて水平位とすることで、時期によってそれぞれの反応を示す


第1相(0~10週):モロー様反応


第2相(4~7 ヵ月):四肢屈曲


第3相(8 ヵ月以降)上側の上下肢は外転・伸展



反射の種類出現・消失時期
背反射、側弯反射
(Galant反射:ギャラン、ギャラント、ガラント)
出生〜2ヶ月頃まで
手掌把握反射出生〜3、4ヶ月頃まで
磁石反射出生~1、2ヵ月頃まで
(屈曲)逃避反射出生~1、2ヵ月頃まで
自立歩行出生~1、2ヵ月頃まで
交叉性伸展反射出生~1、2ヵ月頃まで
(口唇)探索反射出生〜4から6ヶ月頃まで
吸啜反射
(きゅうてつはんしゃ)
出生〜4から6ヶ月頃まで
台乗せ反射出生~5、6ヵ月頃まで
陽性支持反射出生~3から8ヵ月頃まで
足底(足趾)把握反射出生〜9、10ヶ月頃まで
Babinski反射
(バビンスキー)
出生〜12から24ヶ月頃まで
脊髄反射の消失時期について


反射の種類出現・消失時期
Moro反射
(モロー)
出生〜4ヶ月頃まで
非対称性緊張性頸反射
(ATNR)
出生〜5、6ヶ月頃まで
対称性緊張性頸反射
(STNR)
生後4~6ヵ月からみられ8~12ヵ月頃まで
緊張性迷路反射出生〜5、6ヶ月頃まで
脳幹反射の消失時期について


反射の種類出現・消失時期
頸の立ち直り反応
(NOB)
4~6 ヵ月頃出現し5歳頃まで
体の立ち直り反応
(BOH、BOD)
4~6 ヵ月頃出現し5歳頃まで
迷路性立ち直り反応腹臥位・背臥位:3~5ヵ月に出現

座位・立位:6~7 ヵ月に出現し、5歳まで(生涯続くことあり)
視覚性立ち直り反応
(大脳皮質反射ともいわれる)
腹臥位:3 ヵ月

座位・立位:5~6 ヵ月に出現し生涯持続
Landau反射
(ランドー、ランドウ)
4ヶ月頃〜24ヶ月頃まで
中脳反射の消失時期について


反射の種類出現・消失時期
傾斜反応臥位・座位:約7~8 ヵ月

四つ這い:9~12ヵ月

立位:12 ヵ月で発現し生涯継続
パラシュート反射
(保護伸展反応)
7〜9ヶ月頃から生涯

下方:6 ヵ月
前方:6~7 ヵ月
側方:7~8ヵ月
後方:9~10 ヵ月で発現し生涯継続
背屈反応約10~12 ヵ月に発現しその後継続
シーソー反応約15 ヵ月に発現しその後継続
ホップ反応
(ホッピング反応)
約15~18 ヵ月で発現しその後持続
ステッピング反応
(足踏み反応)
つかまり立ち、つたい歩きができるようになる頃から出現し始め、歩行を転ばずにできる1歳6 ヵ月頃に前
後、左右ともに完成する

その後持続
大脳皮質反射の消失時期について


反射の種類出現・消失時期
引き起こし反応1~2 ヵ月: 頭部背屈、上肢伸展

3~4 ヵ月:頭と頸は体幹と平行して遅れないようについてくる四肢屈曲あり

5~6 ヵ月:頸は体幹と平行し肘曲して引き起こしに協力して動く

7~8 ヵ月:肘屈曲、下肢伸展、頸前屈あり
ボイタ反射第1相(0~10週):モロー様反応

第2相(4~7 ヵ月):四肢屈曲

第3相(8 ヵ月以降)上側の上下肢は外転・伸展
原始反射のその他の反射の消失時期について


分娩による麻痺について


分娩による麻痺には


(1)上位型腕神経叢麻痺(エルブ麻痺:Erb's palsy(エルブズパルシー))


(2)前腕麻痺(クルンプケ麻痺:Klumpke's palsy)


(3)顔面神経麻痺


が重要である


(1)Erb麻痺(エルブまひ):腕神経叢麻痺では、上腕の弛緩性麻痺を認め、肩甲、肘関節の運動不能となるが、神経学的予後は良好である


→通常は両側性だが、エルブ麻痺では片側性のモロー反射を呈する



(2)Klumpke麻痺(クルンプケまひ):上肢においては、前腕および手指の筋肉の弛緩性麻痺を呈する


その他の部位の麻痺と症状について


頭血種


頭血種とは脳の外(頭蓋骨と骨膜の間)にできるコブ(出血)であり、頭蓋骨の表面の骨膜が剥がれて出血することでおきている


要因:母親の骨盤が狭い、吸引分娩、鉗子分娩による圧迫でおこる


症状は限局的で、時間経過で次第に血液は体に吸収されてなくなることから経過観察となる(1ヵ月~数ヶ月はかかる)


鑑別が必要な疾患


産瘤:産道を通る時に圧迫でおきる浮腫先進部の頭頂部にみられるびまん性浮腫状の腫脹と表現することも)


→これは出血性ではないため、2、3日ほどで自然に吸収されてなくなる



帽状腱膜下血種:頭血種は限局的なものだが、これは頭と顔全体に広がっている血種であり、出血が多ければショックや貧血を呈する


障害部位神経症状
胸髄損傷上肢においては、前腕および手指の筋肉の弛緩性麻痺
脳室内出血痙攣や無呼吸発作などを呈することが多い(程度による)
硬膜下血腫新生児ではけいれんを呈することが多い
頭血種頭蓋骨と骨膜の間の出血だが、特別神経症状などは呈さない
その他の部位の麻痺と症状について


第1回はここまでとなります

第2回に進む



<参考紹介>

メディックメディア:クエスチョン・バンク vol.4 小児科

病気がみえる:vol.10 産科

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    • この記事を書いた人

    Nitroso.Ph

    自分が学んで知った事が、人の役に立つならいいかなと思いサイトを開設 ・食べる事が好きで、そのために運動をはじめました

    -小児科編
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