過感受性精神病とは
抗精神病薬を継続服用していて
服薬の中止に伴い離脱症状によって精神病症状がみられるものをいう
この主な原因は
抗精神病薬によるドパミン作動性受容体の遮断に起因していると考えられている
これには
脳のドパミン受容体の数と感度の増加によるもので、抗精神病薬が中止されれば症状の悪化を誘発する可能性がある
つまり
離脱症状というのはおそらく力価の変動と受容体の活動に起因するものと考えられている
これは、薬剤切り替え時にも生じることがある
離脱症状の特徴について
抗コリン離脱:急性症状である
対応:低力価薬や抗パーキンソン病薬の用量を元に戻す。改善まで数日から1週間程かかる
症状悪化との鑑別が必要
低力価薬剤の減量は、高力価薬剤の減量の後にゆっくり行い
抗パーキンソン病薬の減量は、低力価薬剤のさらにあとに行うこと
過感受性精神病:急性症状である
対応:前薬の用量に戻す。改善まで数日から1週間程かかる
症状悪化との鑑別が必要
抗精神病薬の減量はゆっくり行うこと
離脱性ジスキネジア:症状は緩徐である
対応:前薬を増量するか、経過観察となる。改善には数か月程度かかる
症状発現は一過性であり、本人や家族には、見込まれる経過について説明をしておくとよい
アカシジアの分類について
離脱性アカシジア:症状は緩徐である
対応:すでに 3 ヶ月以上原因薬剤が投与されており、その中断により 6週間以内に発症したものである。
このため、アカシジア出現後から 6 週間前まで遡って検討する必要がある。
症状は数週間程度であり、速やかに対処する
出現は一過性であり、速やかに対処するとともに、見込まれる経過について説明する。
遅発性アカシジア:症状は緩徐である
対応:原因薬剤を投与開始後 3 ヶ月以上経ってから発現するものであり、対応は急性アカシジアと同様に使用薬剤の中止を検討する。
そして、第一世代の抗精神病薬を使用しているならば、第二世代の抗精神病薬に切り替えるなどする。
急性アカシジアと違う点は、
中枢性抗コリン薬が無効であるということ。治療として既に用いられている場合は、中枢性抗コリン薬を中止することで症状が改善する場合がある。
ここで、クロニジンやプロプラノロールの他、BZP系のクロナゼパムやロラゼパムを用いるのも対処法として挙げられている
アカシジアの離脱症状を引き起こしやすい薬剤について
・定型抗精神病薬では2割~4割ほどの発現率である。
・SDA(セロトニン・ドパミンアンタゴニスト)のリスペリドンなどは頻度としては比較的高いと言われる(およそ2.3%)
・一方で、MARTAに分類されるオランザピンやクエチアピンでは少ない傾向である。
・非定型抗精神病薬であるアリピプラゾールはSDAよりも高い8.9%の発現頻度である。
アカシジアの治療法について
アカシジアに対する薬物療法としてはβ遮断薬が第一選択となっている
その中でも、脂溶性で非選択的なプロプラノロールが中枢移行性に優れており、有効性が高いといえる(ただし、喘息患者は禁忌である)
β遮断薬を用いる際、用量変更時には血圧と脈拍とをモニタリングすること
また、プロプラノロール無効例には
NaSAA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)であるミルタザピンや抗うつ薬のミアンセリンなどを挙げている。
いずれも5-HT2A受容体に拮抗する作用を利用している
急性のアカシジア症状に対しては
α2作動薬のクロニジン、抗パーキンソン薬であるアマンタジン 、セロトニンの前駆体である L-トリプトファン 、抗てんかん薬のバルプロ酸、ビタミン B6、鉄剤 、電気けいれん療法などが挙げられている
BZP系の減量方法について
漸減法:半減期の短い薬剤に用いる。服用量を1,2週間ごとに4分の1ずつ減量・中止する
隔日法:半減期の長い薬剤の場合に用いる。服用機関を1日おき、2日おき、3日おきと少しずつ長くし、中止する
置換法:半減期の短い薬剤を漸減法で減量できない場合に用いる
半減期の長い薬剤を併用してから半減期の長い薬剤に置き換えて隔日法で減量・中止する
※これに関してはアシュトンマニュアル(日本語版)(japan.pdf (benzo.org.uk)(2021.8.16 閲覧)に具体的な減量の用量が示されている
減量の具体例について
【BZP系の減量】
ジアゼパムを1日40mgあるいはその等価量を摂取していた場合、1日20mgの用量に到達するまで、1、2週間ごとに2mgずつ1日の用量を減らしていくことが可能である。
1日20mgからの減量は、1、2週間ごとに1日の用量を1mgずつ減らしていくことを推奨している。
このため、減薬期間としてはトータルで30~60週間は必要である。
※BZP系の服用者の20%は離脱症状が生じ、半年以上の長期服用患者では40%前後まで離脱症状発現率は上昇する
【抗うつ薬の減量】
離脱症状は半減期の短いSSRI、SNRIに多い(特に8週間以上の服用時)
SSRIではパロキセチンが最も多く、SNRIではベンラファキシンに多いといわれている
・緩徐に漸減が原則であり、漸減中に抑うつ症状の悪化があれば、減薬前の量に一旦戻す必要がある。
・平均発症日数は2日後、平均症状日数は5日間でパロキセチンは50~66%、セルトラリンで60%と報告がある
<参考>
厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアルより 000240113.pdf (pmda.go.jp)