(注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
そのため、これを全て把握しても人体については全て理解し、学べたということにはなりませんのでご注意ください。
医学は未知の部分も含め、既知の部分であってもかなりの量です。ここは忘れないようにしてご利用ください。)
急性化膿性骨髄炎について
急性化膿性骨髄炎とは、主に扁桃炎や上気道炎などの一次感染巣からの血行性感染によって生じる急性の感染症である
化膿性骨髄炎の発症には、血行性感染、開放骨折や骨への浸潤などの直接浸潤、隣接した化膿巣から感染が波及するなどがあるが、一番は血行性感染が多い
乳幼児の化膿性骨髄炎は、成人よりも多発しやすく、慢性化はほぼなく、敗血症の合併がしばしばみられる
また、股関節では骨幹端部が関節内包にあることから、よく化膿性関節炎に発展する
・好発:小児、乳幼児
→成長軟骨板(骨端軟骨)のある成長期の小児に多い
・骨髄内圧の上昇により激痛がみられる
→四肢骨幹端を中心として疼痛や腫脹がみられ、痛みによって患肢の不動となる(偽性麻痺ともいう)
→血流の滞留している長管骨骨幹端に好発する(大腿骨、脛骨、上腕骨などあるが、下肢が多い)
→小児では骨幹端部の類洞で血流が停滞する傾向にある
・起因菌は黄色ブドウ球菌が多い
・発熱、悪寒を呈する
→悪寒が強ければ通常の風邪とは違うということがトリアージ判断の一つ
<血行性骨髄炎の進行について>
①急性期では、骨内に菌が定着して増殖することで膿瘍を形成する(感染巣)
②進行により、ハバース管やフォルクマン管に沿って膿瘍が拡大していき、骨膜化に膿瘍を形成する
③慢性期になると、膿瘍内には腐骨(壊死した骨)が生じ、その腐骨の周りには新生骨(骨柩:こつきゅう)ができる
④これが更に進むと、瘻孔が形成され持続的に排膿が起こる
血液検査:白血球の上昇、CRP上昇、赤沈の上昇
X線像:初期の異常は見られないが、発症から7日〜10日ほどで局所の骨萎縮や骨幹端部の骨破壊、骨膜反応などが確認できる
MRI検査は早期診断に有用である
<治療>
保存療法:抗生剤(ペニシリン系、第一世代セフェム系)の静注、安静など
手術療法:排膿やデブリドマン※など
※ デブリドマン:debridement、デブリードマンともいい、創を浄化する治療行為のことである
また、これは壊死した組織を除去することをいう。
創の中にある死滅した組織、老化細胞(創傷を治癒する成長刺激因子などの応答がない)、異物や細菌感染巣などを除去して清浄化する
化膿性脊椎炎について
化膿性脊椎炎は、脊椎椎体や椎間板に生じる細菌感染症である
起因菌は黄色ブドウ球菌が最も多く、腰椎での発生が多い(とはいえ、起因菌が同定されないことも多い)
・好発:中高年、糖尿病※や免疫抑制剤などによる易感染性宿主、結核、日和見感染などに多い
→尿路感染や皮膚感染などの感染巣から血行性に感染する
※ 糖尿病では感染性疾患の罹患リスクが健常者よりも高くなる(また、透析患者、腹部手術や腎盂腎炎などの既往、肝硬変などの基礎疾患があるなど)
→血糖コントロールが不良の高齢者は易感染状態といえ、発熱だけでなく腰背部痛やWBC、CRPの上昇などがみられれば化膿性脊椎炎を考慮する必要がある(腸腰筋膿瘍などの鑑別も必要)
→この際、MRIで腰椎の炎症所見がみられるはずである
・初発は椎体終板近傍の海綿骨で、ここに播種された菌が病巣をつくり、椎体終板や椎間板を破壊していく
→病変部位は脊髄の前方にある
好発は腰椎に多く、下部胸椎にもみられることがある。まれに頚椎のこともあり。
・症状は、発熱、罹患した椎体部の疼痛
・腸腰筋膿瘍を合併することがある
→MRIによるT2強調像で高信号を示す
・椎間板の狭小化がみられる
→椎間板は血行が乏しいため、侵されやすいといえる
血液検査:白血球の上昇、CRPの上昇、赤沈増加が認められる
起因菌の同定ができ、黄色ブドウ球菌(グラム陽性球菌)であることが判明すれば、感染性心内膜炎の合併※が高頻度(およそ3割ほど)のため、心エコー検査も行うこと
X線:初期では変化はないが、発症から2、3週間で椎間板腔の狭小化や椎体終板の骨破壊像がみられる
→椎間板を挟んで2椎体で認められる
MRI:T1強調像では病変部が低信号、T2強調像では高信号
※ 感染性心内膜炎の合併:急性心不全への移行が多く、致死的なため心エコー検査が必須である
<治療>
第一選択:抗生剤が中心の保存療法(起因菌の同定は困難であり、抗菌スペクトルの広いものを用いるのがよい)
コルセット固定などで局所の安静など
手術療法:第一選択が無効例や進行によって椎体破壊、神経症状が見られてくることで行う治療(膿瘍形成や骨破壊によって脊髄症状を伴う場合)
→病巣掻爬、骨移植、脊椎固定術(ギプスなどによる椎体間固定術)など
→これにより、上下の椎体の癒合により治癒していく
急性期の1ヶ月は腰背部痛、後頚部痛が強いため疼痛コントロールも必要である
腸腰筋膿瘍について
化膿性脊椎炎に近縁の疾患である腸腰筋膿瘍は、腸腰筋に感染巣があり、嚢胞病変がみられる疾患である
腸腰筋の膿瘍のため、股関節を伸展させることで激痛がみられるため、屈曲させた体勢を取っていることが多い
腸腰筋膿瘍は増悪により脊椎や股関節内に波及し、化膿性椎間板炎や化膿性股関節炎となり、より重篤な状態に陥ることがある
透析患者では全身の血流感染症のリスク(ハイリスク)があり、あらゆる場所に膿瘍を認めることが多い
腸腰筋の穿刺で、培養検査をすることで菌を同定すること
→これにより適切な抗菌薬を選択できるようになる
MRI、CT検査
<治療>
薬物療法:抗菌薬の投与
手術療法:ドレナージ
結核性脊椎炎について
結核性脊椎炎とは、脊椎椎体に結核菌が感染し発症することで、椎体や椎間板の変形、破壊がみられる疾患である
これは、骨や関節に生じる結核の中で最も多いとされる
・好発:結核既往者、高齢者、易感染性宿主
・倦怠感、微熱などの全身症状、体動時の痛み、叩打痛などの局所症状
・進行によりPott三徴(ポット)を認める
→冷膿瘍、亀背(きはい:後弯の変形)、脊髄麻痺の3つ
X線:椎体の骨萎縮像、軟骨終板が不鮮明、椎体前方の破壊像など
脊椎のMRI像:T1強調像では低信号を示し、T2強調像では高信号
造影MRI:膿瘍周囲に辺縁増強がみられる(rim enhancement:リム エンハンスメント という)
針吸引、骨生検により結核菌の同定
<治療>
・抗結核薬などの内服治療を行う(保存療法)、またコルセット固定、安静 など
・高度な椎体破壊や脊髄圧迫による神経症状がみられる場合には手術療法となる
→病巣掻爬、脊椎前方固定術など
骨粗鬆症について
骨粗鬆症とは、骨密度の低下によって骨が脆くなり骨折しやすい状態の疾患である
骨密度(BMD)とは、1cm2当たりのCaの重さ(g)のこと
・骨密度はエストロゲンの減少が関与しており、加齢のほか閉経後の女性に骨粗鬆症が好発しやすい
→これにより、骨吸収が促進してしまう
・原発性(閉経、加齢によるもの)と続発性がある
・男性骨粗鬆症もある
・腰背部痛や身長低下、脊柱後弯変形がみられる
→椎体圧迫骨折が起きていると考えられる
→圧迫骨折から間もなければ叩打痛がみられる
・身長の低下がみられる(2cm以上)
・円背、亀背がみられる(椎体骨折から骨が癒合して曲がってしまっている状態といえる)
・大腿骨近位部骨折を起こしやすい(脆弱性骨折)
骨粗鬆症の特徴については次の項目でも解説します
血液検査:血清Ca、Pは正常であり、ALPは正常〜軽度上昇程度である
→胃切除や腸切除によってCaやPの吸収障害が起こる吸収不良症候群があるが、これによって骨軟化症※1となる
→この時、血清Ca、P値は低くなる。また、総蛋白やアルブミン値にも影響はみられるはず
(骨粗鬆症と骨軟化症が併発する場合もある)
X線所見:骨梁の減少、骨皮質の菲薄化で椎体の楔形(くさびがた)、平坦形、魚椎形(椎体の表面が陥凹している状態)に変形しているのが認められる
骨密度検査(DEXA法:デキサ※2):YAM値が
・新鮮圧迫骨折の診断:叩打痛がないか確認することが有用である
※1 骨軟化症:VDが欠乏していたり、VDの活性化障害によって腸管からCaやPが吸収障害を起こすため発症する疾患である
この際、ALP値にも影響は出ているはず(高骨型アルカリホスファターゼ血症)
※2 DEXA法:2種類の異なるエネルギーのX線を測定部位に当て、骨とその他の組織を区別してその差から骨密度(BMD)を測定する方法である。精度は高い
・検査部位は腰椎と大腿骨頸部(脆くなりやすい箇所)の2ヶ所
・検査結果のYAM(Young Adult Mean:若年成人平均値)とは20〜44歳の健常な女性の骨密度を100%とした時と比べた時の割合を示している
YAM値 | 判定 |
---|---|
80%以上 | 正常 |
70%以上80%未満 | 骨量は減少気味 |
70%未満 | 骨粗鬆症疑い |
<治療>
・椎体圧迫骨折による疼痛は薬物療法としてNSAIDsなどの痛み止めを用いる(その他、湿布なども)。また、安静にすること。
→疼痛コントロールには、三段階除痛ラダー※3を参考にするとよい
治療方針は、骨折予防をすることにある
そのためには薬物療法だけではなく、食事や運動も必要となる
※3 三段階除痛ラダー:がん性疼痛の治療ガイドラインだが、痛み止めを段階的に強くするという考え方はある程度応用できると考えられる
①アセトアミノフェン、イブプロフェンなどの非オピオイド鎮痛薬
②トラマドール、トラマドール・アセトアミノフェン配合、コデインなどの弱オピオイド(弱〜中等度の疼痛)
③モルヒネなどの強オピオイド鎮痛薬(中等度から高度の疼痛)
<薬物療法>
・カルシウム製剤:L-アスパラギン酸カルシウムなど
・ビスホスホネート製剤:アレンドロン、ミノドロン、リセドロン、イバンドロンなど
骨吸収を抑制することで、相対的に骨形成が促進されて骨密度を増やす
副作用として、食道に限局した炎症を引き起こすことがある(嚥下困難、逆流性食道炎)
→これは進行性である(継続服用で増悪していく)(↔︎ Ca拮抗薬のLES圧低下による逆食は、通常は進行性ではない)
この場合は、BP製剤の中止か、静注、自己注射剤などへの切り替えが選択として挙げられる
更に、BRONJというビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死という副作用についてもおさえておきたい
→これは、BP系を服用している高齢者が抜歯などの外科的処置により主に下顎骨に壊死が生じるものである
→そのため、歯科治療をしている方、これから抜歯する予定のある方には一旦服用を中止(抜歯から最低でも3ヶ月〜6ヶ月は休薬)すること
・SERM(サーム):ラロキシフェン、バゼドキシフェンなど
選択的エストロゲン受容体モジュレーターのことで、骨に対してはエストロゲン作用を示すが、子宮や乳腺などにはエストロゲン作用を示さないようにした薬剤
→通常のホルモン療法にあるような乳がんリスクはなく、むしろ発症抑制効果もあるとされる
・PTH製剤:テリパラチドなど(自己注射剤など)
副甲状腺ホルモン(パラトルモン)に類似した薬剤で、骨代謝の回転を増やすことで、骨形成作用を促す薬剤
・活性型VD3製剤:アルファカルシドール、エルデカルシトールなど
腸管から、骨形成に必要な成分であるCaやPの吸収を高める薬剤
・抗RANKL抗体:デノスマブ
・カルシトニン製剤:エルカトニン
骨形成を促す薬剤
など
骨粗鬆症の特徴について
骨粗鬆症では、椎体骨折リスクが高まります
この椎体骨折には分類がありますので、こちらもしっかりまとめて把握しておきたいところです
椎体骨折の分類 | 内容 |
---|---|
圧迫骨折 | 屈曲外力による前方支柱の損傷がある ・いわゆる安定型 ・脊髄損傷の合併はまれである |
破裂骨折 | 垂直圧迫力による前方および中央支柱の損傷がある ・骨片が脊柱管内に転移しており、しばしば脊髄損傷を合併する |
脱臼骨折 | 伸展力、屈曲力、回旋力などが重複して発生するものをいう ・three-columnという脊柱前方、中央、後方全ての損傷がある ・いわゆる不安定型骨折 ・脊髄損傷をほぼ合併している |
骨粗鬆症による胸腰椎椎体圧迫骨折の経過について
初期:腰痛
徐々に椎体圧迫の進行、増悪:椎体後壁の圧潰
骨折などにより脊柱管内への突出:脊髄圧迫で両下肢麻痺、膀胱直腸障害などの発症(遅発性脊髄麻痺)
骨粗鬆症によるX線所見にも特徴があります
それが以下のものになります
<骨粗鬆症のX線所見について>
(1)X線の透過性が増加する
→単純X線で圧迫骨折がはっきりしない場合は、MRIでの早期診断がよい
(2)海綿骨梁の減少と萎縮が見られる
→特に、横走する骨梁が減り、縦走する骨梁がはっきりする
(3)骨皮質幅の減少が見られる
→椎体上下縁の硬化像あり
(4)骨の変形がみられる(特に椎体)
→椎体の凹レンズ状陥凹、圧迫骨折、魚椎、楔状椎(くさびじょう)がみられる
・扁平椎:椎体が平らに潰れている状態
・魚椎:椎体中央が陥凹している状態
・楔状椎:前方が狭い状態
骨粗鬆症に見られやすい骨折については以下が挙げられます
脊椎圧迫骨折 | 大腿骨転子部骨折 |
大腿骨頸部骨折 | 上腕骨外科頸骨折 |
Colles骨折(コーレス:橈骨遠位端骨折)※ | など |
※ コーレス骨折:橈骨遠位端骨折ともいう。橈骨の遠位骨片が手の甲側(手背)に転位し、フォークを伏せて置いたような状態の変形を伴う
→よく、高齢者が転んで手をついたときに起こりやすい骨折である
似たものにスミス骨折があるが、これはコーレス骨折の逆といえるもので、橈骨の遠位骨片が手のひら側に転位したものをいう
→バイク、自転車などでハンドルを握ったまま転んだり、手の甲側で手をついてしまうときに起こりやすい骨折である
骨形成不全症について(指定難病:247)
骨形成不全症とは、Ⅰ型コラーゲンを合成する遺伝子の異常によって引き起こされる骨脆弱性疾患である
・出生時から骨折しやすい(易骨折性)
・2万人に1人ほどの割合でみられる
・強膜(白目部分)が青色を呈したり、低身長や難聴がみられる
→病型があり、それによって症状も様々ある(次の表を参照)
<骨形成不全症の分類>
Ⅰ型:低身長はなく、骨変形はあまりきたさない(骨折回数は他の病型よりも少ないため、治癒過程での変形が少ないと考えられている)
Ⅱ型:最重症型であり、周産期で死亡してしまうのがほとんど。頭蓋内出血や胸郭の低形成による呼吸困難などが原因にある
Ⅲ型:Ⅱ型に次ぐ重症型である。長期生存はできるが骨折しやすく、変形や低身長をきたす。
Ⅳ型:Ⅰ型に次いで軽症といえ、症状は様々である
型 | 遺伝形式 | 特徴的症状 |
---|---|---|
ⅠA | 常染色体優性遺伝 | 青色強膜、難聴 |
ⅠB | 常染色体優性遺伝 | 青色強膜、難聴 歯牙形成不全あり(歯の象牙質の形成が悪い) |
ⅡA | 突然変異 | 周産期死亡 |
ⅡB | 突然変異 | 周産期死亡 |
ⅡC | 常染色体劣性遺伝 | 周産期死亡 |
Ⅲ | 常染色体優性遺伝 | 乳幼児期に青色強膜で、次第に白色強膜となる |
〃 | 常染色体劣性遺伝 | 〃 |
ⅣA | 常染色体優性遺伝 | 白色強膜、難聴 歯牙形成不全はなし |
ⅣB | 常染色体優性遺伝 | 白色強膜、難聴 歯牙形成不全あり |
<検査>
X線像:皮質骨が薄く細い長管骨が認められる
・年齢や骨密度の低下などから、続発性骨粗鬆症との鑑別も考え、腰痛などがみられれば、様々な疾患の可能性も考慮しなければならない
→それでも、特徴的な所見(難聴や青色強膜、易骨折性など)があればより骨形成不全症疑いが強いと言える
<治療>
対症療法となる
・薬物療法:ビスホスホネート系製剤の投与(パミドロン酸)
・手術療法:髄内釘での内固定による骨折と変形を予防かつ矯正
類似疾患について
続発性骨粗鬆症
続発性骨粗鬆症にはいくつも原因が考えられるが、胃切除後の栄養吸収不全からくるもの、壊血病※などで起こりうる
※ 壊血病:ビタミンCの不足で起きる疾患である(3〜12ヶ月もの長期にVCが不足している状態で起こりやすい)
これは、以下の流れが起きている
VC↓ → ヒドロキシプロリン↓(体内のタンパク質を構成するアミノ酸) → 組織をつなぐコラーゲンや象牙質、骨の間充組織の生成と保持に障害 →微小管の損傷 → 出血傾向
軟骨無形成症(軟骨発育不全症、軟骨形成不全症)
軟骨無形成症は、全身性に軟骨内骨化が選択的に障害されており、これによって、長管骨骨端軟骨の発育が障害されて四肢短縮型低身長を呈する疾患である(不均衡型低身長症)
常染色体優性遺伝だが、ほとんどが孤発性である(FGFR3遺伝子の点突然変異)→胎内診断可
・出生時から特有の顔貌を呈する(頭位拡大、前額部や下顎の突出、鞍鼻(あんび)など)
・低身長(成人でも120〜130cm)、四肢短縮、亀背、三尖手(さんせんしゅ)※を呈する
→尚、体幹の発育は正常である(体幹に近い骨が障害されやすい)
・膜性骨化(鎖骨)は正常なため、太く短い長管骨(手指)を形成する
・軟骨内骨化の障害から、大後頭孔狭窄や脊柱管狭窄症を呈することがある
→椎弓根間距離は下部腰椎に向かって広くなるところ、軟骨無形成症では狭くなっていくことから、脊柱管狭窄症を発症しやすい
・骨端軟骨での成長不均衡ではO脚(内反膝)を呈する
※ 三尖手:手を広げた時に、中指と薬指が離れていて5本の指が大きく3つにわかれて見えることから言われている
<検査>
MRI、CT:脊柱管の狭窄が認められる
X線:長管骨の短縮、小骨盤腔はシャンパングラス様に呈する
<治療>
対症療法となる
・大後頭孔狭窄や脊柱管狭窄症に対しては除圧術
・大後頭孔狭窄に伴う水頭症に対してはシャント術
・低身長に対しては、成長ホルモン投与(3歳以降)や、四肢の骨延長術(主に学童期以降)
・O脚に対しては矯正骨切り術
骨軟骨腫、外骨腫
骨軟骨腫、外骨腫は原発性骨腫瘍の中で最も多い疾患で、良性のものである
・10代に好発し、膝関節周囲の骨幹端部に発生することが多い
・単発性、散発性に生じることが多く、また、多発性に生じることもある
→これが、多発性軟骨性外骨腫という
・多発性には遺伝性があり、軟骨肉腫への悪性化する頻度が高い
先端巨大症(指定難病:77)
先端巨大症(末端肥大症)は、四肢の末端、舌や口唇の肥大、下顎や前額部の突出、代謝障害による高血圧や耐糖能異常をきたす疾患である
・思春期までに発症すると巨人症となる
→小児では身長が過剰に伸び、成人では骨の変形が起こる
・頭痛、高血圧、高血糖、多汗、関節痛、手の痺れなどの症状を呈する
この他、心不全、視覚障害、脱力感などもある
・成長ホルモン(GH)が過剰に作られる下垂体腫瘍(良性)が原因となっている
→下垂体の前葉からGHが作られる
<検査>
血液検査:診断の確定には成長ホルモン(GH)とインスリン様成長因子1(IGF-1)が高値を確認すること
→GHの分泌には変動があり、一度の検査だけでは診断は難しいとされる
そのため、GHの分泌の異常を確認する必要がある。そのため、ブドウ糖を投与し、通常はGHの分泌抑制が起こるが、それがみられないようであれば分泌異常と判断できる
ただし、IGF-1が高い場合、MRI、CT所見で下垂体腫瘍が確認できる場合はこの限りではない
頭部MRI、CT:頭蓋や手の画像検査をする、骨の肥厚や副鼻腔の拡大、指先の骨の肥厚や腫れなどがみられる
<治療>
手術療法、薬物療法、放射線療法を組み合わせることで、成長ホルモンの過剰分泌を抑制する
手術療法:下垂体腫瘍の切除術
→切除では、GHの分泌低下は起こるが、他の下垂体ホルモンは低下が見られないとされる
放射線療法:大体が進行して肥大しており、手術のみでは完治に至らず、フォローアップのため放射線療法を取り入れる
薬物療法:ソマトスタチンに関する薬剤、オクトレオチドなど
→ソマトスタチン:成長ホルモンの生成と分泌の抑制に関わるホルモン
大理石骨病
大理石骨病とは、骨吸収の障害によっておこるびまん性骨硬化性病変の総称をいう
これは、主に出生時の発症である乳児悪性型と、のちに発症する遅発型がある
・乳児悪性型はまれであり、遅発型も10万人に1人という、基本的には稀な疾患である
・X線初見では特徴的な骨硬化を認めるが、骨折しやすい(これをchalk bone(チョーク・ボーン)ともいう)
症状や遺伝型による違いは以下の通りとなる
分類 | 遺伝形式 | 症状 |
---|---|---|
乳児悪性型 | 常染色体劣性遺伝 | 難聴、視力障害、大頭症、肝脾腫、貧血など |
遅発型 | 常染色体優性遺伝 | 骨折、骨髄炎、顔面神経麻痺など |
<治療>
骨折があれば相応の外科手術となる
基本は骨髄移植となる
偽痛風について
偽痛風とは、尿酸ではなく、ピロリン酸Ca(CPPD)結晶が関節腔内に析出し、半月板や関節軟骨の表面に沈着する結晶誘発関節炎である
・好発:高齢者
・症状は、痛風同様に急性関節炎を呈する
→化膿性関節炎に似ている症状だが、自然改善がみられたりするのが、痛風との違いの一つ
関節内に結晶の析出 → 白血球の貪食 → 急性炎症 → 関節液の混濁、発熱
・発熱、炎症症状などあり
・このような発作症状は長期にわたって繰り返しみられる(増悪していく)
・頚椎に病変がみられることがある
→軸椎歯突起(dens)が石灰化病変に取り囲まれ、王冠状(Crowned)の画像所見であるCDS(Crowned dens syndrome)がみられるが、確定診断まではできない
・発症する部位は、大関節、特に膝に好発する(手や足のこともある)
→痛風では母趾第1中趾節関節(MTP関節)
(全身的な炎症症状を合併する単関節炎という点では類似性あり)
・変形性関節症の合併が多い
痛風と偽痛風の違いについては以下の通りとなる
項目 | 痛風 | 偽痛風 |
---|---|---|
原因物質 | 尿酸 | ピロリン酸カルシウム |
性差 | 男性が女性の20倍ほど多い | 性差なし |
好発年齢 | 30〜50歳代 | 60歳以上 |
X線所見 | 異常なし | 石灰化像 |
結晶の違い | 針状 | 方形 |
また、関節リウマチでは、関節炎の症状の特徴的な違いとして手指・足趾などの小関節から両側性・多発性に始まることが多い(膝関節のこともある)
関節液中の結晶成分の検出は少なく、X線所見でも違いは確認できることが多い
<検査>
血液検査:白血球の増加、CRP上昇、赤沈上昇があるが、血清尿酸値は正常である
(通常、痛風発作でも、発作症状が起きていれば尿酸は析出しており、血清尿酸値は下がっていることは注意)
X線所見:半月板などが線状石灰化像あり(CPPD結晶が沈着している)、関節裂隙の層状石灰化像が認めれる
関節穿刺液検査:混濁を認める(好中球の増加による)
確定診断には、関節液偏光顕微鏡検査でCPPD結晶の証明によってできる
<治療>
対症療法となる
発作期:安静にする、NSAIDs内服、ステロイド投与(関節内注射または経口投与)、関節液の穿刺排液など
間欠期:変形に対しては変形性関節症と同様の対処となる(NSAIDs内服など)
今回はここまでとなります
<参考>
メディックメディア:クエスチョン・バンク
病気がみえる
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