今回で9回目ですが、眼科編の最後になります
(注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
そのため、これを全て把握しても人体については全て理解し、学べたということにはなりませんのでご注意ください。
医学は未知の部分も含め、既知の部分であってもかなりの量です。ここは忘れないようにしてご利用ください。)
白内障について
(加齢性)白内障とは、加齢が原因となり水晶体が混濁することで視力が低下する疾患である
・薬物療法で緩解は難しい
・視力が障害されて生活に支障が出るようであれば手術適応となる
・手術適応の目安は矯正視力が0.5以下である
(患者希望により矯正視力が0.7~0.8でも手術することあり)
・好発:中年から高齢者
・視力低下や羞明(まぶしさ)がみられる
羞明:光の乱反射の自覚症状、車の運転などでは対向車のヘッドライトでGlare(グレア:まぶしさ)を感じ、危険なことがある
<検査>
細隙灯顕微鏡検査で水晶体混濁が認められる
網膜電図(ERG)のストロボ閃光刺激による網膜電位の変化を確認する
→網膜機能検査、網膜色素変性、ジストロフィー診断に用いる
また、眼底透見が不良な視機能予測にも用いることができる
眼底透見できない場合では、超音波B-mode検査も有効である
<治療>
日常生活に支障が出るときは、水晶体摘出術を施行する
→基準としてはあいまいだが、本が読みづらい、食事内容が判別しにくい、運転免許更新、人の顔の認識などで不便を生じたとき手術適応を考える
・矯正の場合は眼内レンズを用いる
①超音波乳化吸引術(PEA)
②嚢外摘出術(ECCE)
③嚢内摘出術(ICCE)
PEA:Phacoemulsification and Aspiration
ECCE:Extracapsular Cataract Extraction
ICCE:Intracapsular cataract Extraction
白内障手術の流れについて
白内障手術や緑内障手術、硝子体手術などは特殊機器を用いることが多いため、しっかり術式の確認が必要である
<白内障手術>
①角膜、強角膜部の切開
→黒目の上の白目部分を半円状に切開する
②水晶体前嚢の切開
③水晶体嚢-皮質を分離
→これは、水晶体核、皮質の吸引除去操作を容易にするため
④水晶体核の破砕(乳化)と吸引除去
⑤水晶体嚢内に眼内レンズ挿入
→場合によっては多焦点眼内レンズを用いる
⑥眼内レンズ位置を修正
かつては、水晶体嚢内摘出術を用いていたが
白内障手術の現在の主流が、超音波水晶体乳化吸引術+眼内レンズ挿入術となっている
(水晶体は屈折力が20Dであり、これを摘出することで屈折力の低下によって遠視となってしまう)
眼内レンズ挿入手術について
眼内レンズは、水晶体嚢に入れているだけなので調節力は特に変わらない
→そのため、場合によっては多焦点眼内レンズを用いることがある
眼内レンズ挿入時には、手術前に挿入するレンズの度数をあらかじめ決めておく必要がある
・眼内レンズのループ部分(ハプティクス)と光学部分(オプティクス)を把握しておくこと
・眼内レンズは二つ折りにして狭い創口にインジェクターを用いて挿入していく
その際に必要な検査項目として以下が挙げられる
<検査>
・超音波Aモードで眼軸長を測定する
→これにより、網膜上に正しく結像するための距離がわかる
・ケラトメーターで角膜曲率半径を測定する
→これにより、角膜の屈折力がわかる
眼内レンズ度数を求める計算式について(SRK式)
P = A ー 2.5L - 0.9K
P | 眼内レンズ予想屈折度数 |
A | 眼内レンズ定数 |
L | 眼軸長(mm) |
K | 角膜屈折力 (角膜曲率半径から算出) |
レーシックなどの屈折矯正手術をしている場合、角膜曲率半径が本来の値と異なるため、このまま利用できない場合もある
眼内レンズは基本的には入れ替える必要はない
白内障手術前後の検査について
白内障などの手術は侵襲的であり、角膜の透明性を維持している角膜内皮細胞は再生しないことから、検査が重要である
この、角膜内皮細胞は正常であれば2,500~4,000cells/mm2ほどあるが、これが減少することで(500cells/mm2以下)水泡性角膜症をきたす
必要な検査とは、スペキュラーマイクロスコピーがある
→これは角膜内皮細胞を高倍率で生体観察する検査であり、白内障や角膜移植術の術前・術後の角膜内皮細胞の機能評価に応用している
白内障術前・術後に必要な検査は以下が挙げられる
術前 | ・角膜曲率半径 ・眼軸長 ・角膜内皮細胞数 |
術後 | ・角膜曲率半径 ・角膜内皮細胞数 |
後発白内障
後発白内障とは、白内障手術後に水晶体上皮細胞が増殖するなどして、水晶体後嚢(眼内レンズの後ろ)が混濁することでおこる疾患であ
白内障手術後、数年経ってから発症する合併症である
眼内レンズの入っている水晶体嚢の混濁により判断できる
症状には、霧視、視力低下などを生じる
<治療>
混濁した水晶体嚢にレーザーで孔を開けて(後嚢切開)治療する
その他白内障術後合併症について
疾患名 | 内容 | 治療法 |
---|---|---|
(感染性)術後眼内炎 | 術中や術後の感染で失明リスクあり 眼痛、急性眼圧上昇、眼の炎症 | 抗菌薬(硝子体注射) 硝子体手術 前房内洗浄 |
水泡性角膜症 (角膜内皮障害) | 角膜内皮損傷によて角膜の変形が起こるもの | 高張食塩水点眼 内皮移植 |
眼圧上昇 | 房水流出路の狭窄によって眼圧が上昇する | プロスタグランジン(PG)薬 炭酸脱水酵素阻害薬 β遮断薬 |
前嚢収縮 | 前嚢や水晶体上皮細胞が眼内レンズの前を覆った状態となる | レーザー、手術療法(前嚢切開) 前嚢切除 |
黄斑浮腫 | 侵襲によるサイトカイン上昇と考えられている (まだ全容ははっきりしていない) | NSAIDs ステロイド |
感染性角膜炎
眼をこすったり、コンタクトレンズなどにより角膜に傷がついたことで、細菌やカビなどの感染リスクがあがる。これによって発症した角膜炎をいう。
その他、真菌性角膜炎やアカントアメーバ角膜炎、ヘルペス角膜炎などがある
原因には、コンタクトレンズの不衛生な使用方法、保存方法によるもの、目をこすって傷がつくなどが多い
・角膜とは、いわゆる黒目部分である
・角膜白斑(黒目が白くなる)
・眼痛、眼の異物感(ゴロゴロする)、流涙、まぶたの腫れなどがみられる
・基本的には片眼性である
・感染性角膜炎は進行すると角膜潰瘍をおこし、病巣が角膜の内部に広がることで黒目の白斑や視力低下を生じることがある
<治療>
治療は基本的には抗生剤・抗真菌剤・抗ヘルペス薬(点眼剤、内服薬、点滴等)などになる
・真菌性角膜炎:最低でも抗真菌薬を1カ月以上継続する
・ヘルペス性角膜炎:抗ウイルス薬の眼軟膏を1,2週間の使用でよいが再発性あり
・アカントアメーバ角膜炎:濁った角膜を削り、抗真菌薬等の点眼薬も併用する
虹彩炎・毛様体炎について
虹彩炎や毛様体炎は前部ブドウ膜炎の代表疾患である
症状には充血、腫れなどがあり原因は感染性と免疫性がある
・その他の症状には、球結膜(白目部分)の充血、眼痛、羞明、流涙などがある
・角膜の裏面に沈着物があり、視力が低下(透明性の低下)することもある
<検査>
この症状では、肉眼での確認は困難なため
細隙灯顕微鏡により、前房水(角膜と水晶体の間)に炎症による白濁がないか確認をする(白斑)
→虹彩炎または眼圧上昇が考えられる
これに加えて、原因を特定するために血液検査、胸部X線検査をする
・前房蓄膿(niveau(二ボー)を形成した白い沈着物)では、感染性かベーチェット病を考える
・瞳孔散大なしの所見から急性閉塞隅角緑内障は否定できる
<治療>
・炎症が虹彩・毛様体に限局している場合:副腎皮質ステロイド点眼薬(抗炎症作用)
→炎症が強い場合ではステロイドの結膜下局所注射、内服薬
・虹彩と水晶体が癒着しないために散瞳薬(点眼剤:サンピロ®等)も用いること(緑内障の原因)
ステロイドパルス療法は非感染性ブドウ膜炎や視神経炎で行うものであり、今回の場合は行わない
アトピー性皮膚炎に伴う白内障について
白内障にアトピー性皮膚炎症状を合併した症例である
症状には、顔のびまん性潮紅、頸部の皮膚所見、結膜炎、水晶体混濁、網膜剥離などがみられる
白内障をきたす原因については以下が挙げられます
全身性疾患 | 糖尿病、膠原病(ステロイド性も含む)、アトピー性皮膚炎 Werner症候群※1、副甲状腺機能低下症(低Ca血症) Lowe症候群※2、Down症候群※3、ガラクトース血症※4 筋硬直性ジストロフィー※5、Wilson病 など |
先天性 | 遺伝性、先天性風疹症候群 |
併発性 | ブドウ膜炎、網膜剥離、網膜色素変性症、硝子体出血内眼手術後 |
外傷性 | 鈍的・鋭的外傷どちらでも生じうる |
薬剤性 | ステロイド、クロルプロマジン、ナフタリン(防虫剤)、放射線、赤外線照射 |
特に糖尿病、アトピー性皮膚炎、先天性風疹症候群は重要となる
アトピー性皮膚炎では、アレルギー性結膜炎症状の他、白内障、円錐角膜、網膜剥離などがある
注釈まとめについて
リンク先
疾患名 | 説明 |
---|---|
※1 Werner症候群(ウェルナー) (指定難病:191) | 早老症候群ともいわれ、思春期以降に白髪や白内障など様々な老化兆候(老化が促進されたように見える)がみられる疾患 がんや動脈硬化などで40代で亡くなる常染色体劣性疾患 (第8染色体短腕上にあるRecQ型のDNAヘリカーゼ(WRNヘリカーゼ)のホモ接合体変異が原因と考えられている) <治療> 高LDL-C:スタチン系など 白内障:手術 難治性皮膚潰瘍:皮膚移植など 糖尿病:チアゾリジン系などのDM薬 |
※2 Lowe症候群(ロウ) | 先天性白内障、精神発達遅延、尿細管アシドーシスが主徴となる症候群であり、X連鎖劣性遺伝である(先天代謝異常症) ・出生前診断可能 症状:腎障害(タンパク尿など)、前額突出、自傷行為、くぼんだ眼など様々 (OCRL1がX染色体上に同定され、代謝に関わる) |
※3 Down症候群(ダウン) | 筋緊張が低下し、発達遅延(各器官が小さい)がおこる 最も頻度が高い染色体異常の一つである(600~800人に1人の割合) 21番目の染色体が1本多く、3本あることから、21トリソミーともいわれる (全長または一部の重複でおこる先天異常症候群) 心疾患、消化器疾患、眼疾患、甲状腺機能低下症、難聴の合併を呈することもある(全例ではない) |
※4 ガラクトース血症 | 糖代謝異常症の一種で、ガラクトースの代謝に必要な酵素一つ欠けていることで、肝臓や腎臓に有害な代謝物が蓄積する疾患(出生62,000人に1人の割合) これが、目の水晶体も損傷することから白内障を起こす 乳製品は全て除く食事が必要となる(大豆の人工乳がよい) 治療が遅れることで知的障害を起こし、亡くなることあり ※新生児スクリーニング検査で調べる項目の一つ |
※5 筋強直性ジストロフィー (指定難病:113) | 骨格筋の壊死・再生でおこる遺伝性疾患の総称 筋肉の変性壊死、線維化・脂肪化から筋力低下で各機能障害をおこす 頻度としては10万人に20人ほど、日本においてデュシェンヌ型は4割が突然変異で発症する 日本人のほとんどはⅠ型(DM1)、Ⅱ型はまれ(遺伝子タイプで分けたもの) 発症時期で4分類ある(先天型・幼年型(若年型)・成人型・遅延発症型) |
関連して別分野:筋ジストロフィーについて
・筋強直をミオトニアといい、筋緊張から弛緩するまでに時間がかかることを筋強直という
・筋ジストロフィーとは、進行性の筋力低下や筋委縮をいう
→誤嚥性肺炎などの要因にもなる
・筋緊張低下をフロッピーインファントという
・先天性筋ジストロフィー:CMD
型の種類について | 説明 |
---|---|
Ⅰ型(DM1) (Steinert:スタイナート病) | DMPK遺伝子(ミオトニンプロテインキナーゼ)のCTGの異常な繰り返し配列で発症 デュシェンヌ型とは異なり、心筋障害の心不全というのは少ないがAvブロックや心室性頻拍などの伝導障害(不整脈)で亡くなることが多い |
Ⅱ型(DM2) | CNBP遺伝子のCCTGの異常な繰り返し配列で発症 |
ジストロフィン異常症 (Duchenne:デュシェンヌ型) | 2番目に多い型で最も重症型である CK血症が偶発的にみつかる(筋肉障害で酵素が上昇する) 心筋障害による心不全、肘・膝を伸ばせなくなる、最終的に脊柱側弯症となる 2、3歳で発症し男児に多い 4歳ほどで走れない、転びやすいなどで発見されることがある 治療:理学療法やステロイド(プレドニゾロン)が限定的に効くとされる |
ジストロフィン異常症 (Becker:ベッカー型) | デュシェンヌ型と同じく、体幹に最も近い部分の筋肉が筋力低下を起こすがデュシェンヌ型よりも稀である 発症は青年期以降と遅めであり、症状としては割と軽度である 男児に多い |
肢帯型 骨盤:リーデン・メビウス型 肩:エルプ型 | 骨盤または肩の筋肉の筋力低下がみられる 幼少期の発症が多いが、成人例もある。性差はなし 稀に重篤な筋力低下のこともある 治療には永久的に拘縮(硬化)しないための予防が重要 |
顔面肩甲上腕型 (ランデゥジー・デジェリン型) | これが最も多いとされる病型 顔面筋・摂食・嚥下機能障害、運動後筋痛、コーツ病、難聴 |
エメリー・ドレイフス型 | 心伝導障害、不整脈、心不全、関節拘縮 NYHA分類のチェックが必要です(別項目で解説) |
眼・咽頭筋型 | 眼瞼下垂、眼球運動障害、外眼筋麻痺、構音障害、摂食・嚥下機能障害 |
福山型先天性筋ジストロフィー (FCMD) | 知的発達障害、けいれん発作、網膜剥離などの眼合併症があり、日本では比較的頻度の高い型となっている 遺伝学的検査は保険適応あり |
筋強直性ジストロフィー (シュタイネルト病) | 8000人に1人の割合で、性差なしの遺伝疾患 ミオトニア現象、筋力低下、消化管障害、前頭部禿頭、白内障、インスリン抵抗性 |
カベオリン異常症 | rippling、QT延長症候群 |
サルコグリカン異常症 | 偽性肥大、心不全 |
デスミン異常症 | 心伝導障害、不整脈、心不全、呼吸不全 |
ミオチリン異常症 | 顔面筋罹患、構音障害 |
ラミン異常症 | 心伝導障害、不整脈、心不全、関節拘縮、リポジストロフィー、Charcot-Marie-Tooth(シャルコーマリートゥース)、早老症、偽性肥大など |
先天性筋強直症 (トムゼン病) | 稀な常染色体優性遺伝疾患で性差はなし 乳児期から見られることが多い 筋肉を緩めることができず、手足やまぶたが硬直するが、筋力低下はわずかである |
ミトコンドリアミオパチー | ミトコンドリアの遺伝子異常やその機能を制御している核遺伝子の異常でおこる遺伝疾患 眼筋、心臓、腸、脳などに影響する この中には、カーンズセイヤー症候群と呼ばれるものあり |
ウルリッヒ型 | 非常に少ない疾患で、未診断例が多いとされる 筋力低下の他、手指などの遠位関節が柔らかく過度に伸展し、脊柱や頸部などの近位関節が緊張するという特徴がある遺伝疾患である |
メロシン欠損型 (非福山型CMD) | 非常にまれな疾患(欧米の方が多い) ラミニンα2鎖をコードするLAMA2遺伝子でラミニン211(メロシン)が完全または部分欠損することで生じる |
この他類縁疾患は多々ある
その他類似疾患について
皮膚筋炎
皮膚筋炎では、外眼筋麻痺や眼瞼腫脹、紅斑を認めることがある
強直性脊椎炎
強直性脊椎炎ではブドウ膜炎を認めることがある
急性緑内障発作について
緑内障は大まかに開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障、正常眼圧緑内障にわけられる
それぞれの分類については後述するが、ここでは基本的な事項についてまとめていきます
・開放型の緑内障初期では傍中心暗点がみられる
・眼痛は閉塞隅角緑内障で、急激な眼圧上昇した場合である
・視野障害に始まり、視力低下は割と末期である
・通常、緑内障では羞明はないが、先天緑内障では羞明を呈することがある
・角膜浮腫による虹視症※が見えることがある
・症状には、頭痛、眼痛、眼圧上昇、結膜充血、散瞳、角膜浮腫、視力低下、悪心、嘔吐など
→これらがあれば、脳外科疾患の他、急性緑内障発作を考える
(強い頭痛では眼痛がマスクされ、訴えがないこともあるため注意)
→眼圧を測定するのが良い(急性緑内障発作では眼圧が50mmHg以上のことが多い)
※ 虹視症とは、光を見たときにその周りに虹のようなものが見える状態をいう
(狭隅角)緑内障発作では、瞳孔が散大することで発症しているため、治療薬は縮瞳薬を先に点眼すること
→眼圧は下がるが、散瞳状態が維持されていることが多く、虹彩切除術が必要となることが多い
<検査>
緑内障の早期診断には
・眼底検査による視神経乳頭陥凹の確認
・視野検査による視野欠損の確認
が有用である
眼底所見に異常がみられない場合では
頭蓋内占拠病変を考え、頭部MRI検査も行うこととなる
健診などで視神経乳頭陥凹の指摘があった場合でも
改めて、眼は散瞳させて眼底検査を行うこと
→視野欠損の原因が緑内障によるものなのか、また視神経以外の病変がないかを確認するために必要である
その他、眼圧検査、隅角検査、視野検査で診断していくこととなる
<治療>
急性緑内障発作例
先に眼圧を下げることを優先する
・高浸透圧薬の点滴静注
・炭酸脱水酵素阻害剤の内服
・眼を冷却し、縮瞳薬を頻回点眼
次に手術療法となる
・レーザー虹彩切開術(非観血的)
→できない場合は観血的な手術的虹彩切除術を行う
散瞳薬は禁忌となる(アトロピン、トロピカミド、フェニレフリンなど)
→発作の増悪
緑内障診断の流れについて
病型を決めるための検査 | 病期を決めるための検査 |
---|---|
【問診】 | 【視野検査】 |
・自覚症状有無を確認 ・既往歴、家族歴聴取 ・内服薬確認 | 初期では、視野欠損の自覚症状ないが、それでも視野異常が検出されることが多い |
【細隙灯顕微鏡検査】 | 【眼底検査】 |
角膜、前房、水晶体の異常有無の確認 | 視神経乳頭、網膜神経線維層の変化確認 ・検眼鏡 ・眼底写真 ・OCT |
【眼圧検査】 | ー |
高眼圧なのか正常眼圧なのかをみる | ー |
【隅角検査】 | ー |
開放隅角なのか閉塞隅角なのか確認 | ー |
以上から検査結果をもとに病型や病期を決定していきます
病型の決定 | 病期の決定 |
---|---|
原発性か続発性か? | 緑内障性視神経症の進行度について |
開放隅角か閉塞隅角か? | 治療効果判定基準について |
蒸気を踏まえて、それぞれに応じた治療については以下の通りです
<治療>
・治療法を選択:薬物療法、手術療法、レーザー治療
・目標眼圧を設定
リンク先
原発性開放隅角緑内障について
原発性開放隅角緑内障とは、Schlemm(シュレム)管で房水流出抵抗があがり、眼圧が上昇することで生じる疾患である
眼圧上昇は緩徐である
・症状には、眼痛、視野狭窄、眼精疲労、視神経乳頭陥凹などを呈する
・初期症状は自覚がないことがほとんどで、視野変化として傍中心暗点がある
・眼精疲労などの不定愁訴から始まる
・視野狭窄はSeidel暗点(ザイデル)からBjerrum暗点(ブエルム)※1(鼻側から徐々に進行する)を認める
→そのために初期で自覚症状があまりないとされる
Seidel暗点はMariotte盲点※2が上下に拡大し、鎌状になったもの
ザイデル暗点の更に鼻側に弓状に拡大したものをBjerrum暗点※1という
「暗点がある = 視野欠損がある」
ということ
視神経乳頭で網膜神経線維層欠損(NFLD)がみられる
※1 Bjerrum暗点(ブエルム):ブエルム領域とは、マリオット盲点から10°〜20°の範囲で固視点を弓状に囲む帯状の領域のこと
※2 Mariotte盲点(マリオット):マリオット暗点、マリオット盲斑ともいう
生理的なもので見えなくなる点をいい、部位は視神経乳頭(視神経円盤)。盲点は両目の耳側にくる
陥凹部がなんらかの原因で拡大する視神経乳頭陥凹拡大と同時に緑内障などの視野狭窄を生じる
<検査>
静的視野検査:網膜感度の低下がみられないか確認する
眼底鏡:視神経乳頭陥凹の拡大を認める
眼底検査:視神経乳頭陥凹により血管が陥凹部に入っていて途切れて見えたりする
隅角は正常である(開放されている)
緑内障の治療方針としては、眼圧を低下させるために
房水産生を抑制することで眼圧を下げる(β遮断薬、CA(炭酸脱水酵素)阻害薬)
<治療>
眼圧は15~20mmHgでコントロールする
・PG系点眼薬、β遮断点眼薬など
効果不十分例では
レーザー線維柱帯形成術を施行する
┃
┣ 線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)
┃
┗ 線維柱帯切開術(トラベクロトミー)
散瞳薬(アトロピンなど)は禁忌となる
また、点眼剤であっても全身性の副作用は考慮すること
β遮断薬では気管支喘息患者は禁忌(慎重投与)である(β2の遮断により気道収縮がおこる)
また、コントロール不十分な心不全、洞性徐脈、房室ブロック(Ⅱ度~Ⅲ度)、心原性ショックのある患者でも禁忌となる
その点、PG系であれば気管支や閉塞性動脈硬化症などに影響を与えないため使用しやすい
点眼剤を2種類以上使用する際は
点眼剤の使用順序は
粘性の低いものから使用し、1剤使用したら5分は空けて次の点眼剤を使用すること
→粘性が高いと、後から点眼するものが入りにくいということがあったり、目の表面の涙液は5分ほどで入れ替わるためこの方法が良いとされる
<粘性について>
通常の点眼液 < 懸濁性点眼液 < 眼軟膏など
最近では2剤以上でコントロールすることが多いため
・PG系点眼 + β遮断薬
・β遮断薬 + CA阻害薬
といった合剤もあるため、コンプライアンス向上のためには合剤使用が良い
原発性閉塞隅角緑内障について
原発性閉塞隅角緑内障では、隅角が狭窄や閉塞し、高眼圧が持続することで緑内障を発症する疾患である
劇症型では失明に至るまで早いため緊急性のある疾患である
・急性原発性閉塞隅角緑内障は、原因が相対的瞳孔ブロックである
→この治療には、レーザー虹彩切開術となる
・薬物治療では一時的に眼圧を下げて消炎させるが、手術療法が基本である
→レーザー虹彩切開術の合併症として、角膜内皮細胞障害による水泡性角膜症があるため注意が必要である
・好発:中年以降の女性
・病因について:角膜が小さい、遠視、浅い前房、隅角が狭いなどが挙げられる
・房水の瞳孔縁での流出遮断が認められる
・眼圧(後房圧)が上昇し、虹彩根部が線維柱帯に押されて隅角を閉塞する(隅角ブロック)
・症状は眼痛、悪心・嘔吐、視力低下、虹輪視などがみられる
この他、角膜浮腫、浅前房、結膜充血(red eye)、毛様充血、散瞳(対光反射欠如)などを呈する
・治療が遅れると失明するリスクがある(早ければ一晩ということもある)
眼部写真から、スリット光をみて浅い前房かどうか判断できる
視診で散瞳があるかも確認すること
<治療>
基本的には手術療法となるが、それまでの間は薬物療法で眼圧コントロールする
・コリン作動薬:ピロカルピン点眼薬(頻回投与)
・高張浸透圧薬:マンニトール点滴静注
・炭酸脱水酵素阻害薬(CA阻害):内服薬のダイアモックス®)
手術療法
・レーザー虹彩切開術(LI:Laser Iridotomy):非観血的
→これは、周辺虹彩に穴をあけて、後房から前房に流れる房水の道を作ることで、瞳孔ブロックに伴う前後房の圧較差をなくし、隅角閉塞が悪化するのを抑制する手術である
・周辺部虹彩切除術:観血的
散瞳しているため、散瞳薬のアトロピンなどは禁忌となる
急性原発性閉塞隅角緑内障の治療で、白内障手術が有効であるということもあり、積極的に行うことが多くなってきている
→白内障手術で、虹彩と水晶体の間隔が広がり、房水の流れがよくなることを期待している
※白内障手術適応のない例での瞳孔ブロック解除のみを目的として水晶体摘出するかどうかは、人によって考えが異なる
悪性緑内障について
悪性緑内障とは、手術などの侵襲により房水が前房に流れず、硝子体側に流れて生じる緑内障である
房水流入により、硝子体が前房に圧迫されることで虹彩、水晶体が押し出されて狭隅角となって高眼圧を呈する
予防治療のレーザー虹彩切開術によって角膜内皮障害が起こり、後々水泡性角膜症を生じてくることが問題となっている
白内障進行から緑内障の発症について
白内障が進行することで水晶体が膨張して前方に虹彩が押し出され、狭隅角を生じることで閉塞隅角緑内障となることがある
白内障と緑内障が合併した症例である
この場合の治療では
水晶体摘出術 + 眼内レンズ挿入術がよい
これによって、白内障だけではなく緑内障の治療も可能となる
→眼内のスペースが空き、瞳孔ブロックリスクが低下するため
続発性緑内障について
二次的に続発して起こる緑内障のことを続発性緑内障という
眼サルコイドーシスなどのブドウ膜炎では、続発性緑内障を引き起こすことがある
この場合、治療は副腎皮質ステロイド薬が良いといえる
ただし、通常の緑内障では、ステロイドは眼圧を上げることから禁忌である
また、感染性ブドウ膜炎から続発する場合では免疫抑制のため、ステロイドは禁忌であり、抗菌薬点眼剤を使用すること
その他緑内障について
全部は把握しきれていないが、わかっている範囲でまとめていきます(国家試験対策であればこれで十分かも)
血管新生緑内障
原因は大きく3つ挙げられる
糖尿病網膜症
網膜静脈閉塞症
眼虚血症候群
血管新生緑内障とは、眼内の虚血によって血管が新たに作られる新生血管が原因で眼圧が上がる疾患である
これは早期治療が必要である
進行度分類があり、ガイドラインに沿って治療していくこととなる
症状には、霧視や眼痛などがある
血管新生緑内障であっても続発閉塞隅角緑内障をきたして、充血や霧視、眼痛、頭痛、悪心等を自覚することがある
→この場合では、通常、虹彩ルベオーシスがみられる
進行度 | 状態 |
---|---|
第Ⅰ期(前緑内障期) | 新生血管はできているが房水流出には問題なく、眼圧は正常 |
第Ⅱ期(開放隅角緑内障期) | 新生血管が増えて房水が流れにくくなり眼圧が上昇してくる 癒着がみられることあり |
第Ⅲ期(閉塞隅角緑内障期) | 新生血管が多数あり、隅角がふさがり著しく眼圧が上昇する |
治療は汎網膜光凝固を施行する
<参考文献>
メディックメディア Question Bank vol.5 眼科
ビジュアルブック 眼科疾患
(注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
できる限り正確な情報発信に努めておりますが、当サイトに記載した情報を元に生じたあらゆる損害に対しては当サイトは一切責任を負いませんので、あくまでも参考としてご利用ください。)