ここでは主に前眼部疾患についてみていきます。
(注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
そのため、これを全て把握しても人体については全て理解し、学べたということにはなりませんのでご注意ください。
医学は未知の部分も含め、既知の部分であってもかなりの量です。ここは忘れないようにしてご利用ください。)
眼精疲労について
眼精疲労とは、目の充血、疼痛があり、視界のぼやけ、かすみ、まぶしさ(調節力の低下)を感じる不定主訴の多い疾患である
・症状が進めば、肩こり、首こり、めまい、吐き気を伴うこともしばしばある
・通常の疲れ目とは違い、休息をとってもすぐには改善がみられない状態となっている
・原因にはVDT症候群などといわれ、ピント調節障害(目の筋肉の凝り)と考えられる
<疾患によるもの>
いずれも、ものがはっきり見えない状態を補おうとして働く眼の筋肉が、疲労を蓄積して起こっていると考えられる
・白内障
・緑内障
・眼瞼下垂
・屈折異常など
(眼鏡、コンタクトレンズが合っていないなど)
・その他:ストレス性、老視
など
<治療>
これは市販薬での対応も可能である
眼の筋肉のコリをほぐす、ネオスチグミン(コリンエステラーゼ阻害(ChE-I)によるコリン作動薬)がある
感染症による角膜炎について
角膜炎で多いのは、ウイルス感染症である流行性角結膜炎や樹枝状角膜炎が挙げられる
アデノウイルス (流行性角結膜炎) | クラミジア |
単純ヘルペス (樹枝状角膜潰瘍、地図状角膜潰瘍、円板状角膜潰瘍) | 帯状ヘルペス |
結核 | 梅毒 |
匐行性角膜潰瘍(ふくこうせいかくまくかいよう)※1 | 角膜真菌症 |
アカントアメーバ角膜炎※2 | 外傷、手術による感染症 |
フリクテン性角結膜炎※3 |
※1 匐行性角膜潰瘍:角膜に傷がついて黄色ブドウ球菌、レンサ球菌、肺炎球菌、緑膿菌などが感染することでまぶたが腫れる疾患
※2 アカントアメーバ角膜炎:コンタクトレンズ装用者に稀に起こる疾患である
汚染されたコンタクトレンズを装用することで、細菌が増え、その細菌を餌としてアメーバが増え、角膜の傷口から侵入することで感染する
→治療法は薬はなく、角膜を削る必要がある。場合によっては角膜移植が必要となる
※3 フリクテン性角結膜炎:眼や眼周囲の常在菌(黄ブ菌など)の免疫反応で生じる疾患
その他の角膜炎について
角膜炎の中で、感染症によらないものは以下のようなものが挙げられる
乾性角結膜炎 (ドライアイ) | 巨大乳頭結膜炎※ |
春季カタル (角膜障害を合併するアレルギー性角結膜炎) | など |
※ 巨大乳頭結膜炎:コンタクトレンズなどの異物で生じるアレルギー反応性疾患である
角結膜炎による小児などのプール禁止期間について
感染力のある疾患はプールへ入ることは禁止となる
疾患 | 禁止期間 |
---|---|
流行性角結膜炎 | 発症後4週間 |
細菌性結膜炎 | 発症後2週間 |
その他の結膜炎 | 炎症症状あるうち |
慢性結膜炎 | 基本的には禁止はないが経過観察が必要 |
角膜障害を呈する疾患について
角膜障害を呈する疾患については障害部位ごとに以下が挙げられます
涙道狭窄では角膜障害はきたさない(流涙症はみられることあり)
この他、シェーグレン症候群では乾性角結膜炎をおこすことで角膜上皮障害をきたす
角膜障害部位 | 要因 |
---|---|
上皮 | 外傷性、薬剤性(緑内障点眼剤など)、乾燥、涙液減少症、ヘルペス、睫毛乱生(しょうもうらんせい)※1、眼瞼内反、兎眼(とがん)※2、異物、角膜潰瘍、流行性角結膜炎、真菌症 |
実質 | 梅毒、結核、角膜潰瘍、ヘルペス、薬傷、外傷、感染症、持続する高眼圧 |
内皮 | 水泡性角膜症、糖尿病角膜症、緑内障、ブドウ膜炎、外傷性、内眼手術後 |
睫毛乱生(しょうもうらんせい):まつげの一部が角膜や結膜にあたっている状態をいう
※2 兎眼(とがん):細菌やウイルスなどで顔面麻痺などを起こし、その支配下の眼輪筋が麻痺することで目を完全に閉じれなくなる状態をいう
→これにより乾性角結膜炎などによる角膜上皮障害をきたすこととなる
角膜感染症について
細菌性の角膜潰瘍を引き起こす要因には以下が挙げられます
・角膜の異物
・顔面神経麻痺からの兎眼
→閉眼ができないため感染機会が増えると考えられる
・コンタクトレンズの不衛生な管理
→重篤性でいえばこれが最も重篤といえる(細菌性、真菌性、アカントアメーバなどによる)
・涙液分泌障害
→涙液による洗浄効果が低下することで感染リスクが上がる
角膜感染症の起因菌として頻度の高いものは以下の通りです
緑膿菌 |
ブドウ球菌 |
セラチア |
など |
・症状には、深い角膜潰瘍、輪状膿瘍を形成し、角膜実質の浮腫混濁が著明となる
・特にソフトコンタクトレンズ装用者に、浸潤や輪状膿瘍が認められた時は、緑膿菌やセラチアを考慮することとなっている
<検査>
診断は、角膜病巣擦過物をグラム染色下で鏡検・培養をして行う
<治療>
起因菌が不明の状態で感受性試験している間は、広域スペクトルのニューキノロン系抗生剤の使用が頻用される
→感受性試験結果が得られたらそれぞれの感受性ある抗菌薬(点眼・眼軟膏)投与を行うこと
場合によっては、抗菌薬の内服、点滴の全身投与をする
角膜移植の適応と禁忌について
角膜移植の適応疾患と禁忌事項についてまとめてあります
これは、原則、移植片から感染するようなものは移植できないという考え方でよい
光学的適応 | ・円錐角膜 ・角膜混濁 ・水泡性角膜症 |
治療的適応 | ・感染性角膜疾患 ・遺伝性角膜変性症 ・外傷 など |
原因不明の死 | 原因不明の中枢疾患 |
細菌性、真菌性またはウイルス性全身活動性感染症 | 白血病 |
HIV抗体、HTLV-Ⅰ抗体※1、HBs抗原またはHCV抗体陽性 | Creutzfeldt-jakob病(クロイツフェルト・ヤコブ)※2 |
亜急性硬化性全脳炎 進行性多巣性白質脳炎などの遅発性ウイルス感染症 | Hodgkinリンパ腫 非Hodgkinリンパ腫などの悪性リンパ腫 |
Reye症候群※3 | 眼内悪性腫瘍 |
活動性ウイルス脳炎 原因不明の脳炎および進行性脳症 | SARS(重症急性呼吸器症候群) |
※1 HTLV-Ⅰ抗体:成人T細胞白血病(ATL)という白血病だけでなくリンパ腫を呈することもあることからATLLといわれる疾患を引き起こす、原因ウイルスがHTLV-Ⅰである(主に母子感染、STDなど)
それに感染することでHTLV-Ⅰ抗体が産生される
予防接種などはなく、治療手段も確立していない。(白血病治療は行う)
※2 Creutzfeldt-jakob病(CJD:クロイツフェルト・ヤコブ):脳へ異常なプリオン蛋白(感染性なし)が沈着して、脳神経細胞の機能障害を起こすプリオン病の一種である
医原性、孤発性、遺伝性や異常プリオンの捕食などが要因
治療法は対症療法となる
※3 Reye症候群:→肝疾患編⑤の脂肪肝の要因を参照
<参考>
・「臓器提供の施設手順書」
公益社団法人 日本臓器移植ネットワーク
<4D6963726F736F667420506F776572506F696E74202D203120919F8AED92F18B9F837D836A83858341838B8169955C8E86816A205B8CDD8AB78382815B83685D> (jotnw.or.jp)(閲覧:2021.12.27)
流涙をきたす疾患について
症候性流涙症 (分泌性流涙) | 涙道機能は正常であり、分泌過多によるもの | 結膜炎、眼瞼内反症・外反症、結膜・角膜異物、眼精疲労など |
導涙性流涙 | 涙液分泌は正常であり、導涙に障害があるもの | 涙点閉鎖、涙点外反、涙嚢炎、涙嚢腫瘍、鼻涙管閉塞など |
リンク先
角膜潰瘍について
角膜潰瘍は、細菌、真菌、ウイルス、アカントアメーバなどの感染で発症する
単純ヘルペスによるもの
単純ヘルペスによる角膜潰瘍では、樹枝状角膜潰瘍をきたす疾患であり、治療にはアシクロビル眼軟膏などの抗ウイルス剤となる
・症状には、疼痛、充血、霧視などを呈する
・表層型の単純ヘルペス角膜炎では角膜上皮障害がおこり、以下のように発展していき、特徴的な角膜潰瘍所見を呈することとなる
<角膜炎の発展所見について>
点状 → 線状 → 樹枝状 → 地図状
緑膿菌によるもの
外傷性角膜感染症の原因で最も多いのが緑膿菌によるものである
次いで、黄ブ菌、肺炎球菌などとなっている
緑膿菌:グラム陰性桿菌であり、コンタクトレンズ装用者に主な原因菌となっている
・匐行性(ふくこうせい)角膜潰瘍には、角膜外傷(「つきめ」と言われる)を既往として、急に発症する細菌性角膜潰瘍である
・眼痛、充血の主訴
<所見>
細隙灯顕微鏡
・眼球結膜充血が認められる
・円形の角膜浸潤を形成する(角膜実質の浮腫混濁が著明)
・スリット光の幅が中央部で太くなって見える
→角膜中央部の膨潤を示す。つまり深い角膜潰瘍を呈している。
病変部の擦過物やコンタクトレンズ保存液の塗抹検鏡検査でグラム陰性桿菌の確認
ほかの原因菌では別の疾患がみられる
原因菌 | 菌種 | 疾患名 | 症状 |
---|---|---|---|
淋菌 | グラム陰性双球菌 | 結膜炎 | ・著明な結膜充血 ・多量の膿性眼脂 ・眼瞼腫脹 →進行で角膜穿孔 →失明 |
クラミジア | 細胞内寄生菌 (グラム染色なし) | 封入体結膜炎 | ・充血 ・粘液膿性眼脂 ・眼瞼腫脹 など |
<以下は別疾患のもの> | ー | ー | ー |
サルモネラ菌 | グラム陰性桿菌 | 食中毒 | ー |
レジオネラ菌 | グラム陰性桿菌 | 肺炎 | ー |
角膜障害について
角膜上皮障害には、臨床的には点状表層角膜症や角膜びらんなどを生じていると考えられる
角膜障害はコンタクトレンズを付けたままで寝てしまうなどで角膜上皮障害をきたしている疾患である
基本的には片眼性である
コンタクトを付けたまま寝ることで、角膜は酸欠状態となり傷がつく
→この傷による眼痛なのか、そこから感染して痛みを生じているのか確認する必要がある
そのための検査には、フルオレセイン染色がよい
フルオレセイン染色:傷部分があれば青色光によって緑色に発色することで観察できるため、何らかの角膜障害が考えられる際に行うもの
※角膜擦過培養検査では、明らかな角膜感染があるときに起因菌を調べるために行うもの
これは、両眼性であり、明らかな角膜感染所見が無いようであれば先にフルオレセイン染色を行うのがよいと考えられる
水泡性角膜症について
水泡性角膜症は、前房眼内レンズは数年から十数年後に合併症として発症する
角膜内皮細胞の減少で、角膜が浮腫を起こして混濁し、軽度から強い疼痛を生じる
発症により徐々に進行する疾患である
角膜の透明性を維持するには、角膜内皮細胞が正常に機能している必要がある
通常2,500~3,000個/mm2の内皮細胞があるが
内眼手術やレーザー虹彩切開術、前房眼内レンズなどで内皮細胞が減り、500個/mm2以下となることで水泡性角膜症を発症する
<治療>
治療は角膜移植のみとなる
角膜移植後も再発率は他の角膜疾患に比べて高いため、手術が数回となることもある(難治性)
リンク先
複視をきたす疾患について
複視は、斜視や眼球運動障害により両眼の視線が同一の方向を向けないことで生じる
眼球運動障害では、外眼筋の障害、外眼筋を支配する神経の障害、眼窩内の圧迫性病変などが原因となる
片眼の眼球運動障害や瞳孔散大、眼瞼下垂を伴っている場合では、動脈瘤が原因である可能性もあるため、緊急検査・加療のこともある
以下の動眼神経麻痺、外転神経麻痺、滑車神経麻痺、開散麻痺の4つは麻痺性斜視にあたる
疾患名 | 内容 |
---|---|
動眼神経麻痺 | 動眼神経は第Ⅲ脳神経支配である 脳の障害などで起こりうる症状である |
外転神経麻痺 | 外転神経とは、第Ⅵ脳神経支配であり、外直筋を動かす神経である この眼球を外側へ動かす外転神経が麻痺している状態 |
滑車神経麻痺 | 滑車神経は第Ⅳ脳神経支配であり、上斜筋の麻痺のため、内下向きと内転が制限される 複視を避けるために、麻痺していない眼のほうに頭を傾けてみている特徴がある |
開散麻痺 | 遠くを見ようとすると両眼が外に開かない状態であり、遠くのものほど複視を生じる |
Duane症候群(デュアン) | 外転神経が外直筋をコントロールできず、動眼神経が外直筋を支配することで斜視が起こるもの(特殊型である) |
重症筋無力症 (指定難病:11) | 末梢神経と神経筋接合部で筋肉側の受容体が自己抗体で破壊される自己免疫疾患のこと(遺伝性なし) 筋肉を動かすためのアセチルコリンの伝達がうまく伝わらないため、全身の筋力低下、易疲労、眼瞼下垂、複視などがある 眼筋型と全身型がある |
核間性眼筋麻痺 | 脳幹にある核を結ぶ線維が損傷を受け、眼球の水平方向の動きができない状態のこと 原因には、若年者では多発性硬化症など、高齢者では脳卒中などでおこることがある。(その他:頭部の外傷、腫瘍、ライム病※1など) one-and-a-half症候群※2を併発することがある |
輻輳麻痺 (ふくそうまひ) | 輻輳:両眼眼球を内側に寄せること(寄り目のこと) この麻痺では、近見でのみ外斜視となるため交叉性複視を生じる 原因:中脳水道近傍の腫瘍(主に松果体)、脱髄、外傷、炎症、血管病変などの中脳背側症候群と考えられている 対光反射は正常、内転可であり、対光-近見反応解離が認められる 治療:原疾患を治療、近見用の基底内方のプリズム眼鏡を用いる |
眼窩内腫瘍 | 眼窩:眼球のおさまっている骨に囲まれた四角錘型の空間 ここに腫瘍ができたものをいう |
外眼筋ミオパチー | ミオパチー:先天的または後天的に筋肉が動かせない状態をいう 様々な疾患があるが、今回は外眼筋が動かせないというものである これによりまぶたを上げることができない状態となる(眼瞼下垂) |
※1 ライム病:ライムボレリア症ともいう
これは、細菌(スピロヘータ)の一種であるボレリアによっておこる人獣共通感染症である
主な保菌動物:野生のマダニ科マダニ属のダニ、野ネズミ、鹿、野鳥など
症状は、マダニなどに刺された箇所の発赤・腫脹、発熱、倦怠感、関節痛など
24時間以内の治療が重要
治療:抗生剤(遊走性紅斑:ドキシサイクリン、髄膜炎等の神経症状:セフトリアキソン、マダニ刺傷などで発症するアナプラズマ症:ドキシサイクリン、テトラサイクリンなど)
※2 one-and-a-half(ワンアンドハーフ)症候群
核間性眼筋麻痺を引き起こす疾患によって、水平注視中枢(眼球の水平方向の動きを協調し、制御している神経核)にも損傷が生じた場合に起こるもの
<参考>
ミオパチーの種類|(疾患・用語編) ミオパチー|神経内科の主な病気|日本神経学会 (neurology-jp.org)
眼脂(目ヤニ)の分類について
分類 | 原因 |
---|---|
漿液性線維素性眼脂 | ウイルス性結膜炎(EKC) |
膿性眼脂 | 細菌性結膜炎 (淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(N.meningitidis)) |
粘液膿性眼脂 | 細菌性結膜炎(肺炎球菌:S.pneumoniae) ウイルス性結膜炎(AHC) ムンプス 真菌性結膜炎 |
粘液性眼脂 | 乾性角結膜炎 春季カタル |
漿液性眼脂 | 急性アレルギー性結膜炎 |
結膜炎の分類について
ウイルス性結膜炎は感染力が非常に強いが、細菌性結膜炎ではさほどの感染力はない
項目 | ウイルス性 | 細菌性 |
---|---|---|
症状 | 異物感、流涙、羞明(明るくまぶしいこと)、濾胞形成、耳前リンパ節腫脹、漿液性眼脂 | 充血 粘液膿性眼脂 |
伝染性 | あり | なし |
主要疾患 | ・流行性角結膜炎 ・咽頭結膜炎 ・急性出血性結膜炎 | ・カタル性結膜炎(黄ブ菌) ・淋菌性結膜炎 ・封入体結膜炎・トラコーマ※→リンク先参照(クラミジア結膜炎) |
治療法 | 対症療法 | 抗菌薬 |
原因特定のためには、迅速診断が必要であり、ELISA法やクロマトグラフィー法(アデノクロン※1、アデノチェック®など)があるが、型までは判別できない
※1 アデノクロン:単クローン性抗体酵素抗体法のことで、結膜中のアデノウイルスを検出する方法
リンク先
流行性角結膜炎について
流行性角結膜炎は、アデノウイルスが原因で起こる角結膜炎である
ウイルス性の結膜炎は感染性が強い。院内感染にも気を付ける必要がある(アルコール消毒や手洗い、人との接触は避けるなど)
感染力が強いものには、流行性角結膜炎(EKC)の他には急性出血性結膜炎(AHC)、咽頭結膜熱(PCF、プール熱)が挙げられる
<学校保健安全法>
・EKCでは第3種学校伝染病に指定されている
→伝染する可能性がなくなるという、医師の許可がなければ出校できない(義務)
・PCFは第2種学校伝染病指定となっている
→主要症状が無くなってから2日間は出席停止が義務となっている
・耳前リンパ節の腫脹、圧痛を認める
・急性濾胞性結膜炎を呈する
・発症10日後で点状表層角膜炎を呈する
・潜伏期間は1週間ほど(5~14日)
・眼脂、流涙、羞明症状
・感染力が強いため、プールには4週間は禁止となる
・眼脂は漿液性である
・感染後期では角膜上皮下混濁を生じることが多い
・眼瞼下垂状態の結膜炎では、開瞼が困難となる
・偽膜を形成する(偽膜性結膜炎)
→これは、幼少児に認められることが多く、脱落上皮細胞や白血球、細菌などから構成されており、線維網といわれる
・進行することで点状表層角膜症を呈する
潜伏期間が1週間前後あり、咽頭痛が認められなければEKCの可能性を疑う
<治療>
2~4週間ほどで自然治癒するが、混合感染予防のためにも抗菌薬点眼剤を使用する
リンク先
クラミジア結膜炎について(トラコーマ)
クラミジア結膜炎はChlamydia trachomatisによるもので、結膜のProwazek小体(プロワツェクしょうたい)、角膜パンヌスによる視力障害を呈する
・生後1週間で発症するものを新生児膿漏眼という
・封入体結膜炎:眼脂(目ヤニ)の塗抹標本で細胞内の封入体(Prowazek小体:プロワツェクしょうたい)がみられる(多量に膿性眼脂を認める)
・性器クラミジア感染症(生殖感染(STI)、産道感染)により、結膜充血、濾胞、耳前リンパ節腫脹、眼脂(めやに)、眼瞼腫脹などがおこる
・トラコーマ:細菌であるクラミジア・トラコマチスによる結膜感染症である
元々は失明の原因だったが、今では治療ができる疾患である(十分量の抗生剤:内服、点眼、眼軟膏などを2カ月ほど投与)
<治療>
テトラサイクリン系、オフロキサシン(ニューキノロン系)の投与
リンク先
ウイルス性結膜炎の分類について
項目 | 流行性角結膜炎 (はやりめ) | 咽頭結膜熱 (プール熱) | 急性出血性結膜炎 |
---|---|---|---|
原因 | アデノウイルス8型 (または、4,19,37型) | アデノウイルス3型 (または、4,7型) | コクサッキーウイルスA群24型 エンテロウイルス70型 |
好発年齢 | ー | 小児 | ー |
流行時期 | 夏 | 夏 | ー |
潜伏期間 | 1週間前後 | 1週間前後 | 約1日ほど |
所見 | 三主徴:急性濾胞性結膜炎、角膜上皮下混濁、耳前リンパ節腫脹 ・高度な眼脂、流涙、結膜充血、点状表層角膜炎(発症後7~10日後) | ・高熱(39~40℃) ・咽頭炎(咽頭痛) ・軽度の急性濾胞性結膜炎 | ・軽度の耳前リンパ節腫脹 ・球結膜下出血 ・充血、眼脂、眼痛、流涙など |
春季カタル(VKC)について
春季カタルとは、眼瞼結膜の乳頭増殖や浮腫増殖を生じる、角膜障害を合併するアレルギー性角結膜炎である
IgEの関与するⅠ型アレルギーやIgGの関与するⅣ型アレルギーによるものと考えられている
・好発:アトピー素因をもつ5歳頃~学童期の男子
・上眼瞼結膜が石垣状乳頭増殖(cobble stone:ぶつぶつしている)を呈する特徴的
→このため、角膜潰瘍を頻発する(角膜中央部の上皮剥離、盾型潰瘍(shield ulcers)など)
・原因には、アトピー素因の他にアトピー素因を持たない場合では
→ハウスダスト、ダニなどが刺激源となって症状が起こりうる
・強い掻痒感、粘稠(ねんちゅう)な眼脂
・春から秋にかけて増悪し、冬季に軽快するという特徴がある
<治療>
抗アレルギー点眼薬、ステロイド点眼薬
内服:ステロイド
結膜下注射:ステロイド
※抗アレルギー薬に耐性のことが多いため、免疫抑制点眼薬(タクロリムス、シクロスポリン)やステロイド点眼薬がよい
近縁疾患について
リンク先
霰粒腫(さんりゅうしゅ)
霰粒腫とは、まぶたの中にできる小さく固い腫瘤である
Meibom(マイボーム)腺の慢性炎症に伴う肉芽種である
・眼瞼の腫れや異物感あり
・眼痛(角膜に傷がつくなど)
・炎症を伴うものは急性霰粒腫という
・次の麦粒腫とは違い、基本的には感染性ではない
<参考>
日本眼科学会:病名から調べる (nichigan.or.jp)
<類似疾患:鑑別>
・麦粒腫
・涙嚢炎
・涙小管炎
・眼窩蜂窩織炎
・悪性腫瘍
など
<治療>
・霰粒腫を包んでいる袋ごと摘出する手術が必要となる
・早期例ではステロイドの注射でおさまることあり
・炎症があれば、抗生剤で消炎させていく
※特に高齢者においては、悪性腫瘍との鑑別が必要
麦粒腫(ものもらい)
麦粒腫はMeibom腺(マイボーム)などの細菌感染による炎症でおこる
・眼瞼の発赤・腫脹が認められる
・霰粒腫と同じようなものだが、発生場所が異なっている(以下の表参照)
・一般的にものもらいと言われている疾患である
疾患 | 内容 |
---|---|
内麦粒腫 | マイボーム腺に感染したもの |
外麦粒腫 | まつげの毛根などに感染したもの |
霰粒腫 | マイボーム腺の出口が詰まったもの |
その他結膜疾患について
疾患名 | 内容 |
---|---|
結膜結石 | 結膜コンクレメント※1が融合したものに更に石灰沈着を起こしたもの 異物針などにより除去すること |
翼状片 | 原因不明の結膜良性腫瘍性病変である(異常結膜で翼状の形をしている) 誘因として紫外線(UVB)や加齢性変化と考えられている 治療:切除および結膜移植 |
皮様嚢腫 | 結膜良性腫瘍である 角膜輪部に接している、あるいは、角膜に一部及んでいるもの |
皮膚粘膜症候群 | ・Stevens-Johnson症候群(SJS:スティーブンジョンソン) ・手足口病 ・Reiter症候群(ライター)※2 ・天疱瘡 ・川崎病 ・Sjogren症候群(シェーグレン) など |
※1 結膜コンクレメント:結膜胚細胞の内容が変性脱落上皮と混合したものをいう
※2 Reiter症候群(ライター):反応性関節炎のことをいう
脊椎関節炎の一つであり、消化器や泌尿器などで感染した後に生じる炎症性疾患である
→詳細についてはこちらから
結膜下出血について
結膜下出血は原因不明のことが多く、結膜下強膜上に広がる薄い出血を認めるが、他に症状は見当たらない
<治療>
原因は不明であり、ほかに症状を示さないことからほとんどは経過観察となる
(出血は量が多くても自然に吸収されてなくなる)
結膜下出血の要因について
外傷性 | 打撲等 |
急性結膜炎 | 急性出血性結膜炎(AHC) 流行性角結膜炎 |
全身性疾患 | 動脈硬化、高血圧症、糖尿病、腎炎、貧血、白血病、紫斑病などの出血性素因 |
急性熱性疾患(感染症など) | インフルエンザ、麻疹、ジフテリア、猩紅熱、発疹チフス、マラリア |
その他 | くしゃみ、いきみ、咳、飲酒、水中マスクなどで眼周囲の圧迫、月経 |
リンク先
Reiter症候群(ライター)について
Reiter症候群とは、脊椎関節炎の一つであり、消化器や泌尿器などで感染した後に生じる炎症性疾患である
三主徴:尿道炎、関節炎、結膜炎がある
症状は全身の多岐にわたる
・関節炎の多くは2,3カ月ほどで自然軽快する
・症状には、非対称性少関節炎(膝、足等)、腱付着部炎など
・関節外では角結膜炎、ブドウ膜炎、結節性紅斑などがある
<関連した原因菌について>
・サルモネラ、エルシニア、カンピロバクター、赤痢など
泌尿器関連からであればクラミジアが多いとされる
・その他:自己免疫疾患ではHLA-B27と関連していると考えられている
また、膀胱癌で用いるBCG膀胱内注入療法で起こることもある
<治療>
クラミジアではテトラサイクリン系が適切である
リウマチ治療と同じように、メトトレキサートやサラゾスルファピリジン(スルファサラジン)(腸管感染症によい)
その他、分子標的薬(アダリムマブ、エタネルセプト)などもある
・炎症強ければステロイドの関節注
<参考>
Reiter症候群 (臨床検査 35巻13号) | 医書.jp (isho.jp)
リンク先
Sjogren症候群(シェーグレン)について(指定難病:53)
Sjogren症候群とは、涙腺や唾液腺を破壊する自己免疫疾患であり、外分泌腺機能の低下が起こることで目の異物感や口腔乾燥感を呈する
涙液分泌低下のため、乾性角結膜炎などが起こってくる
・好発:中年女性
・関節リウマチ合併例が多い
・関節炎や肝脾腫を伴う
<検査>
・Schirmer試験(シルマー):涙液分泌の程度を調べる
→ろ紙を下眼瞼の外側にかけて5分間放置し、涙液の浸潤による濡れの長さを測定する
・Rose-Bengal試験(ローズベンガル):角膜・結膜の状態(びらんなど)を調べる
→角膜・結膜の障害部位や死滅した部位を染み出す
・リサミングリーン染色法:ローズベンガル染色法と同様の所見となる
→ローズベンガル液というのは刺激性が強いため、リサミングリーンを用いることが多くなっている
・フルオレセイン染色法:角膜・結膜上皮の欠損部分が染まる
<治療>
人口涙液の点眼薬や涙点プラグ挿入(涙液を貯留させる)など
その他眼疾患について
Wilson病(ウィルソン)
Wilson病は遺伝性銅代謝障害であり、肝臓や神経系に蓄積して多様な症状を呈する
眼科に関しては、銅の蓄積により眼の色が変わって見えるKayser-Fleischer輪(カイザーフライシャー)がある
Sturge-Weber症候群(スタージウェーバー)(指定難病:157)
Sturge-Weber症候群とは、先天性であり眼圧の上昇の他、軟膜血管腫(脳の表面を覆う細かい血管)と顔の赤いアザ(母斑)がみられる
・症状には、てんかん、発達障害、視力障害、運動麻痺、緑内障などがみられる
・顔のポートワイン血管腫、けいれん、片側麻痺をきたす
・原因はまだ不明である(遺伝子異常の可能性は言われている)
<治療>
皮膚科:レーザー治療など
眼科:緑内障(高眼圧症)治療薬など
てんかん:抗てんかん薬など
von Recklinghausen病(フォン・レックリングハウゼン)(指定難病:34)
von Recklinghausen病とは、別名、神経線維腫症Ⅰ型(NFⅠ)ともいわれている遺伝性疾患である
これは、cafe au lait斑(カフェオレ斑)や皮膚神経線維腫などの様々な神経線維腫を発症する
眼科としては、虹彩小結節が比較的多くみられる
・骨、眼、神経に症状がみられる
・ちなみに神経線維腫Ⅱ型とは全く別の疾患である
・原因遺伝子は17番染色体の異常(ニューロフィブロミン)
・症状には、皮膚の色素斑(シミ:カフェ・オ・レ斑)と神経線維腫
・この色素斑は長円形で6個以上ということが多い
<治療>
根治療法はなし
皮膚の色素斑に対しては必要があればレーザー治療など
眼外傷について
眼内異物による外傷性白内障について
・初めにどこに異物があるのかを確認すること
・異物には、工具、鉄片、木の枝など様々ある
・眼球穿孔して眼窩内に達している場合もある
・網膜鉄錆症では、暗順応が2~6ヵ月後に低下し夜盲となる
→また、網膜電図(ERG)では平坦化する(受傷直後ではまだ網膜変性はないことが多い)
外傷性白内障では、眼底透見は不可能であることが多い
→そのため、画像診断が必須となる
CTや超音波検査(エコー)はどの異物であっても検査可能だが
MRIは核磁気共鳴のため、金属(磁性体)の異物があれば当然禁忌である
眼窩吹き抜け骨折について
眼窩吹き抜け骨折とは、眼窩の内圧上昇で眼窩壁の弱い部分である下壁が最も障害されやすい。次に内壁が多い。
そのため、下直筋やその周囲の眼窩脂肪組織が骨折した眼窩壁に引っかかることで上転しにくくなる
眼窩吹き抜け骨折では骨折の範囲が広い場合、眼窩内組織が上顎洞に嵌頓して眼球陥凹が起こる
この場合、組織絞扼によって上転障害が起こることよりも、眼筋の直接障害による下転障害が起こりやすい
ただ、打撲においては頬骨の骨折があれば開口障害もみられることがある
・野球のボールが目に当たった場合に起こりうる
(一例)
上を見たときに上方を向けない状態(上転障害)を呈する
→更に複視を訴えるという場合は、この疾患が一番に考えられる
・小児の眼窩壁骨折(眼窩底骨折)は閉鎖型骨折をおこすことが多く注意が必要である
→眼窩内組織が骨折部位から脱出しても、骨に弾力があるため骨片が戻り、脱出した眼窩内組織を絞扼することでおこる
ここで、外眼筋までも絞扼している場合は時間の経過で壊死となるため緊急手術が必要である
その他の眼筋の影響については以下のとおりである
障害部位 | 機能・障害内容 |
---|---|
上直筋(動眼神経) | 眼球の上転に関わっており、直接的な障害であれば上転障害を起こす |
内直筋(動眼神経) | 眼球の内転障害となる |
外直筋(外転神経) | 眼球の外転障害となる |
上眼瞼挙筋 | 眼瞼の挙上に関わるため、障害により眼瞼下垂がおこる |
※詳しくは眼科編①の「眼球運動」参照
上向きで複視があるということは、下直筋の絞扼や眼窩内容物の嵌頓が考えられる
<検査>
CT検査では従来通り軸位断のほか、冠状断も撮ることで診断を行うとよい
視神経損傷や眼球破裂などを合併している可能性もあることから、眼科的な精査は重要である(頭部単純CT等)
<治療>
眼窩壁に骨折があっても手術が必要というわけではなく、複視が強い場合に手術適応となる
(この複視は、眼窩壁骨折部位に下直筋や内直筋、その周囲の眼窩脂肪組織の引っかかりでおこる)
そのため、複視が強くないまたは、組織絞扼がないという場合であれば保存的経過観察となる(自然軽快が多い)
リンク先
眼窩底骨折
眼窩底骨折とは、硬球などが前方から鈍的な外力が加わり眼窩内圧が亢進し、眼窩底の骨折がおこり、眼窩内組織が上顎洞内へ嵌頓した状態をいう
外傷性が原因であり、高齢者や小児(青少年)例が多い
・症状は眼球偏位、鼻出血、知覚異常がある
<眼球偏位>
・眼球陥凹:眼窩下壁が骨折して時間が経つことで眼窩内容の一部が上顎洞内に嵌入することでおこる
・眼球突出・眼瞼浮腫:鼻出血で鼻をかむことで眼窩気腫をきたす
・眼球運動制限:下直筋が骨片に嵌頓して上転障害されることで上方視の際に複視を生じる
<知覚異常>
これは三叉神経第Ⅱ枝の下眼窩神経領域であり、瞳孔散大は認められない
第Ⅱ枝は正円孔から眼窩内に入った後、眼窩底において眼窩下溝に入り、眼窩下管内を前方に進む
このため、眼窩下壁骨折で眼窩下神経を損傷し、頬部感覚麻痺がおこることがある
<検査>
副鼻腔Waters撮影(ウォーターズ)、断層撮影、CT検査、Hess赤緑検査などがある
眼窩底骨折の診断には、CTやMRI検査の冠状断撮影が有効である
<参考>
ウォーターズ法 - 一般撮影室 - atwiki(アットウィキ)
感染性角膜炎
感染性角膜炎は角膜混濁とred eye症状を呈する
木の枝などで眼を怪我した際に細菌などに感染することでおこる
・木の枝などによる角膜感染は真菌であることが多い
・外傷で眼の炎症による疼痛、視力低下を呈する
・感染は前房に進行することで前房蓄膿を呈する
穿孔性眼外傷
外傷では、穿孔性か非穿孔性かで治療方針が異なっているため、重要な判断である
穿孔性では早急な対処(縫合)が必要である
穿孔性眼外傷とは、角膜や強膜に裂傷があり、眼球面が穿孔している状態である
後遺症には交換性眼炎や外傷性白内障が挙げられる
・穿孔性眼外傷には、虹彩脱出や強角膜裂傷など
→角膜穿孔では房水が漏れたりして眼圧が低下することがある
・非穿孔性眼外傷には、網膜振盪症(もうまくしんとうしょう)や網膜出血など
→この場合は、経過観察のこともある
・傷の長さや深さをしっかり把握することが重要
→軽い角膜裂傷で前房が深く保たれているようであればソフトコンタクトレンズの装用のみで治癒することがある
・白内障や網膜剥離を合併しているようであれば、同時または二次的に白内障手術や網膜復位術、硝子体手術も必要となる
(つまり眼の外傷によって白内障となる場合がある)
<治療>
まずは眼内異物がないことを確認する
次に
・脱出物があれば切除
・創があれば縫合
・感染予防のため抗生剤投与
眼内炎、前眼球炎予防のためにも、局所や全身に十分量の抗生剤投与が重要である
・硝子体脱出:vitrectomy(ヴィトレクトミー:硝子体切除術)を行う
・角膜裂傷で虹彩嵌頓:修復を図る。陳旧性※では切除する
・感染防止のため抗生剤投与をする(基本的にはステロイド禁忌)
→最終手段としては眼球摘出となる
(この場合は緊急性はないため、他に手段がないか患者家族含め、改めて冷静時に相談のうえで行う)
陳旧性:急性や亜急性よりも時間が経過した状態をいう
ステロイド使用例について(感染リスクがない例に用いる)
・視神経管骨折により視神経への圧迫を減弱するとき
・眼内の炎症が強いとき
・交感性眼炎※を起こしたとき
などがある
※ 交感性眼炎:一方の眼の怪我や手術後に、反対側の眼のブドウ膜に炎症を起こす疾患をいう
肉芽腫(異常な小さな細胞群)ができる稀なブドウ膜炎である
全眼球炎について
全眼球炎とは、眼内に感染を起こし、眼周囲の組織まで強い炎症をきたした状態をいう
・硝子体膿瘍や前房蓄膿も起こすが、角膜が強い浸潤を受けて前房蓄膿も透見できないことはしばしばある
・原因菌は、ブドウ球菌、肺炎球菌、緑膿菌、真菌がある
→これには、糖尿病や全身性免疫機能低下例に多い
<治療>
抗生剤の局所投与、全身投与となる
場合によっては硝子体手術となり、更なる増悪例では眼球内容除去術となる
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交感性眼炎について
交感性眼炎とは、穿孔性眼外傷に続発する自己免疫性疾患である
これは眼球穿孔した眼だけでなく、反対側にも起こる疾患である
電気性眼炎(雪目)について
電気性眼炎とは、いわゆる点状表層角膜炎のことで、原因が紫外線暴露(アーク溶接工など)でおこる角膜障害である
「角膜のやけど」といった感じである
紫外線は角膜上皮に吸収されやすい
・紫外線暴露後6時間から半日ほどで発症する
・症状は羞明、異物感、眼痛、流涙などがみられる
→通常は1、2日ほどで自然治癒するが、その間は必要に応じて鎮痛剤、抗菌薬などの投与をする
・夜間に症状が強くなることが多い
・虹彩炎や角膜浮腫が強い場合では、ステロイド、散瞳薬(アトロピンなど)の点眼剤も考慮
<原因>
紫外線暴露によるものだが、紫外線の元は様々ある
・電気溶接光
・殺菌灯
・雪山での反射光
・夏場の強い太陽光
予防には遮光眼鏡(サングラス等)を用いること
化学外傷について
化学外傷では、成分の酸性・アルカリ性があると思うが、これを生理食塩液で中性になるまで洗い流す必要がある
酸性に対してアルカリ性、アルカリ性に対して酸性を用いて中性とすることは危険なためしないこと
できるだけ早期に原因物質を眼部から除去することが大事である。(予後に関わる)
・酸よりもアルカリの方が組織浸透性が高い
→前眼部の組織の非可逆的障害が短時間で生じやすい
・角膜が白色混濁し、透明性が失われる(瞳孔の透見不可)
・原因物質や涙液のpH測定で確認
眼部化学腐食では以下の症状がみられることがある
・角結膜上皮びらん
・角膜実質混濁
・角膜内皮障害
・虹彩炎
・後期修復期では角膜潰瘍
・結膜の瘢痕形成による瞼球癒着
・睫毛内反
など
二次的な合併症としては
・白内障
・緑内障
などが認められる
<治療>
速やかに生理食塩水で洗浄・洗眼をし、pHを中性にする
その後、抗菌薬点眼や副腎皮質ステロイド点眼薬を用いる
強酸・強アルカリなどの眼薬傷 |
網膜中心動脈閉塞症 |
穿孔性眼外傷 | 網膜剥離 |
緑内障発作 | 眼内異物 |
眼窩蜂巣炎 | 全眼球炎 |
洗浄液 | 説明 |
---|---|
希釈ポビドンヨード点眼 | 感染予防のため眼科における手術前に用いるもの |
オゾン水 | 眼科手術時に洗浄のため用いているところもある |
ホウ酸液 | かつては眼の洗浄や消毒に使用していたが、今はあまり使用されていない |
今回はここまでです。次回で眼科編最後になります(白内障・緑内障)
<参考文献>
メディックメディア Question Bank vol.5 眼科
ビジュアルブック 眼科疾患
(注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
できる限り正確な情報発信に努めておりますが、当サイトに記載した情報を元に生じたあらゆる損害に対しては当サイトは一切責任を負いませんので、あくまでも参考としてご利用ください。)