眼科編第2回目となります。
今回は視野障害と対光反射についてみていきたいと思います。
この範囲も画像がないと辛いところですね。いつか作ります、、
(注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
そのため、これを全て把握しても人体については全て理解し、学べたということにはなりませんのでご注意ください。
医学は未知の部分も含め、既知の部分であってもかなりの量です。ここは忘れないようにしてご利用ください。)
・眼の機能は視力、視野、色覚の3つの機能が正常に働くことでものをしっかり見ることができます。
それぞれ一つでもかけていれば視力障害の元となります。
視覚情報処理経路について
網膜 → 視神経 → 視交叉 → 視索 → 外側膝状体 → 視放線 → 後頭葉(視中枢:Area17)
視野異常の種類について
視野障害の種類 | 視野 | 特徴 | 疾患・原因 |
---|---|---|---|
機能的視野障害 | らせん状視野 | 心因性 | 転換性障害 |
狭窄・欠損 | 求心性視野狭窄 | 視野の周辺からほぼ均等に視野が欠けていくもの | ・網膜色素変性症 ・緑内障末期 ・脊髄癆性視神経萎縮 ・転換性障害 ・メチル水銀 |
暗点 | 中心暗点 | ・視野中心部が暗点 ・黄斑部の障害でみられる | ・中心性漿液性脈絡網膜症 ・黄斑変性 ・急性球後視神経炎 ・視神経炎 ・網膜中心動脈閉塞症 |
〃 | 輪状暗点 | 中心視野と周辺視野は保たれているが、中間部分が障害されている状態 | ・初期網膜色素変性症 ・開放隅角緑内障 |
〃 | 傍中心暗点 | 注視点付近に認められる暗点 黄斑部の周辺部に病変が生じることで、全て傍中心暗点となる | 開放隅角緑内障 |
〃 | ラケット状暗点 (石津暗点) | Mariotte盲点(マリオット)※1と中心暗点が連続したもの | 球後視神経炎 |
〃 | Mariotte盲点の拡大 | - | ・うっ血乳頭 ・緑内障初期 |
〃 | Seidel・Bjerrum暗点 (ザイデルブエルム) | Seidel暗点はMariotte盲点が上下に拡大し、鎌状になったもの ザイデル暗点の更に鼻側に弓状に拡大したものをBjerrum暗点※2という | 緑内障 |
半盲 | 同名半盲 | 視索より中枢の視覚伝導路の障害で見られるもの ただし、外側膝状体より中枢の障害では原則的に黄斑回避を認める | 梗塞や腫瘍による後頭葉障害 |
〃 | 両耳側半盲 | 視交叉の内側からの障害をいう 黄斑回避はなし | ・下垂体腺腫 ・頭蓋咽頭腫 |
〃 | 両鼻側半盲 | 視交叉の外側からの障害であり、稀な疾患 | 両側の緑内障 |
大きな視野欠損から網膜剥離についても把握しておくこと。
※1 Mariotte盲点(マリオット):マリオット暗点、マリオット盲斑ともいう。
生理的なもので見えなくなる点をいい、部位は視神経乳頭(視神経円盤)。盲点は両目の耳側にくる。
陥凹部がなんらかの原因で拡大する視神経乳頭陥凹拡大と同時に緑内障などの視野狭窄を生じる。
※2 Bjerrum暗点(ブエルム):ブエルム領域とは、マリオット盲点から10°〜20°の範囲で固視点を弓状に囲む帯状の領域のこと。
網膜神経節細胞から出ている神経線維について
網膜神経節細胞
┣ 弓状線維(上下)
┃
┣ 乳頭黄斑線維
┃(乳頭耳側から出ている)
┃
┗ 放射状線維
(乳頭鼻側から出ている)
緑内障の視野狭窄進行について
・緑内障は弓状線維が障害される代表的な疾患である。視神経乳頭の変化や視野欠損がある状態。
弓状線維は、視神経乳頭に上下にでている。
鼻側の視野が欠ける、傍中心暗点、盲点拡大など
↓
Bjerrum暗点
↓
Roenne(レンネ)鼻側階段
↓
末期では中心視野のみ残る状態
・神経繊維の走行は網膜の上下で分かれているため、水平経線で境界されている。
このため、鼻側階段を生じる。
緑内障の分類について
緑内障
┣ 続発型緑内障
┃
┗ 原発型緑内障
┃
┣ 開放隅角緑内障
┃
┗ 閉塞隅角緑内障
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続発型緑内障について
続発型緑内障は、原因として、ぶどう膜炎、手術後、ケガなどによって起こりえる。
その他では、糖尿病、脳疾患などの病態や、ステロイド点眼薬による副作用などが挙げられる。
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開放隅角緑内障について
開放隅角緑内障は、隅角が閉塞してない緑内障であり、眼圧上昇は軽度である。
慢性緑内障といえる。そのことからも、症状の進行はゆっくりである。
眼圧は正常であり、正常眼圧緑内障ともいう。
治療:β遮断薬など(気管支喘息既往では禁忌)
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閉塞隅角緑内障について
緑内障の中でも、房水の出口である隅角が閉塞しているタイプの緑内障である。
このタイプでは、開放隅角緑内障と比べて眼圧は上がりやすく、急激に上がる急性緑内障発作を生じることがある。
これは、急激に症状が進行するため、失明リスクがある。
緊急対応が必要
治療:縮瞳薬など
高眼圧症について
・正常眼圧は10〜21mmHgではあるが
21mmHgを少し超えている程度で、自覚症状がなく緑内障が無い(視神経乳頭の変化や視野欠損がない状態)ようであれば
高眼圧症だが、積極的な治療対象とはならない。(経過観察)
毛様充血について
まず、充血には、結膜充血と毛様充血がある。
毛様充血は見た目から充血していることがわかることから、red eyeといわれるが、失明リスクがある危険な疾患の兆候であることがあるため、見逃さないようにしたいものである。
毛様充血をきたす疾患には以下が挙げられる
・虹彩毛様体炎
・角膜潰瘍
・急性閉塞隅角緑内障
項目 | 結膜充血 | 毛様充血 |
---|---|---|
所見 | 眼周辺部が鮮紅色 | 角膜縁から放射状に紫紅色 |
血管部位 | 後結膜血管 | 毛様体血管 |
炎症部位 | 角膜表層や結膜 | 角膜の中〜深層 虹彩 毛様体 脈絡膜 |
原因 | 結膜炎 表層角膜炎 | 角膜実質炎 虹彩毛様体炎 閉塞隅角緑内障 強膜炎 |
網膜色素変性症について
・網膜色素変性症とは、徐々に進行する疾患であり、視細胞及び網膜色素上皮が原発性、進行性に障害される遺伝性疾患である。
・症状は夜盲症状を自覚するが、進行することで次第に視野が狭くなり、視力の低下や色覚異常を合併する。
・症状としては、夜盲症があるが、これはVAの欠乏症だったり、網膜色素変性症、小口病(おぐち)※などが考えられる。
この中で、徐々に進行するものといえば網膜色素変性症が先に考えられる。
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※小口病(おぐち):先天性夜盲症のひとつで、常染色体劣性遺伝である。
剥げかかった金箔様という特有の眼底所見がみられる。
症状は、生まれつきの夜盲のみとなっており、基本的には症状は進行しない。
このことから、視力、視野、色覚は正常のことが多い。
まれに、50代以降で視野障害(輪状暗点)を来す場合もあるため、定期的な検査は必要。
確定診断で確認すること
・検査の網膜電図(ERG)では、平坦化したグラフが認められる。
・視野欠損は輪状暗点である。
・視力低下、色覚異常などにより発見されることがあるが、夜盲の自覚が乏しい場合もある。
・発症頻度は0.02~0.03%ほどで、難病指定である。(定期検査は公費適応あり)
・症状や原因は個人差が大きい疾患だが、遺伝子変異が原因とされている。
この遺伝によるものは、全体の半分ほどで、残りは孤発例となっている。
そのため、診断にはしっかり定期的な検査から判断すること。
・遺伝形式は常染色体優性遺伝、常染色体劣性遺伝、X連鎖劣性遺伝など様々である。
リンク先
症候性網膜色素変性症について
・網膜色素変性症で全身症状を伴うものを症候性網膜色素変性症という
症候性網膜色素変性症
┃
┣ 感音難聴を伴う場合
┃ ┗ Usher症候群(アッシャー)
┃ (指定難病303)
┣ 多指症、肥満、糖尿病
┃ 腎臓の奇形や肝硬変等を伴う場合
┃ ┗ Bardet-Biedl症候群
┃ (バルデービードル)
┃
┣ 眼瞼下垂、眼球運動障害
┃ を伴う場合
┃ ┗ Kearns-Sayre症候群
┃ (カーンズセイヤー)※
┃
┗ 多発性視神経炎、小脳性失調を呈する場合:Refsum症候群
※Kearns-Sayre症候群(カーンズセイヤー):これはミトコンドリア病の一つである。
ミトコンドリアはほとんど全ての細胞に存在することから、障害場所によって様々な症状を引き起こす可能性は考えられる。
→ 脳や脊髄などの中枢神経系や骨格筋などにも影響するミトコンドリア脳筋症とも言われる所以です
眼瞼下垂を引き起こす疾患についてのまとめは眼科編①を参照ください。
カーンズセイヤーは重症例のため、その前の段階については、以下の参考サイトが詳しく載っております。
<参考>
難病情報センター:https://www.nanbyou.or.jp(閲覧:2021.9.25)
眼瞼下垂治療ナビ:https://gankenkasui.takada-ganka.com/blog/gankenkasui/997(閲覧:2021.9.25)
網膜動脈分枝閉塞症について
・急激な視野異常を呈する。閉塞罹患した動脈枝の支配領域の部分が視野欠損する。
・閉塞をきたすのはほとんど(90%以上)が耳側動脈で、特に上耳側網膜動脈である。
・動脈は狭細化を呈し、網膜は乳白色に混濁する。
・検査は蛍光眼底造影で、黒く見える血管は蛍光色素がブロックされることで流入していない血管であり、通常の状態で見た時の乳白色混濁した動脈と一致する。
(眼底像は上下左右逆で表示されることに注意 → 眼底像所見と、実際に視野欠損を訴えた向きに注意)
視野は網膜に対応する
つまり、耳側の視野は鼻側の網膜、鼻側の視野は耳側の網膜に投影される。
また、下側の視野は上方網膜に、上側の視野は下方網膜に投影。
リンク先
乾性角結膜炎(ドライアイ)について
・女性に多く、更年期障害との関連もあるといわれている
原因は主に、VDT作業、女性、加齢、シェーグレン症候群、コンタクトレンズ装用者
・目を酷使することが多いと生じてくる。涙液層の安定性が低下する疾患である。
ドライアイからの眼精疲労頻度は高い。これにより、角結膜に炎症所見を認めることがある。
・目が乾燥する、眼痛や頭重感がみられたりする
また、異物感、流涙、充血、霧視なども生じたりする(眼表面の障害)
・老視と近いものがあるが、乾性角結膜炎の特徴としては涙液の減少があるということ。
・ドライアイには涙液減少型と蒸発亢進型があるが、治療としては同じである。
診断には
近点距離測定や涙液分泌検査を行う
ドライアイの診断基準について
①眼不快感、視機能異常などの自覚症状
②BUT(涙液層破壊時間)が5秒以下
この①と②の両方を満たすものをドライアイと診断する
フルオレセイン染色をし、細隙灯顕微鏡で見た時、眼球結膜にも染色があれば中等症以上のドライアイと判断できる。
この際、治療は人工涙液では対応できないと考えらえれる。
治療薬には
まずは人工涙液点眼薬を用いる。(ヒアルロン酸点眼液)
症状に合わせ、涙液分泌促進薬(ジクアス点眼®︎)やムチン産生促進薬の点眼(ムコスタ点眼®︎)
炎症が強く見られるようであれば、ステロイド点眼も考慮(リンデロン点眼®︎等)
点眼薬で症状の改善が見られない場合やシェーグレン症候群などでは涙点プラグによる涙道閉塞を行うことが多い。
涙液分泌検査について
涙液分泌検査とはSchirmer Test(シルマーテスト)ともいう。
このシルマーテストは、涙液分泌量を見る検査であり、両眼の目尻に専用の試験紙を挟んで5分間に分泌される涙の量を調べるものである。
方法はⅠ法、Ⅰ法変法、Ⅱ法がある
涙液量の検査については、他にBUT(tear break up time:涙膜破壊時間)という
角膜からの涙液蒸発時間の測定や綿糸法などの種類もある。
これら、いくつかを組み合わせて総合的に評価を行う。
Schirmer検査 | 内容 |
---|---|
Ⅰ法 | 涙液貯留量(涙の自然分泌量)と反射性分泌量 (試験紙の刺激によって分泌される涙の量) を合わせた涙液量で濡れた距離を測定する方法 試験紙の濡れた距離 ・10mm〜15mm:基準、正常 ・10mm〜5mm:境界 ・5mm以下:異常 |
Ⅰ法変法 | 麻酔点眼を使用し、反射性分泌量を抑え、涙液貯留量だけを測定する方法。 当然、I法よりは結果は少ない距離となる |
Ⅱ法 | 鼻腔粘膜を綿棒で刺激することで、最大限の反射性分泌量を測定する方法。 ・10mm以下を異常とする |
<参考>
Wikipedia:https://ja.wikipedia.org/wiki/シルマーテスト (閲覧:2021.10.8)
老視について
いわゆる老眼である
加齢とともに水晶体の弾性が低下することで、調節力が減退することで生じる。
眼の圧迫感を感じることで、眼圧の上昇や眼精疲労を示唆している。眼のかすみも生じてくる。(初期老視の眼精疲労(夕方老眼)といえる)
調節力は年齢によって落ちてくるが、平均的には以下の通りとなっている
年齢 | 一般的な調節力 |
---|---|
20歳 | -9D |
30歳 | -6D |
40歳 | -4D |
50歳 | -2D |
60歳 | -1D |
老視の-2Dとは、つまり無限遠から眼前50cmのことであり、腕を伸ばして焦点が合う距離である。
このため、ものを見る時はよく腕を伸ばして見ようとしてしまう。いわゆる老眼といえる。
対処法は当然、近用眼鏡の処方となる。(老眼鏡)
<参考>
JSCRS 日本白内障屈折矯正手術学会:http://www.jscrs.org/index/page/id/36
眼精疲労について
眼精疲労の原因は主に、VDT作業(visual display terminal)からのVDT症候群、ドライアイ、間欠性外斜視、初期老視などが挙げられる。
いずれも眼に負担がかかっている状態である。
調節力が低下して近見視力障害を生じる。
急激な視野障害について
・網膜剥離:続発性の網膜剥離として、悪性腫瘍の眼内転移がある。これは、乳がんや肺がんからの転移が多いとされる。
・視神経疾患:中心暗点やラケット状暗点がある
・頭蓋内疾患:後大脳動脈の閉塞により、黄斑回避を認める同名半盲。中大脳動脈障害では、同名半盲、同名4分の1盲がある。
※半盲:通常は全て見えるが、半分が見えない状態。
右目であれば、左半分しか見えていない状態をいいます。
障害される部位によって見え方が異なるため、次の表を参考にしてみてください
視路障害での視野の変化について
視路の障害部位 | 視野の見え方 |
---|---|
視神経障害 | 左または右の全盲 |
視交叉障害(内側) | 両耳側半盲 |
視交叉障害(外側) | 鼻側半盲 |
視索障害 | 左同名半盲 |
側頭葉での視放線部分障害 | 左上4分の1半盲 |
前頭葉での視放線部分障害 | 左下4分の1半盲 |
後頭葉障害(視中枢) | 左同名半盲 + 黄斑回避 |
言葉の意味について
・両耳側半盲:両方の耳側の視野半分が見えない状態をいう。
・左同名半盲:両目とも同じ左側が見えない状態をいう。
<参考>
看護too!:https://www.kango-roo.com/learning/6603/(閲覧:2021.9.25) 画像が載ってます。(いつか自分で用意します、、)
視神経乳頭蒼白を引き起こす疾患について
・視神経乳頭蒼白を引き起こす疾患というのは、視神経乳頭から外側膝状体までの間の視神経障害を示唆している。
・この視神経障害を呈する疾患として、緑内障、視神経炎、視神経症、視神経管骨折などが原因と考えられる。
・眼圧が正常であっても緑内障の否定はできないが、確認はしておくこと。
・今回は、視神経乳頭蒼白を示す疾患をまとめてはいるが
背景疾患には、原因、重症度によって様々な視力障害、視野障害がおこるため
結局は実際の視野を書いてもらい、特徴的な所見がないか確認するのが重要。
水晶体偏位について
・水晶体偏位とは水晶体のズレのことであり、観察した時に水晶体の辺縁がみえる。
・水晶体偏位を起こす疾患にはMarfan症候群、外傷、ホモシスチン尿症が考えられる。
・検査方法には細隙灯顕微鏡があるが、詳しくはリンク先をご参照ください。また、上記の水晶体偏位の原因疾患についてもまとめてあります。
リンク先
Marfan症候群(マルファン)について
・Marfan症候群(マルファン)とは水晶体偏位を起こす疾患の一つであり、この場合他の症状として、外傷性ではなく高身長などを呈していると考えられる。
眼の症状についてみれば、水晶体上方脱臼の視力障害に加え、心血管異常や骨格異常が確認できる。
・常染色体優性遺伝疾患であり、弾性線維の形成に関与するフィブリリン-1遺伝子の異常による。
この疾患は、眼だけではなく心臓など様々なところに影響を及ぼすため、しっかり治療しなければいけいない。
心疾患では、大動脈弁閉鎖不全症(AR)や解離性大動脈瘤の合併症もある。
尚、これについての詳細は眼科編③を参照ください。
・クモ指がみられる。
→ 身体的特徴として、高身長、痩せ型、(低BMI)細長い指、漏斗胸、鳩胸、扁平足、側湾症などが挙げられる。
ホモシスチン尿症
・ホモシスチン尿症も同じく、水晶体偏位を起こす疾患の一つであり、詳細はまた同じく眼科編③を参照してください。
・眼の症状として、白内障、水晶体下方脱臼に加え、アミノ酸代謝異常やMarfan症候群類似の外見をしていることがある。
それぞれ原因は異なるが、似たような症状を呈していることから共通の症状についてはしっかり把握しておくと良いでしょう。
他に水晶体に異常をきたす疾患について
・先天性風疹症候群が挙げられる。
症状は、白内障のほか難聴、先天性心疾患などがある。
リンク先
斜視について
・眼位の診察にはHirschberg法(ヒルシュベルク)を用いたりする。
・ペンライトの明かりを当て、眼が瞳孔中心にあれば問題ないが、片方が耳側瞳孔縁(中心側に寄っているように見える)にあるということは、内斜視といえる。
診断表現:左眼は瞳孔中心にあり、右眼が中心に寄っている → 「左眼固視で右眼内斜視」と表現する
幼児の視力で0.8程度は正常範囲と考えることができるが、0.5程では弱視が疑われる。
近くのものを見るとき、少し寄り目となる(輻輳)。
強度の遠視では網膜の後ろにある焦点を網膜上に移動させるため、遠くを見ていても水晶体の調節+輻輳が起こり、寄り目(内斜視)となる。
乳幼児で強度遠視であれば、遠くを見るときであっても、内斜視となり、近くを見た場合では、寄り目はさらに酷くなる。
内斜視には、調節性内斜視と乳児内斜視がある。
乳児内斜視では、先天的な要因によるものであり、手術治療が必須である。
これを手術治療しないままでは、弱視となり、両眼視機能を獲得できなくなることもある。
<考え方>
調節麻痺薬点眼して、遠視で内斜視がある状態では
まずは、遠視矯正を行う。その上で眼位以上の変化を確認する。
弱視に対しては、健側の眼をアイパッチで覆い患側の弱視を使用して快復をはかる弱視治療を考える。
<臨床例>
調節麻痺薬点眼をして、完全矯正眼鏡で遠視矯正をするという治療が適切である。
具体例
・通常の視力が
→ 右 0.4(0.5 × +2.0D) 左 0.4(0.9 × +2.0D)
・調節麻痺薬点眼後の矯正視力では
→ 右(0.5 × +5.0D) 左(0.9 × +5.0D)
であれば、治療は
右 +5.0D 左 +5.0Dの眼鏡処方が適切である
調節性内斜視の治療について
まず、調節性内斜視の原因ですが、これは遠視からきている
遠視とは、眼の屈折異常の一つであり、遠視を調節で矯正しようとすることで内斜視が生じる
これが調節性内斜視というもの。(調節しようとして内斜視になってしまうということですね)
それを踏まえた上で、治療法を見ていきます
①小児では調節力が強く遠視は軽く検出されることとなる
そのため、正確な遠視検出のためには、調節力を麻痺させて自己調節できないようにし、素の屈折力を調べる必要がある
そのためには、必ず調節麻痺点眼薬を使用して調べる必要がある(硫酸アトロピンなど)
②それを元に遠視を矯正する
③遠見眼位が
(1)正位または内斜位であれば
治療:純調節性内斜視であり眼鏡矯正となる
(2)一部改善するが一部内斜視が残る場合では
治療:部分調節性内斜視であり眼鏡矯正と斜視手術となる
ここで改めて
┏ +の矯正レンズは遠視の矯正
┃
┗ -の矯正レンズは近視の矯正
である
・遠視矯正の場合は、最高視力が出る最も強いレンズの度数を用いる
・近視矯正の場合は、最高視力が出る最も弱いレンズの度数を用いる
リンク先
散瞳薬のアトロピンについて
アトロピンとは、副交感神経を麻痺させる散瞳薬である
その薬理作用から抗コリン薬といわれる
散瞳させることで、虹彩を安静にし、血管拡張を抑え、充血の緩和、短期使用であれば虹彩の癒着予防効果もある
副作用には、血圧上昇、心悸亢進、悪心・嘔吐、口渇、便秘、稀に幻覚、痙攣、興奮、頭痛、発熱なども挙げられる
(これらはいわゆる「抗コリン作用」からくるもの)
また、長期で散瞳させることで虹彩が癒着することがあると報告されており、注意が必要である
特に幼児においては副作用発現しやすいことから、点眼では涙嚢を圧迫させて局所吸収をさせるのがよい
→これによって、なるべく鼻粘膜から全身性に吸収することをある程度は防ぐことができる
強度遠視の治療について
強度遠視では、弱視や内斜視のリスクが高いことから、適切な矯正眼鏡を装用することが必要である
非調節性内斜視の治療について
非調節性内斜視では、手術療法の適応になるが、まずは、機能が残っている部分は残したいため
まずは、遠視の矯正眼鏡を装用して矯正した上で、残存している斜視に対して治療を行うこと。
手術内容は、両眼内直筋後転手術など
これは先ほど述べてある、部分調節性内斜視に対しても行うこともある。
乱視について
乱視とは、眼の屈折異常の一つである。
乱視では、弱視になる可能性がある。(内斜視は関係しない)
<参考文献>
メディックメディア Question Bank vol.5 眼科
ビジュアルブック 眼科疾患
(注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
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