そもそもジェネリック医薬品とは何ですか?
まず初めに
最初に開発された医薬品を先発医薬品といいます。
この先発医薬品は基本的に、20年経つことで特許が切れます。
それによって
先発医薬品と同じ効能効果の有効成分を他の会社でも作ることが可能になります。
その開発された医薬品を後発医薬品(ジェネリック医薬品)といいます。
このジェネリック医薬品というのは実は、有効成分が同一であり、生物学的同等性※が得られれば国から認可して販売することができます。
そして、今では添加物や製造工程まで同じであることを保証するオーソライズドジェネリック(AG)というものが出てきました。
これからそのAGについて解説していきたいと思います。
尚、最後には表にまとめたものがありますので、併せて参照ください。 → こちらから
また、昔の記事で「ジェネリック医薬品とは何ですか?質が悪いのですか?」といったことも一般向けに書いてありますので、読んでみてください。↓
また、実際にオーソライズドジェネリック(AG)にはどういったものがあるのかを知りたい方はこちらのページを参照してください
薬局でジェネリック医薬品に変更するのは何故ですか?
2021年現在において、処方箋には医薬品を処方する際
「一般名処方」という医薬品の商品名ではなく「成分名」で記載するというのが全国で7〜8割ほど実施されています。
もし、「商品名」で記載されているのであれば、基本はその商品名(銘柄)の医薬品を用意します。
または、患者の同意があればジェネリック医薬品に変更ができるという薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)のルールがあります。
それが今では、患者の同意は必要ではありますが
より調剤を簡便にして国の方針に則ってジェネリック医薬品の変更をしやすいよう
商品名(銘柄)の指定ではなく「一般名処方」で処方箋に書かれてきます。
こうすることで、薬局側では「一般名処方」の成分の医薬品であればどのメーカーを使っても良いということになります。
文章だけだと分かりにくいため、以下に例を挙げてみます。
ジェネリック医薬品への変更ルールについて
高血圧症治療薬のアムロジピンを例に挙げます。
高血圧の治療をするためには、今までは処方箋に
①ノルバスク錠®︎5mg(ファイザー製薬) 1日1回 朝食後 7日分
②アムロジン錠®︎5mg(大日本住友製薬) 1日1回 朝食後 7日分
などのように書かれてきてました。(今でもそれなりにありますが、、)
(※上記の二つはおなじ成分アムロジピンです。)
この処方箋を受け取った薬局は、いくつか調剤方法があります。
①の例
書かれた通り、ノルバスク錠5mg®︎で調剤する
自分の薬局にある、採用しているメーカー※のアムロジピン錠5mgで調剤する
この2択になります。
※この、自分の薬局にある採用メーカーというのは、アムロジピンに関しては30社以上もあるため、もらう薬局の場所、地域によっては全く違ったメーカー、手に入らないメーカーがあります。
同じように②の例では
書かれた通り、アムロジン®︎錠5mgで調剤する
自分の薬局にある、採用しているメーカー※のアムロジピン錠5mgで調剤する
となります。
このとき、注意が必要なのは先発医薬品から先発医薬品に変更することはできないということです。
その前に
「なんで最初に開発する薬を先発医薬品というのに、2つの会社がどちらも先発医薬品なの?」
と思うかもしれません。
これは割とあることなのですが、「一物二名称」または「共同販売」といわれています。
併売にすれば、2つとも最初に開発した薬として、薬価(薬の値段)が高い状態を保って特許を持つことができるため、メーカーはこぞって新薬を出したい、というのがあることが背景にあります。
そして、薬機法のルール上は先発医薬品から後発医薬品への変更はできるけど、先発医薬品から先発医薬品への変更は不可としています。
これはジェネリック医薬品に変更することで薬価(薬の値段)がおよそ半分にできます。
これによって、国の圧迫している医療費を削減しようという意図があるためです。
この他に、併売ではなく1つの医薬品を二社でプロモーションをする「コ・プロモーション」というものもあります。
ここではその詳細については割愛させていただきますが
同じ薬でもメーカーや販売の関係で色んな形態があるということは覚えていただければと思います。
例えば、自動車メーカーの共同販売といえば、スポーツカーのFT86というトヨタの車はありますが、スバルからはBRZという名称で販売されていますね?(実際に違うところもあるかと思いますが、、)
このページの最後には、オーソライズドジェネリックとジェネリック医薬品の違いについて
表にまとめたものがありますので、併せて参照ください。 → こちらから
<参考>
・ジェネリック医薬品メーカーの種類:http://www.japic.or.jp/di/list_01.html/43/20(2021.11.6)
・ジェネリック医薬品の変更ルールについて(日医工):https://stu-ge.nichiiko.co.jp/store/mpi_documents/file/d0ec6256e15114a8a7aad8e4febeab17.pdf(2021.11.6)
・併売とコ・プロモーションについての解説:https://mr-restru-tensyoku.com/archives/1531(閲覧:2021.11.6)
オーソライズドジェネリックとは何ですか?
さて、ここから本題になりますがオーソライズドジェネリック(AG)について解説していきたいと思います。
まず、AGが出てきた背景ですが
ジェネリック医薬品は、国に認可される許容範囲があり、先発医薬品と有効成分が同じであれば
薬を作る時に使用する添加物や原薬、製法、製造工場、製造技術といったところが違っていたとしても
同じ薬として販売することができるというルールがあります。
もちろん、ほとんどのジェネリックメーカー、特に大手のジェネリックメーカーであればしっかりとした工程で質を担保した医薬品を作って数十年も供給してきました。
しかし、添加物が違うことで薬の溶ける速度が若干違っていたり、その添加物にアレルギーを持っている方が飲めば赤いポツポツなどの蕁麻疹が出る方も中にはいます。
(※しかし、これは先発医薬品であってもアレルギー症状を起こすことはあるため、ジェネリック医薬品が悪いと言っているわけではありません。)
そのことから、許容範囲として
先発医薬品と比べて、80%から125%の範囲で薬物動態の挙動がおさまっていればよいという基準があります
詳細は先にも述べた ↓ に詳細をまとめてあります
これが原因で一定の効果が得られないということや、ジェネリック医薬品が悪いと一概には言えないのですが、飲む側としては少し気になってしまいますね。
基準は割と緩いように思いますが、そこまで挙動がずれている医薬品というのはほとんどないといえるので、安心して良いかと思います。
(病院や薬局でもどのメーカーがいいかなどの選定はしっかり行っています)
むしろ、生活習慣病が原因であればお薬だけに頼るのではなく、生活習慣を正すという方が効果は得やすいことになります。
とはいえ、そういったこともあり
有効成分だけではなく、原薬から添加物、製法、製造工場、製造技術が全く同一であれば、先発医薬品と同じといえるお薬が出てきました
これをオーソライズドジェネリックといいます。
先発医薬品を販売しているメーカーが、自社で同じ薬をジェネリック医薬品として販売して
オーソライズドジェネリックと名乗って販売しているため
一般的に言わているジェネリック医薬品よりは、同じ薬だと自信を持っていえるお薬になります。
では「何でわざわざ自社でジェネリックを出すのか?」と思うかもしれません
それは、次の項目で解説したいと思います。
このページの最後には、オーソライズドジェネリックとジェネリック医薬品の違いについて
表にまとめたものがありますので、併せて参照ください。 → こちらから
オーソライズドジェネリックを販売するメリットとは?
先ほども述べた通り、先発医薬品と同じ有効成分だけではなく
作り方まで同じにしたものをオーソライズドジェネリックといいます。
それをすることで、せっかく自社の先発医薬品は薬価が高く売れているのに
あえて、オーソライズドジェネリック(広義ではジェネリック医薬品)という薬価の安い薬を自社から出して販売しているのにはもちろん理由があります。
単純にいえば「自社製品をずっと使っていて欲しいから」です。
先発医薬品のメーカーは多くの資金を使って一つの薬を開発します。
そしてようやく販売できたら、20年の特許を得て、その開発費以上の利益を上げないと赤字になります。
20年経てば特許が切れる時には、先発医薬品と同じ効果の薬が安い値段で売られていくようになります。
そうなると自然に安くて効果の同じ薬に飛び付きますよね?
それを減らすためにも、自社でジェネリック医薬品をオーソライズドジェネリックとして販売することで
薬価は先発医薬品の時よりは安くなってしまいますが、引き続き、自社の薬を使ってくれることとなります。
更には、国の医療費削減にも貢献できます。
つまり、これは先発医薬品メーカーも国側も是非進めていきたいと思う政策ですね。
また、患者側で考えても、今までとほぼほぼ同じ薬なのに薬代を安く済ませられるようになるため
オーソライズドジェネリックに変えていった方がお得です。
そういう販売方法が出てきたことから、今後もジェネリック医薬品メーカーに勝つためにも
先発医薬品のメーカーはオーソライズドジェネリック(AG)を出していくことになるのではないでしょうか?
これからはAGでの調剤が進んでいくかもしれませんね。
最後に、ジェネリック医薬品とオーソライズドジェネリックの分かりやすい違いについて
表にまとめておきますので、参考にしてみてください。
オーソライズドジェネリックとジェネリック医薬品の違いについて
実は、オーソライズドジェネリックにもランクがあります。
表の通り、AG1、AG2、AG3となっており、元々あるジェネリック医薬品に近い定義のものほど、数字は上がっていってます。
2021年現在、販売されているオーソライズドジェネリックというのはそんなに多くは存在していなく、まだ変更できるものは少ないです。
そして、個人で調べてもAGランクがはっきりと確認できるものがなかったりしますが、今の所ランクは番高いAG1が多いとされています。
その定義と違いについてみて終わりにしたいと思います
先発医薬品と比較した時 | AG1 | AG2 | AG3 | 一般的なジェネリック医薬品 |
---|---|---|---|---|
有効成分 | 同一 | 同一 | 同一 | 同一 |
原薬 | 同一 | 同一 | 異なる | 異なることがある |
添加物 | 同一 | 同一 | 同一 | 異なることがある |
製法 | 同一 | 同一 | 同一 | 異なることがある |
製造工場 | 同一 | 異なる | 異なる | 異なることがある |
製造技術 | 同一 | 異なる | 異なる | 異なることがある |
AG1:先発医薬品の原薬、製法、製造ラインを使って製造・販売しているもの
AG2:先発医薬品と同じ原薬、製法を用いることを許諾得て、自社の工場(先発医薬品とは違う場所)で製造・販売しているもの
AG3:有効成分は同じだが、異なる原薬を用いて、許諾を得て、自社工場で製造・販売しているもの
<参考資料>
・ヴィアトリス製薬株式会社
・監修:武藤正樹先生 社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役 よこすか地域包括ケア推進センター長 日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会 代表理事