今回は薬についてではありませんが、大事な内容となります
薬を扱う仕事をするうえで必須の内容です
法文ですので、堅苦しい表現は多いですが慣れていけるようにしていきましょう
薬機法とは
かつては薬事法と言われていた法律がありますが、現在は薬機法(やっきほう)という名称となっています(2022年現在)
薬機法というのも略称であり、正式には
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」
となっています
ここでは、法文の内容をまず読んでみて、どういった意味なのかを解説していきたいと思います
薬機法の目的について
<目的:法第1条>
この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保険衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保険衛生の向上を図ることを目的とする。
→まず初めに、薬機法は医薬品や医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品(個人や少数の患者に特化して作られる製品)をひっくるめて「医薬品等」と今後表現されます
この医薬品等の品質であったり、効果や安全性を一定の水準で保証できるようにするため、厳しい試験法を設けて、それに合格した成分、製品だけが流通するようになっています
これは、保険衛生(病気の予防や健康の保持増進)の向上を目的としています
またこれら医薬品等を使用することで、保険衛生上、副作用や適正な使用がなされないことで起きる危害などを防止するために、薬剤師や登録販売者などの有資格者が法の規制のもとで管理、販売などをしていくことが必要とされています
そして、指定薬物(中枢神経系を興奮または抑制や幻覚作用などがある薬物)は保健衛生(人の健康)を害するため、これも規制する対象となります
指定薬物以外であっても、医療上で特に必要性が高い医薬品や医療機器、再生医療等製品の研究開発を促進するためにも、適正に管理されるように法で規制することで保証できるようにしています
医薬品等関連事業者等の責務について
<法第1条の4>
医薬品等の製造販売、製造(小分けを含む。以下同じ。)、販売、貸与若しくは修理を業として行う者、第4条第1項の許可を受けた者(以下「薬局開設者」という。)又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設(略)の開設者は、その相互間の情報交換を行うことその他の必要な措置を講ずることにより、医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保険衛生上の危害の発生及び拡大の防止に努めなければならない。
→医薬品等を製造して販売する業者(製造販売業者)や製造だけをする業者(製造業者)、薬局間のお薬の小包装販売(小分け)、販売(販売業者:薬局など)や貸出、修理などを行う業者、第4条第1項の許可を受けた者(薬局を開設する許可を受けた者(社長))や病院、診療所、飼育動物診療施設などの開設者に至るまで
お互いに適正な医療を受ける患者のためにも、医薬品などの適正な情報の交換を行い、適正に医薬品の使用をして、医薬品等の品質や有効性、安全性を確保し、副作用や適正な使用がなされない時の危害が起きないよう、製造販売業者、製造業者、薬局などの販売業者、医療機関らはこの防止に努めていかなければならない
努めなければならない:努力義務ということ。(努力義務規定)
「〜しなければならない。」という表現では、義務規定であり、必ず(100%)しなければならないと違法となるが、「努めなければならない」では、できるだけ努力をするようにということになる
そのため、法的拘束力はなく、できなくても罰則はないとされる(損害賠償が発生する場合もある)
医薬関係者の責務について
<法第1条の5>
医師、歯科医師、薬剤師、獣医師その他の医薬関係者は、医薬品等の有効性及び安全性その他これらの適正な使用に関する知識と理解を深めるとともに、これらの使用の対象者(動物への使用にあつては〜(略))及びこれらを購入し、又は譲り受けようとする者に対し、これらの適正な使用に関する事項に関する正確かつ適切な情報の提供に努めなければならない。
→医薬関係者は、医薬品等を有効で安全に使用されるためにも、適正な医療を受ける患者のためにも、それぞれの専門性を発揮して専門知識などを含めて情報の交換を行い、これら医薬品等を使用する人(動物など)は適正な使用法についてはその専門家から正確で適切な情報を受けられるように努力する必要がある
そのためにも、最新の医療情報などは常にアップデートしていく必要があり、生涯学習に努めることが必要です
国民の役割について
<法第1条の6>
国民は、医薬品等を適正に使用するとともに、これらの有効性及び安全性に関する知識と理解を深めるよう努めなければならない。
→医療関係者だけではなく、国民全員が医薬品等を使用する場合は、有効性や安全性についてしっかり知識を得て理解するよう努力することが必要と法文で定められています
そのためにも、薬剤師や登録販売者ならば薬に関する正しい知識は使用する患者へ適切に情報提供することが重要となります
これらの法文からは、医薬品等の使用においては、適正に使用して、安全かつ有効性のある医薬品を提供したいという思いから決められた法律だと伺えますね
<参考>
厚生労働省:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=81004000&dataType=0&pageNo=1(閲覧:2022.09.02)
医薬品の分類・取り扱いについて
次は医薬品とは何かを法的な面で確認していきます
医薬品とは
<法第2条第1項>
一 日本薬局方に収められている物
二 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等(機械器具、歯科材料、医療用品、衛生用品並びにプログラム等[電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。])及びこれを記録した記録媒体をいう。以下同じ)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)
三 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの(医薬部外品及び化粧品を除く。)
→医薬品とは、日本薬局方に収載されているものを医薬品といいます。そのため、精製水や白糖なども医薬品ということになります。
そして、医薬品とは、人や動物の病気の診断のため、治療のため、予防のために使用されるものであって、機械器具等でないものをいいます。
この二(第2号)では、人の体に直接使用されない医薬品である検査薬や殺虫剤、器具用消毒薬なども含まれています
三(第3号)においては、無承認で無許可の医薬品も含まれており、「医薬品」の定義として表現で用いられやすくするためにも、幅広く対象としています
日本薬局方とは
先ほど、日本薬局方という言葉が出てきましたが、これはどういったものでしょうか
ここから定義されていますので確認していきます
<日本薬局方とは>
厚生労働大臣が医薬品の性状及び品質の適正を図るため、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、保険医療上重要な医薬品(有効性及び安全性に優れ、医療上の必要性が高く、国内外で広く使用されているもの)について、必要な規格・基準及び標準的試験法等を定めたもの
→日本薬局方に収載される医薬品というのは厚生労働大臣が定めています。
もちろん、厚生労働大臣は医療の専門家ではないこともあるため、その判断のために厚生労働省の諮問機関の一つである、薬事・食品衛生審議会という、研究者や医師、薬剤師などの専門家で構成されている機関の話を聴いて、保険医療※で使用される重要な医薬品を規格だったり、様々な試験法まで定めてあります
※ 保険医療:日本では、国民全員が業種ごとに分類されて決められている保険にそれぞれ加入しているが、それを使用して、一定の支払い(1〜3割負担など)だけで、決められた診断や治療方針、薬物療法に則って治療を受けることができるという仕組みが保険医療制度となっている
医薬品の製造と製造販売について
<医薬品の製造と製造販売について>
医薬品は、厚生労働大臣により「製造業」の許可を受けた者でなければ製造してはならない。
医薬品は、厚生労働大臣により「製造販売業」の許可を受けた者でなければ製造販売をしてはならない。
製造販売業というのは、製造や輸入した医薬品を、薬局開設者、医薬品の販売業者等(薬局、ドラッグストアなど)に対して販売等を行うもので、製造と販売の療法を行う業者です(自社で作って、販売も行う会社)
製造というのは、他に委託して製造をする場合を含んでおり、他から委託されて製造する場合は該当しません
つまり、販売する会社が他の会社(製造をする会社)にお願いをして医薬品を作ってもらい、販売は自分で行うという会社のこと
不良医薬品について
ここで、不良医薬品に該当するものは販売、製造等してはならないと定められています
(これは、製造販売業、製造業だけではなく、薬局などの販売業にも適用されています)
どういったものが不良医薬品に該当するのかみていきましょう
<不良医薬品に該当する場合とは>
(1)日本薬局方に収められている医薬品であって、その性状、品質が日本薬局方で定める基準に適合しないもの
(2)承認を受けた医薬品であって、その成分、分量、性状、品質、性能が、その承認内容と異なるもの
(3)厚生労働大臣が基準を定めて指定した医薬品であって、成分、分量、性状、品質、性能が基準に適合しないもの
(4)厚生労働大臣が定めた基準に適合しないもの
(5)その全部又は一部が不潔な物質、変質した物質、変敗した物質から成っているもの
(6)異物が混入したり、付着したりしているもの
(7)病原微生物その他疾病の原因となるものに汚染されているもの、又は汚染のおそれがあるもの
(8)着色のみを目的として厚生労働省令で定めるタール色素以外のタール色素を使用しているもの
一般用医薬品、医療用医薬品とは
次に登録販売者が一番関わるような内容となりますが、一般用医薬品(OTC)とは何かについてみていきます
<一般用医薬品とは>
医薬品のうち、その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないものであって、薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされているもの(要指導医薬品を除く)
→医薬品には医療用医薬品と一般用医薬品がありますが、医療用医薬品では作用が強いものが多いですね。一方で、一般用医薬品は医療用ほど作用は強くないように規定されています
それは、医療用ではしっかり診断を受けて、処方箋をもらって特定の疾患をもち、決まった人だけが使用することを目的としていますが、一般用医薬品は診断はされず、症状で自己判断により一般の人でも手軽に買って手にすることができるというものとなっています
そのため、医療の専門家でなくてもある程度判断できて、副作用が起きにくいように設計する必要があります
そういったことから、一般用医薬品は作用が著しくないものと決められています
<医療用医薬品とは>
医師・歯科医師によってしようされるもの、又はこれらの者の処方箋や指示によって使用されることを目的として供給されるもの
要指導医薬品とは
<要指導医薬品とは>
一般用医薬品とは異なる「医療用に準じたカテゴリーの医薬品」であり、いわゆるスイッチ直後品目等が該当し、法第4条第5項第4号の厚生労働省令で定める期間※を超えないものや毒薬及び劇薬のうち、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するもの
→要指導医薬品も効能及び効果は人体に対する作用が著しくないものであって、薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択で使用されることが目的とされるものであり、かつ、その適正な使用のために薬剤師の対面による情報の提供及び薬学的知見に基づく指導が行われることが必要なものとして、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するもの
となっています
※ 期間:スイッチOTCでは安全性に関する調査期間は販売から原則3年、ダイレクトOTCでは再審査期間があり原則8年となる
スイッチOTC:元々医療用の成分だったものが段階的に規制が緩くなり、要指導医薬品から第1類医薬品などにスイッチしていくOTCのこと
ダイレクトOTC:元々医療用の成分だったものが直接第1類医薬品や第2類医薬品などになって販売されるOTCのこと
より、安全性が確保されているものほどダイレクトにOTC化できます
<参考>
厚生労働省-資料
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000044500.pdf(閲覧:2022.09.02)
医療用医薬品と要指導医薬品、一般用医薬品について
医薬品が販売できる場所、できない場所があります
この規制の違いについてまとめたものが以下の通りとなります
分類 | 薬局 | 店舗販売業 (ドラッグストアなど) | 配置販売業※1 | 卸売販売業※2 |
---|---|---|---|---|
医療用医薬品 | 販売可 | 販売不可 | 販売不可 | 販売可※4 |
要指導医薬品 | 販売可 | 販売可 | 販売不可 | 販売可※5 |
一般用医薬品 | 販売可 | 販売可 | 販売可※3 | 販売可 |
※1 配置販売業:店舗を持たずに、一般家庭等を訪問して一般用医薬品を販売する医薬品販売業のこと
薬剤師または登録販売者が配置を行うこととされており、配置できるのは一般用医薬品の中でも限られたものとされている
その場での販売はできず、使用した分だけ支払うという後払いとなっている
※2 卸売販売業:業として一般の生活者に対して直接医薬品の販売等を行うことができないこととなっている
※3 配置販売業における一般用医薬品の販売:ただし、経年変化が起こりにくいなど、厚生労働大臣の定める基準に適合するものに限る
※4 卸売販売業における医療用医薬品:ただし、店舗販売業者に、要指導医薬品及び一般用医薬品以外の医薬品を販売等してはならない
→病院、診療所、薬局などであればお薬を販売(卸す)ことができる
※5 卸売販売業における要指導医薬品:ただし、配置販売業者に、一般用医薬品以外の医薬品を販売等してはならない
今回はここまでとなります
次回も引き続き、法律面について学んでいきましょう
お疲れ様でした!