前回に引き続き、一般用医薬品(OTC)の成分について学んでいきましょう
今回は毛髪、目、鼻、歯といった各部位ごとに使われる成分になります
毛髪用薬の成分について
毛髪用薬とは、脱毛防止、育毛、フケや痒みを抑えることなどを目的として頭皮に使用される医薬品をいいます
それではさっそく成分についてみてみましょう
成分 | 薬理作用 | 内容 |
---|---|---|
カルプロニウム塩化物 | 末梢組織でアセチルコリン類似の作用(コリン作用)を示して、頭皮の血管を拡張したり、毛根への血行を促進することで発毛効果を期待して用いられる成分である | 副作用はやはり、抗コリン作用によるもので、局所または全身性の発汗、それに伴う寒気、震え、吐き気などが挙げられる |
エストラジオール安息香酸エステル | 脱毛は男性ホルモンの働きが過剰であることも一因であり、女性ホルモンによる脱毛抑制効果を期待し用いられる | 頭皮から吸収されて循環血液中に入る可能性があるため、妊婦または妊娠している可能性のある女性では使用は避けること |
カシュウ | 頭皮における脂質代謝を高めることで余分な皮脂を取り除く作用 | タデ科のツルドクダミの塊根を基原とする生薬 |
チクセツニンジン | 血行促進、抗炎症などの作用を期待して用いられる | ウコギ科のトチバニンジンの根茎を基原とする生薬 |
ヒノキチオール | 抗菌、血行促進、抗炎症などの作用を期待して用いられる | ヒノキ科のヒバ、タイワンヒノキなどから得られた精油成分 |
目に用いる成分について
目に用いる薬は目薬、つまり、点眼薬ということになりますが
まずは、この点眼薬の種類と特徴について確認していきます
点眼薬について
点眼薬は、1滴がおよそ50μLであり、結膜嚢はおよそ30μLのため、1滴を点眼するだけで十分量ということになります
そのため、点眼している気がしないからと2滴も使う必要はありません(こぼれてしまうことでしょう)
そして、点眼後はまばたきをするのではなく、まぶたを数秒間閉じることも必要です
ここで、目頭を押さえることは、薬液が鼻腔内に流れ込んでしまうのを防いでくれるため、尚良いといえます
薬液が目だけでなく、鼻腔内を通ることで肝初回通過効果を経ない経路で吸収されるため、全身性の副作用(かゆみ、発疹、発赤など)を起こすことも考えられます
点眼薬は防腐剤が入っていることが多いため、基本はコンタクトレンズをしたままの点眼はしないこととなります
→添付文書にコンタクトレンズをしたままでも使用可能の記載があれば良い
目の痛みが強い時は緑内障発作のこともあるため、病院への受診勧奨をしましょう
ここで、眼科用薬の種類について見てみます
人工類液 | 涙液成分を補う製剤であり、目の渇き(ドライアイ)やコンタクトレンズ装着時の不快感に用いられる |
一般用点眼薬 | 目の疲れ、痒み、結膜充血などの症状を抑える成分が配合されている |
抗菌性点眼薬 | 抗菌成分が配合されている製剤で、結膜炎やものもらい、まぶたのただれなどに用いられる |
アレルギー用点眼薬 | 抗ヒスタミン成分、抗アレルギー成分が配合されており、目のアレルギー症状に用いられる |
洗眼薬 | 目の洗浄、眼病予防に用いられる |
次は眼科用薬に用いられる成分についてまとめてあります
薬効分類 | 成分 | 内容 |
---|---|---|
調節機能改善成分 | ネオスチグミンメチル硫酸塩 | アセチルコリンを分解するコリンエステラーぜの阻害により、毛様体でのアセチルコリン作用を助け、目の疲れ、かすみ症状を改善する |
アドレナリン作動成分 | ・ナファゾリン塩酸塩 ・エフェドリン塩酸塩 ・テトラヒドロゾリン塩酸塩 など | ・結膜を通っている血管を収縮させ、充血を取り除く ・眼圧の上昇や症状悪化のリスクがあることから、緑内障の人への使用は避けること ・過剰な使用では、異常なまぶしさや充血が悪化するおそれがあるため注意が必要 |
抗炎症成分 | ・グリチルリチン酸二カリウム ・ベルベリン硫酸塩 ・プラノプロフェン ・イプシロン-アミノカプロン酸 | ・グリチルリチン酸二カリウム:ステロイド性抗炎症成分に類似した働きをする(構造が似ている) ・ベルベリン硫酸塩:抗炎症作用のほか、抗菌作用もある ・プラノプロフェン:炎症に関わるプロスタグランジンなどの物質の生成を抑える ・イプシロン-アミノカプロン酸:炎症物質の生成を抑制する作用 |
組織修復成分 | ・アズレンスルホン酸ナトリウム ・アラントイン | 炎症を生じた眼粘膜の組織修復を促す作用あり |
収斂成分 | 硫酸亜鉛水和物 | 眼粘膜のタンパク質と結合して皮膜を形成し、外部の刺激から目を保護する作用 |
保湿成分 | コンドロイチン硫酸ナトリウム | 粘膜や角膜の乾燥を防ぐ作用 |
抗ヒスタミン成分 | ・ジフェンヒドラミン塩酸塩 ・クロルフェニラミンマレイン酸塩 ・ケトチフェン など | ・ヒスタミンの働きを抑えることで、目の痒みを和らげる作用 ・点鼻薬との併用により、眠気が現れることがある |
抗アレルギー成分 | クロモグリク酸ナトリウム | ヒスタミンの遊離を抑え、アレルギー症状を緩和する作用 |
サルファ剤 | スルファメトキサゾール | ・抗菌作用があり、結膜炎やものもらいなどを改善する →ただし、ウイルスや真菌感染症では無効 |
無機塩類 | ・塩化ナトリウム ・塩化カリウム ・塩化カルシウム など | 涙液の成分を補う (涙液の電解質の主成分:ナトリウム、カリウムなど) |
アミノ酸 | ・タウリン(アミノエチルスルホン酸) ・アスパラギン酸 | 新陳代謝を促し、目の疲れを改善する |
その他 | ヒアルロン酸ナトリウム | 添加物として用いられる(粘稠(ねんちゅう)化剤) これは、コンドロイチン硫酸ナトリウムと結合することで粘稠性が高まる |
成分 | 内容 |
---|---|
ビタミンA (レチノール) | 視力調整等の反応を改善する作用 |
ビタミンB2 (フラビンアデニンヌクレオチド) | 新陳代謝改善 |
ビタミンB5 (パンテノール) | 調節機能の回復を助ける作用 |
ビタミンB6 (ピリドキシン) | 疲れ目の改善 |
ビタミンB12 (シアノコバラミン) | 調節機能の回復を助ける作用 |
ビタミンE (トコフェロール) | 微小循環を促進し、結膜充血や疲れ目の改善 |
鼻に用いる薬について
鼻に用いられる薬には、鼻炎用点鼻薬があります
鼻炎用点鼻薬とは、急性鼻炎、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎による鼻詰まり、くしゃみ、鼻水、頭重感の改善をするもの
となります
これは、蓄膿症(慢性副鼻腔炎)のように慢性的な疾患への使用は対象となっていません
鼻炎用点鼻薬について
鼻炎用点鼻薬は使用する前には鼻をかんで通りを良くする必要があります
また、汚染を防ぐため、容器は直接鼻に触れないようにする必要があります
そして、他人との共用はしないようにしましょう
点鼻薬の剤形は、スプレーをする噴霧式が多くあります
鼻炎用点鼻薬に用いられる成分について
薬効分類 | 成分 | 内容 |
---|---|---|
アドレナリン作動成分 | ・ナファゾリン塩酸塩 ・フェニレフリン塩酸塩 ・テトラヒドロゾリン塩酸塩 など | ・鼻粘膜を通っている血管を収縮し、充血や腫れを改善する ・過度の使用は二次充血し、逆に鼻詰まりが悪化する |
抗ヒスタミン成分 | ・クロルフェニラミンマレイン酸塩 ・ケトチフェン など | ヒスタミン作用を抑えることで、くしゃみ、鼻水症状を抑える |
抗アレルギー成分 | クロモグリク酸ナトリウム | ・肥満細胞からのヒスタミン遊離を抑えることで、アレルギー症状を緩和する ・減感作療法※の妨げとなることがあるため、この場合は使用は避けること |
局所麻酔成分 | リドカイン | 鼻粘膜の過敏性、痛み、痒みを抑える |
殺菌消毒成分 | ・ベンザルコニウム塩化物 ・ベンゼトニウム塩化物 ・セチルピリジニウム塩化物 | ・鼻粘膜を清潔に保つ成分であり、細菌による二次感染を防ぐ ・黄色ブドウ球菌や溶血性連鎖球菌、カンジダ等の真菌類に効果あり ・結核菌やウイルスには効果はない |
抗炎症成分 | グリチルリチン酸 | ステロイド性抗炎症成分に類似した働きをする(構造が似ている) |
※ 減感作療法:アレルギーの根治療法であり、舌下に液剤や錠剤を置き、徐々に免疫反応を鈍くする舌下免疫療法、皮下注射による皮下免疫療法がある
アレルギーのある物質(アレルゲン)を少量ずつ摂取することでアレルギー症状を減らしていく治療法であり、数年かかる治療法であるが、根治できる方法である
ここで、抗アレルギー薬などを使用すると、アレルギー症状の減感作がうまく働かなくなってしまうため、服用は避ける必要がある
歯や口中に用いられる成分について
歯や口中に用いられる薬には、歯痛や歯槽膿漏、口内炎、舌炎といった症状に用いられるものがあります
OTC医薬品に用いられる成分というのは限られていますので、成分に関しては、やはり今まで学んできた内容とかぶる成分になります
まずは歯痛に対する薬についてみていきます
歯痛に用いられる成分について
歯痛は、虫歯によるもの(う蝕)とそれに伴う歯髄炎によりみられることが多いとされます
「歯痛薬は歯のう蝕による歯痛を鎮めることを目的としたもの」です
そのため、歯痛薬を使ったとしても歯のう蝕自体を修復されるわけではないため、治療のためには歯科受診が必要です
そこで、歯科受診の必要性については説明できるようにしておきましょう
薬効分類 | 成分 | 内容 |
---|---|---|
局所麻酔成分 | ・アミノ安息香酸エチル ・ジブカイン塩酸塩 ・テーカイン など | う蝕によって露出した歯髄を通っている知覚神経の伝達を遮断して痛みを和らげる作用 |
殺菌消毒成分 | ・木(もく)クレオソート ・オイゲノール ・セチルピリジニウム塩化物 など | う蝕を生じた部分の細菌繁殖を抑える 木クレオソート:局所麻酔作用もあり |
生薬成分 | サンシシ(山梔子) | 抗炎症作用あり |
その他 | ・メントール ・カンフル ・ハッカ油 など | 冷感刺激作用のある成分は、知覚神経を麻痺させることで、鎮痛や鎮痒作用を期待して用いられることがある |
歯槽膿漏に用いられる成分について(外用)
歯槽膿漏(歯周炎)とは、歯肉炎が重症化し、炎症が歯周組織全体に広がったものをいう
この、歯肉炎は歯と歯肉の境目にある溝(歯肉溝:しにくこう)で細菌が繁殖しやすく、歯肉に炎症を起こすことがある
これによって、悪化して歯槽膿漏へと至ります
薬効分類 | 成分 | 内容 |
---|---|---|
抗炎症成分 | ・グリチルリチン酸二カリウム ・グリチルレチン酸 ・ステロイド性成分 など | ・グリチルリチン酸二カリウム、グリチルレチン酸:歯周組織の炎症を和らげる作用 ・ステロイド性成分:口腔内に用いる場合は、含有量に関わらず長期連用は避けること →全身性に免疫低下などを招き、カンジダ症などのリスクがあがる |
組織修復成分 | アラントイン | 炎症を起こした歯周組織の修復を促す作用 |
止血成分 | カルバゾクロム | 炎症を起こした歯周組織からの出血を抑える作用 |
殺菌消毒成分 | ・セチルピリジニウム塩化物 ・クロルヘキシジングルコン酸塩 ・イソプロピルメチルフェノール ・チモール など | ・歯肉溝で細菌増殖を抑える作用 ・クロルヘキシジングルコン酸塩:口腔内の使用で、まれに重篤な副作用としてショック(アナフィラキシー)がある |
〃 | ・ヒノキチオール ・チョウジ油 | 抗炎症作用も期待し用いられる |
生薬成分 | カミツレ | ・抗炎症作用 ・抗菌作用 |
次は歯槽膿漏に用いられる内服薬についてです
分類 | 成分 | 内容 |
---|---|---|
ビタミン成分 | ・ビタミンC (アスコルビン酸) ・ビタミンE | ・コラーゲン代謝を改善し、炎症を起こした歯周組織の修復を助ける作用 ・毛細血管を強化し、炎症による腫れや出血を抑える作用 ・ビタミンE:歯周組織の血行改善 |
組織修復成分 | 銅クロロフィリンナトリウム | ・炎症を起こした歯周組織の修復を促す作用 ・歯肉炎に伴う口臭を抑える |
止血成分 | ・フィトナジオン(ビタミンK1) ・カルバゾクロム | 炎症を起こした歯周組織からの出血を抑える作用 フィトナジオン:血液凝固能を正常に保つ働きがある |
この次は、口内炎や舌炎についてみていきます
これらは、舌や口腔粘膜に起きる炎症であり、痛みや口臭を伴います
そしてこの原因は様々であり、ストレス、睡眠不足、栄養の偏り、唾液分泌の低下、口腔内が不衛生、ウイルスや細菌感染、医薬品による副作用などがあります
長期で改善が見られない場合は、歯科受診をしましょう
まれではありますが、腫瘍やベーチェット病など重大な疾患の可能性もあります
分類 | 成分 | 内容 |
---|---|---|
抗炎症成分 | ・グリチルリチン酸二カリウム ・グリチルレチン酸 など | 口腔粘膜の炎症を和らげる作用 |
〃 | ステロイド性成分 | ・ステロイド性成分:口腔内に用いる場合は、含有量に関わらず長期連用は避けること →全身性に免疫低下などを招き、カンジダ症などのリスクがあがる |
〃 | アズレンスルホン酸ナトリウム (水溶性アズレン) | 口腔粘膜の組織修復 |
殺菌消毒成分 | ・セチルピリジニウム塩化物 ・クロルヘキシジン塩酸塩 ・アクリノール ・ポビドンヨード など | 細菌感染防止に用いられる |
生薬成分 | シコン(紫根) | 組織修復促進作用や抗菌作用あり |
今回はここまでとなります
今回も量は多かったですね
ただ、OTCにおいては使われる成分に限りがありますので、分野をまたいで成分が被っていることが多々あります
そのため、基本的な成分の薬効を理解することで他の部位への使用であっても応用がききます
ここで、何度も繰り返し出てきた成分についてはしっかり覚えていきましょう
それでは、次で主なOTC医薬品に使用される成分(漢方はほとんどまだ出てないですが)については終わりますので、最後までしっかり着いてこれるよう頑張りましょう、もう少しです
今回もお疲れ様でした!