ここでは、現場での実際の考え方についてまとめていきたいと思います。
一つの疾患からどのように臨床的に対応していくのかという考え方から学んでいただければと思います。
症例ごとなので、随時更新します。また、足りていない分野の偏りがあるかもしれませんがご了承ください。
(注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
そのため、これを全て把握しても人体については全て理解し、学べたということにはなりませんのでご注意ください。
医学は未知の部分も含め、既知の部分であってもかなりの量です。ここは忘れないようにしてご利用ください。)
術後の分類について
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手術後
┃
┣ 急性期:手術直後から2日目頃まで
┃
┣ 回復期:手術から3〜6日目頃まで
┃
┗ 安定期:手術から7日目〜1ヶ月頃まで
この期間ごとに起こりうる術後の合併症が異なるため、それぞれの術後合併症については各分野でしっかり学ぶ必要があります。
・胃癌術後の合併症について
手術前の食事制限について
・術前の絶食期間は3日以内とするべきである。
(手術前日のみの絶食や前々日からの食事制限が一般的)
・消化管手術(特に大腸)では、腸管内をきれいにするプレパレーションが必要である。
そして、術後は腸管運動が回復した頃を見計らって水分から徐々に経口摂取していく。
(術後2,3日後から開始)
・栄養摂取は基本は経口摂取だが、術前に通過障害がある場合は中心静脈栄養という方法をとる。
カロリーコントロールのため、脂肪乳剤やビタミン類の投与を行う。
開腹手術後の蠕動運動再開目安について
・胃:24時間ほど
・小腸:数時間から10時間ほど
・大腸:2、3日ほど
それまでは腸雑音は低下が認められるのは通常である。
消化管手術後の長期絶食による影響について
・腸管の働きは消化吸収である。
また、腸管免疫として経口的に体内に取り込まれる異物(病原菌やアレルゲンなど)に対する生体防御としての機能がある。
・腸管は絶食などで長期間機能していないことで腸粘膜は萎縮し、腸管内環境が変化して腸管免疫能が低下する。
・食事をすることで胆嚢は収縮し胆汁が十二指腸内に排泄されるが、
絶食が続くことで胆嚢の収縮が弱くなり、胆汁が胆嚢内に溜まりやすくなってしまう。
長期絶食時は輸液管理となるが、この輸液によって起こる合併症というのもある。
・輸液の過剰や不足、カテーテル感染、空気塞栓※などがある。
※空気塞栓:多量の空気が体静脈または右心系に入り、肺動脈系に移動することにより生じる。
これは、 肺の流出路が閉塞することで急速に致死的となりうる。
長期絶食に伴う合併症について
腸管粘膜の萎縮 |
消化機能の低下 |
腸管免疫能の低下(分泌型IgAの産生低下) |
bacterial translocation(バクテリアルトランスロケーション)※ |
肝内胆汁鬱滞 |
胆嚢炎や胆石症 |
膵液の減少 |
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※bacterial translocation:原因として様々あり、
・長期絶食時
・免疫抑制剤の投与
・腸管運動障害による腸管細菌の異常増殖
・熱傷時の粘膜上皮虚血の損傷
・放射線照射によるターンオーバー異常
などによって、直接的に腸内細菌や毒素が腸管上皮を通過し血中やリンパ組織中に移行することをいう。
手術侵襲を受けた状態について
・手術侵襲を受けると血管透過性が亢進する。
これによって、血管内のNaなどの体液が血管外に漏れることとなる。
この漏れた体液は細胞内や血管内ではない組織間に貯まるが、この場所のことをサードスペースという。
・手術後は循環血液量が減少する。
これは、手術によって出血や不感蒸泄(TEWF)※によっておきるものと、体液のサードスペースに移動することによって生じる。
※不感蒸泄:普段の生活によって自然に失われる水分のことであり、具体的には呼気中に含まれる水分と皮膚や気道粘膜から蒸発する水分を合わせたものとをいう。
別呼称では経表皮水分喪失や不感蒸散ともいう
術後管理の一例
緊急による、小腸切除術後など
・循環動態安定化のため、術後48時間ほどまでは乳酸リンゲル液の輸液や昇圧薬投与を行う。
・術後72時間ほどで高カロリー輸液の実施、経鼻胃管からの少量の経腸栄養剤を持続投与。
・1日あたり、皮膚から蒸散される水分量は500mL〜700mLであり、
呼気中では150mL〜450mLである。
・発熱により、体温が1℃上昇することで、不感蒸泄量は15%増えるといわれている。
・手術侵襲が大きいほどサードスペースの体液貯留量は増加する。
この体液は、術後数日もすればリンパ系を介して血管内に戻るものだが、回復期になるまでは戻らない。
このため、術後はサードスペースに移動する分の循環血液量を補う輸液管理が必要となる。
体内水分量の比率について
細胞内液:間質液:血漿 = 8:3:1
術後尿量について
術後の尿量は 1時間で 0.5mL × 体重(kg)を最低限維持することが必要である。これを時間尿量という。
ただし、バイタルサインによっては数値を満たしていても脱水傾向であることもあるので注意が必要。
1日の消化液の分泌量について
分泌液 | 分泌量 |
---|---|
唾液 | 1.5L |
胃液 | 1.5〜3L |
腸液 | 2〜4L |
胆汁 | 500mL |
膵液 | 700mL |
短腸症候群について
短腸症候群とは、Crohn病などで小腸を広範囲の切除(およそ50〜60%)したことで、消化吸収不良を起こす病態である。
成人では、十二指腸を除く残存小腸が150cm以下をいう。
手術後の短腸症候群では、低栄養リスクがあり、サルコペニア※の合併症も起こりうるため、こちらの予防にも気をつけたい。
※サルコペニア:加齢や身体機能障害等によって筋肉量が減少し
筋力や身体機能が低下している状態をいう。フレイルとは似ているが、定義が異なる。
ちなみに、フレイルとは、加齢に伴い身体の予備能力が低下し
健康障害(転倒など)を起こしやすくなった状態をいう。いわゆる虚弱をいう。
短腸症候群の症状は、頻回の下痢、脱水、電解質異常、VB12の低下などがある
対処法:経口栄養だと不十分であり経腸栄養を行う。
これでも不十分であれば中心静脈栄養となる。この際、長期実施となることから、感染リスクもある。
実施時には、「在宅における経腸栄養・中心静脈栄養療法」が保険適応としてある。
尚、経腸栄養や経口摂取で下痢症状が起こる場合は、腸が負荷に耐えられていない状態といえる。
しかし、長期絶食をすることは残存小腸の機能低下につながるため避けたいところである。
経腸栄養剤で下痢症状が呈する場合でも、すぐに中止の選択をするのではなく
まずは、経腸栄養剤の投与方法を再検討(微量の持続投与や少量の間欠投与など)や経腸栄養剤成分の種類変更を検討する。
発症因子は以下の通りである
長期絶食による消化管粘膜の萎縮 |
胃液分泌亢進 |
蠕動運動亢進 |
SIBO(小腸内細菌異常増殖症)※ |
※ SIBO(Small Intestinal Bacterial Overgrowth):様々な原因で小腸内の細菌が異常増殖することをいう。
症状は、腹部膨満感、腹痛、腹鳴、下痢、便秘などの消化器症状である。
経管栄養法について
ここで、先程の例もありますので、経管栄養法についてまとめていきたいと思います
経管栄養法とは、長期間の絶食状態において腸管壁のbacterial translocation(BT)※を防止するうえで重要な栄養法である。
このため、長期管理する点では中心静脈栄養法よりも優れている。
※bacterial translocation:腸内に生息する生菌が腸管上皮を通過して腸管以外の臓器に移行することをいう。
イメージとしては日和見感染に近いようだが、それとは別で、生理的に異常な状態である。
経管栄養法は、先ほどの短腸症候群や炎症性腸疾患(主にクローン病)、神経性および脳神経性接触不良状態に対して適応がある。
食道癌の周術期について
今回は 胸部中部進行食道癌根治切除術 についての例とします
・進行食道癌では経口摂取が難しいことから、診断時では既に栄養不良状態のことが多い。
また、癌の原因となっている過度の飲酒習慣も栄養不良の背景でもある。
・進行した食道癌は硬い狭窄となっており、蠕動運動も無く、食物は液状のものでないといけなくなる。
・術後の呼吸器合併症を予防するためにも、術前から口腔ケアは大事である。
これには、歯槽膿漏があるということは、常に膿を嚥下しているということであり、術後肺炎のリスクが高い。
そのため、術後肺炎を予防するために広範囲で抜歯をしなければいけないこともままある。
・様々な癌の手術後では経管栄養で投与することで手術侵襲を減らし、術後合併症を減らせる。
割と食道癌においても腸瘻を増設し、術後早期から経腸栄養投与とすることが多い。
・中心静脈栄養では、長期になるほどカテーテル感染リスクが増えることから、栄養管理にはやはり経腸栄養を主体とするのが良い。
そのため、中心静脈カテーテルは早期に抜去したり、むしろ挿入はせず末梢点滴ルートにて術後管理をすることが増えてきている。
食道癌の術後合併症について
・術後早期合併症:術後から2、3週間くらいまでの期間に発生するものをいう
・術後晩期合併症:術後2、3週間を過ぎて、手術の影響を脱した後に起こるものをいう
術後早期合併症 | 術後晩期合併症 |
---|---|
肺合併症(最も多い):無気肺、肺炎、肺水腫など | 吻合部狭窄 |
循環器系合併症:術後不整脈、頻脈、ショック等 | 逆流性食道炎(胸腔内吻合) |
縫合不全 | |
反回神経麻痺 | |
肝障害 | |
胸管損傷による乳び胸 | |
MRSA肺炎、腸炎など |
大腸癌術前患者の栄養状態不良例について(周術期管理)
上行結腸癌例①
患者背景について
診断名:上行結腸癌、軽度貧血および栄養状態は悪化傾向にある とする。
大腸がん患者において、持続性の出血と食欲不振があり、貧血傾向で栄養状態の悪化が考えられている状態。
実際には体重減少が5kgほどあり、BMI20前後、眼瞼結膜は軽度の貧血
(ここから、大腸がんによる出血を示唆)
多臓器への転移、腹水貯留はなし。 → ここでは治癒切除の適応の可能性があると考える。
---ここでは全麻による標準手術予定があるとする。
そこで、安全性確保のためには術前の栄養管理が必要となる。
→ ①NST(栄養サポートチーム)の依頼をし、食欲不振や栄養悪化状態の改善をしていく
→ ②腸閉塞が無く、経口摂取ができるならば、経口により経腸栄養管理をしたほうがよい。これは、胃腸を働かせることで、腸管粘膜防御機構維持のためでもある。
→ ③手術直前においては、術野感染予防のため、抗生剤投与をする。
→ ④脱水予防のためには、術前数時間前(4、5時間ほど前など)までの飲水をしておくとよい。
→ ⑤術後においては翌日からすぐに離床をすること。これは、腸管運動を促すためでもある。
手術直後では腸管運動が低下するため、逆流による誤嚥性肺炎、腸管癒着リスクが高まるためである。
まとめると、周術期管理で大事なのは術前栄養管理、術野感染防止、術後早期離床である。
全身麻酔の手術直後では、手術室退出前か集中治療室入室直後に
必ずベッドサイドで胸部と腹部のX線撮影を行うこと。
これにより
胸部X線では肺炎や無気肺、気胸、心拡大がないかを確認し
腹部X線では留置したチューブ位置の確認や、ガーゼなどの異物が無いかの確認をすること。
消化管穿孔による汎発性腹膜炎手術後について
手術直後にはX線撮影を行うこと
確認事項として
(1)胃管の位置
胃管は術前に病室で入れるか、手術室で気管内挿管後に入れるかだが、最後はしっかりX線にて確認が必要である。
胃管挿入時では、胃液の吸引をすることも重要な事である。
(2)ドレーンの位置
術中に挿入したドレーンが適切な位置や方向であるか、曲がっていないかなどを確認する必要がある。
(3)腹腔内異物の確認
閉腹前には、使用したガーゼ枚数、鉗子、針などの手術器具数が使用前と同じか確認する。
また、X線を通してネジなどを落としていないかの確認も大事である。
上行結腸癌の合併症について
今回は、上行結腸癌によって、右半結腸切除術を施行した例とする
・術後急性期:手術侵襲によって血管透過性亢進するため、血管内水分が染み出し間質液が増えて浮腫む。
これにより、血管内は水分が減少するため、頻脈や血圧低下、尿量低下がみられるようになる。(いわゆる脱水症状)
ここでは、循環血液量(水分量)を補うため、十分量を輸液すること。
この際、尿量の計算もしておきたいところ。
時間尿量は、1時間あたりの尿量(mL)を求め、脱水の程度を見る。
目安:1時間あたり0.5mL × 体重(kg)
体重60kgでは 30mL/hr を目安
とするが、少なめに見積もっているためこれより少し多くても輸液が必要と考えられる。
S状結腸切除術後の合併症について
・S状結腸切除術後の合併症は膿瘍形成があるが、これは縫合不全が原因であることが多いと考えられる。
まず、S状結腸切除術というのは吻合部が仙骨の岬角付近になる。
この位置での縫合不全が起きることで、漏出した消化液が重力によって骨盤腔の一番下に溜まるようになり、膿瘍が形成されることになる。
→ このことから、あらかじめ手術で予防的に直腸子宮窩(ダグラス窩)にドレーン※を留置する。
ダグラス窩は、左側結腸や直腸手術の縫合不全で膿瘍が形成されやすい部位である。
※ ドレーン:体内に貯留した血液・膿・浸出液を体外に排出する医療行為はドレナージといいますが、その際に使用する管のことをドレーンという
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ドレーンの留置場所について
手術において、術後出血、縫合不全、感染などの把握と予防のためにドレーンを留置する。
術式によって異なるが、手術部位と留置場所について以下に表としました。
手術場所 | ドレーン留置場所 |
---|---|
上腹部の手術 | ・左右の横隔膜下 ・Winslow孔(肝下面) |
下腹部手術 | ・ダグラス窩 ・傍結腸溝 |
汎発性腹膜炎 | ・左右横隔膜下 ・ダグラス窩 |
全般的に | ・消化管吻合部 ・実質臓器の切離部付近 |
ダグラス窩について
ダグラス窩とは直腸子宮窩といい、女性にしかない部分である。
女性では、前方から順に恥骨、膀胱、子宮、直腸と位置している。この子宮と直腸の間にダグラス窩がある。
しかし、便宜上男性でいうところの膀胱直腸窩と同じ部位のため、ここをダグラス窩と呼ぶこともある。
術後合併症で膿瘍がおこりやすい部位についてのまとめ
膿瘍が起こりやすい部位 | 原因 |
---|---|
右横隔膜下 | ・上部消化管術後の縫合不全 ・消化管穿孔 ・胆嚢炎の増悪 ・膵炎の増悪 ・虫垂炎の増悪 など |
左横隔膜下 | ・上部消化管術後の縫合不全 ・消化管穿孔 ・胆嚢炎、膵炎の増悪 など |
右傍結腸溝 | ・右側結腸切除後の縫合不全 ・大腸憩室穿孔 など |
左傍結腸溝 | ・S状結腸切除術の縫合不全でおこりやすいが 吻合部の位置から重力の作用により膿瘍は 吻合部位置から下方の骨盤腔に溜まりやすい |
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高齢者の栄養管理について
・特に高齢者においては経管栄養剤の注入は仰臥位ではなく、坐位(半坐位)で行うこと。
これにより誤嚥性肺炎リスクを減らすことができる。
・口腔内のケアによって誤嚥した際の肺炎発症リスクは低減可能となる。
・経鼻胃管に比較して胃瘻は胃内容物の逆流は起こりにくくなる。ただし、完全に逆流や誤嚥を避けられるわけではないので注意。
・中心静脈栄養は経腸栄養が2週間以上使えない時に適応となる。
リスクには、やはり穿刺による気胸や血腫などの合併症リスク、敗血症リスクがある。
・管理においては、カテーテル交換時の誤挿入が危険である。
留置ミスのまま、栄養剤を腹腔内投与をすることは汎発性腹膜炎を起こすこととなる。
そのため、交換後は造影剤を用いたX線検査などで先端が胃内留置されたことを確認する必要がある。
栄養投与法の選択方法について
種類、優先順位について | 適応条件 | 期間 | 投与方法 |
---|---|---|---|
①経口摂取 | 咀嚼や嚥下障害がない | 特になし | 経口摂取 |
②経腸栄養 | ・経口摂取不可 ・消化管を安全に使用可 | 4-6週間以内 | 経鼻経腸 |
〃 | 〃 | 4-6週間以上 | 胃瘻、腸瘻 |
③経静脈栄養 | ・経口摂取不可 ・消化管を安全に使用不可 | 2週間未満 | 末梢静脈栄養 |
〃 | 〃 | 2週間以上 | 中心静脈栄養 |
・嚥下機能があれば、可能な限り経口栄養をすることを考えるべきである。
・経鼻胃管では、水分投与なども可能である。誤嚥リスク高い場合に用いると良い。
・経管栄養開始時は徐々に投与量は増やしていくこと。
一度に増やすことは、嘔吐、逆流による窒息、誤嚥性肺炎、浸透圧性下痢を起こす可能性がある。
・静脈栄養療法時において、長期で投与する場合は必須脂肪酸の供給が必要なため脂肪製剤も投与が必要となる。
・カテーテル利用にはリスクがある
気胸、動脈穿刺による出血。(血胸は危険)
空気塞栓、カテーテルの閉塞、断裂、変位、静脈内血栓、カテーテル関連血流感染症による敗血症
・代謝性のリスクについて
regeeding症候群(リフィーディング)※、高血糖、高窒素血症、必須脂肪酸欠乏、電解質異常、ビタミン欠乏症(VB1など)、Znなどの微量元素欠乏症、肝機能障害(脂肪肝)
※ regeeding症候群:慢性的な栄養不良状態が続き高度の低栄養状態にある患者に、急激に十分量の栄養補給を行うことにより発症する一連の代謝合併症の総称をいう。
飢餓状態から、栄養が過剰にあっても、代謝過程でVB1欠乏、Pの消費、K、Mgも消費し欠乏する。
例えば、Pの欠乏はATP産生の低下により、ATP利用の高い、脳、心臓、筋肉の障害がおこりうる。
起こりうる症状は、心不全、不整脈、呼吸不全、意識障害、けいれん発作、四肢麻痺、運動失調、横紋筋融解、尿細管壊死、溶血性貧血、高血糖、低血糖発作、敗血症、肝機能異常、消化管機能異常など多くの症状がある。
中心静脈カテーテル(CVC)は第一選択部位は鎖骨下静脈である。これは、エコーガイド下で清潔挿入する。
一度留置してしまえばカテーテル感染予防のため、定期的な交換はしない。
胃瘻造設後の管理について
・バルーン型胃瘻カテーテルでの経皮的胃瘻造設術後では、閉塞や汚染予防のため定期的な交換が必要である。
頻度としては、1、2ヶ月に1回程度の交換となる。
・カテーテル汚染や閉塞予防で酢酸注入をするが、食用酢(濃度4%)の10倍希釈を用いること。
薬局用のそのまま原液(酢酸濃度30%)では消化管穿孔を起こすこともあり、原則禁忌である。
・バルーンには必ず蒸留水を用いること。
水道水や生食水では塩がバルーン内で凝固してしまうことがある。
・PEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)が普及しており、割と安全で低侵襲に施行できるようになった。
・カテーテルの種類にバンパー型、バルーン型がある。
バンパー型と違い、バルーン型では内部ストッパーとなるバルーンの注入口がある。
経管栄養の適応例について
経管栄養の栄養剤は、成分栄養剤、消化態栄養剤、半消化態栄養剤がある。
いずれも高浸透圧であり、腸管内圧は注入前よりも上昇傾向となり、下痢症状を呈することもあることから、腸閉塞などの腸管内圧を減圧する必要がある疾患類には使用禁忌である。
腸閉塞と似て異なり、イレウスでは、腸管の運動麻痺による通過障害であり、閉塞状態ではないことから、経管栄養は行っても良いとしている。
(腸閉塞:癒着による機械的な腸の閉塞であり、欧米ではbowel obstructionといい、ileusと区別して呼ぶ)
・炎症性腸疾患のクローン病では経管栄養法が第一選択となる
・短腸症候群の消化、吸収能力の低下では完全消化態や半消化態栄養剤を用いるのが良い。
・神経性および脳神経性摂食不良状態にもよい適応となっている。
これらは、長期間絶食状態でおこる、バクテリアルトランスロケーション防止で非常に重要である。
→ 長期管理においてはIVHよりも経管栄養療法が優れている。
一先ず、周術期管理についてはここで終わります。
また、先に進めることができたら追加したり、周術期管理②など作っていきたいとおもいます。
<参考文献>
メディックメディア Question Bank vol.1 消化器