ここでは膵臓疾患についてみていきます。
総論については「肝疾患編① 肝臓・胆嚢・膵臓 解剖学総論」はこちらになります。
(注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
そのため、これを全て把握しても人体については全て理解し、学べたということにはなりませんのでご注意ください。
医学は未知の部分も含め、既知の部分であってもかなりの量です。ここは忘れないようにしてご利用ください。)
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急性膵炎について
急性膵炎とは、膵臓内の活性化した膵酵素が膵臓自体やその周囲の臓器に自己消化してしまうことでおこる急性炎症性疾患である。
まずは、急性膵炎の要因についてまとめたものになります。これは慢性膵炎であっても同じととらえて問題ない。
ただ、アルコール性の膵炎に関しては慢性膵炎が5割ほど占めている。
要因 | およその割合、性差 |
---|---|
アルコール | 35%、男性に多い (慢性膵炎では68%を占め、最も多い) |
胆石症 | 30%、女性に多い |
原因不明(特発性) | 20%、女性に多い |
医原性 | 診断的ERCP、内視鏡的乳頭処置、手術 |
膵臓損傷 | 腹部の外傷等 |
慢性膵炎の急性増悪期 | ー |
膵・胆道奇形によるもの (膵・胆管合流異常、膵管癒合不全、輪状膵) | ー |
代謝や栄養障害 ①脂質異常症(血中TG上昇でリパーゼ(脂肪分解酵素)が活性化するため ②副甲状腺機能亢進症による高Ca血症で膵液が過剰分泌を生じるため | ー |
その他 膵腫瘍、薬剤性、感染性(HIVウイルス、コクサッキーウイルス、マイコプラズマ、ムンプスウイルスなど) | ー |
急性膵炎 - 03. 消化器の病気 - MSDマニュアル家庭版 (msdmanuals.com)(閲覧:2021.11.7)
・症状は悪心、上腹部の圧痛、背部痛、腹部は平坦。
・飲酒後の心窩部痛など。筋性防御や腸雑音低下などが認められることあり。
・この腹痛は、胸膝位で軽減される。(前かがみになること)
<参考画像>
胸膝位について
骨盤位(さかご)〔こつばんい〕|家庭の医学|時事メディカル|時事通信の医療ニュースサイト (jiji.com)(閲覧:2021.11.11)
・急性膵炎の疑いがあれば腹部造影CTで重症度判定や確定診断を行う。腹部超音波検査もあり。
(※造影剤使用には、腎障害のないことを確認)
→ CT所見:腫大した膵臓、辺縁不明瞭化、膵臓の造影効果不良域、膵周囲の滲出液の貯留などがみられる。(診断可)
・AST、ALT、ALP、総ビリルビン値が上昇がみられるようであれば胆石性膵炎を考慮(以下の治療アルゴリズム参照)
・単純X線所見:sentinel loop sign(上部空腸の拡張像)、colon cut off sign(限局性ガス貯留像)などが認められる。
<参考>
・ sentinel loop signについて:fiÁ‘W-−Šfic (jst.go.jp)(閲覧:2021.11.11)
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検査項目 | 検査値 |
---|---|
血糖値 | 上昇する (膵ラ氏島の障害でインスリン分泌が低下するため) |
LD | 上昇する (組織壊死するため) |
膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ) | 上昇する (アミラーゼは半減期短いため注意!) |
BUN,Cr | 上昇する |
血糖値 | 上昇する |
AST、ALT、ALP、総ビリルビン値 | 正常値 上昇があれば胆石性膵炎 |
Ca | 減少する (リパーゼによって壊死した脂肪組織にCaが結合、消費されるため) |
総蛋白、血中酸素濃度、血小板 | 減少する |
排尿量 | 減少する(乏尿、無尿) |
BE | ≦ -3mEq/L(代謝性アシドーシスの指標の一つ) |
収縮期血圧 | ≦ 80mmHg(ショック状態の指標の一つ) |
PaO2 | 減少する |
※ 凝固系の異常は共通してます。PT、APTTの延長、AT減少、FDP、Dダイマーの増加となる。
急性膵炎の形態学的分類について
急性膵炎の形態学的分類はマルセイユ分類がある
急性浮腫性膵炎:軽症型
急性壊死性(出血性)膵炎:重症型
急性膵炎の診断基準について
上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある
血中または尿中の膵酵素上昇がある
超音波(US)、CT、MRIで膵臓に急性炎症を示す所見がある
上記3項目のうち2項目以上を満たし、他の膵疾患や急性腹症を除外したものは急性膵炎と診断できる。
(慢性膵炎の急性増悪では急性膵炎に含まれる)
この時、膵酵素は膵臓に特異的な膵アミラーゼや膵リパーゼなどを測定していくことが望ましいとされている。
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急性膵炎の初期治療について
・まず、絶食と除痛のため痛みに対しては鎮痛剤の投与となる。
→ 絶食によって、膵外分泌液を抑制するためである。(食事の再開は、腹痛の程度やリパーゼ値を見て決めます)
・痛みが強ければNSAIDsによる痛み止めが効かないこともしばしばあるため、非麻薬性鎮痛薬(ブプレノルフィン、ペンタゾシン等)を用いるとよい。
・次に重要なのは、急性膵炎の初期治療として十分な補液である
・呼吸不全を生じるため、酸素投与が必須となっている。
・二次感染予防のため広域抗菌薬の投与をする。
(カルバペネム系のイミペネム、メロペネムなどは強めで最終手段的な抗生剤のイメージです。)
・膵外分泌液の抑制のためH2ブロッカーの投与で胃酸分泌や胃の蠕動運動を抑制する。
・急性膵炎では内視鏡的処置(ERCP)は禁忌となる(増悪するリスクあり)が、胆石性膵炎であれば胆石を処置した方が良いため、逆行性胆管ドレナージなどを行うのが良いとされる。
・重症膵炎例※1や、腹部コンパートメント症候群(ACS)※2の合併例では、血液浄化療法(CHDF)を行う。
注)通常、急性膵炎では腹膜灌流(ふくまくかんりゅう)の有効性はないとされている
・重症例では更に抗菌薬、蛋白分解酵素阻害剤(ナファモスタット、カモスタット、ガベキサート、ウリナスタチンなど)の投与、経腸栄養(感染予防のため)を行う。
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※1 十分に初期輸液を行っても循環動態が安定しないで利尿が得られない状態。
※2 ACS:腹腔内大量出血や後腹膜血腫、腸管浮腫などで腹腔内圧が上昇し、呼吸や循環障害を生じる病態の総称をいう。
初期輸液の投与は大事なことではあるが、注意事項もある。
急速に大量輸液を行うことは、腹腔内圧を上昇させ臓器障害や臓器不全となるACSリスクがあるため、初期急速輸液というのは調整する必要がある。
その指標として
平均動脈圧は65mmHg以上
尿量は0.5mL/kg/hr以上
その後には、輸液速度は下げていく
と推奨されている
平均動脈圧というのは動脈ラインを確保できてなくても公式で算出できるようになっている
平均動脈圧 = 拡張期血圧 + [ (収縮期血圧 - 拡張期血圧) / 3 ]
合併症には、先程のACSの他、膵仮性嚢胞や感染性膵壊死(WON:walled-off necrosis 被包化壊死)がある。
治療法は、ACSでは先程述べた血液浄化療法となる。WONではインターベンション治療(ドレナージなど)※(以下、引用参照)が挙げられる。
※ WONの疑いでは、CTやエコーガイド下で局所の穿刺吸引を行って細菌学的検査で診断をする。
「感染性膵壊死の治療としては、内視鏡を使用して壊死物質を消化管内に誘導する内視鏡ドレナージや、皮膚からチューブを挿入して壊死物質を体外に誘導する経皮的ドレナージがあります。十分な効果が得られない場合は、壊死物質を掻き出すネクロセクトミーという処置を追加することもあります。」
膵臓の主な病気と診療実績〈急性膵炎〉| 三重大学 肝胆膵・移植外科《第一外科》 (mie-u.ac.jp)
リンク先
・CHDFの詳細(画像での解説あり):血液浄化療法│人工透析・シャントの情報サイト│善仁会グループ (zenjinkai-group.jp)(閲覧:2021.11.7)
・参考書籍:急性膵炎診療ガイドライン 2015 | Mindsガイドラインライブラリ (jcqhc.or.jp)
・腹部コンパートメント(区画)症候群 日本救急医学会・医学用語解説集 (jaam.jp) (閲覧:2021.11.7)
感染性膵壊死の治療方法について
感染性膵壊死が診断されたとき、早期手術は推奨されていない。
発症から3,4週経った後期にネクロセクトミーという「膵および周囲組織のみのデブリドマン」を行う。
これは、正常な膵臓と壊死となった部分の境界がはっきりするため、ネクロセクトミーによる出血を軽減させたり、正常な組織の不要な摘出を回避することができるためである。
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急性膵炎の治療アルゴリズムについて
急性膵炎と判断できたら、できるだけ早期に重症度判定できるようにしておくことが重要
急性膵炎 → 胆石性膵炎
↓
基本的治療(前述参照)
↓
重症度判定
┃┗軽症であれば基本的治療を継続
↓
重症と判断した場合
↓
対応可能な施設に救急搬送
↓
集中治療※1(前述の重症例も参照)
↓
膵局所合併症に対する治療※2
※1 集中治療:臓器不全対策、感染予防、輸液管理、ACS対策、栄養管理(早期経腸栄養)+(動注療法、血液浄化(CHDF))
※2 膵局所合併症に対する治療:保存的治療、インターベンション治療(ドレナージ、ネクロセクトミー(壊死物質除去))
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膵炎の重症度判定について
診断のための項目と重症度判定のための項目は違うため、しっかり区別して覚える必要がある。
重症度スコア | ステージ |
---|---|
0 | 0(軽症) |
1 | 1(中等症) |
2~8 | 2(重症Ⅰ) |
9~14 | 3(重症Ⅱ) |
15~27 | 4(最重症) |
予後因子 | 重症度判定基準 | 重症度スコア |
---|---|---|
① | ・ショック ・呼吸困難 ・神経症状 ・重症感染症 ・出血傾向 ・Ht ≦ 30% ・Base Excess(BE) ≦ -3mEq/L またはショック(収縮期血圧 ≦ 80mmHg) ・BUN ≧ 40mg/dL (or Cr ≧ 2.0mg/dL)または乏尿 (輸液後も一日尿量 ≦ 400mL) | 各2点 (※BEとBUN,Crは1点との記載もあったが、厚労省では2点となっている) |
② | ・Ca ≦ 7.5mg/dL ・FBS(空腹時血糖値) ≧ 200mg/dL ・PaO2 ≦ 60mmHg または呼吸不全(人工呼吸が必要とする状態) ・LDH ≧ 700IU/L(基準値の2倍以上) ・総蛋白 ≦ 6.0g/dL ・プロトロンビン時間 ≧ 15秒 ・血小板 ≦ 10万/mm3 ・造影CT Grade Ⅳ/Ⅴ ・CRP ≧ 15mg/dL | 各1点 |
③ | ・SIRS診断基準における陽性項目数※1 ≧ 3 (SIRS:全身性炎症反応症候群) ・年齢 ≧ 70歳 | 2点(1点との記載もある) 1点 |
※ 血中・尿中アミラーゼ値は重症度と相関しない。
ただ、アミラーゼ血清値が炎症が落ち着いた後も遷延していれば膵仮性嚢胞の合併を疑うこと。
厚生労働省2008年の重症度判定基準について:tp0521-1a_0026.pdf (mhlw.go.jp)
造影不良 \ 炎症の膵外進展度 | 前腎傍腔 | 結腸間膜根部 | 腎下極以遠 |
---|---|---|---|
各区域に限局 あるいは膵の周辺のみ | Grade1 | Grade1 | Grade2 |
2つの区域にかかる | Grade1 | Grade2 | Grade3 |
2つの区域全体 あるいはそれ以上 | Grade2 | Grade3 | Grade3 |
<重症度判定>
①予後因子が3点以上
または
②造影CTがGrade2以上の場合を重症と判断する。
→膵臓周囲の炎症所見が大きい、腫大した膵臓がみられる、辺縁不明瞭で造影が不良など
(原則:48時間以内に判定すること)
数値は最も重症状態時の値をみていく
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胆石性膵炎について
・胆石性膵炎は女性に多い疾患である。
・はっきりとした原因はまだ解明されていない。
・黄疸や胆管炎の症状から発見されることが多い。
そのため、原因として胆嚢内の結石が胆管内に落ちることで発症する胆管炎が主な発症因子ではないかと考えられている。
胆石性膵炎では胆嚢摘出術を行うのが良い。これによって再発リスクも低下させることができる。
また、特に女性においては胆石による胆嚢癌発生リスクもあるため予防的胆嚢摘出術が考慮される。
重症急性膵炎について
重症急性膵炎においても特徴的な症状が様々挙げられる
症状には、呼吸不全、ショック、腎不全、代謝性アシドーシス※1、意識障害、重症感染症※2、DIC(多臓器不全)、高血糖※3などを生じてくる。
※1 代謝性アシドーシス:インスリン機能が働かなくなり、糖新生※4で糖分を補おうとすることから、ケトン体の生成がされてくる。
これはケトアシドーシスといい、ケトン臭を呈するようになる。
また、血中は酸性に傾くため、それを是正しようと深く早い呼吸で規則正しく持続するKussmaul呼吸(クスマウル呼吸)を呈する。
→ 生体反応で、深く速い呼吸で血中二酸化炭素濃度(PaCO2)を減らしてアルカリ化にしようとする。急性呼吸促拍症候群(ARDS)とも。
糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)との鑑別が必要
DKAも腹痛を伴うケトアシドーシスがある
※2 膵臓自体や膵周囲の感染が合併することで、敗血症、多臓器不全リスクがあるため抗菌薬の予防的投与が重要である
※3 膵ラ氏島の障害によって高血糖症状を呈するため、すぐに血糖降下薬の投与が必要である
※4 糖新生:脂肪組織からは脂肪の分解、骨格筋からはタンパク質の分解によって糖分を補う生体内の反応をいう
・初発症状では腹痛が多い。
・胸腹水や皮下出血は重症度判定にもかかわっている項目となっている。
胸水、腹水は、脾臓周囲~膵臓周囲から滲出液が貯留して呈する。
皮下出血には、DIC、Grey-Turner徴候、Cullen徴候などがある。(臍周囲の青紫色の着色斑など)
・高度な脱水症状、腎不全、膠質浸透圧の低下などで無尿から乏尿を呈することが多い。
→そのため、治療には大量輸液が必要となっている。
内視鏡的結石除去術後の急性膵炎について
内視鏡的結石除去術(ERCP)後(術後数時間後)に、十二指腸乳頭の処置による出血や穿孔、急性膵炎、急性胆管炎などの合併症を起こすことがある。
これをERCP後急性膵炎という。
・症状は、持続する心窩部痛や背部痛、圧痛と急性膵炎症状同様である
検査所見では、アミラーゼ上昇やCRPの上昇、WBC、CRPの上昇などで急性膵炎同様といえる
自己免疫性膵炎について
自己免疫性膵炎は、発症には自己免疫的機序が考えられている。
これによって、慢性的な炎症を引き起こす疾患である。
・高齢男性に好発する
・黄疸、糖尿病で発症することが多い。膵外合併症が多い。
・全身性のIgG4疾患に関連して、硬化性唾液腺炎、硬化性胆管炎、後腹膜線維症などの頻度が高い
<確定診断>
(1)画像所見:主膵管の狭細像、膵腫大を認める
(2)血液検査:γ-グロブリン、IgG抗体、IgG4抗体の高値、自己抗体(抗核抗体)陽性のいずれか認められる
(3)病理組織学的所見:膵臓にリンパ球やIgG4陽性の形質細胞が主にある細胞浸潤や線維化が認められる
(1)かつ、その他2項目以上満たす時に確定診断となる
ただし、他の要因を除外する必要がある。(膵炎、膵癌、胆管癌など)
<自己免疫性膵炎のその他の検査所見について>
リウマトイド因子の陽性 | |
膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ)の上昇 | |
胆道系酵素(γ-GTP、ALP)の上昇 |
<検査>
腹部CT、MRI、超音波検査を利用する
所見では、びまん性または限局性の膵腫大を認める
治療薬にはステロイド薬が第一選択薬である
黄疸症状のコントロールには胆道ドレナージ(ERBD)を施行することもある
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慢性膵炎について
慢性膵炎は慢性的な炎症によって進行すれば、外分泌機能障害のほか内分泌機能障害もきたすことがある。
慢性膵炎の疫学:アルコール性が6、7割と最も多い。次に特発性が2割ほどとなっている。続いて胆石症が3%ほどで女性に多い。
(その他:脂質異常症、副甲状腺機能亢進症、先天性膵・胆管合流異常、外傷など)
急性膵炎の疫学については前述参照 → こちらから
・膵臓のランゲルハンス島が減少し、インスリン分泌能が低下することで耐糖能異常をきたす。
この状態を膵性糖尿病という
・症状は、背部痛、上腹部通、アミラーゼの軽度上昇、栄養障害など。詳細はこちらでも確認
・慢性膵炎では、膵外分泌機能の低下によって膵液量は低下する。
そのため、リパーゼも低下し、脂肪分解ができなくなるため脂肪便がみられるようになる。
更に、膵液中の重炭酸濃度も低下となる。
慢性膵炎:膵内部に不規則な線維化、細胞の浸潤、膵実質の脱落、肉芽組織の慢性炎症を生じる。
代償期:反復する腹痛、腹部圧痛あり膵機能は保たれる。
非代償期:発症してからおよそ10年もすれば非代償期に移行していく。
膵全体の線維化(石灰化)が進み、腹痛は減るが、腺房細胞が壊死し、膵内分泌機能が不全に陥る。(これが膵性糖尿病)
また、膵外分泌能不全で脂肪性下痢、体重減少などを呈するようになる。
<検査法>
・腹部造影CT:膵嚢胞の所見、膵管内に膵石が多数みられるhigh density areaを認める。
・BT-PABA試験(膵外分泌機能検査)がある。これは、キモトリプシン活性を調べるものである。
BT-PABAを経口投与し、キモトリプシンで加水分解されてPABAとなり腸管の吸収、肝でのグルクロン酸抱合後に尿中排泄されるものである。
つまり、キモトリプシン分泌量の低下では、尿中のPABA排泄量は低下することとなる。
詳細は肝疾患編①でも → こちら参照
<確定診断>
(1)画像所見
①超音波検査:膵管内の結石、膵びまん性の石灰化
②ERCP:膵全体に主膵管の不整な拡張と不均等に分布した分枝膵管の拡張、膵石などによる閉塞や狭窄像
(閉塞部位以外の拡張がみられる)
(2)組織学的所見
膵実質の脱落と線維化を呈する
(主に小葉間でみられ、結節状となっている)
(3)反復する上腹部痛発作
(4)血中または尿中の膵酵素の異常値
(5)膵外分泌障害
BT-PABA試験では6時間排泄率が70%以下を複数回認める
(6)持続して純エタノール換算で1日80gの飲酒歴がある
(1)または(2)の所見があれば確定診断できる。
それか、(1)、(2)で確定診断の所見がないが、他で2項目以上みられるようであれば確定診断できる。
膵炎の治療は、病期によって治療法が変わる
<基本治療>
・断酒、禁煙をし、病期によって各治療を行うこと。
(1)代償期
・急性増悪期では急性膵炎と同様になる。→ こちらから確認
(2)移行期(間欠期)では、疼痛治療(薬物療法)が主体となる。
その他、生活指導なども必要となる。
断酒、禁煙、低脂肪食(脂肪:1日30g以下とすること)
外科手術
→主膵管の狭窄や膵石があり、膵液のうっ滞によって閉塞性膵炎や慢性膵炎急性増悪を繰り返している場合
内視鏡的乳頭切開術(EST:膵管口切開)や内視鏡的膵管ステント留置術(ESP)、体外式衝撃波結石破砕療法(ESWL)を施行する。
<参考>
・ESTについて:内視鏡的乳頭筋切開術 - 医療法人 原三信病院 (harasanshin.or.jp)(閲覧:2021.11.11)
・ESPについて:膵管ステントの現状と展望 第57巻07号1457頁 (jst.go.jp) (閲覧:2021.11.11)
・ESWLについて:ESWL(体外衝撃波結石破砕術)とは - 船橋クリニック 千葉県泌尿器科 尿路結石症(腎結石・尿管結石・膀胱結石)に対するESWL(体外衝撃波結石破砕術)に特化したクリニックです。 (chiba-funabashi-clinic.jp)(閲覧:2021.11.11)
(3)非代償期
膵外分泌と内分泌を補う薬物治療が主体となる。
・断酒、禁煙に加え、高カロリー食になる。
→脂質を抑えてリパーゼ分泌を抑えながらもカロリー摂取が必要である。
・薬物療法
膵性糖尿病にはインスリン製剤
大量の消化酵素剤(膵臓に負担かけさせないため)
PPIなどの酸分泌抑制剤など
ビタミン剤(脂質を抑えることから、脂溶性ビタミンが不足する)
<参考>
・膵炎の食事内容について:脂質制限!膵臓に負担をかけない食事|MFSメディカルフードサービス (medifoods.jp)(閲覧:2021.11.11)
・慢性膵炎について:慢性膵炎ガイド|患者さんとご家族のためのガイド|日本消化器病学会ガイドライン (jsge.or.jp) (閲覧:2021.11.11)
膵癌について
まずは、膵臓癌全般についてみていきます。
膵臓は腎臓と同じように後腹膜臓器である。
浸潤形式は背側へ神経浸潤を呈するため、背部痛をきたす症例が多いという特徴がある。
<疫学・特徴>
男性に比較的多いとされる(男性:女性 = 1.2~1.3:1) |
発生部位は主に膵頭部となっている(およそ60%占める) |
罹患率は徐々に増えている疾患である |
膵体尾部癌は膵頭部癌に比べて無症状であり、発覚した時には進行して切除不能例が多い |
家族歴 |
喫煙 |
糖尿病 |
肥満 |
飲酒 |
肉食 |
慢性膵炎(膵石症) |
糖尿病の背景には膵癌が隠れていることもあるため、常に念頭におくことが必要である
・膵癌は肝転移しやすい
門脈や総肝動脈などの周辺血管に浸潤しやすい。この場合予後不良になる。(およそ3割でみられる)
・右上腹部の腫瘤触知から、膵臓癌、胆道癌の疑い
・主に膵体尾部癌では、閉塞性黄疸の症状を呈する
<画像所見>
膵癌の診断には、膵管造影と血管造影が重要である
・膵管造影:膵管の断絶、尾側の拡張が重要所見
・血管造影:腫瘍濃染像の所見が少ない。動脈相の屈曲蛇行する狭窄、閉塞、壁の鋸歯状狭窄などが重要所見
・腹部エコー:通常は均一な低エコーまたは斑状エコーを呈する
→ 超音波内視鏡検査(EUS)はERCPよりも大きい腫瘍、形態の診断に有用とされている。
これは、確定診断の為にEUS下で生検をすることがある。
・腹部X線単純CT:限局的な腫瘤像、多くが低吸収域の不整な腫瘤像を認める
→ 造影時は、膵癌部分は染色せずに目立って見えるようになるが
今では精度の高い3D-CTがあることから造影はしなくなってきている。
・MRI:T1強調像では低信号(そうでない場合もある)、T2強調像では高信号のことが多い
膵臓の腫瘍の他、肝転移(肝内腫瘍)がみられる。(リング状に多発してみられる)
<肝癌だけなのか、膵癌からの転移なのかについては>
血液検査の腫瘍マーカーでは、CEA、CA19-9の上昇があれば膵癌からの肝転移
AFP、PIVKA-Ⅱの上昇では肝癌
また、CTの動脈相では高吸収域の占拠性病変がみられるはずである。
<膵癌特異的腫瘍マーカーについて>
カッコ内は感度です
CA19-9(およそ80%) |
CEA(およそ50%) |
エラスターゼ |
DUPAN-Ⅱ |
SPan-1(エスパン) |
SLX |
など |
※腫瘍マーカーは参考程度であり、CA19-9は感度が高いが、特異性が低いことから早期診断には適していない
<参考>
DUPAN-Ⅱ :神奈川県労働衛生福祉協会|健康のとびら (rfk.or.jp)(閲覧:2021.11.11)
SPan-1 :札幌臨床検査センター|総合検査案内|SPan-1抗原 (saturin.co.jp)(閲覧:2021.11.11)
SLX :肺がんの腫瘍マーカーについて NSE、ProGRP、CYFRA21-1、SCCなど|おしえて 肺がんのコト【中外製薬】 (oshiete-gan.jp)(閲覧:2021.11.11)
<治療>
膵癌の治療で外科的切除ができる症例は少ないとされる。
・切除不能の局所進行膵癌 → 非切除であり、化学療法や放射線療法となる
・遠隔転移のある膵癌 → 非切除であり、化学療法や放射線療法となる
(遠隔転移では併用する有効性は認められていない)
①FOLFIRINOX療法(フォルフィリノックス)※1
②ゲムシタビン + nab-パクリタキセル の併用療法※2
これらは、全身状態に応じて使用する抗癌剤は変わる
治療的切除ができたとしても術後5年生存率はおよそ15%ほどとなっており、極めて予後の悪い癌といえる。
放射線療法、抗癌剤による化学療法で少しは予後が改善してきている。
※1 FOLFIRINOX療法
・オキサリプラチン、イリノテカン、5-FU、レボホリナートカルシウム + 制吐剤(デキサメタゾン、アザセトロン)
※2 ゲムシタビン+nab-パクリタキセル(アブラキサン®)併用療法
ナブパクリタキセルとは、パクリタキセル(脂溶性)にアルブミンを結合させることで水溶性となり、生食で簡単に投与できるようにした製剤のこと。
投与方法:週に1回の投与を3週間行い、1週間休薬するという28日のサイクルで治療していく。
これを1周(28日)行うことを1クールという。
<参考>
ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法(化学療法のポイント)/膵がん | 看護roo![カンゴルー] (kango-roo.com)(閲覧:2021.11.11)
<参考>
膵頭部癌、膵体部癌の参考画像所見について
膵臓がん|病気の知識|介護の知識|訪問看護・24時間の在宅看護等のサービスを自費で! ナースアテンダント (nurse-at.jp)(閲覧:2021.11.11)
膵頭部癌について
膵頭部癌とは、膵癌のうち膵頭部にできたものをいう
膵頭部癌の所見は、胆管が左側に偏っている左方偏位と膵頭部の主膵管が途絶、狭窄していることが認められる
胆道造影(ERC)でみると、胆管が左側に引っ張られている状態である
また、下部に狭窄部位があればそれより上流の胆管(尾側膵管)は拡張している所見も見られる
・好発年齢は中高年に多い
・症状は腹痛、悪心、嘔吐、食欲低下、体重減少の他、閉塞性黄疸に起因する、黄疸、白色便、皮膚掻痒感、発熱などもある。
基本的には、無痛性の胆嚢腫大を生じる
膵頭部癌は黄疸症状で早期発見されやすいことから予後は良好である。
→これは、膵頭部は十二指腸にも接しているため、閉塞して黄疸を生じやすいため
それに比べて、膵体尾部癌は黄疸が起きにくいため発見が遅れる。
※CT所見などにより、慢性膵炎や膵嚢胞との鑑別が必要
→ 膵腫大や石灰化があれば慢性膵炎といえるが、それが無ければ別要因となる
また血液検査から、CA19-9やCEAが高値ということや、ビリルビン値が正常で黄疸が無い(閉塞性黄疸が無い)ことを確認することで
膵嚢胞、十二指腸乳頭部癌や下部胆管癌などの可能性は低く除外できる
<治療>
(1)切除可能であれば
①ERBD、ENBD、PTBDなどで減黄をする
②その後に 手術(主に膵頭十二指腸切除術) + 術後化学療法 を行う
※門脈浸潤例では、門脈合併切除を行う
(2)切除不能例では
化学療法:ゲムシタビン、S-1などの施行(GS療法※)
※黄疸があれば、胆道バイパス術や胆道ステント挿入
リンク先
※
<参考>
GS療法について:胆道がんの化学療法|膵臓がん|がん研有明病院 (jfcr.or.jp)(閲覧:2021.11.11)
G:ゲムシタビン C:シスプラチン S:S-1
この組み合わせで、GC療法、GS療法、GCS療法があります。状態等に合わせて選択されます。
膵体尾部癌について
膵体尾部癌は、膵癌のうち膵体部、膵尾部の部分(門脈よりも左側)に発生した癌をいう
閉塞しにくいことから黄疸症状も見られず、発見が遅れる。そのため、予後は極めて不良である。
・好発は中高年男性
・症状は、持続する心窩部痛、背部痛、体重の減少、下痢症状、口渇・多飲・多尿と(二次性)糖尿病の症状を呈する。
<検査所見>
・MDCT※による血管像や血管造影では、無血管野、脾動静脈の圧排、狭小化が認められる
・エコーでは低エコーの腫瘤がみられる
・CTでは低吸収の腫瘤像がみられる
・MRCP、ERCPで膵管が不整な狭窄、中断、閉塞があれば膵体尾部癌を考慮すること
MDCTについて:最新型の超高速X線CTスキャナーMDCT | 東京労災病院 (johas.go.jp)(閲覧:2021.11.11)
<治療>
(1)切除可能例(予後は不良であり、これができるのは1割ほどである)
・主に脾合併膵体尾部切除術の施行
その後、術後化学療法となる
(2)切除不能例
これは膵頭部癌に準ずる
放射線療法やゲムシタビン、S-1などの化学療法となる
・疼痛があれば、麻薬の施用や腹腔神経節ブロックとなる
→モルヒネ:内服薬、硬膜外注入
膵嚢胞について
・膵嚢胞(嚢胞性膵疾患)とは、膵実質内に生じた嚢胞状の物体をいい、内部には膵液、粘液、壊死物質などの液状内容物を含んでいる
・大きく2種類あり、嚢胞の内側が上皮に覆われている真性嚢胞と、上皮が無い線維性結合組織の仮性嚢胞(8割ほど占める)がある
・真性嚢胞は腫瘍性であり、癌化することがある(仮性嚢胞には上皮が無いことから癌化はしない)
・合併症には感染や出血が挙げられる
・発症要因は、急性膵炎や腹部外傷後などがある。
・症状は、疼痛、微熱があり、上腹部腫瘤がみられる。
<検査所見>
・腹部エコー、CT検査:透亮像がみられる(water density mass※)
・血管造影:動脈の偏位、伸展、圧排、無血管野を認める。
これにより、膵嚢胞(基本的には仮性嚢胞)を考慮する
・仮性嚢胞では膵炎症状を呈するが、真性嚢胞では嚢胞によっておこる圧排症状がみられる
※透亮像(water density mass):周囲に比べて黒く写って見える状態をいいます。
これは、ポリープや潰瘍、腫瘍の他、ニッシェというくぼみにバリウムが溜まった状態などでみられます
<治療>
膵嚢胞では原因や症状、発生部位などで治療が異なってくる
(1)腫瘍性嚢胞
手術療法:嚢胞摘出術を施行する
(2)仮性嚢胞
経過観察となる(6週間以内に自然軽快することがあるため)
→これで、消失がみられないようであれば内視鏡や経皮的またはCTガイド下で嚢胞ドレナージを施行する
※嚢胞が破裂、嚢胞内出血があれば緊急性がある
→緊急で内瘻術または膵部分切除術を行うこと
膵嚢胞の分類について
先に述べたとおり、膵嚢胞には大きく仮性嚢胞と真性嚢胞があります。これを更に細かく分類して確認していきましょう
仮性嚢胞 ┳ 急性膵炎後に発症
┣ 慢性膵炎後に発症
┗ 外傷後に発症
急性・慢性膵炎後の仮性嚢胞が7割から9割を占めている。主にアルコール性膵炎である
真性嚢胞
┣ 非腫瘍性
┃ ┣ 先天性(膵嚢胞線維症)
┃ ┣ 単純嚢胞
┃ ┗ 貯留性嚢胞
┃
┣ 膵嚢胞性腫瘍
┃ ┣ 粘液性嚢胞腫瘍(MCN)
┃ ┣ 漿液性嚢胞腫瘍(SCN)
┃ ┗ 膵管内乳頭粘液性腫瘍
┃ (IPMN)
┣ 充実性偽乳頭状腫瘍(SPN)
┃
┣ 膵内分泌腫瘍
┗ 膵肉腫
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粘液性嚢胞腫瘍について
粘液性嚢胞腫瘍(MCN)とは、粘液を産生する腫瘍である
・嚢胞と膵管は繋がってなく、厚い嚢胞壁に被包されており嚢胞内嚢胞(cyst in cyst)が認められる。
・女性に多く、膵体尾部に好発する。
進行は遅いが、癌化して転移リスクがあるため、切除治療がよい
→ 腹腔鏡下膵切除術
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漿液性嚢胞腫瘍について
漿液性嚢胞腫瘍(SCN)とは、漿液を含む多数の小さな嚢胞が集まった腫瘍のことである
・基本的には良性腫瘍
・実質様でやや造影効果あり
・腫瘍は大きくなることはまれだが、その時は血管圧迫などで腹痛がみられることがある
治療は、部位によって膵頭十二指腸切除術や膵体尾部切除術を行う
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膵管内乳頭粘液性腫瘍について
膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)とは、膵管上皮に腫瘍細胞ができて粘液分泌によって膵管が太くなり嚢胞状となる腫瘍である
・真ん中の主膵管に腫瘍ができる主膵管型、主膵管合流する分枝に腫瘍がある分枝型、その両方がある混合型がある。
・通常は腫瘍の増殖は遅く、悪性度は低い。治癒切除で予後は比較的いいとされる。
所見によっては経過観察でよいこともある
<所見>
・主膵管型においてVater乳頭開口部が開大して粘液排出がみられることがある。
・腫瘍が大きくなることで、主膵管内のイクラ状隆起性病変がみられる。
・通常は膵癌と同じく腫瘍を周囲のリンパ節や血管、神経と共に切除する。あとは、部位によって術式が変わる。
(幽門輪温存膵頭十二指腸切除術、膵体尾部切除術、腹腔鏡下膵切除術)
・浸潤癌のない早期のIPMNであれば腹腔鏡下脾動静脈温存膵尾側切除など、膵機能は温存させるのがよい
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充実性偽乳頭状腫瘍について
充実性偽乳頭状腫瘍(SPN)とは、腫瘍内の血管が破綻して腫瘍内で出血や壊死を来たすことにより嚢胞が形成される疾患である
・若年女性に多い(9割ほど)
・悪性度は低いが、稀に転移する。このことから、切除治療が望ましい。
・治療には、腹腔鏡下膵切除や膵機能温存手術がよい。
<参考>
膵嚢胞性腫瘍(IPMN, MCN, SPN, SCNなど)の外科治療 | 国立がん研究センター 中央病院 (ncc.go.jp)’(閲覧:2021.11.11)
嚢胞性膵疾患の鑑別についてのまとめ
IPMN(主膵管型) | IPMN(分枝型) | MCN | SCN | |
---|---|---|---|---|
形態 | 膵管の拡張 | ブドウ房状で膵管と交通 | 厚い線維性の被膜 大きな単房性または多房性 | 小嚢胞の集簇 蜂の巣状 |
特徴 | 主膵管拡張が5mm以上 | 主膵管と交通する分枝拡張が5mm以上 | 〃 | 壁が薄い多房性腫瘍 |
好発部位 | 膵頭部 | 膵頭部 | 膵体尾部 | 膵全体 |
好発する性差・年齢 | 高齢男性 | 高齢男性 | 中年女性 | 高齢女性 |
治療 | 外科的切除 (ハイリスク時※) | 外科的切除 (ハイリスク時※) | 外科的切除 (悪性例が多い) | 経過観察 (良性腺腫が多い) |
※ハイリスク要因
①閉塞性黄疸がみられる(膵頭部嚢胞性病変)
②壁に5mm以上の結節がみられる(分枝型)
③主膵管拡張が10mm以上である
<参考>
IPMN国際診療ガイドライン2017
精査する必要がある項目について
以下に当てはまる場合は、超音波内視鏡やERCPで精査していく必要がある。
超音波内視鏡検査の方が、質的診断※に優れている。
この時に、悪性所見があれば手術療法を考慮するが、そうでない場合は経過観察となる。
※ 質的診断:鑑別診断を含み、高確率で病変の正確な診断(病理学的診断)を行うこと
・臨床所見で膵炎症状が認められる場合。
以下は画像所見でのまとめです
5mm未満の壁在結節が造影される |
嚢胞径が30mm以上 |
肥厚して造影される嚢胞壁 |
主膵管径が5~9mm |
膵の上流で萎縮を伴った主膵管の狭窄像 |
リンパ節腫大 |
CA19-9が高値 |
2年間で5mm以上嚢胞径が増大した |
<参考文献>
メディックメディア Question Bank vol.1 肝・胆・膵
ビジュアルブック 消化器疾患
(注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
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