引き続き網膜疾患を見ていきます。これは全2回に分けてありますので
前回分はこちらを確認してください。
(注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
そのため、これを全て把握しても人体については全て理解し、学べたということにはなりませんのでご注意ください。
医学は未知の部分も含め、既知の部分であってもかなりの量です。ここは忘れないようにしてご利用ください。)
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加齢黄斑変性について
加齢黄斑変性とは、片眼の黄斑部に脈絡膜から新生血管が発生する疾患であり、加齢で生じる原因不明のものである。
両眼性も多く、高度の視力障害、中心暗点、変視症※を呈する
変視症:ものが歪んで見えること
これには、加齢黄斑変性症の他、中心性漿液性脈絡網膜症などの黄斑疾患でも認められる
・60歳以上の高齢者に多くみられる
・高齢者の失明要因として多い疾患である
・加齢が最もリスク因子だが、喫煙や食生活などもリスク要因となっている
→アルコールは因果関係は認められていないとしている
(また、紫外線やブルーライトはまだはっきりしていない)
・視力が0.1未満では中心暗点をきたす
・多くは滲出型であり、黄斑部に脈絡膜から新生血管が発生する
→これが網膜下出血を起こし、硝子体出血をおこす
・対して、萎縮型では地図上萎縮がみられる。この場合は、有効な治療法はない
・脈絡膜からの新生血管がBruch膜(ブルッフまく)※を越えて網膜側に侵入することで出血を起こす
・視力予後は不良である
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※ Bruch膜(ブルッフまく):網膜色素上皮層と脈絡膜に挟まれており、両者を境界している膜である
加齢黄斑変性症の予防には食生活が関係している可能性があり、その内容は
禁煙、サプリメントによる抗酸化物質の摂取(VC、VE、βカロテン、亜鉛)などがある
<検査>
蛍光眼底造影検査では、新生血管や出血がみられる(灰白色で見える)
また、滲出性網膜剥離が認められる
眼底検査、OCT(光干渉断層計)※1で脈絡膜新生血管、黄斑出血、漿液性変化を認める
その他、網膜浮腫なども認められる
黄斑部の脱色素と色素沈着、drusen(ドルーゼ)※2が認められる
次第に、黄斑部に新生血管による出血や滲出物がみられ、瘢痕化する
※1 OCT:近赤外線を用いて網膜の断層像を画像化する検査である
※2 drusen(ドルーゼ):Bruch膜(ブルッフ)の硝子様変性と肥厚出現が認められる
検査法 | 所見 |
---|---|
視力検査 視野検査 | 視力障害 中心暗点 変視症 |
眼底検査 | 黄斑部出血 硬性白斑 赤橙色の新生血管 |
OCT:光干渉断層計 | 脈絡膜新生血管 漿液性網膜剥離 網膜浮腫 |
<治療>
予後は不良である
滲出型の黄斑変性症に対する治療法となる(萎縮型では有効な治療法がない)
第一選択:抗VEGF抗体硝子体腔注入、光線力学療法(PDT:photodynamic therapy)
その他手術療法:光凝固、硝子体手術(網膜下手術)
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網膜剥離について
網膜剥離は、10層の網膜のうち内境界膜から視細胞層までの神経膜9層が最外層の色素上皮層からはがれて硝子体中に浮き上がる状態をいう
一度剥がれた網膜は完治は難しく、多少の障害が残ってしまう。
<分類>
網膜剥離
┃
┣(1)裂孔原性
┃
┗ 非裂孔原性
┃
┣(2)牽引性
┃
┗(3)滲出性
(1)裂孔原性:網膜裂孔から硝子体液が網膜下に入って生じるもので、過度の近視や加齢、外傷などによっておこる。
アトピー性皮膚炎※、アレルギー性結膜炎などから合併することがある
→これは、眼周囲の痒みで掻破や叩くことで網膜剥離を生じた結果である。
短期的にステロイド治療がよい。長期では緑内障リスクが上がる
(2)非裂孔原性-牽引性:硝子体索による網膜の牽引によって生じるもので、穿孔性外傷後、糖尿病網膜症末期の増殖網膜症、未熟児網膜症などでおこる
(3)非裂孔原性-滲出性:Vogt-小柳-原田病、家族性滲出性網膜剥離、Coats病(コーツ)、高血圧性網膜症、中心性漿液性脈絡網膜症などがある
※ アトピー性皮膚炎の眼合併症について:白内障、アレルギー性結膜炎、円錐角膜、Kaposi(カポジ)水痘様発疹症などがある。
・20歳代と50歳代に多い
・光視症:キラキラ光るものが見える
・飛蚊症:目の前に蚊が飛んでいるようなものが浮かんで見える
→飛蚊症を生じる疾患には、後部硝子体剥離、ブドウ膜炎、硝子体出血がある
・突然に視野欠損がおこり、拡大していく
・剥離が黄斑部に達すると、急激に視力低下をきたす
・網膜剥離により眼圧は下がる傾向にある(左右差あり)
<検査>
眼底検査では黄斑部剥離のため、網膜裂孔と剥離像を認める(裂孔原性網膜剥離の診断)
<治療>
・裂孔のみの場合(剥離なし)
レーザー光凝固、熱凝固、冷凍凝固にて予防する
・剥離がある場合は外科治療となる
硝子体手術、裂孔閉鎖術、強膜内陥術、強膜輪状締結術、網膜下液の除去、ガス注入
強膜内陥術:眼球外からバックルで強膜を内陥させて、網膜裂孔部にかかる内側への牽引を弱めるための手術である
硝子体手術:眼内から牽引を解除するための手術である
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硝子体出血の要因について
硝子体出血の主な要因は、網膜静脈閉塞症や糖尿病網膜症が挙げられる
その他にも考えられることから、以下を参考にして確認してみてください
要因 | 疾患 |
---|---|
網膜の新生血管から出血 | 網膜静脈分枝閉塞症(BRVO) 網膜中心静脈閉塞症(CRVO) 糖尿病網膜症 |
脈絡膜の新生血管から出血 | 加齢黄斑変性 |
正常血管から出血 | 裂孔原性網膜剥離 外傷性 |
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アトピー性白内障
アトピー性皮膚炎の眼合併症で白内障を生じるもの
・症状には、結膜炎、白内障、円錐角膜、網膜裂孔などがみられる
・網膜裂孔では網膜剥離のリスクがあるため、緊急処置が必要となる
<検査>
倒像鏡検査、Goldmann三面鏡検査、超音波検査、ERG(網膜電図)などが診断に有用である
→ 眼科編③ 検査 参照
<治療>
網膜裂孔には、強膜内陥術で網膜裂孔の閉鎖を眼外から行う(小児の第一選択)
強膜内陥術を施行すると、画像検査では外部からの圧迫が確認できる
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中心性漿液性脈絡網膜症
・好発:中年男性
・ストレスが誘因となる
・中心比較暗点や変視症、小視症、遠視化、限局性漿液性網膜剥離、点状蛍光漏出(噴水状)を呈する
<治療>
・漏出点が黄斑部(中心窩)から離れていれば光凝固を施行
・漏出点が黄斑部に近い場合は、循環改善薬となる
視力の予後は良好である
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網膜色素変性症について(難病指定:90)
網膜色素変性症とは、常染色体劣性遺伝であることが多い両眼性網膜変性疾患である
※症候性網膜色素変性症についてはこちらを参照してください
・慢性的に進行することで、夜盲症、視野狭窄、羞明(まぶしく感じる)を呈する
→晩期では視力低下や失明となる
・合併症には併発白内障というのがある
・輪状暗点が慢性的に進行し、求心性視野狭窄を呈する
<検査>
眼底検査:網膜広範で骨小体状の黒色色素沈着、動脈狭細化、視神経乳頭萎縮が認められる
視野検査:輪状暗点から求心性視野狭窄に至る
網膜電図(ERG):波形が減弱消失し平坦化する。早期から消失型を呈する
暗順応検査:進行により一相性を呈する
蛍光眼底造影検査:点状の過蛍光を呈する、類縁疾患との鑑別に有用
<治療>
現在、有効な治療法はなし
対症療法となる
薬物療法、生活指導(羞明にはサングラス着用、紫外線を避ける)
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黄斑部疾患について
黄斑部疾患はいくつもあり、簡単にまとめると以下の通りとなる。なお、詳細は後述でもあります。
中心性漿液性脈絡網膜症 |
加齢黄斑変性 |
網膜色素上皮剥離 |
家族性黄斑変性 |
眼底出血について
眼底出血をきたす疾患は様々ある。その主なものは以下の通りとなっている
糖尿病網膜症 | 高血圧性網膜症 |
網膜中心静脈閉塞症※1 | 網膜静脈分枝閉塞症 |
加齢黄斑変性※2 | 白血病などの血液系疾患 |
腎性網膜症 | SLE |
ー | など |
※1 網膜中心静脈閉塞症では、放射状の火炎状出血をきたすが、出血ではないことに注意。
むしろ虚血のcherry red spotが認められる
※2 加齢性黄斑変性では出血がみられることがあるが、それに対して中心性漿液性脈絡網膜症では出血はきたさないという違いがある
その他疾患類について
網膜色素上皮剥離
網膜色素上皮剥離の多くは、漿液性脈絡網膜症を合併している
<治療>
光凝固を施行する
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Coats病(コーツ)
Coats病とは、小児疾患であり網膜剥離の一種である
原因は不明だが、遺伝性はないとされる。片目に起こるため、視力低下に気づかないことがある。
長引くと斜視の原因となるため、この時に初めて気づくことが多い。
長引くと完治が困難となる
<検査>
眼底検査
・網膜に滲出斑(黄色いしみ)や出血を生じる
蛍光眼底造影検査
・新生血管の所見、網膜血管の閉塞が認められる
<治療>
滲出斑や網膜剥離が軽度では、レーザー凝固にて進行を抑える
→進行例では効果が得られない
進行例では手術療法となる
糖尿病網膜症
糖尿病網膜症で眼虚血がみられる場合は、治療で汎網膜光凝固を選択する。
→両眼性の疾患である
糖尿病黄斑浮腫
糖尿病黄斑浮腫とは、糖尿病の合併症によっておこる黄斑の浮腫である
中心部に及ぶことで著しく視力が障害される
<治療>
ステロイド薬硝子体内注射※
※ ステロイド薬硝子体内注射:糖尿病黄斑浮腫の他、静脈閉塞症、加齢黄斑変性などの黄斑浮腫に対してもテノン嚢下に投与している
黄斑円孔
黄斑円孔とは、片目の視力低下がみられ、眼底検査やOCTで確認すると黄斑部に穴がみられる疾患である
・症状には変視がある(ものが歪んで見えること)
・この他、中心暗点もみられる
・好発は高齢者となっている
<所見>
OCT検査
・中心窩の嚢胞前壁に裂隙がみられる
・硝子体皮質による牽引あり
・網膜色素上皮の露出(全層の円孔)
など
<治療>
手術療法:硝子体手術
→後部硝子体剥離と内境界膜切除をおこなう
黄斑円孔の原因となっている、網膜の垂直方向と接線方向の牽引を解除してから治療をする
術中はガス注入や術後のうつぶせをすることがある※
※ うつ伏せ:網膜の伸展、接着させるため空気(ガス)の注入を眼内に行うことがある
その際、網膜の接着効果を得るためにガスが自然吸収されるまではうつぶせになる必要がある
これは、1~2週間ほど食事やトイレ以外はうつ伏せとなっていることが必要である
このほか、変視症を呈する疾患についてみていく
加齢黄斑変性 | 網膜上膜 |
中心性漿液性脈絡網膜症 | 糖尿病黄斑症 |
網膜剥離 | など |
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家族性黄斑変性
家族性黄斑変性では、外網状層に小空胞を生じてこれが融合する
これにはBest病(ベスト)※1やStargardt病(スターガルト)※2などがある
※1 Best病(ベスト):緩徐に進行する黄斑ジストロフィー(異形成、異栄養症)の一種である。遺伝要因(BEST1(VMD2)などの関与)
一般的には小児~10代後半でみられ、次第に中心視力低下や変視症を呈する
検査は眼底検査、EOG(眼球電位図)
大きくはstage1~4の分類がある
※2 Stargardt病(スターガルト):黄斑ジストロフィーの一種(難病指定:301)
遺伝性(95%がABCA4の異常)の若年性黄斑変性である。発症は小児に多く、およそ1万人に1人の割合
緩徐に視細胞が損傷し、視野欠損、色覚異常、歪み、ぼやけ、中心が見えにくいなどの症状を呈する
希少疾患のため治療はオーファンドラッグ(希少疾病治療薬)となる
黄斑円孔のステージ分類について
ステージ分類 | 内容 |
---|---|
stage1A、1B | 加齢で硝子体が収縮するとき、硝子体皮質と網膜の癒着が強いと後部硝子体剥離が起こらずに、網膜が硝子体皮質に牽引される そのため、通常は凹んでいる中心窩が平坦化し、浮き上がって嚢胞を形成する 視力低下はあまりなく、0.5以上のことも多い |
stage2 | 網膜がさらに牽引されて嚢胞の縁の一部が弁状になりはがれかかっている状態である 視力低下や変視症を呈する |
stage3 | 弁状の嚢胞上部の網膜が蓋となり、完全分離して円孔が完成する 円孔周囲の網膜は、牽引された名残があり浮き上がっている 視力低下や変視症はより進む ものがつぶれて見えたり、中心によって見える |
stage4 | stage3から数カ月~数年経つことで、硝子体が更に収縮する 後部硝子体剥離の完成 (分離した蓋が硝子体皮質に付着したまま浮き上がって前方に移動する) |
<参考>
黄斑ジストロフィの診断ガイドライン (nichigan.or.jp)
ガイドライン等 : JRVS - 日本網膜硝子体学会
網膜上膜(黄斑前膜)
網膜上膜とは、網膜黄斑部に膜様組織が形成されて、その収縮で黄斑部に皺(しわ)ができ、視力低下や変視症を呈する疾患である
・原因は様々ある
→加齢性変化による後部硝子体剥離ということが多い(網膜に硝子体皮質成分が残存することでおこる)
・出血や白斑は見られない
→これは黄斑疾患の中で、網膜上膜の他に黄斑円孔、漿液性網膜剥離などがある
確定診断にはOCT(光干渉断層計)が有用である
<治療>
症状が強くみられる場合
硝子体手術が適応となる(膜をはがす処置)
ブドウ膜炎
症状には、飛蚊症などがある
・主に網膜血管炎、硝子体混濁を呈する
・Vogt-小柳-原田症候群でブドウ膜炎や漿液性網膜剥離などをおこす
フレアセルフォトメーター:ブドウ膜炎の前房内炎症を評価する検査である
→術後の前房内炎症を評価する検査でも行う
角膜実質炎
角膜実質炎では、慢性非潰瘍性の角膜中間層の炎症である
水晶体脱臼
水晶体脱臼は、毛様体から水晶体を固定しているZinn(チン)小帯が切れることで生じるもの
角膜ジストロフィー
角膜ジストロフィーは家族性、遺伝性角膜混濁疾患である
硝子体手術について
硝子体手術は第一選択となりにくいが、行うことのある疾患には以下が挙げられる
主に増殖糖尿病網膜症、網膜剥離で行われる
その他
・加齢黄斑変性症の病変が中心窩から離れた部分のみに、病変部の局所光凝固治療を施行する
など
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レーザー光凝固療法について
レーザー光凝固術では、網膜の凝固や新生血管の抑制が期待される手術法である
レーザー光線で網膜剥離しないように周囲を焼き付ける手術法
以下に、レーザー光凝固療法の適応疾患についてまとめてあります。
種類 | 内容 |
---|---|
角膜疾患 (エキシマレーザー) | 近視などの屈折矯正 角膜混濁の除去 |
網膜疾患 (アルゴンレーザー、マルチカラーレーザー、半導体レーザーなど) | 糖尿病網膜症、中心性漿液性脈絡網膜症、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、網膜裂孔、網膜剥離、新生血管黄斑症(加齢黄斑変性症)、未熟児網膜症などの網膜光凝固 |
緑内障 (アルゴンレーザー、YAGレーザー、半導体レーザーなど) | 狭隅角緑内障、広隅角緑内障、血管新生緑内障に対する虹彩または隅角、毛様体への光凝固 |
後発白内障 (YAGレーザー) | 後嚢混濁除去 |
網膜芽細胞腫について
網膜芽細胞腫とは、乳幼児に発症する眼内悪性腫瘍である。これは3,4割程度が常染色体優性遺伝である。
遺伝性の場合は両眼性が多い
・好発:乳幼児
・白色瞳孔を呈する
→黒内障性猫眼(こくないしょうせいねこめ)といい、これで発見されることが多い。放置されると2,3年で死亡に至る
・腫瘍の増大で網膜剥離や眼圧上昇を呈する
・結膜充血は5%ほどでみられる
・両眼性は30%ほど
・斜視、緑内障、角膜混濁などがみられることもある
<検査>
CT検査、エコー検査で腫瘤像を認める
→石灰化が多い
石灰化の確認により確定診断
<治療>
早期発見で腫瘍が小さい場合は、保存的治療が第一選択である
元来
・片眼例:眼球摘出
・両眼例:重傷眼を摘出する
→もう片方の眼は保存的治療とする(光凝固、温熱化学療法、放射線療法等)
※最近は化学療法が進んでおり、両眼性や片眼性いずれであっても眼球温存療法をとることが多い
その他の白色瞳孔疾患について
網膜芽細胞腫では白色瞳孔がみられるが、その他にもあります。
疾患名 | 内容 |
---|---|
先天性白内障 | 遺伝性や胎内感染、代謝異常疾患など様々な原因がある 遺伝性では両眼性が多い 水晶体混濁を生じることで白色瞳孔を呈する |
未熟児網膜症 進行が緩徐なⅠ型と急速に進行するⅡ型がある | 生下時体重が1,500g以下、在胎週数が30週以下の児に発症しやすい 網膜の未熟性や高濃度酸素投与、網膜血管が眼底途中までしか成長していない状態が原因となっている 症状:網膜血管怒張、蛇行、血管新生、吻合など 治療:網膜光凝固、進行例では硝子体手術 |
第一次硝子体過形成遺残 (PHPV) | 片眼性で水晶体後面鼻側の血管を伴った灰白色膜 しばしば小眼球を伴う |
網膜剥離 | 網膜の剥離が大きく起こることで白色瞳孔を呈することがある |
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軟性白斑と硬性白斑の特徴について
軟性白斑と硬性白斑では真逆といえるほどの特徴があります。ここを取り違えると大変ですので、しっかり把握することが重要です
項目 | 軟性白斑 | 硬性白斑 |
---|---|---|
原因 | 網膜の虚血性変化で生じる | 網膜浮腫や出血が長期で持続し、フィブリンや脂質などが網膜内に沈着したもの |
境界 | 不鮮明 | 鮮明 |
改変Davis分類 | 増殖前網膜症 増殖網膜症 | 単純網膜症 |
疾患 | 高血圧性網膜症 膠原病 糖尿病網膜症 網膜中心静脈閉塞症 AIDS網膜症 など | 糖尿病網膜症 腎性網膜症 視神経炎 など |
全身性エリテマトーデス(SLE)(指定難病:49)
全身性エリテマトーデス(以下、SLE)とは、全身のあらゆるところに皮疹や発疹などの炎症を呈する免疫学的疾患と考えられているが、はっきりしたことはわかっていないのが現状
SLE:systemic lupus erythematosus
・症状は様々で、発熱、全身倦怠感、食欲不振、関節炎、皮膚炎の他、神経系、血液系、腎臓や肺、消火器、中枢などにも症状を呈する
→一例として、ループス腎炎、脱毛、口内炎、日光過敏症、血管炎、四肢の関節のこわばりなど
・頬にできる発疹で、蝶形紅斑(バタフライラッシュ)の皮疹が特徴的
・眼科として、眼底検査では多発散在する軟性白斑(白色の辺縁がぼやけている)がみられる
・疫学的には、国内に10万人ほどいると推定。男女比は1:9と女性に多い
・発症年齢は20歳代~40歳代に多いが、全年齢で起こりうる
・遺伝性は半々くらいで、まだはっきりはしていない
・女性では、生理が始まってから終わる期間に症状を呈することが多い
<検査>
採血:ほとんど全例で抗核抗体(自己抗体)を認める
抗ds-DNA抗体、抗Sm抗体、補体低下、白血球や血小板の減少、貧血などで診断する
・膠原病の合併症(シェーグレン症候群や抗リン脂質抗体症候群(血栓の原因)など)では抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント検査など
(この場合、下肢静脈エコーや造影CTで血栓がないか確認する必要あり)
<治療>
ステロイドパルス療法:点滴で大量投与する方法(メチルプレドニゾロンとして500mg~1,000mgを3日間)
これは、経口投与よりも効果が高く、早く著効するため点滴がよい
大量投与するが、1クール3日間ほどの短期間投与のため比較的副作用は少ないとされる
・免疫抑制剤:ステロイドの副作用が強い場合や効果がみられない場合に用いる
→タクロリムス、アザチオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、ミゾリビンなど
※日和見感染に注意
・抗リン脂質抗体症候群も合併例では、抗凝固療法としてワーファリン、バファリンなどで血栓予防
・腎不全時は支持療法や対症療法(腎透析など)、血行障害では血行拡張薬を用いたりする
<参考>
ステロイドパルス療法(厚生労働省):2r9852000002gig3.pdf (mhlw.go.jp)
<参考文献>
メディックメディア Question Bank vol.5 眼科
ビジュアルブック 眼科疾患
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