眼科編

眼科編① 解剖学、検査の種類について(頭蓋底含む)

眼科疾患

ここからは眼科編がはじまります。

まずは第1回目ということですので、総論になります。解剖学からいきたいと思います。



今はリンクなどから各自確認してください


注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
そのため、
これを全て把握しても人体については全て理解し、学べたということにはなりませんのでご注意ください。
医学は未知の部分も含め、既知の部分であってもかなりの量です。ここは忘れないようにしてご利用ください。)


眼の機能視力、視野、色覚の3つの機能が正常に働くことでものをしっかり見ることができます。


それぞれ一つでもかけていれば視力障害の元となります。まずは基本の構造を見ていきましょう。


尚、緑内障などの視野障害は眼科編②となっています。

房水産生から排出までの流れについて


房水毛様体上皮で産生され、隅角から吸収される。

角膜、硝子体、水晶体などの血管の存在しない器官を栄養する。


房水の流れについて


毛様体上皮 → 後房 → 瞳孔 → 前房 


→ 隅角
  ┣ 85% 線維柱帯 
  ┃  ↓
  ┃ Schlemm管(シュレム)
  ┃  ↓
  ┃ 房水静脈
  ┃
  ┗ 15% ぶどう膜強膜流出路


眼の各機能について


部位機能・特徴
眼球大きさは約24mm(眼軸)、重さ約7g、容積約6.5mL
角膜上皮感染防止の働きを持つ
Schlemm管(シュレム)線維柱帯にあるもので、房水を取り込む
瞳孔径20歳代で最大となり、加齢とともに小さくなる
結膜眼球表面を覆う半透明な膜様組織
水晶体直径はおよそ9mm、厚さ4〜5mm、透明組織、およそ20Dの屈折力がある

屈折力については次の項目参照)
硝子体眼球内容の大部分を占めているもので透明なゲル状組織である。

容量は4〜6mL、およそ99%が水分である。

構成成分として、コラーゲン、ヒアルロン酸などからなる。
脈絡膜ぶどう膜後方を占める膜様組織血管層Bruch膜(ブルッフ)からなる。

血管が豊富であり、網膜外層への栄養を供給する。
強膜角膜周囲の白い膜をいう

眼球外表の6分の5を占める

厚さは約1mm、眼球の形状保持眼球内容の保護をする
角膜内皮細胞次の項目参照
眼の各機能について


正常眼圧10mmHg〜21mmHgである。


高いと視神経を圧迫し、障害をおこす。(緑内障など)



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目の屈折力について


目の屈折力はレンズの度の単位であるジオプトリー(D)を用いて表します。


眼の調節力単位Dジオプター(読みも区別した方が良い?))



焦点距離1mのレンズの度を1ジオプトリーと決め、焦点距離の逆数で表す。


焦点距離が短かければジオプトリーの数値は大きくなり、焦点距離が長いと小さくなります。


例えば、焦点距離が50cmなら2D,25cmなら4Dとなる。また2mであられば0.5Dとなります。


目の屈折力は,ほとんどが角膜と水晶体の屈折力からなっている。


そのほかの組織は,普通の水の屈折率とほとんど変わらないものとなっている。


部位屈折力
角膜40D
水晶体前面 • 後面5D • 8D
水晶体核6D
全屈折力60D
目の屈折力について


上記の表より、水晶体は全部で20Dほどの屈折力となります。


角膜について


角膜:眼内において最も屈折力があり、特に角膜前面の屈折力が強い


角膜の発生は
 ┃
 ┗ 角膜実質・内皮
   ┃ ┗ 中胚葉由来
   ┃   
   ┗ 角膜上皮
     ┗ 表層外胚葉由来



角膜の大きさは


横が11〜12mm

縦は10〜11mm

厚さは中央約0.5mmほど


となっている。


角膜の知覚三叉神経第1枝により、血管は存在していない


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角膜内皮細胞について


角膜内皮細胞とは、一層の扁平細胞である。


これは、Naポンプによる能動輸送により


角膜実質から前房側に水を汲み出し角膜浮腫を防いで角膜の透明性を維持している


・角膜実質への酸素や栄養を供給する。


・角膜内皮細胞は細胞分裂はしないことから、再生はされない。これは加齢によって減少する


・白内障や緑内障などの内眼手術長期コンタクトレンズ装用でもさらに減少をする


・角膜内皮細胞の密度は通常2,500〜4,000cells/m㎡だが、急に減少して500cells/m㎡となると角膜浮腫を生じ、水疱性角膜症を発症する。


角膜5層構造について


目の表面から順に並べると以下の通りの構成となっています

目の構造機能について
外側に接している面
角膜上皮感染防止の働きを持つ。
Bowman膜(ボーマン)厚さが8〜14μmの光学顕微鏡で淡明にみえる部位
角膜実質最も厚い層となっている。
Descemet膜(デスメ)強靭な薄い膜。この膜に損傷があると円錐角膜となり、視力に深刻な障害が発生する。再生能力はない
角膜内皮角膜実質への酸素や栄養を供給する。
眼球の内側
角膜5層構造について


眼の血管支配について


内頸動脈
 ↓
(視神経管)
 ↓
眼動脈
 ┣①網膜中心動脈
 ┃ ┗ 網膜中心静脈┓
 ┃         ┃
 ┣②長•短後毛様動脈. ┃
 ┃  ┗→渦静脈  ↓
 ┃    ┣→上眼静脈
 ┃    ┃  ┗→上眼窩裂
 ┃    ┃      ↓
 ┃    ┃    海綿静脈洞
 ┃    ┗→下眼静脈 ↑ ┃ 
 ┃       ┗→下眼窩裂↓
 ┃       (翼突筋静脈叢)
 ┗③ 涙腺動脈


視覚情報処理経路について


網膜 → 視神経 → 視交叉 → 視索 → 外側膝状体 → 視放線 → 後頭葉(視中枢:Area17)


・視路における視神経は外側膝状体でニューロンを変えている。


・視神経のうち対光反射の反射弓を形成する線維


外側膝状体に入らず上丘の視蓋前核を介し両側の動眼神経副核E-W核:Edinger-Westphal核(エディンガーウェストファル))に入力する。


このE-W核対光反射の中枢である。


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Edinger-Westphal核について(エディンガーウェストファル)


Edinger-Westphal核(エディンガーウェストファル)とは、中脳にある神経細胞の集まりである。


対光反射遠近調節反射および近見瞳孔反射を調節する、副交感神経核である。


眼の機能について


名称機能
暗所視暗所での視機能であり、明るいところに比べて桿体視細胞が優勢に働く
立体視両眼視機能であり、左右の眼にできる像の僅かなズレは、融像されて立体感をつくる
同時視両眼視機能である
融像両眼視機能である

両眼視機能障害斜視の際に生じる異常である
中心視力中心窩で見た時の視力のこと。

他の部位の網膜で見た時の視力は中心外視力という
調節近点極度に調節して中心窩に結像する近方の点のこと
視運動眼振動くものを見た時に誘発される生理的眼振のこと
眼の機能について


眼の神経支配について


神経支配領域
動眼神経上直筋、下直筋、内直筋、下斜筋、上眼瞼挙筋
副交感神経瞳孔括約筋収縮する)、毛様体筋
滑車神経上眼窩裂 → 上斜筋
三叉神経上眼窩裂

→(第1枝)眼神経:前頭神経、涙腺神経、鼻毛様体神経(交感神経)

→ 瞳孔散大筋
下眼窩裂

→(第2枝)上顎神経:眼窩下神経
外転神経上眼窩裂 → 外直筋
顔面神経内耳道 → 顔面神経管 → 茎乳突孔 → 眼輪筋
交感神経瞼板筋(Muller筋:ミュラー)、瞳孔散大筋散大する
毛様体神経節ぶどう膜に分布している
眼の神経支配について


<瞳孔と眼瞼の支配神経について>


瞳孔 ┳ 散瞳 ━ 瞳孔散大筋
   ┃     (交感神経)
   ┃
   ┗ 縮瞳 ━ 瞳孔括約筋
         (副交感神経)
 
眼瞼 ┳ 開瞼 ┳ 上眼瞼挙筋
   ┃    ┃(動眼神経)
   ┃    ┃
   ┃    ┗ 上瞼板筋
   ┃     (交感神経)
   ┃
   ┗ 閉瞼 ━ 眼輪筋
         (顔面神経)


網膜外層の視細胞について


細胞機能部位
錐体細胞(明所視)、細胞数600万個視力、色の識別色覚異常、中心暗点に関係する黄斑部に多い
桿体細胞(暗所視)、細胞数1億個明暗の反応夜盲、視野狭窄に関係する網膜周辺部に多い。中心窩には無い
網膜外層の視細胞について


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眼球運動について


外眼筋の麻痺によって障害されている部位(脳神経・支配核)がわかり、脳幹の機能を推測できる


小脳の眼球運動の関与は大きいとされているが、未だ詳細は不明である


眼球運動には外眼筋という6つの筋肉が関係している


下斜筋以外の5つは視神経が眼窩先端部分から出ているところを取り巻いている総腱輪から起始している


そして、6つの筋肉は前方に走行しており眼球表面の強膜に付着している


6つの外眼筋の麻痺部位障害部位
内側直筋・上直筋・下直筋・下斜筋動眼神経
上斜筋滑車神経
外側直筋外転神経
外眼筋の麻痺部位と、その予測される障害部位について


下斜筋:下前方に収縮するため上向き

上斜筋:上前方に収縮するため下向き


内眼筋支配神経
瞳孔括約筋動眼神経
瞳孔散大筋交感神経
毛様体筋動眼神経
内眼筋と支配神経について


眼瞼支配神経
上眼瞼挙筋動眼神経
ミュラー筋交感神経
眼輪筋顔面神経
眼瞼と支配神経について



外眼筋麻痺の確認方法について


外眼筋というのは、正中視で各外眼筋単独の作用を示す(矢印が目の向けた方向)
(真ん中を注視しているときに、それぞれの外眼筋の作用を示している)


鼻側斜筋
上転+外旋
左眼直筋
上転+内旋
耳側
直筋
(外転)
→外側直筋
(外転)
斜筋
下転+内旋
直筋
下転+外旋
各方向を見た時の筋肉の動き方(左眼)


<表の見方>

左眼を真ん中から左上を見たときは下斜筋右上を見たときは上直筋ということを表しています

上斜筋、下斜筋は内転移で働きが大きい


耳側直筋
上転+内旋
右眼斜筋
上転+外旋
鼻側
外側直筋
(外転)
→ 内直筋
(外転)
直筋
下転+外旋
斜筋
下転+内旋
各方向を見た時の筋肉の動き方(右眼)


意識がある場合複視の有無について確認すること


正中視の位置から右方視右外側直筋左内側直筋の動きを確認する
(真ん中の状態から右を見て)


右方視の位置から上方に視線を移動させ右上直筋左下斜筋の動きを確認する
(右を見ている状態から上をみて)


右方視の位置から下方に視線を移動させ右下直筋左上斜筋の動きを確認する
(右を見ている状態から下を見て)


④次は正中視の位置から左方視右内側直筋の動きを確認する
(真ん中を見ている状態から左を見て)


左方視の位置から上方に視線を移動させ右下斜筋左上直筋の動きを確認する
(左を見ている状態から上を見て)


左方視の位置から下方に視線を移動させ右上斜筋左下直筋の動きを確認する
(左を見ている状態から下を見て)


軽い麻痺であれば、複視のズレが最大になる注視方向を同定させカバーテストを行うことで麻痺している外眼筋を同定する方法がある


右方視眼位から上転させることで、右上直筋左下斜筋を確認(右下斜筋:外旋、左上直筋は内旋
(右を見ている状態から上を見る)


右方視眼位から下転させることで、右下直筋左上斜筋を確認(右上斜筋:内旋、左下直筋は外旋
(右を見ている状態から下を見る)


左方視眼位から上転させることで、右下直筋左上斜筋を確認(右上直筋:内旋、左下斜筋は外旋
(左を見ている状態から上を見る)


左方視眼位から下転させることで、右上斜筋左下直筋を確認(右下直筋:外旋、左上斜筋は内旋
(左を見ている状態から下を見る)


意識のない場合では、眼球前庭反射カロリックテストで外眼筋の麻痺を調べることとなる


上向きで複視があるということは、下直筋の絞扼や眼窩内容物の嵌頓が考えられる


眼の障害について


霧視中間透光体の混濁または、網膜神経節細胞に関係している


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網膜の10層構造について


項目細胞層光の当たる側 ↑領域別に区別
①内境界膜外側

膝状体までを

第2ニューロン
脳層(網膜中心動脈により栄養)②神経線維層第2ニューロン
③神経節細胞層神経節細胞
④内網状層アマクリン細胞第1ニューロン
⑤内顆粒層双極細胞、水平細胞、ミューラー細胞
⑥外網状層
神経上皮層(脈絡膜動脈により栄養)⑦外顆粒層視細胞(錐体)-
⑧外境界膜-
⑨視細胞層視細胞(桿体)-
⑩色素上皮層色素上皮細胞-
脈絡膜側 (これより下)↓
網膜の10層構造について


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頭蓋底を形成する骨と孔について


孔の名称神経・血管について該当する頭蓋底・構成する頭蓋骨
篩板孔(しばんこう)嗅神経(第Ⅰ脳神経)前頭蓋窩 ・ 篩板骨
視神経管視神経(第Ⅱ脳神経)

眼動脈
中頭蓋窩 ・ 蝶形骨
上眼窩裂動眼神経(第Ⅲ脳神経)

滑車神経(第Ⅳ脳神経)

三叉神経第一枝

外転神経(第Ⅵ脳神経)

眼神経(第Ⅴ1脳神経)

上眼静脈
〃 ・ 蝶形骨
正円孔上顎神経(第Ⅴ2脳神経)〃 ・ 蝶形骨
卵円孔下顎神経(第Ⅴ3脳神経)〃 ・ 蝶形骨
内耳孔、内耳道顔面神経(第Ⅶ脳神経)

内耳神経(聴神経)(第Ⅷ脳神経)
後頭蓋窩 ・ 側頭骨
頸静脈孔舌咽神経(第Ⅸ脳神経)

迷走神経(第Ⅹ脳神経)

副神経(第Ⅺ脳神経)※

内頸静脈
〃 ・ 側頭骨、後頭骨
舌下神経管舌下神経(第Ⅻ脳神経)〃 ・ 後頭骨
大後頭孔副神経(第Ⅺ脳神経)※

延髄

椎骨動脈

前・後脊髄動脈
〃 ・ 後頭骨
頭蓋底を形成する骨と孔について


※副神経は例外的に頭蓋外の頸髄から起こり、大後頭孔から頭蓋内に入ったあと、延髄からの成分と合流し、再び頸静脈孔を通って頭蓋の外へ出ている。



眼窩を構成する眼窩骨について


全部で7つある。鼻骨は含まれてはいないことに注意


前頭骨
頬骨
上顎骨
蝶形骨・大翼、小翼があり、小翼側に視神経管が通る

・また、上眼窩裂、下眼窩裂がある
篩骨
口蓋骨
涙骨
眼科を構成する眼窩骨について



眼瞼下垂について


眼瞼下垂の原因は、上眼瞼挙筋およびMuller筋(ミュラー、ミューラー)の障害によって生じるもの。


これには、加齢によって挙筋腱が伸展し、眼瞼下垂がおこるもの、コンタクトレンズ長期装用によって挙筋腱が伸展し、眼瞼下垂をきたすものなどがある。


この他、眼瞼下垂をきたす疾患類について以下にまとめておきます。


リンク先

眼瞼下垂をきたす疾患について


障害される筋状態原因疾患・要因
上眼瞼挙筋(動眼神経支配)挙筋自体の異常先天性、眼筋ミオパチー
挙筋腱の伸展加齢性、コンタクトレンズ
動眼神経麻痺動脈瘤


・内頚動脈-後交通動脈分岐部

・脳底動脈-上小脳動脈分岐部

Weber症候群※1
神経筋接合部異常重症筋無力症
Muller筋(交感神経支配)交感神経麻痺Horner症候群※2
瞼下垂をきたす疾患について


※1 Sturge-Weber症候群(スタージ・ウェーバー症候群(指定難病157)):リンク先に詳細ありますので時間がありましたらご確認ください。

 スタージウェーバー症候群は、頭蓋内軟膜血管腫と、顔面ポートワイン斑(毛細血管奇形)、緑内障を特徴とする神経皮膚症候群の一つである。多くの神経皮膚症候群が常染色体優性遺伝を示すのに対し、スタージウェーバー症候群では遺伝性を示した例の報告はない。病態の基本は静脈発生障害による循環不全であり、脳、皮膚および眼の毛細血管奇形により診断がなされる。臨床上の問題点は、てんかん、精神運動発達遅滞、運動麻痺、および視力・視野障害などの神経症状が主であるが、顔面ポートワイン斑も患者の精神的苦悩の原因になる。神経症状は進行性および難治性の経過をとることが多く、予後に最も影響を与えると考えられている。
 近年、9番染色体長腕上に存在するGNAQ遺伝子の単一ヌクレオチド、モザイク変異が報告された。それより毛細血管奇形組織からの診断が期待されている。

小児慢性特定疾病情報センター 「スタージ・ウェーバー(Sturge-Weber)症候群 概要・定義」 より



※2 Horner症候群(ホルネル、ホルナー)

交感神経遠心路の障害によって生じる,中等度縮瞳,眼瞼下垂(眼裂狭小),眼球陥凹(眼球後退)を三大徴候(Horner’s triad)とする症候群。眼の徴候以外では,顔面の発汗低下と紅潮を特徴とする。交感神経遠心路には3つのニューロンがあり,そのいずれが障害されても,本症候群を発症する。交感神経遠心路は視床下部を発し脳幹,脊髄毛様脊髄中枢に至る(第1),ついで節前ニューロン(第2)は肺尖部を通り上行し,上頸部交感神経節で終わる。節後ニューロン(第3)は顔面の血管,発汗神経は外頸動脈に沿って走り,一方眼瞼,眼球へのそれは内頸動脈に沿って頭蓋内にもどり各効果器を支配する。第1ニューロン障害の代表例は,Wallenberg症候群,第2ニューロン障害は,直接の外傷,頸胸部リンパ腺腫大による圧迫,腫大した甲状腺の圧迫,頸部胸部動脈瘤,癌の転移,頸部膿瘍の圧迫,肺尖部肋膜癒着などにより生じる。第3ニューロン障害は,内頸動脈系の動脈瘤,閉塞などにより生じる。

日本救急医学会より



眼窩先端部の通る神経について


眼窩先端部の通る神経には視神経、動眼神経、滑車神経、三叉神経、外転神経がある。


眼窩先端部は、下斜筋を除く外眼筋の起始部で、輪状に配列していて筋円錐構造の先端である。


筋円錐の中を通過するものは、視神経、眼動脈、動眼神経、三叉神経の鼻毛様体神経、外転神経がある。


筋円錐の外を通過するものは、滑車神経、三叉神経の涙腺神経、前頭神経がある。


眼窩先端部病変では、通常、動眼神経、三叉神経第1枝、外転神経、滑車神経麻痺のいずれか複合麻痺+視神経障害となる。


視神経海綿静脈洞を通過しないため、海綿静脈洞病変では動眼神経、三叉神経第1・2枝、外転神経、滑車神経麻痺いずれかの単独や複合麻痺のみとなる。


眼窩先端部の病変で見られるのは、散瞳や眼瞼下垂がある。


散瞳瞳孔括約筋麻痺によって生じ、これは動眼神経支配(副交感神経)である。この動眼神経が眼窩先端部を通ることから生じるのは想像がつくだろう。


起始核動眼神経副核(Edinger-Westphal核:エディンガーウェストファル)である


眼瞼下垂上眼瞼挙筋麻痺で生じ、これも動眼神経支配である。



流涙症について


疾患から治療までの理解のためには、やはり目の構造についてしっかり理解しておくことが必要です。


参考画像は以下を確認してみてください。



流涙があるということは、涙道の狭窄や閉鎖を疑う


→ 涙道造影で涙嚢が正常に描出されるか確認する。


→どの部位で詰まっているのかが把握することができる。


・治療は涙嚢の内側壁に骨窓を作り、鼻腔へ流出路を作成する手術である、涙嚢鼻腔吻合術がある。


涙小管が閉塞あれば涙小管形成手術という方法がある。


涙路の流れ(番号順、表の上から下へ流れる)構造
①涙腺
角膜
②上下涙点
③上下涙小管
④涙嚢
⑤鼻涙管
Hasner弁(ハスナー)
⑥下鼻道
涙路について


鼻涙管の閉塞では涙嚢内で細菌感染が起こりやすくなる。これにより、慢性涙囊炎で涙嚢炎を繰り返してしまうことがある。


そのため、先ほどの涙嚢鼻腔吻合術排膿するのと同時に涙液の排出路を確保し再発を防げる効果をのぞめる。


・この涙嚢鼻腔吻合術は、経皮的なものと内視鏡的なものがある。


→ 内視鏡的方法をとれば、鼻腔内から内視鏡的に骨窓を作成するため、整容面で良く、普及してきている方法である。



・骨窓を作るだけでは、創傷治癒過程で粘膜に覆われて再閉塞することが多いため、創部にはシリコンチューブを3ヶ月ほど留置するのが一般的な術式である。


その他眼疾患について


兎眼顔面神経麻痺で生じるものである。(目を閉じ切れない状態をいう)


眼球陥凹乳がんの眼窩転移でおこるもの。


眼科領域の検査について


検査については眼科編③がメインとなっています。


検査名調べるもの
光覚検査(暗順応検査)夜盲症など
蛍光眼底造影検査原田病※などのぶどう膜炎

・糖尿病などの眼底血管変化の評価
網膜電図(ERG)・網膜色素変性症

・糖尿病などの網膜疾患の診断
頭部単純MRI眼窩、頭蓋内の腫瘍性病変の有無について確認
脳脊髄液検査・原田病の疑い時

髄膜刺激徴候がある時
眼科領域の検査について


リンク先

原田病(はらだ):原田病とは、東洋人に多い疾患で、白人には少ない。


初期症状は

体調不良

めまい

頭痛

頭皮の神経症状(ピリピリ感)


などがあり、その後に視力が突然落ちたりする


急性ぶどう膜炎を呈することが多い。


眼症状以外では、髄膜炎症状、皮膚や毛髪の白化、耳鳴り、難聴などがある。


検査:脊髄液検査、聴力検査等


治療はステロイドパルス療法が著効する。(疾患の原因は自己免疫疾患のため)


腫瘍と眼症状について


腫瘍によって視野障害などの目の症状を呈することは往々にしてある。検査としては頭部MRI検査が有用といえる。

以下には、目の症状に対して考えられる腫瘍疾患についてまとめてます。

腫瘍部位起こりうる視野障害
前頭葉腫瘍Foster-Kennedy症候群(フォスターケネディー)を示すことがある。

同側の視神経萎縮他側のうっ血乳頭
側頭葉腫瘍同名半盲
(不規則な上方4分の1同名半盲)
頭頂葉腫瘍同名半盲、失語、失認、失字症など

下方4分の1同名半盲)
後頭葉腫瘍黄斑回避を伴う同名半盲
中脳腫瘍Parinaud症状(パリノー)※1両側の注視麻痺

Argyll-Robertson症状(アーガイルロバートソン)※2と同じ瞳孔異常
テント下腫瘍・視野障害は認められないことが多い

・眼球運動障害
小脳腫瘍うっ血乳頭
橋角部腫瘍聴神経、三叉神経、顔面神経麻痺
脳橋および延髄腫瘍水平共同運動障害※1

・外転神経麻痺
腫瘍と眼症状について



リンク先

※1 Parinaud症候群(パリノー)中脳背側症候群をいう。上方共同注視麻痺のことをいう。


原因としては松果体の腫瘍や中脳視蓋前域の腫瘍または梗塞(これは稀なもの)があると考えられる。


パリノー症候群では


上方注視麻痺の他、眼瞼が後退するCollier徴候(コリアー)(目を見開いたような表情を示す兆候をいう)、下方注視傾向落陽現象)、輻輳後退眼振、瞳孔散大(6mmほど)で、光反応はないが、調節反応は良好(対光近見反応解離という)の症状が見られる。


(共同注視麻痺は水平注視麻痺が最も多く、次に上方注視麻痺、下方注視麻痺と続く。


水平注視中枢橋網様体傍正中部にある。この信号は第6脳である外転神経核に送られる。)


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※2 Argyll-Robertson症状(アーガイルロバートソン)反射性瞳孔強直ともいう。


瞳孔反応のうち、対光反応は消失するが輻輳反応や閉瞼反応はある状態


これは脊髄瘻進行麻痺(梅毒等)の所見である。


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※3 落葉現象両側眼球が不随意に内下方に移動して、瞳孔が下眼瞼に隠れる状態をいう。


これは、太陽が沈む時の光景を表したものである。


これが、初期症状として見られる疾患には核黄疸がある。また、水頭症でもみられる。


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輻輳反射について


輻輳反射とは、瞳孔反射の一つであり


焦点を合わせるため両側の内直筋を収縮させることでいわゆる寄り目をすることができる反応のこと。


これによって瞳孔は小さくなる。


近くを見る時は両眼が輻輳し、縮瞳する。これが輻輳反射である



縮瞳の要因について


モルヒネ中毒(ピンホール縮瞳:ピンホールのように小さい穴のようになる)
有機リン中毒
虹彩炎
副交感神経刺激薬投与(ピロカルピンなど)
Horner症候群(ホルネル):頚部交感神経麻痺
ヒステリー
糖尿病
脳橋障害
Wallenberg症候群(ワレンベルグ)※1
Argyll Robertson症候群(アーガイルロバートソン)※2
縮瞳の要因について


※1 Wallenberg症候群(ワレンベルグ)延髄外側症候群ともいい椎骨動脈解離


(動脈の壁が傷つきそこに血液が流れ込むこと)などが原因となり脳梗塞が起こってしまうことで生じる事が多い。


延髄の外側前庭神経核、三叉神経、小脳との連絡路、温痛覚を伝える神経路、自律神経等が通っている。


※2 Argyll Robertson症候群(アーガイルロバートソン):対光反射がない瞳孔異常である。


主に神経梅毒で生じるが、糖尿病、多発性硬化症、脳腫瘍などでも起こる。


近くを見ることで縮瞳する近見反応は正常であり、寄り目にする輻輳反応も正常である。


散瞳の要因について


様々な要因があり、主なものを表としています


動眼神経麻痺
急性緑内障発作
眼打撲(外傷性)
副交感神経麻痺薬の投与(アトロピン、トロピカミドなど)
脳動脈瘤
Basedow病(バセドウ):頚部交感神経興奮
Adie症候群(アディー)※
てんかん発作
コカイン
アドレナリン
散瞳の要因について


Adie症候群(アディー)アディー症候群とは、瞳孔緊張症アキレス腱や膝蓋腱反射の消失・減弱を伴うものをいう。


原因不明だが、糖尿病やウイルス感染、膠原病などの全身疾患の合併症も一部ある。


明所で瞳孔不同が著明になることを確認できる。対光近見反応解離と呼ばれる瞳孔緊張症の特徴がある。


瞳孔緊張症副交感神経の障害により瞳孔不同が起こる状態である。


20~40歳代の女性に多く、80%以上は片眼性である。



視神経障害の確認方法について


・例えば、右眼に光を入れた時に左眼の間接対光反射が正常であるということは


右側の視神経左側の動眼神経は正常と判断できる。


眼底に異常はないが視野障害徴候がある場合、神経損傷の可能性も考える。


・右眼だけを開瞼して瞳孔径が4mmほど、同時に左眼を開瞼しても右の瞳孔径が変わらないということは


右間接対光反射障害または右直接対光反射正常と考えられる。


・これと同時に行うこととして、左眼のみを開瞼したとき瞳孔径が6mmで、同時に右眼を開瞼した時、左の瞳孔径が4mmに収縮する時


左間接対光反射は正常か、または左直接対光反射障害が考えられる。


対光反射の評価方法について


障害部位左眼 直接左眼 間接右眼 直接右眼 間接
①左視神経(Ⅱ)対光反射(-)対光反射(+)(+)(-)
②左動眼神経(Ⅲ)(-)(-)(+)(+)
③右視神経(Ⅱ)(+)(-)(-)(+)
④右動眼神経(Ⅲ)(+)(+)(-)(-)
対光反射の評価方法について


光刺激 → 左眼 → ①左視神経


→(直接左・間接右)の視蓋前核


→ 両側E-W核に刺激あり


→ ②左動眼神経(副交感神経成分)


→ 左眼の反応



・視路の最後である動眼神経の反射があるため、光刺激を受けてない側にも対光反射がおこる


これを間接対光反射という。


・一方の眼から光刺激が視蓋前核に入ることで、左右両方のE-W核に刺激が伝わる


視神経管骨折について


視神経管骨折とは、頭部の打撲により視神経管に障害が生じ、介達的視神経障害を受けたものをいう

別名は外傷性視神経損傷という


眉毛部の外側打撲であることが多い。


・症状は急激な視力障害である。


患側の直接対光反射が低下し、間接対光反射は正常という状態を示す。


治療


視神経管開放術により、減圧を行う。


・保存的治療としてステロイド、高張浸透圧薬点滴(グリセロール)




今回はここまでです。次回は視野障害についてまとめていきます。


<参考文献>

メディックメディア Question Bank vol.5 眼科

ビジュアルブック 眼科疾患


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    Nitroso.Ph

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