今回は、総論的なので薬剤師等の他の医療従事者にとっても有益なものかと思います。
どんな診断方法があって、何を診ているんだろうかということを知るには良いかと思いますので、ご活用ください。
(注意事項:このシリーズは、あくまでも国家試験の内容からのものであって、試験としては必要な知識は得られますが、より細かい疾患や人体の機能などの基礎部分は載っていないことがあります。
そのため、これを全て把握しても人体については全て理解し、学べたということにはなりませんのでご注意ください。
医学は未知の部分も含め、既知の部分であってもかなりの量です。ここは忘れないようにしてご利用ください。)
検査の種類について
胃腸、腹部検査
・拡大内視鏡:病変表面の腺管や血管の構造をみるためのもの。100~120倍ほどのズームが可能。
NBI(狭帯域光観察)の併用で、血管新生を早期にとらえることができる。
・色素内視鏡:病変表面の凹凸を診るもの
・超音波内視鏡(EUS):粘膜下腫瘍では、どの層に主病変があるかを判断するためのもの。
EUSガイド下で病変を穿刺して、細胞診や組織診を行う方法として超音波内視鏡下穿刺吸引生検法(EUS-FNABまたはEUS-FNA)がある。
これにより、従来の内視鏡下生検では診断できなかった消化管粘膜下腫瘍や膵癌、腹腔内リンパ節、腹腔内腫瘍、骨盤内腫瘍の診断が可能となり、EUSでしかみれない腹水などを採取することも可能となっている。
・実質臓器を観察することに優れているが、管腔臓器の観察には適しているとは言えない。
・EUS-FNAの禁忌例:全身状態の不良、イレウス、手術直後、消化管穿孔などがある。
・カプセル内視鏡、ダブルバルーン内視鏡:主に小腸を観察するための機器である。
カプセル内視鏡は観察のみ。バルーン内視鏡では、経口または経肛門的に挿入し患者苦痛はあるが、生検や治療が可能となっている。
・腹部血管造影:上腸間膜血栓症などの確定診断のための精査。侵襲的であり、初期検査ではない。
腹部X線単純写真の所見について
・十二指腸潰瘍穿孔:横隔膜下遊離ガス像がみられる。穿孔があれば緊急手術だったが、現在は抗潰瘍薬が強く効くため、多くが保存的治療ができるようになっている。
・イレウス:鏡面像、ニボーがみられる
・アカラシア:胃泡が消失する。また、食道造影X線検査では噴門部から口側数センチ部分に先細りの狭窄がみられる。
この狭窄部から口側の食道はバリウムが貯留し、著明に拡張する。
・S状結腸軸捻転症:coffee-bean signが典型的な所見としてみられる
・急性膵炎:限局性空腸麻痺によって横行結腸の攣縮がおこり、結腸右半分の限局性ガスであるcolon cut-off signがみられる。
大腸検査
・下部消化管内視鏡検査:大腸の病変検索のための精査。
・注腸造影:大腸憩室症などに行う。
・便潜血検査:二日分の検便を行い、一度でも便潜血陽性であれば精密検査(二次検査)の適応となる。
→特異度は95%と高いが、感度は進行度や算出法でバラツキがあり低い。(およそ30~90%と差がある)そのため、二日法となっている。
陽性率は5~7%であり、そのうちおよそ2%が大腸癌といわれる。(発見率は0.1%~0.2%)
・便潜血陽性者が精密検査を受けたことで、受けない人より生存率が5倍も高いと言われている。
・便潜血反応には免疫法と化学法がある。免疫法では便中のヒトヘモグロビンの確認をする方法であり、偽陽性はほとんどない。
ただし、時間の経過で安定性は低下するため、採取後すぐの検査が良い。
時間がかかる場合では4℃で冷蔵保存すること。(この場合、1週間経っても活性値は80%は維持される)
化学的方法となると、鉄剤摂取や肉の摂取であっても偽陽性となることがある。
腫瘍マーカー:大腸癌ではCEAを見るが、大腸がんの50%で陽性。早期癌では陰性の事が多く、早期発見には適していない。高い数値では遠隔転移を示唆する所見といえる。
・中高年、体重減少、貧血症状あれば癌を疑う。貧血からは器質的疾患を検索するが
・血液検査、便潜血検査、内視鏡検査が必要となる。(消化管疾患:潰瘍、悪性腫瘍などの検索)
・女性では、婦人科疾患の検索も必要
大腸内視鏡検査
内視鏡的逆行性胆管造影:胆管病変の閉塞所見を診る
腫瘍の広がりの程度をみるのは侵襲性の割にみにくいため、適していない
血液検査について
ヒアルロン酸やIV型コラーゲンなどは線維化マーカーとなり、肝線維度の指標となる。血中で上昇する。
ALPの種類について
種類 | 特徴 | 上昇する疾患 |
---|---|---|
ALP1 | 肝性のもの(高分子) 熱に不安定 | 肝癌 閉塞性黄疸 |
ALP2 | 肝性 熱に不安定 | 肝炎 肝硬変 肝癌 |
ALP3 | 骨性 熱に不安定 | 癌の骨転移 小児の成長期 甲状腺機能亢進症 |
ALP4 | 胎盤性 熱に安定 | 妊娠後半期 末期癌 |
ALP5 | 小腸性 熱に不安定 | 潰瘍性大腸炎 腎不全 肝硬変 糖尿病 |
血清アミラーゼ上昇する疾患について
種類、状態 | 尿中アミラーゼ | 主な疾患 |
---|---|---|
唾液アミラーゼ | 上昇 | 流行性耳下腺炎 異所性妊娠 手術や外傷、熱傷などの全身的侵襲時 |
膵アミラーゼ | 上昇 | 急性・慢性膵炎 イレウス 消化管穿孔 Oddi括約筋収縮(モルヒネ投与時など) |
排泄障害 | 不変 | 腎機能障害 マクロアミラーゼ血症※ |
※ マクロアミラーゼ血症:血清アミラーゼが分子量の大きいグロブリンと結合し、糸球体ろ過ができなくなり血清アミラーゼの上昇、尿中アミラーゼは正常値を示す状態である。
がん検診とは
- 日本のがん検診受診率は低い
- 早期発見にはがん検診による偶然の発見というのが重要
癌検診 | 検査方法 |
---|---|
胃癌 | バリウム造影 |
肺がん | 胸部X線 |
乳がん | マンモグラフィ |
子宮がん検診 | 細胞診 |
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尿検査項目について
・尿中17-KS測定:クッシング症候群などにより上昇するもの。これは、副腎アンドロゲン分泌量を反映している。
・尿中セロトニン代謝物測定:終末代謝産物は5-HIAAであり、これを測定する。
・尿中VMA測定:褐色細胞腫で上昇するもの。これは、副腎髄質ホルモンの尿中代謝産物である。
・131I-アドステロールシンチグラフィ:一般名がヨウ化メチルノルコレステノールといい、副腎疾患の局在診断に用いる。
・67Ga-シンチグラフィ:これはトランスフェリンと結合して全身に分布(主に、骨髄、涙腺、鼻腔、唾液腺、肺門部(個人差あり)、胸骨、肝臓、便(腸管内)、乳腺(女性)、外陰部(男性))する。
これが腫瘍のトランスフェリン受容体と結合することで、SPECTにより悪性腫瘍の検出ができる。
24時間までに投与量の10%が尿中排泄される。
経口投与による検査
・BT-PABA試験:膵臓の外分泌機能をキモトリプシン活性で評価するもの。
・pHモニタリング:胃食道逆流症を評価するもの。
①pHプローブを搭載した細いカテーテルを下部食道括約筋の5cm上方に留置する。
②検査者には症状、食事、睡眠を24時間にわたり記録してもらう。
③食道の胃酸曝露は、pHが4.0未満であった全記録時間の割合として定義される。
④
・プロトンポンプ阻害薬(PPI)を服用していない場合、検査値が4.3%を超えた場合を異常値とする。
・PPIを服用している場合、検査値が1.3%を超える場合を異常値とする
・経口糖負荷試験:75gOGTT試験ともいう。75gの糖の水(トレーランG® )を摂取し、30分、60分後、90分後、120分後に採血して、血糖値とインスリンを測定する試験。
これは、膵内分泌機能検査である。
・α1-アンチトリプシン法:便中や血清α1-アンチトリプシンを測定することで、蛋白漏出性胃腸症の診断に用いられる。
注射薬による検査について
・グルカゴン負荷試験:グルカゴンを注射した後、C-ペプチド濃度測定をし膵臓のインスリン分泌能を評価する方法。
糖尿病、インスリノーマの診断に有用
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磁気共鳴について
磁気共鳴胆管膵管撮影(MRCP)では、字のとおり胆管や膵管を診る検査である。
胆嚢や膵臓の疾患類に用いられる検査である。
PET検査について
PETとはポジトロンエミッション断層撮影のことである。
肺癌、大腸癌、乳癌、悪性リンパ腫などの病期判定で用いられる。
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肝疾患の画像所見まとめ
超音波検査、単純CT、造影CTの見方についてまとめてあります。
今後いい画像が見つかりましたらリンクさせていただこうかと思います。
疾患 | 超音波検査(US) |
---|---|
肝内結石 | 高エコー acoustic shadow |
肝細胞癌 | モザイクパターン 辺縁の低エコー帯(halo) |
転移性肝癌 | 低~高エコー bull's eye sign |
肝血管腫 | 境界明瞭な高エコー |
肝膿瘍 | 不均一な低エコー 粗い内部エコー |
肝嚢胞 | 均一な低エコー 後方エコー増強 |
脂肪肝 | 高エコー(bright liver) 深部エコー減衰 肝腎コントラスト増強 |
肝硬変 | 表面凸凹結節 相対的左葉腫大 内部構造びまん性の乱れ 脾腫 |
疾患 | 単純CT | CT造影 | 血管造影 |
---|---|---|---|
肝内結石 | 高吸収域 | (ー) | 所見(ー) |
肝細胞癌 | 低吸収域 | (+) 早期濃染し急速に低下(wash out) | hypervascular stainは静脈層以降すぐに消える |
転移性肝癌 | 低吸収域 | (+)周辺のみ | hypovascular 多発性 |
肝血管腫 | 低吸収域 | (+)求心性 | cotton wool appearance(綿花様濃染) stainは静脈層以降も数分間続く |
肝膿瘍 | 低吸収域 | (+)被膜のみ (ring enhancement) | hypovascular |
肝嚢胞 | 低吸収域 | (ー) | (+)血管圧迫、変形 |
脂肪肝 | 肝実質の低吸収域 | (ー) | 所見(ー) |
肝硬変 | 表面凸凹結節 相対的左葉腫大 内部構造びまん性の乱れ 脾腫 | 左記に同じ | コルク栓抜き様所見 急激な細小化 |
造影CTの細かい所見について
項目 | 肝細胞癌 | 肝内胆管癌 | 転移性肝癌 | 肝血管腫 | 肝嚢胞 |
---|---|---|---|---|---|
動脈相 | 早期濃染 (hypervascular) | リング状濃染を伴う低吸収域 (hypovascular) | リング状濃染を伴う低吸収域 (hypovascular) | 辺縁部のcotton wool状濃染 | 全く造影されない 低吸収域を示す※2 (結節なし) |
門脈相 | 動脈相と平衡相の間を呈する | 左記に同じ | 左記に同じ | 左記に同じ | 〃 |
平衡相 | 低吸収域(early wash out) | 遷延性濃染 | 遷延性濃染※1 | 徐々に内部が染まる (fill-in現象) | 〃 |
※1 転移性肝癌の平衡相では、肝内胆管癌の平衡相との鑑別は難しい。
※2 肝嚢胞腺癌との鑑別が重要であり、肝嚢胞腺癌は造影される結節がみられる特徴がある。
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内視鏡的逆行性胆道膵管造影について(ERCP)
内視鏡的逆行性胆道膵管造影とは、内視鏡を口から入れて食道・胃・十二指腸と進めていき、直接胆管や膵管に細いカテーテルを挿入して造影剤を注入してレントゲン撮影することである。
これは、胆道・膵管を詳細に調べることができる検査である。(胆管結石や膵石、悪性腫瘍の有無を調べられる)
仮に癌が疑われる場合は、検査をしたまま並行して胆管や膵管の生検も行うことができる。
また、先端には超音波診断機器のついた細い管があり、胆管や膵管の中に入れて超音波による精密検査をそのまま行うこともできる。
ERCPでは治療(結石除去)もそのままできる。
これは、内視鏡的手術ができるため、皮膚に傷は残らず、開腹手術は無いため体の負担が少なく済む。
ただし、先に腹部造影CTなどの低侵襲で簡便な画像診断から行うべきである。
(注:腎障害あれば造影は避けること)
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