さて、このシリーズも後半となってきています
一般用医薬品(OTC)に用いられる成分については、一旦ここで最後となります
漢方薬についてはまた別の機会にまとめたいと思いますので、まずはここをしっかりおさえるようにしましょう
禁煙補助薬について
禁煙補助薬はガムやパッチなどの剤形があります
それぞれ使用法などは異なるため、その違いについては把握しておくことが大事です
特殊な使い方になりますので覚えにくいかと思いますが、ここも違いについては理解していきましょう
(ただし、貼付剤(パッチ)は第1類医薬品となっています)
ニコチン置換療法について
ニコチン置換療法は、ニコチンを有効成分とする医薬品からニコチンを喫煙以外の方法(ガムやパッチ剤など)で摂取をすることでニコチン離脱症状を軽減しながら、禁煙補助薬の摂取量を徐々に減らしていき、最終的にはニコチン摂取をゼロとする治療法
これは、最初の段階で完全に禁煙をして始めるものとなります
そのため、販売(受診)時点で禁煙をいつから始めるかをしっかり決めてもらい治療を開始することとなります
禁煙の治療薬というよりは、あくまでも禁煙を「補助」するためのものです(現在でも、治療薬といえるものはありません)
医療用では主成分がバレニクリンの内服薬があります(禁煙外来:病院を受診して処方してもらいます)
タバコやニコチン製剤のニコチンという成分はニコチン作動性神経が反応します
これはアドレナリン作動性神経にあたります
このため、アドレナリン作動成分とニコチン製剤(喫煙含む)との併用では、この作用が増強してしまうことがあるため、注意点となります
禁煙補助薬の使用方法について
タバコを吸いたくなった時、禁煙補助薬(ガム)をピリッと味がするまで噛んでもらい、味を感じなくなったら頬の内側にはさんでもらいます
そして、しばらくして味を感じなくなるため、またゆっくりと断続的に噛みます
この時、口腔内ではニコチンが放出されており、口腔粘膜からの吸収で循環血液中に移行します(肝初回通過効果を受けない経路ですね)
ここでの注意点は、ゆっくり噛んでもらうというのが必要です
噛む際、通常のガムのように噛んでしまうと、唾液の分泌量が多くなってしまい、口腔粘膜からのニコチンの吸収量が十分でなくなってしまい、吐き気、腹痛、胸焼け、喉の痛みなどの副作用が出やすくなります
また、ニコチンの吸収量が低下してしまう原因に、「口腔内を酸性に傾けてしまう飲食物の摂取」があります
例えば、コーヒーや炭酸飲料の摂取がこれにあたりますので、ガムを使用するタイミングでは控えていただくことがよいでしょう
もう一つ注意点を挙げるとすると、「長期にわたる漫然投与は避けること」となります
添付文書で定められた期限がありますので、それを超えて使用することはしないようにする必要があります
(ガム剤とパッチ剤ではそれぞれ使用する期間は違います)
この場合は病院への受診を促しましょうd
ニコチン製剤の使用中または使用直後での喫煙は、血中のニコチン濃度が急激に高まるおそれがあるため、避けること
一度に2個以上の使用は避けること
次の人は使用を避けること
以下の内容は大事ですので、覚えておきましょう
(1)顎の関節に障害のある人
(2)口内炎や喉の痛み・腫れがある人
(3)脳梗塞・脳出血等の急性期脳血管障害のある人
(4)重い心臓病がある人(3ヶ月以内に心筋梗塞発作、重い狭心症・不整脈と診断された人)
(5)うつ病と診断されたことのある人
(6)非喫煙者
(7)妊娠中・授乳中の人
一般用検査薬について
体外診断用医薬品 ┳ 医療用検査薬
┗ 一般用検査薬
専ら疾病の診断に使用されることが目的とされる医薬品のうち、人体に直接使用されることがないものを「体外診断用医薬品」といい、その多くは医療用検査薬となっているが、薬局や医薬品販売業では一般用検査薬を取り扱うことができる
一般用検査薬とは
・検査項目は学術的な評価が確立しており、情報の提供によって結果に対する適切な対応が可能となるものである
・検査に用いる検体は、採取時の侵襲性※がないものである(尿、糞便、鼻汁、唾液、涙液など)
・一般の生活者が正しく用いて健康状態を把握し、速やかな受診に繋がり、疾病の早期発見をするためのもの(二次予防)
・重大な疾患の診断に関係するものは一般検査薬の対象外となる(悪性腫瘍、遺伝性疾患、脳梗塞、心筋梗塞など)
※ 侵襲性:生体の内部環境の恒常性を乱す可能性のある刺激全般をいう
一部を切ったり、傷をつけて内視鏡を入れる必要がある場合などがこれにあたります
一般用検査薬の重要な説明事項について
説明時は、内容も大事だが周囲へのプライバシーの配慮であったり、相談しやすい体制という努力も必要となります
試験のためには、まず以下の項目はしっかり把握して働いてからのイメージをおきましょう
(1)専門的診断に置き換わるものではないことをわかりやすく説明すること
(2)検査薬の使用方法、保管上の注意についてわかりやすく説明すること
(3)検体の採取時間とその意義についてわかりやすく説明すること
(4)妨害物質及び検査結果に与える影響についてわかりやすく説明すること
(5)検査薬の性能についてわかりやすく説明すること
(6)検査結果の判定についてわかりやすく説明すること
(7)適切な受診勧奨を行うこと(受診中であれば、通院治療の必要性について説明)
(8)その他、購入者等からの検査薬に関する相談には積極的に応じること
検査における用語について
検査結果の見方や検査の精度について知るためにはまず用語をしっかり理解する必要があります
まずはこの3つを覚えておきましょう
検出感度:検出反応が起こるために必要な最低限の濃度をいう。検出限界とも
偽陰性:検体中に存在しているにもかかわらず、検査結果が陰性となる場合
偽陽性:検体中に存在していないにもかかわらず、検査結果が陽性となる場合
偽陰性となるというのは、検出反応を妨害する物質の影響を受けることで起きたりします
偽陽性では、検査対象外の物質と非特異的な反応が起こり検査結果が陽性を示すなどが挙げられます
妊娠検査薬について
妊娠検査薬は第2類医薬品に分類されています
これは、尿中のhCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)を検出することで妊娠しているかどうかを判定します
このhCGは、妊娠成立から4週目前後(生理予定日の1週間後)の尿中hCG濃度が検出感度となっています(通常、50mLU/mL)
検体は早朝尿(起床直後の尿)が望ましいとされています
妊娠検査薬は温度の影響を受けやすいため、高温となる場所や冷蔵庫内での保管は避けること
検査薬の結果が必ずそのまま反映するかといえば、そうでない場合はもちろんあります
そこで、次に偽陽性または偽陰性となってしまう場合についてみてみましょう
<偽陰性となる場合>
尿中hCG濃度が検出濃度に達していないなど
<偽陽性となる場合>
(1)絨毛細胞の腫瘍化
(2)ホルモン剤治療を受けている(経口避妊薬、更年期障害治療薬など)
(3)高濃度のタンパク尿、糖尿
など
尿糖・尿タンパク検査薬について
市販される検査薬には尿糖や尿タンパクを調べるためのものもあります
これは、「疾患の有無や種類を判断するためのものではない」ことは理解しておきましょう
検体は尿糖と尿タンパクでそれぞれ異なる場合がありますので、以下の表を参考にしてみてください
検体 | タイミング |
---|---|
尿糖 | 食後1〜2時間 採尿は中間尿を採取すること |
尿タンパク | 早朝尿 採尿は中間尿を採取すること |
尿糖と尿タンパク同時 | 早朝尿 尿糖検出時は食後の尿で再検査 |
尿タンパクでは、激しい運動直後での採尿は避けることとなっています
(運動により体内でタンパク質が過剰に生成されるため:生理的タンパク尿)
他にも注意事項があります
一つは検査薬は少し付けるだけでよいということですが
これは、検査薬を長く浸してしまうと溶け出してしまい、正確な検査結果を得られない原因となります
次に、食事などの影響があります
通常の尿は弱酸性を示していますが、食事などで尿が中性〜アルカリ性に傾いてしまうと、これも正確な検査結果を得られなくなってしまいます
<参考>
e-ヘルスネット:厚生労働省 タンパク尿について
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-070.html(閲覧:2022.09.01)
公衆衛生用薬について
公衆衛生の管理は薬剤師や登録販売者の役割も担っております
治療用の薬だけではなく、薬物についてもしっかり学んでいきましょう
尚、公衆衛生用薬には消毒薬、殺虫剤、忌避剤の分類がされています
消毒薬について
消毒薬は成分によってはヒトに用いることが禁止されているものもあります(塩素系など)
そういったものは、皮膚に付着した時は流水をかけながら着衣を取り、石鹸を用いて流水で15分以上水洗するといった対処法もあるため、覚えておきましょう
誤用により吸入した場合は、新鮮な空気のところへ移動させ、人工呼吸などをすること
飲み込んでしまった場合は、多量の牛乳または水などを飲ませ、吸収を遅らせるといった方法があります
ただし、原末や濃厚液を誤飲した場合は安易に吐かせないこととなっています
これは、嘔吐する際に気道や肺などを傷めてしまうおそれがあるからです
次に目に入った場合ですが、これは流水で15分以上洗眼するようにしましょう
こういった刺激物(劇物や毒物など)は酸やアルカリで中和するといったことも避けるようにしましょう
酸をアルカリで中和、アルカリを酸で中和するということは、化学反応が起こり熱を発生してしまいます
これが身体の表皮や体内で起こると非常に危険です
対処法はしっかり身につけた上で行うようにしましょう
それでは具体的な成分についてみてみましょう
次の表では、それぞれの成分ごとにまとめたものとなっています
成分 | 内容 |
---|---|
クレゾール石鹸液 | ・大部分のウイルスには無効だが、一般細菌類や真菌類には有効 ・刺激性が強く、原液が皮膚につかないよう注意すること |
エタノール イソプロパノール | ・アルコール類であり、揮発性で引火しやすいという特徴がある →蒸気の吸引にも注意 ・微生物のタンパク質を変性させることで殺菌作用を示す ・一般細菌類、新菌類、ウイルスに有効 (特に、エタノールの効果は強い) ・皮膚に直接付くと脱脂して肌荒れの原因となりやすい |
クロルヘキシジングルコン酸塩 | ・一般細菌類、新菌類に有効 ・結核菌やウイルスに無効 |
成分 | 内容 |
---|---|
次亜塩素酸ナトリウム サラシ粉 | ・塩素系の殺菌消毒成分 ・酸化力が強い ・一般細菌類、新菌類、ウイルスに有効 ・刺激性が強く、人体には使用できない ・金属腐食性あり ・漂白作用あり ・酸性の洗剤と混ぜないこと →有毒な塩素ガスの発生 |
ジクロルイソシアヌル酸ナトリウム トリクロルイソシアヌル酸 | ・有機塩素系殺菌消毒成分 ・プールなどの大型設備の殺菌・消毒に用いられる |
殺虫剤について
殺虫剤や忌避剤は、ハエやダニ、蚊などの衛生害虫の防除を目的とするものであり、医薬品または医薬部外品として法の規制対象となっています
使用するとき、抵抗性を避けるため同じ殺虫成分を長期連用はせず、いくつかの殺虫成分を順に使用するのが良いでしょう
成分はいろんな分類がありますので、合わせて覚えていきましょう
分類 | 成分 | 内容 |
---|---|---|
有機リン系 | ・ジクロルボス ・ダイアジノン ・フェニトロチオン ・フェンチオン ・トリクロルホン ・クロルピリホスメチル など | ・アセチルコリンエステラーぜ(ChE)と不可逆的に結合し、アセチルコリンを分解する酵素を阻害する ・毒性は比較的低い ・高濃度での曝露では、縮瞳や呼吸困難、筋肉麻痺などの副作用が起こりうる(Achが過剰になるため) ・ウジの防除で使用 |
ピレスロイド系 | ペルメトリン フェノトリン | ・除虫菊の成分から抽出 ・神経細胞に直接作用して神経伝達を阻害する ・フェノトリンはシラミ駆除を目的に用いられ、直接人体に使用する |
カルバメート系 (カーバメイト) | プロポクルス | ・有機リン系と似ており、アセチルコリンエステラーぜと可逆的に結合し、アセチルコリンを分解する酵素を阻害する →有機リン系殺虫成分に比べて毒性は低い ・ピレスロイド系殺虫成分に抵抗性を示すものに用いられる |
オキサジアゾール系 | メトキサジアゾン | 〃 |
有機塩素系※ | オルトジクロロベンゼン | ・神経細胞に直接作用し神経伝達を阻害する ・ウジ、ボウフラの防除に使用 |
昆虫成長阻害成分 | ・ジフルベンズロン ・メトプレン ・ピリプロキシフェン | ・幼虫の脱皮や変態を阻害するものであり、殺虫作用はない ・有機リン系やピレスロイド系殺虫成分に抵抗性を示すものにも効果はある |
忌避成分 | ディート | ・医薬品、医薬部外品の虫除けとして使用される ・神経毒性が示唆 →生後6ヶ月未満の乳児は使用しないこと 6ヶ月〜2歳未満:1日1回(顔面は避けること) 2〜12歳未満:1日1〜3回(顔面は避けること) |
※ 有機塩素系:かつてはDDTなどの殺虫成分が用いられていたが、残留性や体内蓄積性の問題から使用禁止となっている
現在使用されている有機塩素系はオルトジクロロベンゼンのみとなっている
殺虫剤・忌避剤で知っておきたいこと
箇条書きでまとめていきますので、ポイントとして覚えておきましょう
・蚊は温暖化に伴いマラリア、黄熱、デング熱などの媒介が喚起されており、ボウフラの防除が重要となる
・ゴキブリの卵は殻で覆われており、燻蒸処理(くんじょうしょり)では殺虫効果はないため、卵から孵化した幼虫を駆除するため3週間くらい経ってから再度燻蒸処理が必要である
・ハエの防除は基本的にウジの防除で対応
・シラミは動物ごとで寄生する種類が異なるため、ヒトにはヒトのシラミが寄生する(アタマジラミ、ケジラミ、コロモジラミなど)
→これは散髪や洗髪、入浴で除去したり、衣服の熱湯処理などで防除するのがよい(フェノトリンが配合されたシャンプーやてんか粉の使用もよい)
・ノミは宿主を厳密に選択しないことから、ペットに寄生するノミによる被害も発生することがある
→ペットでは、ノミ取りシャンプーや忌避剤の使用
・ヒョウヒダニ類、ケナガコナダニは、ダニの糞や死骸がアレルゲンとなり気管支喘息やアトピー性皮膚炎を引き起こす原因となる
→湿度がダニの増殖要因であり、水で希釈する薬剤の使用は避けること
今回はここまでとなります
次回からは薬ではなく、法的なことについてみていくこととなります
お疲れ様でした!