バセドウ病の妊娠初期における薬物治療について
- 妊娠初期は催奇形性の観点より、妊娠5週目から9週6日目まではチアマゾール(MMI)は避ける
- MMI服用中に妊娠が判明した場合は速やかに中止し、状態に応じて休薬、またはプロピルチオウラシル(PTU)や無機ヨウ素薬に変更する
- 妊娠初期で抗甲状腺薬が必要な場合はPTUを使用する
- 妊娠初期の無機ヨウ素治療は、MMIやPTUの代替えとして使用が可能である
- 妊娠5週から15週6日まで可能ならば避けたほうが良い。妊娠16週からはPTU、無機ヨウ素でコントロール不良にはMMIに戻すことも可能である。
- ★無機ヨウ素に関しては、催奇形性の報告はない。代替えや補助薬としてPTUと併用可能である。
バセドウ病治療薬の副作用である無顆粒球症に対して
(抗甲状腺薬での発症頻度:0.3%、投与して3か月以内が84.5%)
・顆粒球数が100/μL以上の無顆粒球症では低用量(75または100μg)のG-CSFを外来投与し、4時間後に顆粒球数の回復が確認できればそのまま外来で経過観察。
・100/μL未満の重症の場合は入院のうえ高用量(300μg/日)のG-CSFを投与することが推奨(弱推奨)
ヨウ素欠乏、栄養不足について
必要量
成人の推定平均必要量を95μg/日、推奨量を130μg/日、耐用上限量を3000μg/日としている。
(昆布だし1食分中には無機ヨウ素1500~2000μg)
授乳中の投与について
・MMI10mg/日、PTU300mg/日までは児の甲状腺機能をチェックすることなく、投与可能である。
・無機ヨウ素は児の甲状腺機能低下症を生じる可能性があり、可能な限り避けることが推奨される。
投与量について
・初期投与量として軽症から中等症(FT4値:5ng/dL未満)のバセドウ病ではMMI 15mgで十分、30mgは避ける
・重症(FT4値:5ng/dL以上)ではMMI30mg単独投与と比較して、MMI 15mg+KI 50mg(1錠)の併用が効果的であり、安全である。
・抗甲状腺薬単独では甲状腺機能を安定させることが難しい患者では、少し多めに抗甲状腺薬を投与に加え、LT4を併用することで機能正常を維持する。
副作用について
・無顆粒球症、汎血球減少症、MPO-ANCA関連血管炎などが報告
症状
・発熱、咽頭痛などの無顆粒球症
・黄疸などの重症肝機能障害
・血痰、血尿、関節痛などのMPO-ANCA関連血管炎
このため、少なくとも投与開始後2か月間は原則として、2週間に1回、定期的な血液検査を行う必要がある。